「みんなの賞金稼ぎ 2 略奪ベイビー」池端亮 イラスト 白亜右月 読む終わーる。
http://www.esbooks.co.jp/esi.svl?CID=ESI504&view&image_file=/bks/images/i1/30844321.JPG http://www.esbooks.co.jp/bks.svl?start&CID=BKS503&shop_cd=1&qty=1&product_cd=30844321&pg_from=srh 略奪ベイビー。ベイビーという言葉を聞くと、かわいいベイベー、はいはい。わたしのベ
イベー、はいはい。というメロディが頭に浮かんで微笑んでしまいますが、みんなの賞金
稼ぎ略奪ベイビーでは、前作に引き続き微笑みも引きつる殺戮ぶりです。あきれて笑い出
す人もいるかもしれない、見事なまでの死人製造ペースです。さすがに行殺とまではいき
ませんが、ドンドンパンパンドンパンパンと人が死にます。ドンパン節かテメーという世
界です。
作中において、人の命の軽さを娯楽にまで昇華していると言えばほめすぎでしょうか。あ
まりの主人公の勝手ぶりに笑えるか否かが「みんなの賞金稼ぎ」を楽しむ上でのポイント
です。釣りの決め手なのです。ポイントを外された方は、また新たな「みんなの賞金稼
ぎ」の楽しみ方が発見されたり、発明されるまで手を出さない方がいいでしょう。
同じ平行世界日本で治安のワリイ東京(刀京)を舞台にした、ファミ通文庫の「刀京始末
網 ――ヒツジノウタ――」の主人公である始末(賞金稼ぎ)を生業とする雅たん等とは
まったくベクトルが違う殺戮ぶりですので、バウンティハントモノが好きな方で「みんな
の賞金稼ぎ」がダメだった方は「刀京始末網」を読むと楽しめるかもしれません。その逆
もありです。「刀京始末網」では、火器ではなく冷器が主体で命の取り合いそしています。
人命はけっこう重いです。主人公は能動的に殺不(コロサズ)を貫くというほどではあり
ませんが、「捕まえる上で相手が抵抗し、緊急避難や正当防衛で結果的に相手が死亡する
のは仕方がないけど、意図的に賞金クビを殺したことはまだない」という風にがんばって
ます。そして、けなげにがんばったあげくに年下の美形の少年に騙されて悲惨な人生を歩
んで「なんじゃそりゃー」と涙目になるので萌えです。
略奪ベイビーでは、前作には登場しなかった、ある程度の直接的な武力を持った敵という
のが登場します。ネット書店の宣伝文句では「カヲルの最凶伝説を脅かす強敵まで登場」
と書かれてます。が、主人公たちが、その強敵との戦いにおいて窮地に陥った場合でも、
まったくといっていいほど緊迫感がありません。というか強敵も、ページが予定枚数を過
ぎたら、ディスポーザブルチョップスティック然と、さっくりと始末されます。弁当を食
い終わったら捨てられる割り箸の宿命です。強敵との戦いだけでなく、物語全般に言える
ことなのですが、主人公たちが死ぬ気がしません。また、そこそこ強い相手を一刀両断し
たりして爽快という菊地秀行方程式にあてはまるほどには、主人公たちは強くありません。
皮膚感覚が希薄とでもいうか、それが売りでもテーマでもないので余計なものはカットさ
れているのかもしれません。普通の拳銃を撃つと火薬が飛び散って半袖では熱いし、火薬
が目にも飛んでくるのですが、柔肌に傷つくことなく銃を連射してます(私が撃ったこと
がある銃が安物で手入れがされてなかっただけかもしれません)。そういえば、一巻では
リボルバーに安全装置がついてました。必ずしも、リボルバー=安全装置無しってことも、
自動拳銃=安全装置有りってこともないのですが、リボルバーで安全装置があるのはかな
り珍しいことです。そういう部分は無視しようね大作戦なのでしょう。ついでに、物語の
冒頭で主人公たちのひとりが受け取る赤ん坊の生態もあまり出てきません。
ただし、主人公の娘さんが赤ん坊を連れて学校に行った際には「い、いつ産んだのー!」
というお約束は抑えられています。こういうお約束を抑えるところは抑えてあるし、文章
も日本語として破綻してないので、公式の楽しみ方が発見されれば評価もあがるかもしれ
ないです。求ム、解析人柱。