電撃文庫 総合スレッド その2

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501角川歴彦
電撃文庫創刊に際して

 文庫は、我が国にとどまらず、世界の書籍の流れ
のなかで”小さな巨人”としての地位を築いてきた。
古今東西の名著を、廉価で手に入りやすい形で提供
してきたからこそ、人は文庫を自分の師として、ま
た青春の想い出として、語りついできたのである。
 その源を、文化的にはドイツのレクラム文庫に求
めるにせよ、規模の上でイギリスのペンギンブック
スに求めるにせよいま文庫は知識人の層の多様化
に従って、ますますその意義を大きくしていると言
ってよい。
 文庫出版の意味するものは、激動の現代のみなら
ず将来にわたって、大きくなることはあっても、小
さくなることはないだろう。
「電撃文庫」は、そのように多様化した対象に応え、
歴史に耐えうる作品を収録するのはもちろん、新し
い世紀を迎えるにあたって、既成の枠をこえる新鮮
で強烈なアイ・オープナーたりたい。
 その特異さ故に、この存在は、かつて文庫がはじ
めて出版世界に登場したときと、同じ戸惑いを読者
人に与えるかもしれない。
 しかし、<Changing Time, Changing Publishing>
時代は変わって、出版も変わる。時を重ねるなかで、
精神の糧として、心の一隅を占めるものとして、次
なる文化の担い手の若者たちに確かな評価を得られ
ると信じて、ここに「電撃文庫」を出版する。

1993年6月10日