小野不由美&十二国記その3

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921檄ネタバレ
――次はどこの国が舞台になるんでしょう? いまだ描かれていない国もありますが。
「次はまちがいなく某国です。某国の某麒麟が主人公(笑)。と言えば熱心な方にはわか
っちゃうかも(笑)。シリーズにとって重要なエピソードを、外伝のままにしておくわけ
にはいかない事情ができたんです。構想の上で。それで、まあ、そのお話をあくまで十二
国記という枠の中で再描写するつもりです。その後は、漣か、あるいは慶に戻って陽子の
エピソード。20世紀中にこの三作はまちがいなく出します。その後は、いったいいつにな
るか自分でもわからないのですが、これまで書かれてない国の話を書いて、陽子や延王の
エピソードもあり、登極したばかりの珠晶の暴れっぷりも書きたいなあ(笑)。ま、すべ
て長編にはならず、いくつかは短編ということになると思います」
――シリーズはあと数作で終了という噂もあったので、それだけ書かれる意欲があるとい
うのは読者も安心すると思います。
「これは作家の業だと思いますが、構想がどんどん膨らんじゃって、書きたいことが次々
に思い浮かんじゃうんです。正直、『図南の翼』を書く前は“あと2つか3つで終わりだ
な”とかも思って、うっかりそれを口にしちゃったこともあるんですが、いまはシリーズ
は長い物語になることははっきり決まって、最後の展開まで決まっています」
――その今後の展開を、さしさわりのない範囲で教えてください。
「そうですね。細部まできっちり決まってるわけじゃないということと、大きな変更もあ
りうるという前提でなら」
――それでかまいません。
「熱心な読者の方はもう気づいていると思いますけど、いま、いろんな国の王になってい
る人物は、誰も王制、いわば天の理に幻想を持っていません。十二国のシステムにすごく
懐疑的なわけで、他の人間がやるより自分が王になってたほうがマシ、仕方なく王をやっ
ている王がすべてなわけです。彼らはやがて、全員が出会うでしょう。そのとき合意され
るのは、やはりシステムへの抵抗。一方、各王にはそれぞれ麒麟がついていて、この麒麟
という生き物はその成り立ちからしてどっぷりとシステムの内側にあるわけです。システ
ムを支える生き物といってもいい。システムを壊そうとする者と、支える者。その対立を
描くことがシリーズの最後です。双方が相手を愛するがゆえの対立、悲劇になっていくと
思います。王と麒麟がそれぞれの意思に反して闘わざるをえない悲劇です」
――それは壮絶な展開ですね。
「単純なハッピーエンドにはならないでしょうね。悲しい終わり方になると思います。あ、
そうそう。王たちが天帝とその理に決定的な疑念を持つきっかけを作るのは、ある作品に
登場したある人物です。その人物が蓬莱からある国に海客となってたどりついてある王と
会い、ある麒麟と再会し、そして…。しゃべりすぎました(笑)。シリーズの読者の方々
と、再来年、またお会いできることを楽しみにしています」