1 :
イラストに騙された名無しさん :
2001/02/14(水) 11:06 新人賞受賞作全般について語るスレッドです。
2 :
イラストに騙された名無しさん :2001/02/14(水) 11:07
今月の電撃文庫の三作はどうだったでしょうか? 角川ルビーも出ていたと思います。
各レーベルごとでやるか 新人賞スレで分析すんのがよろしかろ
新人賞スレではこういう話題あんまり出ないな 話したくてうずうずしてるだろうに。 やっぱ文庫ごとで話してるのか。
6 :
イラストに騙された名無しさん :2001/02/15(木) 07:08
ま、いいじゃん。新人賞そのものより、受賞した作品についてってことで。 一番新しいものなら電撃のやつだが……天国に涙はいらないってどうよ? あれはちょっと 肌に合わん。むしろウィザーズの方が。
7 :
イラストに騙された名無しさん :2001/02/15(木) 07:34
―――――――――――――― 猫を人間にする脅威の技術って… __ __ .r―――――――― ∨ |軍事的な利用価値ってあるのか? 日 凸 U | ______ ≡≡≡≡≡| / .∧ ∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ U ∩ [] ∨% (゚Д゚ ;) <あなた、敵兵が猫耳娘でも銃を向けられますか? __ ∧∧___ .∧∧|つ∽)_ \_____ ( ,,)日 ( ,,)∇ ― / | ――.../ | ――― \(__.ノ \(__.ノ ━┳━ ━┳━  ̄ ┻  ̄ ̄ ̄┻ ̄ ̄ ̄ ̄
>>6 だからそれは電撃スレで語られたこととどう違うのか
スレッド無駄だ
9 :
イラストに騙された名無しさん :2001/02/15(木) 13:59
これからの新人チェックするために、クロスオーバー的に意見が聞ける スレとして存在してもいいと思うけどな。 日頃読んでない文庫でも好みの新人出てるかもしれないし。
×××××××××××××××××××××× ×××××××××××××××××死死××× ××死死死死死死死死死死死死死死死死死死×× ××××××死死××××死××××××××× ××××××死死××××死死×××××××× ×××××死死×××××死死×××死死××× ×××××死死死死死死×死死×××死死死×× ××××死死死×死死××死死××死死死××× ×××死死死××死死××死死死死死××××× ××死死×死××死死××死死×××××××× ×死××××死×死死××死死×××××××× ××××××死死死死××死死×××××××× ×××××××死死×××死死×××××死×× ××××××死死××××死死×××××死×× ×××××死死死××××死死×××××死死× ××××死死××××××死死死死死死死死死× ×××死死××××××××死死死死死死死×× ××××××××××××××××××××××
11 :
T・S :2001/02/15(木) 23:50
スレッドの方でガイシュツしてそうだけど、富士見ミステリー文庫の新人賞の「主人公が十代」つ言うシバリは不要でしょう。
12 :
イラストに騙された名無しさん :2001/02/15(木) 23:56
落ちてもいいなら、それでもね。
13 :
イラストに騙された名無しさん :2001/02/18(日) 04:02
んー? 電撃の「陰陽の京」は続刊に期待でしょうか? >7 猫耳戦車隊か・・・ 83の乳は十二分にデカイと思う漏れは、 キティのペド野朗ですか? つーか、擦れ違い?(藁
14 :
イラストに騙された名無しさん :2001/02/23(金) 06:01
>11 俺、その縛りがなかったら、30代の公安調査員を主人公にするなぁ……。
15 :
イラストに騙された名無しさん :2001/02/23(金) 06:36
>14 ライトノベルである必要ないじゃん>30代の公安調査員を主人公
だから、新人賞スレとネタかぶってるって
新人賞スレと 各レーベルスレで語ればすむ程度の話題しか出ないな わざわざ下からageてくるようなスレじゃねぇ よそでやってくんな ●●●●●●●●●終了●●●●●●●●●
The Agency of 「VIRTUAL CITY」 −DETROIT− SINCE1999 熱烈歓迎設定野郎 ┠−−−−−−BEST WIDTH⇔800pixels−−−−−−┨ BESTFONT=MIDDLE! ■ごあいさつ このたびは当出張所を御利用いただき誠に有り難うございます。 当出張所が各都市、または各シリーズへの旅行案内所を始めましてすでにはや(激略)でございます。 しかし、思えば現代はまさに激動の時代であり世界への視点が(超略)で 当出張所が皆様の御旅行を少しでも助けられることを望んでやみませんが 現状全くページができていないので望むだけで終わってしまっています。 さて、当出張所は各都市への旅行案内はもとより、 各案内所のみでも独立して一つの世界観を持っており、 各受付、整備所、待合室などにおいて様々な出会いや事件が起きますのでご留意ください。 ここから先、ご紹介するのは当出張所の案内資料です。 これはつまり、 「各都市、各シリーズを案内する出張所自体の案内資料(笑)」 という本末転倒極まりない代物であり、 そしてこの出張所、または各シリーズにまつわる謎を解く資料でもあります。 この案内書の執筆者は主任広報員のSATIE・BLANCHE。 閉鎖都市−巴里の生まれだけあってなかなかの筆力で、 この案内書は昨年、出張所本部の見本推薦を受けました。 必ずや皆さんの探索の強い味方となることでしょう。 では、皆さん、答えを求めて良い御旅行を!! ■■所長:川上”先生と呼ぶな”稔 −INDEX− ・序章−当出張所定礎:(概要) ・二章−当出張所構造:yet! ・三章−当出張所商品:(通販) ・四章−当出張所人員:yet! ・五章−SATIEの日誌:(幸江) ・六章−一階・受付他:yet! ・七章−二階・伯林案内所:yet! ・八章−二階・倫敦案内所:yet! ・九章−二階・香港案内所:yet! ・十章−二階・大阪案内所:yet!
−第三章− 「当出張所商品」 ■ここから先は この出張所で扱っている通販商品の紹介と、 それの申し込みフォームと方法について、 倫敦案内所担当の私、 Estima・Glaceがお送りします。 ■■どーして自分が 通販紹介をするかってー言いますと、 単刀直入に言ってオーダーシステム件ワードライブラリが架空都市側にあるからです。 書簡都市−プラハにでも置けばいいものを、 「ハロッズなんかと一緒の街にあると雰囲気いーじゃん」 という所長の趣味一貫によってこういう設定となってます。 何が何やら。 そゆわけでSatie姐ちゃんもちとお休み。 手紙関係なら閉鎖都市−巴里出身の姐ちゃんがベストだと思うんだけどねー。 世の中ままならんものだねえ、と。 ■■■さて ここで取り扱っているのはシャレとかじゃなくて、 「マジな商品」 ですのでご注意。 所長が仕事を忘れて作ってしまった同人誌などを販売する、 と、 まあ、そういうわけですね。 ・だから遊びでフォームをいじくらないで下さい。 商品詳細に関しては下の内容紹介を見ていただくとしましてー、 全体的な創作ルールは、 「原価ぎりぎりまで根性と予算を勝負」 だそーです。 そーでもしないと手にとってもらえないんでしょーか。 余裕無いっつーか何か後ろめたいことでもあんのかなあ。 ■■■■じゃ商品紹介 タイトル 型式 都市 特記事項 作成年月 代金 都市の歩き方1(OSAKA) オフセ本 大阪 全52ページ 99年5月 1000円 タイトルをクリックすると紹介ページに飛びますよん。 (注・以下略)
SATIE日誌 ■序章 『面接へ行きましょう』 “JOURNAL de SATIE” SATIE BRANCHE
1999年01月25日(月) 本日は なんて書き出してみて、ひどく文才のない書き出しだな、などと考えてみたりして。 私、SATIE・BLANCHEは本日、このデトロイト出張所なる旅行会社(※1)に就職面接に来て、 そのまま所長から、 「採用だから日誌を書け」 と命令されスーツ姿で(しかもロビーのお茶のみテーブルでに腰を曲げて!)これを書いているわけです。 何とも言えないですわね、これって。 はてさて、どうしてこんなことをするハメになったのかと言えば、 それはもちろん私が留学先のこの日本で就職しようかなどと大それたことを考えたからであり、 また、今の時期(フキョーって言うんでしたっけ?)に就職というと、 もはや新興企業しか行く手が無かったわけなのです。 それでまあ、できたての会社ならば嫌な先輩−そうとは限らないですが−もおらず(※2)、 一から全て始められるのではないかと思ったのですが。 何と言うべきか!? 新入希望者が今のところ私だけ!! 道理で書類を提出して三日で返事が来るわけです。 まず私を出迎えたのは副所長のグスタフ(名前からするに独逸方面の方かと思いますが、 どうでしょう?)という方で、言葉少なに色々と教えていただきました。 無口な方ですけれども悪い方ではないようです。事務職員は制服着用とのことでしたが、 私の服のサイズを聞くときなど口ごもってられましたし、 本当、かつては私の故郷を占領した国の方かしら? さて、気になったのは所長さんのことです。 副所長の話ではいつもデトロイト式の電詞変換を行ってご自分を高機能化(※3) しているとのことでしたが……、 まさか所長室の机の上にある服着たカブみたいな物体がご本人とは、 つくづく高機能化の際の姿形変化には恐れ入ります。 ここに勤めることになったら私も高機能化する機会が増えるでしょうから、 くれぐれも姿形変化にはこだわらないと。 専門の方に作っていただこうかしら?
でも、 そこで面接をして、今、こういう風に日誌を書いているというのはひどく現実感がないように思えます。 面接の内容は基本的に確認のようなもので閉鎖都市が故郷である私の事務性能を信頼しているとのこと。 つまり、資料を提出した時点で私のここへの就職は決まっていたわけです。 まだ余裕もあるし数社を回るべきかしら? そんな思いもありましたが、やめにします。 一番に選んで一番に資料を送り、一番に私を信頼してくれた場所ですから。 ええ、性能以上のものをお見せしましょうとも。 これでも母は英国人でお茶の入れ方には自信があるんですもの。 でも、こんなに楽な面接ならわざわざスーツを実家から送ってもらうことも無かったかしら? 制服を着る作業って、自分のファッションにこだわれるのは通勤と帰宅しかないんですもの。 学生の時、パン屋でバイトしてつくづくそう思いました。 でもパン屋と違って帽子はかぶらないから、髪型の点では気楽ですね。 で、何ですか? グスタフさん? 今、すれ違いざまに、 「明後日から来てね」 などと可愛い口調で言いませんでしたか!? まだ大学はテスト期間中なんです! とりあえずペンの動きを阻害する流れが出たのでこれまでにします。 でもこれ、閉鎖都市の書面理論とは違って、表紙を伏せたら誰にも見えないんですよね。 ……それもあって好き勝手書いたけど、誰か見るのでしょうか? はてさて。 ※1 ……正確には各地方情報案内所と旅行手続き代行業である。 ※2 ……何かかなり都合のいい考え方な気もする。 ※3 ……「アイコン化」と言う。
1999年01月27日(水) 制服が キツイです。ええ。 日本でのサイズ基準は欧州式と違う(※1)から、一つ間違えたようですね。 私が。(笑) シャツの方は余裕がありますが、ベストの方は胸がキツく(※2)て、 しかし開襟なんてみっともない(※3)ので、グスタフ氏のスペアをお借りしました。 (彼は相変わらず無言で応対してくれますが、やはり、悪い人ではないようです) 今日はそれを着てまず社内と社外の清掃です。グスタフ氏が二階と屋上そして窓。 私は一階の受付を中心に水回りの点検や社外の水撒き−日本は冬にとても乾燥(※4) しますから−を行い、掃除、と。すると来ました来ました水道屋さんに電気屋さんにガス屋さん(※5)。 他にも本社から色々な機材が届きました。 なるほど、今日から来てくれと言われるわけです。 色々と手配して機材は運んできてくれた専門家に任せて、一段落したところでお茶。 と思ったらカップはもちろんお茶の葉も無い。 しまった! というわけで外に出て駅前の商店街(会社は駅前商店街の並びにあるのです)を走り回りました。 地元の人たちばかりの中、 だぶだぶのベストを来て買い物に奔走する異人娘の姿はさぞかし目立ったことでしょうに!! でも、やや遅れはしたもののお茶は間に合い、 (ガスと水道が通っていればお茶は作れるので、こういう場合は楽ですね。 コーヒーは豆をひかねばなりませんから) 皆で紙コップをもって一服。その間にグスタフ氏から色々と聞きました。 とりわけ興味深かったのは副所長である彼でさえ、 高機能化を切った所長の本来の姿を見たことがない、と、そういうことです。 何となく、不思議ですね、それって。 さて、皆さんはまだまだ作業を続けるようですが、私はグスタフ氏の言によって強制退去です。何やら、 「まだバイト扱いなのだから規定以上働く必要は無い」 のだそうで。 本日最後の仕事はこの日誌を午後五時まで書くこと、でしょうか? あ、お茶の片づけがありましたね。 ならばことのついでに皆さんの夕食ぐらいは作り置きしておきましょうか。 まだ五時まで二十分(※6)はありますし、商店街はすぐそこですし、 ついでにこの格好と自分が異人だということに対するコンプレックスもさっきの騒動でかき消えた、と。 では、そのようにしましょうか。 ※1 ……これが少しというのではなく、基準値が全く違うので、勘違いするとインチ単位で間違える。 ※2 ……女性用のベストはダーツなどで身体の形に合わせてあるので、サイズ違いはかなり厳しい。 なお、デトロイト出張所ではほぼオーダーメイドに近い作りのようである。 ※3 ……女性にとっては”みっともない”が男性にとっては”うわ艶っぽい”なので注意。 ※4 ……欧州などは冬においても乾燥する場所が少なく、湿度は一定もしくは夏に乾燥する。 ※5 ……ガス屋さんと言っているが、間違いなく都市ガスの業者。 ※6 ……このわずかな時間で料理をするのだから、 腕が良いと言うよりもそういうレパートリーが豊富なのだろう。
1999年01月29日(金) 新入社員 の方と、朝、すれ違いました。ドアのところで。 ですから所長さんがてくてく歩いてきて言ったことは、大体、解るつもりです。 一見しただけですが、変わった方のように思えました。 独逸製自動人形。Airam式(※1)で精霊燃料を動力(※2)に動き、 人間へ進化していくタイプですね。 Aileppoc式(※3)、クラウゼル型に着想を得たというもので古い歴史のある自動人形ですが、 まだあまり進化していないようでした。 グスタフ氏の話によると、彼女が二階にある独逸方面案内所の受付を担当するとのことです。 年齢など、教えてもらえませんでした−私も聞かなかったのです−が、きっと私より年上でしょうね。 何はともあれ女性が一人増えたのは心強いです。 さて、会社の中に視線を移すと、二日前とは様変わりしていました。 特に驚いたのは入り口受付のカウンターに私専用の端末と椅子があることです! しかも、私が手配しておいたコピー機や高機能化変換器の位置が大きくズレてなおかつ、 「私が手配したよりも、私にとって使いやすい位置に置かれていた」 これはちょっとショックですね。 自分の仕事内容について自分があまり理解していなかったのか、 向こうは専門家だから素人の小娘が言うことよりも多くのことを知っていたのか、もしくその両方か。 何分手間をかけてしまったことは申し訳なく思うのですが、 謝ろうにも、おそらく再会は二度と無い気がします。 やはり先日は無理を言っても残るべきでしたか。 でも、作り置きしていた夕食は皆さんきれいに片づけていましたし、食器はやはり洗いもせずに流しの中。 こんなこともあろうかと通勤途中、商店街の雑貨屋で洗剤とかを買って来たのでした。 これで貸し借り無しかしら?(※4) そして洗い物をしつつ感じたのは、ああ、ここで仕事をするのだな、 という思いと早く替えの制服が届かないものかという気分的な焦りだったりして。 (未だに私はグスタフ氏のスペアを着ていて、私は内心、彼を”お父さん”呼ばわりしています) 何やら話によるとシャツは色が白なら何でも良いといいますから、 実家に頼んで高校生時代のものを送ってもらおうかしら? でも母に頼むと母型の実家である倫敦から −私に先ほどの自動人形に関する知識があるのは、 無論私が幾度か母に連れられて母のその都市訪れたからにほかなりません− 高級品を送ってきそうで怖いですわね。 でも、仕事場の環境はかなり整いました。 午後に一度買い物に出て、商店街から少し離れた量販店で色々と揃えましたから。 あと、そう、昨日のレポート提出で学生時代最後−おそらくはですけど−のテストはどうにか終了です。 これからはここでの日常がメインになるでしょう。 よく考えたら旅行会社って土日出勤なんですよね。 早い内にこちらの近くに引っ越しをしないとなりません。さて、どうしたものか、と。 まあ、悩んでも始まりませんし、バイト社員はそろそろ帰る時間です。 明日はもう一人面接があると耳に挟みましたけど、また私の出社前かしら? お茶くらいは出したいものです。 ※1 ……アイラム式。聖母をモチーフに作られたもので、欧州最古のタイプ。 一世を風靡したが現在は旧式。 ※2 ……心臓などの諸器官が人間のものに進化すると、この燃料も臓器の一種に進化して消える。 ※3 ……アレイポーク式。 完全進化を行うことを前提に作られたもので、今なおオーバースペックとされる。 ※4 ……義理堅いと言うよりも怖い性格かもしれない。
1999年01月30日(土) 遅刻 をしました。 ええ、土日だということを忘れていつも通りに家を出てしまい、列車の時刻を間違えた(※1)ためです。 寝坊ではないだけに何とも悔しいものですね。 早めに引っ越しの段取りをつけてしまわないと。 今日は一日中、自分の端末に必要なソフトをインストールしたり、事務用品の買い付けを行っていました。 ネットとマシンをつないだり、LANの設定で四苦八苦しておりましたところ、 昼頃に作業服姿の男性が数名やってこられ、それらの設備を代行。 聞くところによると−彼らに直接聞いたのですが−彼らは本日付けで社内の設備バックアップ班として 配属された方達で、人数は三名、二十四時間態勢で奥のマシンルームに籠もるそうです。 ひどく大変なことだと思います。ですけれども、 デトロイトと直結する大型サーバや各都市の情報をリアルタイムで引き抜くための端末など、 私やグスタフ氏だけでは手に負えないものがここには多く、 彼らの助けがあって始めて仕事が成り立つのです。感謝しなければ。 私がそのことを彼らに伝えると、彼らは三人とも皆、照れくさそうに笑って、 「仕事っすよ仕事! ウケケ!」 と何となくダークに(※2)言うのです。 よく見ると彼らは一様に背が低く、色白。 ひょっとしたら英国か欧州の山からやってきたブラウニーなのかもしれません。 だとしたら、お食事やお茶は差し上げないといけませんが、 作業着など洗濯すると怒られる(※3)のかもしれませんね。 一応、用心のために名前は聞かないでおきました。 妖精達のほとんどは名前を知られると現世にいられなくなるからです。 (これって一般常識(※4)ですよね?)
また、今日は変わった方が来られました。 昼頃に会社の前を掃除しようと表に出ると、自動ドアのすぐ前に一匹の雌猫がいたのです。 うちの−まだ来て四度目の会社なのに”うちの”というのは慣れ慣れしかもしれませんね− 愛車の自動ドアは感圧式−これだと霊体の客が入って来れないからいずれ交換すると グスタフ氏がもうしております。どうでもいいけど注釈が多すぎる(※5)かしら?−であり、 猫が乗った程度では開くことがないのですが、何とまあ、その猫は私を待っていたかのように、 ドアが開くなり社内に飛び込んでいこうとするではないですか。 これでも私、実家に猫を飼っておりますから足下をくぐろうとする彼女を背中から抱き上げました。 するとひどく暴れるので−グスタフ氏に未だ借りてるベストに引っ掻き傷をつけられても困りますので− 喉を撫でておとなしくさせたんです。 猫はしばらく喉を鳴らしてましたが何やら疲れていたらしく、すぐに寝てしまいました。 私は彼女を入り口際の日当たりの良い位置に置き、掃除を続行。 数分掃除に熱中して、ふと猫にはあとでミルクをやろうかなどと思いついたときです。 後ろを見ますと、何故かそこには猫ではなくて全裸の少女が。 一瞬、生まれて初めて頭の中が真っ白になりました。 反射的な動きで自分のベストを脱いで彼女に掛けて隠蔽工作の後、周囲を確認、目撃者は無し、 そのまま勢いで彼女を抱えて社内へ。 これで完全犯罪成立です。私、ひょっとしたら遺伝詞的に悪の才能があるのかもしれませんわ。 グスタフ氏が彼女を見て妙にあわてて何事かと問われたとき、私は全ての答えを叫んでいました。 「服を持ってきなさいっ!!」 グスタフ氏が俊速で奥のロッカーに飛んでいく姿は、 もうおそらく今世紀中に拝むことはできないでしょう。 彼のそういう献身的犠牲もあって、彼女は眠そうな顔で目を開けて、いそいそと服を着替え。 私のいれたお茶を飲む頃にはハキハキとした普段(おそらく)の態度を見せてくれました。 名前はEstima・Glace、字名はティーマだそうで、 肝心の種族はウェア・キャットとのことでした。 で、彼女が実は本日の面接者で、二階の英国方面案内所を担当するのだ、と。 なるほど。道理で綺麗な猫目をしているわけです。 今日はここに来る途中で犬に追いかけられて獣詞変(※6)してしまい、 荷物や着替えなど置いて逃げてきたとのことです。予定された面接時間はとうに過ぎているらしく、 また、今日は所長が急用で不在なことから面接は明日の午前となりました。 今日は私の小さい制服を来て帰り、途中で落として逃げた荷物を拾って帰るとのことですが、 はて、見つかるといいのですけど……。 何はともあれ、これで会社には常駐社員が所長や私も含めて七人ということです。 段々と動き出す準備が整いつつあるのでしょう。 今、カウンターの上ではグスタフ氏が”二月三日開店!!”という文字を白い紙に書いています。 彼が言うにはその日からこの会社−というよりも旅行会社という”店”なのですけど−が開かれるそうで、 明日から色々と技術的なことを教えてくださるとのことです。 しかしグスタフ氏は気づいてませんが、どうもその文字をマジックで書いているのに、 下紙を敷いていないような……。本日最後の仕事はカウンターの拭き掃除で終わりそうです。 シンナー塗料を落とすために私のマニキュア落としが使えたかしら? ※1 ……このことから察するに、土日に電車を使う遊び人ではないようである。 ※2 ……ある意味明るいのかもしれない。 ※3 ……欧州の妖精達は一貫して食事を喜ぶが、 洗濯や新しい服を与えられると仕事をしなくなり、いなくなる。 ※4 ……欧州の学校ではこういうことを教えてくれるのだろうか。 ※5 ……それを言ったらこのツッコミの方が多い。 ※6 ……オルタード。獣人が獣化することの他、遺伝詞崩壊で変形することも指す。
1999年01月31日(日) 今日は 遅刻しませんでしたとも、ええ。とまあ、こう書いてしまうとまるで遅刻日誌みたいですわね。 細かいこと(※1)にこだわるのはやめましょう。 午前中、端末を立ち上げてインストールされたソフトがどういうものかを確かめようとしたところ、 昨日の子猫さんがやってきました。 今日は所長も−相変わらずカブですが−いらっしゃるので面接です。 お茶を運びに行ったところ、随分と小気味よい話し方で所長と話してらっしゃるのが印象的でした。 まだ十六歳−ウェアキャットの精神年齢は人よりも遙かに高いらしいですから 実年齢はさほど意味を為しません−とのことでしたが、あの年頃の自分は、彼女ほど積極的だったかしら? 私は遅生まれだから五年前は彼女と同じなハズなんですが。 (こういうことを考えているのはフケてる証拠かも(※2)) 彼女は午後から二階の英国案内所に入り、中の片づけなどを行っており、今も作業中です。 英国案内所の制服−案内所の制服は、向こう側の旅行会社のものに準じる(※3)のです− が似合うこと似合うこと。元気のいいこともあり、ティーマという字名の彼女は既に私のお気に入りです。 さて、こうやって私の好みの領域にいる人ばかりが集まらないのは世の定めといえましょう。 やはり来ました、私の苦手なタイプの人が。 本日より二階の香港案内所に入っていただくことになった匪天の方です。 香港支社からの出向らしく、面接もなく、所長とわずかな言をかわしただけで二階に籠もってしまいました。 黒い長髪と、金と黒に色分けされた三枚翼(※4)を持つ女性。 紫色の匪天用スーツを着込んでいましたが、あれが向こうの制服とは思えませんし……、 ええ、ハッキリ言わせてもらうと、タバコ臭かった(※5)です。 私とは一言も口をききませんでしたし、お茶の時間になったので呼びに行ったら、 香港案内所のソファで寝てるんです!! 大丈夫かしら、あの方は。どうもソリが合わないですわね。 今度所長に彼女のことをハッキリと聞いておきましょう。 と、陰口じみたことを言ったら疲れました。 よく考えたら向こうの方が先輩なんですよね。出向(※6)してきた社員なわけですし、 それにこの会社は私の居場所かもしれませんが、私だけの縄張りでもありませんし。 ソリが合わなくとも頑張って共同生活を続けねば。 さて、今日もバイト事務員は五時上がりです。二階のティーマ嬢も誘って一緒に帰ろうかしら? でも今日は帰りに駅前の不動産屋に寄って物件を見なければいけないし……。 ああそうでした。グスタフ氏に私の新しい制服が届いたかどうかを確認しないと!! そんなわけで今日はここまでです。明日は疲れるようなことがなければいいのですが。 ※1 ……細かくない気がする。 ※2 ……こういうことを言うようになったら危険である。 ※3 ……よって案内所ごとに制服が違うため、三面図が起こしにくい。どーしたものか。 ※4 ……奇数枚数は匪天と思われがちだが、 正式天使であるパワーも11枚という正式記述があるため一概には言えない。 ※5 ……女性の煙草については何とも言えないが、男女構わず、 調理と食事の際はやめて欲しいものである。 ※6 ……香港は1996の香港洞復興以降、外貨を稼ぐのに熱心なようだ。
1999年02月01日(月) さてさて ひどく大騒ぎです。 何が騒ぎかと言えば高機能化変換器の調整に手間取っていて昼食もとっているヒマがない、 そんな状態ですわ。理由は簡単で、今年からPCのOSが一気に新しくなったというのに、 変換器を動作制御するために使うドライバが旧OS仕様(※1)だったためです。 変換失敗はかなりまずい事態(※2)を引き起こしますし、何しろ開業をあと二日後に控えているわけで、 とにかく対処せよというのがやはり高機能化後の所長でした (所長自身はどこで御自分を変換なさっているのでしょう?) そんなわけでまずは高機能化変換器を作成した会社に新ドライバのMD(※3)を 郵送していただくよう頼んだのですが、発送に時間がかかる上に今は日本語マニュアルが無いとのこと −当社社員はかなり国籍豊かですが、実は統一言語として使えるのは英語ではなく日本語なのです。 これは所長が英語を話せないためでいやはや、何と言うことでしょう− で結局ドライバソフトはデトロイト経由でDL。 マニュアルに関してもデータをDLして会社のプリンターでプリントアウトです。 今はマニュアルの370ページ前後を出力中で、と、いけません、新しい社員の方の面接? まだ内容チェックも終わってな、 13:00面接・14:30再起動・15:00お茶(できれば) どこかで一度DLのお礼状。←忘れずに。 「本日二信」 そろそろ定時なので帰ります。 今日は本当に大騒ぎでした。まさか一息つくための御茶の最中に私の新しい制服が届こうとは!! さすがに今日は着れませんが、明日からは本当に本当の自分の服です!! ちゃんとベストの襟の裏には自分の名前が、と思ったら、 「ああ、幸江って入ってるから」 とは所長の弁! 一体いつから私は日本人になったんですの!? 何やらアルファベットを手書きではなくてプリントアウトして送ったら、 仕立屋さんが気を利かせたようです。そういう好意の空回り(※4)なら怒っても仕方がないですわね。 でも、嫌な顔はしません、さっきも香港案内所の−相変わらず名前を知りません−彼女に、 「胸を今よりデカくすりゃあ(※5)、またベスト替えれるから、 その時に名前をちゃんとしてもらったら?」 などと……! どうにもやはりソリが合わない気がします。 どうなんでしょうね? さて、今日はクリーニング屋に寄って、借りっぱなしのグスタフ氏のベストを出して帰らないと。 追伸 今日の面接は日本人の子でした。 名前は富田林・讃華と言う子で左腕につけた義腕がチャームポイントでしょうか。私を見ての第一声が、 「私の先輩になる方やね!?」 と、ひどく明るい声だったもので、何故か思わず照れました。 なお、高機能化変換器は今夜中に三人組の彼らが、 「どうにかするさあハハハー」 だそうです。奥のマシンルームの前にケーキでも置いておこうかしら。 ※1 ……よくあることである。 ※2 ……ヘタをすると字我崩壊。飛行機と同じで、万が一の事故は発生する。 ※3 ……MDロムが主流だが、いずれDVDやMP3式になるのかもしれない。 ※4 ……意外と誰かが裏で手を回している可能性は高い。 ※5 ……あまり高望みは宜しくないと思う。
1999年02月02日(火) 引き続き大騒ぎ というわけで新しい制服を着込んで早朝から高機能化変換器の調整です。 この機械のウリは高機能化状態を現実世界でも行えると言うことで −実は所長が日常において高機能化状態を保っているのはかなり特殊な事例であって、 相当に高価な機材を所有しているに違いありません− 普段ならデトロイトの電詞世界上でのみ可能なインストール作業を 依代言語の代行体を用いて現実世界でも行える、ということです。 これが可能になると現実世界でも一度に数十の処理が行える上に、 電詞アクセスが機械を介さずに可能になるため、私たちのような事務関係の者や、 各地にアクセスすることが必要な案内役は大いに助かります。 だけどこれを扱うのは、どうも私だけになりそうな気配。 操作を間違えると大事になるだけに、免許制度が必要とか騒がれていなかったかしら、去年あたりに。 でもまあ、預かったからにはきっちりと使いこなして見せましょう。 コピー用紙のマニュアルも昨夜の内に自宅で読破しましたし、根性も寝グセもバッチリです。 明日までに一度、自分で実験してみるべきかしら? さて、今日は昼から各案内所の人たちが全員集まり、 所長から色々な−営業マニュアル的(※1)な−ことの説明を受けていました。 香港案内所の彼女は相変わらず所長の説明などどこ吹く風という雰囲気でしたが、 既に業務経験者ゆえに仕方のないことなのかもしれません。 独逸案内所の自動人形さんは、今日、久しぶりの出社です。 相変わらずの無表情ですが、独逸案内所の制服を着た姿はひどくぞくりとする美しさ(※2) を持っています。また、今日、初めて彼女の名前を聞きました。 ヴァイベルクと名乗っていましたが、独逸語では何と書く(※3)のでしょう。 多分、私の故郷で使うアルファベットの並びとは違うでしょうね。 大阪案内所の富田林さんには所長からキーボード型の義腕が贈られました。 かなり大きめですが、アクセントとして可愛いと思います。 また、ティーマ嬢はどことなく警察調の英国案内所の制服を着てます。 獣詞変することを考えてストッキングをはかないのだとか。異族(※4)も大変ですわね。 何はともあれ当分はこの四人が主力。私はグスタフ氏とともに一階で受付の処理や経理、 または彼女達の補佐です。頑張らないと。 余談。 言ってもないのに実家からシャツが届きました。 それもサイズが一回り大きいものが。 困ったものですね。ダーツでも入れてサイズを合わせて使おうかしら? でなければ全部寝間着用になります。まさか、食べれませんし。 ※1 ……できればマニュアルではなく本心的に応対していただきたいものである。 ※2 ……精緻な人形を美しいと思うのは西洋的な感覚であって、 東洋的では無いのは美術の教科書で言われるとおり。 ※3 ……Wybergと書く。 ※4 ……グラソラリアン。架空と思われるような存在のこと。 広く見ればヴァイベルグも神も異族である。
SATIE日誌 ■二章 『疲れてませんか?』 “JOURNAL de SATIE” SATIE BRANCHE
1999年02月03日(水) 本日開店!! などといさましく言っては見たもののひどく多忙(※1)です!! 本日はもう既に30人近くのー、また後で続きを!! そういうわけでお昼です。 今日は家でお弁当を作ってきて正解でした。 気づいてみると学生服姿の子(子、とか言って、私は何歳なんでしょう)が多く、 そう、日本ではこの時期にもう春休み(※2)状態になっているのでしたっけ。 今、中に入って来た高校三年生の子達はこれから卒業旅行だと言ってますけれども、 ここは主に海外中心の旅行社だと解ってるのでしょうか。 ひょっとして、こういうことが普通で、私が時代遅れなだけなのかしら?(※3) そりゃあ私は巴里にいたくせに海外はこの日本留学が初めてー、 ええ、はいはい、どうやら休憩中という札が見えないお客さんがいるようです。 私もお弁当を広げずにこうやってペンを取って −仕事中に見えるのではないでしょうか−いるのが悪いんですけどね。 お昼はまだ先になりそうです。 さて三時のお茶です。 内線電話で全ての案内所に連絡を取ったところ、何とまあ誰もかれも, 「動けない」 とのこと。上は大騒ぎみたいですわね。下も、です。 とりあえず近くにいるグスタフ氏やマシンルームの三人組にはお茶を出しましょう。 そして戻ってきたらまた仕事でしょうね。今、お客さんの 数は50人を越えました。予想以上です。 しかし、いつになったらお昼を食べれるんでしょう? 現在午後四時。 結論。 昼御飯は家で食べます。 そろそろ終業時間です。 有線を日本の曲、何やらもの哀しい曲に合わせて床掃除。 すると−閉店の−事態を悟った女の子達が、 「またねー、オバサン」 などとにこやかに帰っていきました。ええ、悪気なさそうに。 はい、悪気は無いのだと思いますよ、ええ、天地神妙の神に誓って。 だけど、 「また、っていうのと、オバサン、ってのは何事!?」 神よ彼女たちに悪気のない天罰を!!(※4) とにかく疲れました。 二階のティーマ嬢が降りてきて、御茶を所望しているので慰めてあげましょう。 彼女もかなり参っているようです。 今日は一緒に帰りたいのですが、 彼女、グスタフ氏のベストをとりにクリーニング屋に寄るのを我慢してくれるかしら? 今日は風が強いですし。 ※1 ……開始当初は日に10人でも来れば恩の字とか言ってたことが懐かしい。 ※2 ……欧米では学生の年度は九月開始の八月締めであり、夏休み休暇が日本の春休みにあたる。 ※3 ……不況というのは嘘ではないだろうか。 ※4 ……意外と年齢を気にするようである。二十歳越えるとそうなうのだろうか。(失礼)
1999年02月04日(木) 先日の お客様は130人前後だったという噂です。 今日も朝からあわただしく、日誌を上手くつけられそうにありません。 どうにかして方法を考えないといけませんね。 ああ、よく考えたら私ってまだバイト学生なのに −給料は時給ではなくて社員給と同じ支払いになるらしいですが− 何故にこんなあわただしい日常に突入してるんでしょう。 昨夜、友人とのいつもの長電話を途中でやめた理由が、 「御免なさい、明日、朝が早いから」 ですって。 上手く嘘でもついて、 「今、彼からキャッチホン入ったから」(※1) とでも言えないものなのでしょうか、と、 これは日誌であって愚痴の固まりをこさえる紙面ではありませんね(※2)。 はいはい、今、向こうのロビーで恰幅の良いおじさんが灰皿を床に落としました。 昼前だというのに掃除です。 さて、昼頃からまた学生さん達の数が増えてきました。 今も隙をうかがってこれを書いているのですが、すぐに激戦になりそうな気配です。 しかし、今の学生さんは私服で、随分と大人っぽい、とか思っていたらそれもその筈、 私と同じ大学生(※3)もいたのです。 そう、学生というイメージから高校生ばかり目についていたのですが、 今の私もまだ大学生で、普通の大学生ならば、 今は−私のように仕事にかからず−お金のかかる旅行などと一つ洒落込むのでしたっけ。 何となく、自分は損をしているのかもしれないな、などと思います。 私服の彼らから見たら、制服を着てここで仕事をこなす私は同年代に見えず、 制服という記号論から導き出される、 「受付の店員」 でしかありません。私にとって彼らが、 「学生でも大人でもない人達」 に見えたのとは逆に。 とか考えていると気分がめっぽう暗くなって手が遅くなりますね。(※4) 愚痴は述べたし現状は目の前にしかありません。 私が制服を脱いだところでカウンターの仕事は消えもしませんし、 事務のトナーやインクの汚れで私服を汚す気もありませんもの。 シャキっとしましょう。 ああ、制服と言えばグスタフ氏にベストを返さないと。 今日はまだ来ておられませんけど、何かあったのかしら?
グスタフ氏は今日、お休みでした。所長も。 社内掲示板を探ってみるとメールがどこかに引っかかっていたらしく、 本日休みを知らせる約六時間遅れのメールが私に届きました。 開業二日目で休むとは良い度胸ですこと。 でも、メールによると何やら会わねばならない人がいらっしゃる(※5)そうで、急な用件らしいです。 そういうわけで、 実は本日においてこの会社の最高責任者は私、と、かなり危険なことになっているようですわね。 でも御安心を、昨日と同じようにお客様は”丁重に叩き出しました”し、従業員の方達も大体帰りました。 今、社内にいるのは陽気な唄を詠いつつマシンルームに籠もるあの三人組と、私、 そしてロビーのテーブルに御自分の腕を置いて整備なさっているヴァイベルクさんです。 無口な彼女がほの暗いロビーで綺麗な右腕を −まるで映画に出てくる刀工のように−ながめすがめつしているのは、妙に絵になります。 話によると、気づいたときには−まだ痛覚を完全に得られていないそうなのです− 右の中指と人差し指が動かなくなっていたらしく、 どうもここ二日にわたる書類めくりなどのハードワークがたたったものと思われます。 ご自宅で修理(※6)されたらと問うと、 「利き手が右だから、いつもの重いバッグを持って帰られない」 とおっしゃいました。左手で、と思いましたが、厳格な理律を持った独逸の方のようですし、言いません。 それよりも驚いたのは、自動人形であるのに利き腕を理解されてる細やかさです。 自動人形というと欧州ではそれほどでもありませんが米国では差別用の玩具扱いなどもされており、 ええ、ハッキリ言えば私も彼女ほど常に自分の近くにそういう存在を置くのは初めてです。 でも、偏見は今回でやめましょう。 私がサイズの合わない制服を嫌がったように、彼女の荷物を持つ手は右手なのです。 今日は彼女の修理が終わるまでつきあってから帰ります。 鍵? 施錠はあの三人組が連日泊まり込みなのでいらないそうです。 夜に唄を詠いながらコンビニに向かうのでしょう。 一応、昼に激戦を抜け出して買ってきたケーキ−商店街に可愛い店があるのです−を マシンルームの前に置いておきましょう。 ロビン・グッドフェローに宜しく、と。 どうやら修理が終わったようです。 ヴァイベルクさんが乗る列車は上りと下りのどちらでしょうか? ※1 ……こういう才覚は男性よりも女性にあるような気がする。 ※2 ……ついでに言うとウケを狙う場所でもないのだが。 ※3 ……なお、SATIEの通う大学は神奈川県にあるという設定。 ※4 ……しかも、あとで読んで恥ずかしくなったり意味が解らなかったりする・ ※5 ……後々の展開から、エータ女史と遭っていたのだと思われる。 ※6 ……このことからヴァイベルクの腕はまだコッペリア効果で 人と同様のものになっていない機械腕だと解る。
1999年02月05日(金) 所長と グスタフ氏が朝から社屋の掃除などしていました。 昨日の私の仕事に対する無言の感謝でしょうか。こう言っては何ですけど、 男の方がゴマをするように働く姿は少々みっともないと思うのと同時に 可愛くておかしい(※1)気もします。 さて、本日もまた盛況です。 どうやら一日にいらっしゃるお客様の数は約130人前後ではないかという数字が割り出せました。 その数が多いか否かは他との比較がないので解りませんが、 就業時間の9時から5時までの8時間で割ると、一時間あたり約16人。 無論、その人達の皆がカウンターに席を求めるわけではなく、 広告を持って帰るだけの人もいれば友人づきあいで同道する人もいます。 と、どうやら激務三日目にしてようやく戦場を観察する余裕が私の中に生まれて来たのかもしれませんね。 あとはいかにしてちゃんと昼に御飯を食べるか、です。 また、朝一番でやってきたヴァイベルクさんが私に初めて挨拶をしてくれました。 というよりも、あの方が誰かに挨拶をするのを初めて見ました、私は。 何かあったのでしょうか?(※2) たまたま昨夜は列車が同じ方向で (彼女は東京大断層北部に住んでいるらしく、 空の見える丘の上に制作者の御家族と住まわれているのだそうです) 色々な雑談をしたのですが、 笑っているのは私ばかりで彼女には詰まらない思いをさせたと感じてるのですが。 でも、挨拶がいただけたことに甘えず、つきあっていこうと思います。 午後、大阪方面の富田林さんが、 「そろそろこっちが忙しくなるかもしれへんなあ」 などと言ってカウンターの椅子の追加を発注されていきました。 所長に申請しないと。 そろそろ終業時間ですが、ちょっと気に入らないというか、眉をひそめるようなことがありました。 詳細は明日。今日書くとひどいコトを言ってしまいそう(※3)です。 ではまた明日。 ※1 ……こういうことを平気で言うから男性は女性にかなわない。 ※2 ……考えすぎ。やや神経質なのだろうか。 ※3 ……そう言うときに抑えるのは良いことだが、今までに結構言いまくっていたような気もする。
1999年02月06日(土) 今日は などと冴えない書き出しで始まってしまいました。 今、午前中、就業時間直前です。でも、どうしましょう。 実は私、二階にある香港案内所の彼女−ソウ、という字名らしいです−の 休暇願いを預かった(※1)ままなのです。 ええ、昨日終業間際にあったいざこざがこれで、彼女の言い分にしてみれば、 「連続六日勤務してっから、そろそろ休みが欲しくてね」 とのことです。 言い分は解ります。 ですがそれでも今は開業して四日目という時期で、私だって今日で、えーと、連続九日目です!! (何だかこういうマークを二つもつなげるとひどく威圧的に見えますわね) 他の皆も働いてますし、グスタフ氏などは私が面接した以前よりここに詰めてる筈です。 私はそういう理由をちゃんと−子供に言い聞かせるように−彼女に話したのですが、 彼女は聞く耳を持たずに帰ってしまいました。 念のため、彼女の良心のことも思って休暇届は私の預かりとしておいたのですが、 このままでは来ませんわね、彼女。 一応、就業時間まで待ちます。 それでも来なかったならば所長にこれを提出して、 二階の案内所にCLOSEDのプラカードを下げましょう。 一体、どういう神経をしているんでしょうか。 午前中、どうも不機嫌だったようでカブの所長に注意されました。 不機嫌の原因は、出社してきません。 でも、不機嫌ですと御客様にも悪印象を与えます(※2)。 会社にとっては今が大切な時期ですし、笑顔を心がけないと。 しかし、お昼になってこれを書いているのですが、今日はお客さんが非常に少ない気もします。 「受験シーズンに入ったので、学生という世代の間に流れる空気が変わったのだ」 とはグスタフ氏の意見です。一瞬、 「この会社に皆が興味を失ったのかも」 と考えました−それは科学的に述べて私の就職先消失の可能性が高くなると言うことです。 って全然科学的じゃないですが−が、忘れましょう。 午前中の段階で御客様は40人、午後も同じ程度でしょうか。 だとすると、ソウ女史は運が良かったのですね。 これが忙しいときでしたならば多数の御客様を逃すことにつながり、私は噴火していたかもしれません。
そろそろ終業です。今日は落ち着いた日でした。 毎日がこうだと良いのですが、激務である方が会社にとっては良いのですよね? 何だかモヤモヤしたものが胃のあたりにつかえてる気分です。 私達は普通の感情と行動として一つのことを望むのが普通なのに、 何故かそれのできない人がいるのです。 巴里の駅では見かけませんが、 日本の駅では”禁煙”と書かれた看板の下で平気な顔して喫煙する方がいらっしゃいますね?(※3) これは何が悪いと言えるのでしょうか? 私が細かいのかしら? よく解りません。そして私には注意するだけの気概もありませんし。 さて、私が不機嫌だったせいか。 今日はカブの所長が線路向こうの商店街でフライドチキンなど買ってきました。 今、私の足下、脚を冷やさないための電熱ストーブの前に24ピース入りの箱が樽よろしくおいてあります。 終業して表にCLOSEDの看板を出し次第、 皆でパクつく−なんて行儀の悪い表現でしょうかね−としましょう。 でも所長、これでご機嫌をとったつもりでしょうけど、 これのための御皿や御茶を用意したり、後片付けをするのって私の仕事なんですわ。 やれやれ、どうして男の人ってのは考えが甘い(※4)のでしょうか。 そう甘いから食い物にされるんですよ、と。 ※1 ……色々言いつつ結局破り捨てもしないで預かっているのをみると、お人好しな傾向大。 ※2 ……接客業はこれが大変なのである。 ※3 ……巴里では法律によってゴミのポイ捨ては罰金である。 が、それは街角にゴミ箱など用意されてる国だからこそ。 ※4 ……甘いというか、単純なのか。
1999年02月07日(日) ひどく 憂鬱な朝です。 ええ、理由はというとまあ、女ですので、ええ、そういうことで。(※1) いつもなら日曜日と言うことで家で寝続けるものですが、仕事と あればそうもいかないものですね。 社会人のつらさというものを文字通り”身をもって痛感”してます。 でも、憂鬱の原因はそれだけじゃありません。 何しろ朝、遅刻寸前でやってきたソウ女史の陽気なことといったら、 ええ、こちらが毒気を完全に抜かれてしまうほどでした。 私が、 「昨日は大変でしたのよ」 と言うと、 「アレ、おっかっしいなあ、悪い悪い」 などと気軽なものです。あの罪悪感のなさと身軽さはやはり背中の翼(※2)から来るのでしょうか。 よく理解できませんし、今日はその気力もありません。 しかし、今日も御客様は午前中だけで40人前後です。 午後も入れると80人前後ではないでしょうか。段々と流れが落ち着いてきたように見えます。 参りました。 昼で客足もひいたのでちょっと外に出ます。 十分ほど、線路向こうの薬局です。 一丁向こうの商店街にも薬局。午後五時まで。 相変わらず下腹が重いというか、落ちていく感覚があります。 しかし困ったことに、グスタフ氏が落ちていく私を引き上げもせず(※3)に そのまま新設備の掲示板(※4)の管理法を説明するものですから非常に困りました。 とにかく向こうのおっしゃることをメモにとり、あとはそれを明日にでも読んで確認する事にしました。 自分自身に対して非常に嫌になりますね。ここまでひどいのは久しぶりです。 その説明を終えた後でこの出張所のパンフレット用の写真撮影ですって!! もう少し先に言ってもらえれば−どうしようもないですわね、体調ですから。 撮ってもらった写真(※4)はすぐに加工されここを押してこのようになった後、 減色したのをうまく縮小して使うそうで、しかし、無理に笑ったのがバレますわね、これ。 また、夕方に今度はヴァイベルクさんが休暇願を出してきました。 ですがさすがに今日は愚痴を言う気力もないです。 そのまま直接所長に渡すように言い、私は帰り支度です。 メモした薬局が5時ジャストに店じまいしなければ良いんですが。 地元は駅の近くに薬局が無いんですよね。困ったものです。 ※1 ……詮索は無しということで。なお、結構各所からツッコミがあった。 ※2 ……ソウの翼は三枚。一本は両肩胛骨の間の背骨から生えている奇形のため、 ソウはやや猫背である。 ※3 ……引き上げるという行為は結構男女間のアレな気もするが、疲れているがゆえの発言としよう。 ※4 ……今は違う写真が使われている。
1999年02月08日(月) 何でしょうか ひどい二日目です。 どのくらいひどいかと言えば、今がもう終業時間を過ぎてることと、 いつの間にか目の前のカウンターに富田林さんとティーマさんの休暇願い −富田林さんが、明日で、ティーマさんが明後日です−が提出されてることでしょうか。滅入ります。 言いたくないことですが−弱気ですね−疲れが溜まってるのだと思います。 情けないことに緩やかな大学生活ゆえに休日は必ず来るというルールが体にしみこんでる(※1)ようです。 今日は昨日のことも考えて会社に来る途中で−商店街の雑貨屋(※2)で−膝掛けなど買ってきました。 昨日は薬局が既に閉まっており、薬も買えなかったのですが、 昼まで堪えれば向こうの商店街まで脚を伸ばせるし、少しは楽になる筈、ええ、その筈でした。 迂闊だったのはカウンターで仕事をしているために立つ動作が多く、膝掛けが役に立たなかったことと、 今日は午後からひどく寒かったということです。 午前中の間から、気づくと立ったまま数分が経過していることがあって危険な兆候があったのですが、 午後になってふと椅子に座ってから動けなくなりました。 所長さんが声をかけてくれたのに対し、上手く事情を説明することもできず、 「ちょっと立ちくらみで、何でもありませんから」 と言うあたり、私って間違いなく母親譲りの強がり女です。 気づいたときには、軽く肩を叩かれてました。 やってきたのは私服のヴァイベルクさん。 何事かと思いつつも何も言えない私に、彼女は、 「奥様に用意してもらいました」 と、薬の入った薬包を三日分、紙袋に入れて手渡してくれたのです! 何たることでしょう!! 彼女が今日休んだのは、この薬を用意してもらうためであって −何やら夜間のみという時間制限付きの儀式や、 昼過ぎにしか咲かない花などが必要(※3)なのだそうで。 だとしたら彼女のいう奥様とは神術師か魔女の家系なのでしょう− 昨日の私の様子を見て、こうせねばと思ったらしいのです。 ありがたい、しかしお人好しな話ですね。 よく考えたら休暇を一日潰して他人の生理現象につきあっているわけですもの。 でも、正直、助かりました。 彼女はすぐに帰り、私は今、こうして文章を書いてます。 ペンを動かしていると、 ありがたかったことが本当にありがたく説得力をもって自分に刻まれ、残る気がします。 少し気分的に余裕が出てきました。 終業したために座りっぱなしで膝掛けが正しく機能してるからでしょうか。 少し家のことも書きます。 実家に、引っ越すかもしれないと言うと、すぐに大騒ぎの手紙が返ってきました。 でも、第一番の話題が今私の使っている部屋の壁街を剥がす方法についてだなんて、 巴里っ子の母らしい手紙だと思います。まだ引っ越すかどうか決めておりませんのに。 では、明日も滅入るかもしれませんが、できるだけしっかりしたいと思います。 ええ、しっかりしますとも!! ※1 ……定期的に休めないと言うルールも間違っている。 ※2 ……籐の座布団とか、そういうものを扱う雑貨屋で、 グラスなどは豪奢なものや派手なものしか手に入らない。 ※3 ……ヴァイベルクの屋敷の婦人は英国育ちなのかもしれない。
1999年02月9日(火) 朝起きたとき 真剣に休もうかと思いました。 それをしなかったのは昨日の決意と、ベッドのサイドテーブルの上に置かれた薬包と、 そして朝の刺すような冷気です。 さすがに三日目となると体がだるい程度ですし、一度、シャワーを浴びてから(※1)出社してきました。 午前中の一休み。 本日は富田林さんが休みです。 朝、会社に来た時、私の机の上のファックスに彼女からのメッセージが届いてました。 内容は−おそらく−本人が今更になって照れるようなものだったので、書き記すわけには参りません。 午前中の御客様は約60人。 また客足が増えてきたのでしょうか。 いえいえ、午後の様子を見てからその疑問を持つことにしましょう。油断は禁物です。 午後。気づくと寝てました。 椅子に座った姿勢でカウンターに肩を寄せると−骨格上の問題でしょうか? よく解らないのですが−ひどくハマる(※2)ようなのです。 新しい発見、などと軽口を叩けるのはようやく体調がもとに戻りつつあるという証拠です。 そう決めました。 しかし、後ろを見るとグスタフ氏がわざとらしく咳払いなぞして見せますし、 結構な時間を寝てしまったようです。 そうそう、気分が少しずつ上り調子であると自分で思えるならば、 今の内に掲示板システムについて色々と試して見ましょう。 と、マニュアルを読破してると(変な日本語ですね)変わった御客様(※3)がいらっしゃいました。 若い男の方ですが、何やら私達の仕事に興味があるようで−何らかの調査員の方でしょうか− 色々とご質問をされて、どうやら二階の案内所も回ったようです。ですけど彼ってば私の名札を見て、 「幸江さんですか……」 ですって。久しぶりにおかしく笑いそうな気分になりましたが、 やはり一階受け付けという顔役である以上、威厳を持って接しました。 でも彼、今日はどこの案内所に向かったのでしょう。 大阪方面は今日お休みですから、ひょっとしたらまた来るのかもしれませんね。 さてさて、今日はこんなところで。 帰りには久しぶりに深夜スーパーに寄って食料品などを買わないと。 近頃はあまり歩きませんでしたし、疲れが溜まっている今、食べないと尚更体の調子を悪くしますからね。 ※1 ……風呂でないのは、色々と疲れているからである。 ※2 ……こういう場所との運命的な出会いというのは確かにある。 ※3 ……各案内所の描写に出てくる”彼”が、その人である。
1999年02月10日(水) 掲示板が もう大騒ぎです。 学校が早く終わった学生さん達が、掲示板の端末を見て色々と書き込んでいるようです。 掲示板の良いところは、 私達が直接的に何かしなくても皆が自分たちで端末を操作してくれるところですね。 「オバさーん、日本語どうやって打ち込むのー?」(※1) はいはい、私はおそらく貴女達と5歳も違わないし日本語変換のやりかたも知りません!! 今日は所長がいるのでー、 「俺が表に出てどうする?」 ですか? じゃあグスタフ氏にお任せしましょう。 「なるほど、では、君にやりかたを教えよう」 って私が憶えて対処しろ、と? うちの男性陣は若い女の子がお嫌いなんでしょうか?(※2) などと意地悪は言わないで了解しましょう。 いずれ、御客様も憶えられて質問などなさらなくなると思います。 と、思っていたら質問が多くてお昼が食べられません。 えーと、額に寄せた皺って痕が残りやすいんですよね。 しかし今日は受付が非常に混んでます。 二階ではティーマさんがお休みでしたけど、これならさほど支障はないかと思います。 さて、そろそろ終業です。 御客様の数は史上最高(というのも変ですわね)の210人となりました。 悪夢? いえいえ、快夢というべきでしょう。 しかし、色々な人が書き込んでいきます。 たとえばー あ 父さんが んと しかし田舎の 雰囲気が 言うべきで 泣 仕方ない 寝てました。 何やら妙な書き込みしてますね。夢でも見てたのでしょうか。 今、七時です。二時間も寝ていた(※3)ことになります。情けない。 でも、今日は体調も良かったので幸いでした。いつもより遙かに御客様と接する機会が多かったので。 と、何やら奥の部屋の方からソウさんがやって来ました。 ええ、よく寝てましたとも、言われなくても(※4)解ってます。 まだまだ未熟ですから。 さて、今日は帰りが遅くなりそうです。 もうスーパーに寄ってられる時間ではありませんね。 夕食が心配ですが−自宅は相模原にあるので夜遅くまでレストランがやってます− 快気祝いも兼ねて豪勢にいきましょうか。 では出発、……ってこう書くとこの会社が自宅みたいですわね。 それでは。 ※1 ……未だにこのあたりがコンピュータの関門のようである。 ※2 ……嫌いではなく苦手という人間は多い。 ※3 ……結構、無防備な娘である。 ※4 ……何か言われたらしい。おそらく、ソウ自身にとっては些細なからかいだと思われる。
1999年02月11日(木) 大阪応援? 何だか所長が妙なことを始めました。 ええ、カブ−それ以外に造形的表現(※1)ができません−の所長が、です。 よく考えてみますと所長と真面目に話すのは面接以来のような気もします。 今日はそのお仕事を間近で見れるのですから、何となく好奇心がうずきますわね。 はい、その後の経過は入り口の大阪応援部署(※2)に書き込みました。 何やら富田林さんの担当するOSAKA方面が旅行フェア(※3)らしく、 その加速のためにポスターやら何やらを色々なところに張り付けて回ってるのだそうです。 受付で統括事務の私にはあまり解らないことですが、各案内所は各案内所で色々と仕事があるのですね。 しかしうちの所長は……、と、言うのはやめましょう。 バイトの身ですし、それに今回叫ぶだけ叫んだら−なんとまあ野蛮なことでしょうか!− 何となくお近づきになれた気もします。 お昼です。御客様が少なくなったと思ったら雪なのですね。 グスタフ氏がどこからか持ってきたスコップで店前の道路の雪かきを軽快に −今、転びました−やっております。私も手伝おうかと言ったのですが、 「これは大人の男の仕事だ(※4)」 ですって。やや考え方が古いような気もしますが、確かに月に三日も体調不良になってみたり、 実家からシャツを送ってもらってるようではそう言われても仕方ないかもしれませんね。 グスタフ氏が戻られたらすぐにコーヒーをいれられるようにしておきましょう。
午後がヒマだなんて珍しい日です。やはり雪の影響でしょうか。 こういう時、仕事があればいいのですが、 とりわけ何もないので日誌を書いて時間を潰すこと−これも仕事なのですが−にします。 昨夜は相模原の深夜スーパー(マルショーでしたっけ? マークは憶えていても名前を憶えてません)で 何とか買い物をし、そのまま家に帰らず、グリル料理が自慢のレストランで夕食をとりました。 近頃、家であまりものを食べていなかったせいか、 お肉や脂物が食前酒の導きだけですんなり体に入っていきました。 そういえば実家では母がよく分厚いステーキを焼いたものでした。 母のような古い人の言うところによれば、 「多くの観光客がフランス料理と思ってるのは宮廷料理で、 本来のフランス料理とはアメリカにも負けない肉とかパンの豪快料理のことなのよね」 だそうです。宮廷料理に対する郷土料理と言ったところでしょうか。 ええ、よく考えればフランス料理に欠かせないとされるワインも、もともとは郷土酒なんですよね。 宮廷料理にワインが組み込まれたのは、 やはりフランスの人間は宮廷の人間ではなく、フランスに住む人だということでしょう。 しかし気になったのは、私が食事をしている最中、後ろの席にいた若い男性三人組が何やら、 こそこそと会議を行っていたことでしょうか。 「ドウジンシ(※5)」 などという暗号のような単語が飛び交っており、 会議がずっと真剣な雰囲気を漂わせてるところから見るに、犯罪の匂いがします。 と、昨夜はそんなところでしょうか。 細かいことがあったとすれば、ベッドのシーツをスーパーで買ってきた新しい白いシーツと取り替えました。 取り替えた原因は、とまあ婦女子が書くべきものではなりませんね、自分用の日誌であっても。 さてさて、グスタフ氏が戻ってきました。 今日はこのまま帰宅になだれ込みそうです。 列車が雪で乱れてなければいいのですが。 ※1 ……アヒルという意見もあった。 ※2 ……当時はOSAKAの宣伝広告を貼り付けていた。 超極小バナーと超大型バナーがウリだった気がする。 ※3 ……OSAKAゲームを見ていると解るが、そろそろ最終戦大詰めである。 旅行フェアはBABEL観戦ツアーだろう。 ※4 ……グスタフは真面目なので、着替えもろくに用意してない婦女子にこういう仕事はさせないらしい。 ※5 ……エッセイの同人戦線第二撃を参照。
1999年02月12日(金) 今日もまた 静かな日です。午前中からこうやって落ち着いて日誌を書いてられるのは久しぶり。 そろそろ学生さん達が受験やテストに入るからでしょうか。 朝、列車(※1)の中は混雑してたのですけどね。 しかし、昨日の雪も朝の段階でほとんど残らず、路面は水びたしです。 迂闊にも雪用のトレッキングシューズを履いたため−それがまた丈の短く動きやすいものなので− かなり水が跳ねました。 ストッキングに水がしみると、なかなか抜けないし蒸れるしで大変なんですよね。 今、御客様がいないことをいいことにカウンターの下でシューズを脱ぎ、 脚をストーブに向けてます。(※2) 前にもやったようにカウンターの角に肩をはめて脚を伸ばすと、 カウンターと一体化したような気分が味わえます。 グスタフ氏がそんな私を見て、たびたび何かを言おうとして、 それでも言うのをやめてしまうのは何故でしょう? まだお昼でもないし……。 と思ったらグスタフ氏の机の方からでは、 私がそうやってストーブに当たっているとスカートの中が覗けるとのことでした。 そういうことはわざわざメールで送らなくてもいいんですのよ!!(※3) さしてすることもなく終業時間です。 何かあったとすれば、午後にまた三十分ほど寝てしまったことでしょうか。 御客様が少ないので気が抜けたようですね。あまり良いことではありません。気を引き締めないと。 さて、今日から商店街はバレンタインセールです。 そういえば近くのケーキ屋が特売をしていたようですから、 買ってきて奥のマシンルームの三人組に差し上げるのが吉でしょうか (何だか変な言い回しですわね、私が使うと)では、帰り支度をしてから出てみましょうか、外に。 追伸 ケーキを買ってきたのですが、 マシンルームのドアの前にはも既に一つ、小さなケーキの箱が置いてありました。一体誰が? 私が寝てた30分の間でしょうか? 何となく妙な話です。 ??? ※1 ……都市世界では”電車”と言わない。 蒸気機関や言詞関係の機関の方も並列存在しているからである。 ※2 ……いつもは結構歩き回る仕事のようだ。 ※3 ……しかし、口に出して言われるとまた別の怒り方をすると思う。
1999年02月13日(土) 寝ました あ、いえ、変な意味じゃ無いです、 と書いておかないとあとで自分で見直して仰天しますわね、このタイトル。 午後−これ、終業後に書いてるのです−御客様が少ないな、 と思っていた頃に、二階へ上がる階段から猫が慌てて降りてきたのです。 それがティーマさんであることは解ったのですが、何故に獣詞変をされたのか。 その理由は二階に上がってみてすぐに解りました。 私が昼に二階の皆に持ってあがったコーヒー、それが倫敦案内所の床にぶちまけられていましたから。 コーヒーをカウンターから脚にこぼしてしまい、びっくりした(※1)のでしょう。 カウンターをグスタフ氏に任せてモップとバケツを持って掃除です。 倫敦案内所には幾人かの人が来ており、今回の騒ぎにややどよめいていましたそう、 日本では異族ってあまりいないのでしたよね。 私が日本語で何がどうして起きたのかを説明すると、 皆さん、何となくではありましたがわずかな苦笑とともに理解されたようです。 「可愛いね」 という女の子の声もしましたから、今回のことは悪印象ではなかった(※2)ようです。 で、問題はそのあとに起こりました。 掃除の片づけを行い、消臭用の府を床に貼り、 そして倫敦案内所のドアにCLOSEDの看板をかけたまではよかったのです。 獣詞変したティーマ嬢を膝に乗せて喉を撫でてる間に、つい、寝てしまいました。三時間も。(※3) 何てことでしょうね。まだバイトの身分だというのに。(※4) 起きたのはティーマ嬢の獣詞変が私の膝の上で解けたからで −それがなければもっと長い時間、寝ていたかもしれません− 今度はカウンターのあたりが大騒ぎになりました。彼女、裸ですから。 とりあえず眠くてふにふに言ってる彼女を慌ててカウンターの下に隠してから −彼女に比べて即座に動ける私は高血圧(※5)なのでしょうか− 着替えを持ってきたりとまあ、高校生の頃、私の母は毎朝私を起こすときに、 「手が掛かる子ねえ」 と言っていましたが、成程、言いたいことが解ります。 ええ、よく解りましたとも。今度高校生になったら早起きしますわ私。 このドタバタで私が寝てたことはうやむやになってしまいました。 誰も起こさなかったのも悪いと言えばそれまでですが、しかし、それだけではなような気もしますし、 そうであった原因はやはり私がバイトの身分だからでしょうか。みそっかす? どうなのでしょう。 とりあえず今日は残業です。 でも、受付嬢には残業しても基本的にすることがありませんので残ってる人達の御夕食やお茶くみです。 そうそう。先ほどは外で果物を買ってきてマシンルームのドアの前に置いて来ましたが、 今日は先に誰も供え物をしていませんでした。 昨日は一体誰がしたんでしょう? さて、奥で何やら唸っていた所長が出てきました。 御茶をいれたらそろそろ帰ろうかと思います。もう九時ですし、今日は少し感情が疲れました。 ※1 ……ティーマが獣詞変する理由は、やはり驚きのようである。 なお、落ち着くと獣詞変するタイプもいるのかは謎。 ※2 ……ほとんど見せ物扱いな気もするが、ファンはつくかもしれない。 ※3 ……本当によく寝る娘である。 ※4 ……正社員だから寝て良いというわけでもないが。 ※5 ……瞬間的沸騰型なのだろうか、だとしたら喧嘩はしたくないものである。
1999年02月14日(日) バレンタインの日本的風習 というわけで、やはり日本では男尊女卑の象徴(※1)として 2/14日には女性から男性に貢ぎ物をしなければならないようです。 しかし、それがまあ、日本円にして¥100。 フランで言えば5フランと少々の貢ぎ物で満足されるのですから、 日本人の殿方は少しばかり御自分を安めに設定されてる気もします。 とはいえ、私も一応は見栄と芸術の街である閉鎖都市−巴里の人間ですから、 何も渡さないとか、ちっぽけなものを渡してその場を良しとするのは納得が −母は倫敦の者ですが、彼女に染み込んだ巴里気質が見事に私に遺伝したようです−いきません。 うちの男性陣は所長とグスタフ氏。 その御二人に敬意を持って貢ぐ−何だか嫌な言い回しですわね−ならばということで、 既に用意万端、昨日ケーキ屋に赴いた折り、チョコレートケーキを丸で一つ注文してたのです。 今はそれが冷蔵庫に冷やしてありますが、午後の御茶の時間に切りましょう。 これならば皆がチョコレートを買ってきても品としてかぶりませんし、処理は楽な筈ですね。 と、業務報告。 本日はお客様の動きがあまりありません。 やはり受験シーズン到来ですか。 失敗しました。 グスタフ氏は御医者様から酒と甘いものを停められている(※2)そうです。 しかも他の皆が買ってきたものと言ったら、 ・ティーマ嬢 「チョコクッキー」=皆で食べた方が良いから。 ・富田林さん 「ホットチョコ」=安かったし皆で飲めると思って。 ・ヴァイベルクさん 「チョコレートアソート」=皆がつまめると思ったので。 ・ソウさん 「なし」=当社に渡せるような男性無し故(※3) とのことで、皆、なんてまあ他人思いなんでしょうか。 そのくせに、皆さんホットチョコだけ持って二階へ戻られるとは!! 所長が呼んでます。 「食うの手伝え」 はいはい解りました。私も責任がありますからね。 でもこのクッキーとアソートの封を切ったのは誰です!?(※4) 開けなければ何日かは置いておける−冷蔵庫に入れると脂が浮くので入れられません−ものを!! とりあえず自分で買ってきたものの責務は果たすと言うことで、 今夜は夕食分もここで食べていくことになりそうです。 でも所長がおどかします。幸江さんはまだニキビの年齢だっけ? とか 言って。 ええ、まだ”吹き出物”とか言うような年齢じゃないですよ、と。(※5) しかしまあ、男性一人にケーキを全て片づけろとは言えませんし、皆は二階へ逃げてしまった −ヴァイベルクさんは”味覚がまだ発達してないので勿体ない”と冷静な表情で言いましたが、 それはどこまで本当でしょうか−わけですし、ここは一人で頑張らないと。 これで体調崩したらどうしましょう? ※1 ……言われてみると確かにそうう儀式である。 ※2 ……普段、ろくなものを食っていないらしい。 なお、グスタフ氏が未婚かどうかについては女性陣の間でよく論議される。 ※3 ……良い度胸である。 ※4 ……ティーマのように思えるが、ヴァイベルクが淡々と開けてしまった可能性の方が高い。 ※5 ……言っている時点でそうではないだろうか。
1999年02月15日(月) 体の調子が 何となくというか、かなり深刻に危険な状況です。 やはり昨日の暴飲暴食がいけなかったのでしょうか。 肌は重いし胃はもたれたままだし、気のせいか髪質もよろしくない(※1)ようです。 午前中からこのような気分ではいけませんね。 今日は朝から掲示板をご使用される方が多く、にぎわっています。 とりあえず笑顔を作る心構えをしないと。 昼です。食欲がありません。 ティーマさんがお昼御飯を食べに行く時、 ついでに、ペットボトルの紅茶(※2)と胃薬を買ってきていただきました。 これが今日の昼食だなんて、おかしいですわね。昨日はあれだけ食べたのに。 バランスが崩れてるみたい。 そうそう、今日は所長がお休みです。 何やら会わねばならない人がいるのだとか、 女性、という話をグスタフ氏から聞きましたが色っぽい話−何てえ言い方でしょうかね−ではなく、 デトロイトの本社から見聞役が来ているのだそうです。 どんな方でしょうか。 でもまあ、みそっかすのバイトには関係ないことかもしれません。 いけないですわね、昨日とは打って変わって暗いですわ私。 とにかく薬を飲んで一息つきたいところです。 薬を飲んだら、また寝てしまいました。 ええ、怒られました、今回は。(※3) それだけです。(※4) ※1 ……食生活として慣れないものを食べると、すぐ身体の外に出るそうである。 ※2 ……日本人が烏龍茶を飲むのと似た感覚か。 ※3 ……誰に怒られたかを書いていないところを見ると、 グスタフ氏ではなく、ソウに怒られた可能性が高い。 ※4 ……こういう書き方をするのは、それだけだとは思っていない証拠ではないだろうか?
Jounal de SATIE
1999年03月02日(火) 小旅行気分 今日は出社するなり所長から一つの小包を預けられました。 「それを持って調布に行くように」 話によるとイータ女史が今日でまず香港支社へ査察に行くのだそうです。 それでどうやら、以前ここに来たときに忘れ物をしたらしく、 それを早急に届けねばならないとのことでした。 調布まで急行列車で十五分。近いです。 すぐに私は調布方面行きの列車に乗っていきました。 待ち合わせの場所は調布の中央にある大空白のそば、船を空に飛ばすための空港のエントランスです。 この調布の大空白は東京オリンピック時に作られたもので 地上東京唯一の地上式水港”大空港”の基地でもあります。 調布近郊の空間をごっそり”大空白襲”と同じ要領でくりぬき、 蒼円空間を人為的に作り出したのだそうで。 空と海の同一観念によって、この空間を通せば空にでも海にでも船を送ることができるとのことです。 イータ女史はここから船に乗って香港行きの空の旅をするのでしょう。 私がエントランスにたどり着いたとき、既に次の船が出ようとするところでした。 イータ女史はブラウンの地味なコートに赤い唾広の帽子をかぶって私を待っていました。 笑顔が印象的でした。 イータ女史は私から荷物を受け取り、時計を見て、礼を言うと、更にはこのようなことを言いました。 「今度会うときには、色々と話すことがあるでしょうね」 そのセリフに意味があるのか否か、私には解りません。 ただ、しっかりとした返事だけはしました。 「今でも話したいことがあります」 と。 しかし、その願いはかなえられませんでした。 イータ女史はまた小さく笑って軽く手を挙げ、さよならです。 私は空港から外に出て、大空白の青い闇に船が出航するのを見届けました。 遠くに星空さえ見えそうな不思議な空間。青空の下に一部だけ広がった海と言うべきでしょうか。 くりぬかれた空白は自分が空なのか何なのか 解らずに、自分に似たものの特性を含んだ蒼円空間となるのです。 空でも海でもない空間。 気づくと手の届くところに稚魚の群が泳いでいました。 手を伸ばすと逃げ、ひっこめると寄ってくる。そんなことをしている間に船が出ていきました。 帰社してみるとすでに午後。 所長にイータ女史と会った胸を告げると、所長のそばにいたグスタフ氏が、 「彼女は何か言ったかね?」 と問うてきました。 私が先ほどの短い会話を伝えるとグスタフ氏は何も言わずにうなづき、そのままです。 何かがあるべきだったのでしょうか? よく解りません。
何かがあるべきだったのでしょうか? よく解りません。 今日はそういう流れで午後まで仕事をしなかったので、自主的に残業をしてみました。 夜九時までのコースです。 八時には店を閉めるのですが、 やはり、仕事の後に片づけをする作業があると一日の仕事を終えた気になります。 今日は色々とありました。 でも一つ気になるのは、イータ女史のことです。 あの荷物は何だったのか、どうしてグスタフ氏が彼女を気にするのか。 そして何やら私が少し関係している気もするのですが。どういうことでしょう? まあ、考えていても解る筈がございません。 今度イータ女史に会ったら色々と聞くことにしましょうか。 さて、今夜は友人の家に電話しなければなりません。 そろそろ学校の卒業式が近いのです。
1999年03月03日(水) 受験らしいです 学生さん達が一気に減りました。 テストや受験と言った話題が備え付けの掲示板システムに多く書き込まれ、皆の忙しさを証明してます。 御客様が忙しいと私達は暇になるようで、今日は昼前に事務用品の買い出しにいくこともできました。 他も色々と買い込みましたが、今回最大の買い物はスリッパでしょう。 カウンターの内側というものはつい掃除を怠ってしまう場所で、 雨の日などは足跡が残ってひどいことになります。 各案内所はどうなさるか知りませんが、一階ではきちんと靴棚も用意し、準備万端です。 ちなみに私は城でグスタフ氏は青、所長は黒を選びました。 ティーマ嬢は赤を選び、富田林さんは緑、ヴァイベルク女史とソウさんは取りませんでした。 スリッパを履いていると足音がいつもと違って不思議な気分です。 この音はそう自宅で仕事−自宅でもスリッパを履くのです、私−をしているような錯覚を起こすのでしょう。 一階で私とグスタフ氏と所長が同時に歩くと、なかなか騒がしくて妙な感じです。 追記 昨夜は友人から電話がありませんでした。 ひょっとすると私が寝た後にかかってきたのかもしれません。 昨夜はひどく寝付きが良い日だったので。 今夜、こちらから掛けてみるとしましょうか。
1999年03月04日(木) 友人から 会社に電話がありました。私用はやめろと言っておいたのですが、緊急だったようです。 明日、卒業式に着る和服(何て言うんですか? ハカマ? それ)を仕立てに行くとかで、 私に着いてきて欲しいと。 その理由がなかなかふるっていて、 「御給料出たんでしょ?」 タカりかあ!? などと叫んでも仕方ありません。 こういうわがままもきいてあげられるのはもう最後かもしれませんし、 保護者的友人としてはなるべくつきあってあげる所存ですわ。 いや、別に嫌気があるわけじゃあ、……ええ、ありませんとも。 今日はやはり御客様が少ないです。 私のように卒業式を待つ人達もいれば、悔い無き卒業のために頑張っている人もいるのでしょう。 後悔。 そういうものは自分の学生生活の中にあったのでしょうか、 などとひどく重たいことを午後の暇な時間に考えてみました。 この日本に留学する際は、かなりそれを言われた気もします。 何しろ一学年というまだ甘ちゃん−変な表現ですね−の時点で留学してしまったのですから。 「基礎を学んでからでなければ何の役にもたたないよ」 そう言われた事実は自分にすぐにふりかかりました。 何しろ大学生活をほとんど過ごさず留学したために、慣れがない。 ゼロから全て仕切らねばなりません。 色々と苦労したな、と思います。 結局、留学前に言われた、 「基礎」 をこちらの大学で学び直し、一年時でとりきれなかった単位を全て終えたのは三年の前期終了時でした。 そのとき、留学生は、 「二年間以上当地にいるならば、当学校に編入できる」 というので迷わずそうしました。このときも色々と言われた気がします。 ですが、その結果として私は今ここにいますし、後悔をしてません。 何事も、やればできてしまう。それを私はこの留学で学びました。 基礎がなければ得ればいい。 簡単なことです。 もし後悔があるとするならば、 やらないでも良いという生活をもはや選択できなくなってしまったという、そのことでしょうか。 女ですからね。 慣習に則ってしまえば、大学という執行猶予をおさめたあとは家庭に入るという道もあった筈です。 しかし私はここにいます。 色々とありましたが、ここにいますし、ここは−おそらくですが−私を受け入れてくれている気もします。 その意味で言えば学生時代の後悔というものは、少なくとも、大学においてはございません。 ここではどうなっていくのでしょう? もしかすると、学生時代よりも長い時間を過ごす場所です。 答えは出ています。 やればどうにかなるのでしょう。そういうことです。 そんなことを今日は考えていました。 明日は休みをとろうと思います。 そして、明後日も。 ひょっとすると三日後も休みになってしまうかもしれません。 ええ、女ですので。なるべくどうにかしますけど、ね。
1999年03月05日(金) 和服を買いに 友人と八王子に出ました。 友人の話によると八王子は昔から絹の生産地なのだそうで、 黄八丈や黒八丈という布が作られているのだそうです。 友人と二人でデパートなどを回り、呉服屋に入って品定め。 気づいたら自分の分まで注文させられていました。 私の場合は髪が金髪なので −日本人でもたまに染めてる方がいますが、和服を着るときには皆、染め直すそうです− それを引き立たせ、なおかつ色を沈ませないようにオレンジの上と朱色の袴となりました。 かなり派手だと思います。いいんでしょうか? なお、この注文で御給料の三分の一が飛びました。今月は早くも節制です。 相模原の駅で友人と別れ−彼女は横浜方面です−スーパーに寄って見ましたが、 飛んでいったお金のことが気になってあまり大きな買い物ができません。 しばらく考えながらうろついていると、大熊座の星団が賑やかにやってきて、 鍋物セットなどを買っていきました。 夜空の星達が矛盾都市−東京ではなく神奈川で買い物するのを見るのは初めてです。 立ち寄った際に軌道計算を少し誤ったのでしょうか。 彼らが去ったあと、やや消毒アルコールじみた匂いの残るスーパー内を歩き回って 幾つかの安価で強力なものを手に入れました。 地元の農家−ハテ、このあたりでそれを見たことがありませんが、 商品を納めているからにはどこかに存在してるのでしょう−の方が作った生蕎麦。 蕎麦粉が五割入って二人前で¥140。 蕎麦つゆと一緒に買って、家で茹でました。調子に乗って水に通し、ザル蕎麦です。 味は良好、茹でる時間をもっと研究すれば、もっといい味になると思われます。ええ、研究しますとも。 つけあわせはやはり湯通ししたほうれん草。マヨネーズでいただきました。 で、蕎麦は一人前が茹でられずに残ったので、それは蔵庫にしまって、また今度。 いやはや出費と倹約の重なった日でした。これからも気はぬけませんね。 明日も休みです。色々と今後のことを考えてみましょう。
1999年03月06日(土) 明日も 休んでしまいそうです。 理由は先月と同じですが、やや軽めだと言えましょう。 昨夜に冷たいものを食べたせいか、お腹のあたりに憂鬱が固まっているような感覚があります。 噂では、高機能化してしまえばこういうことがなくなるので、 月に三日ぐらいずっと高機能化している人がいるとも聞きます。 ですが、私なりに言えばこれはやっぱり自分の身体が自分にとって必要だからしていることなので、 それを拒否するのはいけません −こういうことを言うから陰で”真面目すぎる”などと言われるのでしょうね− とはいえ、会社つとめも始まるわけですし、少しは”寝る”以外の対策を考えたいところです。 腹筋運動とか、意味があるのでしょうか? あ、別にやせたいとかそういうわけではなくて。 いやはや。 午後になってから小包が届きました。 配達員の方が受け取りに出た私を見て何やらあたふたしていたのですが、 よく考えたら寝るときは実家から送ってきたシャツ一枚とショーツのみなんですよね。 とはいえシャツが大きいから中身は見えてないはずなんですが、殿方とは不思議なところがあります。 さて、荷物は実家から送ってきた、今日のような日のための薬です。 何やら実家の方で販売されたらしく −薬品物は規制が強いので検閲をうけはずですが、よくまあここまで来たものです− 母が拙い娘に送ってきたというわけですね。 中身は二種類。 母親の弁に寄れば、 「あまりきかないけど、死ぬほど眠くなる」 「かなりきくけど、幻覚を見る」 どうも欠陥商品にしか見えないのは気のせいでしょうか。 飲んだら寝ろ、そう言っているようにしか見えません。 とはいえお風呂も入れないわけですし、早めに寝た方がいいかもしれません。 夕食に昨日の蕎麦を茹で−今日は暖かいものにして−食べたら、飲んで即寝てみましょう。 では、今日はこれで終わりです。 追記 よく考えたら配達員さんが来たときはお腹を押さえていたので前が全開でした。 殿方には不思議なことはありませんでしたと言うことで御容赦を。 い、何かラリリ 困ったことに 指が八本に見え いやこれは 父の 骸 ケ 頭 薬がきいて 外は 朝日 血が 獣詞変 。
1999年03月07日(日) やはりお休み 朝目覚めたら5:00でした。 ボーっとしたまま四時間そのまま動けませんでした。理由は簡単。昨夜の薬のリバウンドです。 かなりラリっていたらしく、なぜかベッド脇のサイドテーブルに水を浸した中華鍋がおいてありました。 何をやってたんでしょうか昨夜は。 9:00くらいになってようやく意識が戻ってきたのですが、今度は身体がうまく動きません。 どーしたものでしょうか、などとボウっと考えていると、 何故か手が勝手に動いてベッド脇の電話をつかみ会社へ直通。 「ええ、そういうわけで休みます」 って一体どういうわけなんでしょうか。たまたま所長が、 「あーはいはい、休みね」 などと適当に相槌うって下さったから良いものの、他の人だったら何が何だか解らなかったでしょうね。 しかも困ったことに、電話の受話器を置くところまで手が動かず、 受話器を私の額の上に落としてそれっきりなんですけど。 どうしたものでしょうか。 二度寝をして、起きたらもう14:00です。 身体がダルいなりにも動いたので、台所の片づけをしました。やはりかなりラリっていたようです。 冷凍庫は空きっぱなしだし、レンジには溶けるチーズの山が溶けて固まってます。 何がしたかったのでしょうか? 午後は半ば作業的に掃除をしました。 特にまあ、色々あるわけで、床掃除は大変です。途中、シャワーも浴びてさっぱりして、更に作業。 夕刻から買い物に出ようかと思いましたが、食欲もあまりないので洗濯に入りました。 精燃の配達さんが来たので買おうとして、つい寝間着で外に出そうになって慌てて戻り、 着替えようと思ったらすぐに着れる服が全て洗濯中であることを思い出してアウト。 どうもまだ頭がまともに働いてないようです。 精燃は明日、近くのスタンドに買いに行くとして、今日はコタツに脚を突っ込んでじっとしてます。 下腹の調子もよくなりつつあるようですし、明日には元気に通勤できるでしょう。 しかしまあ、本当によく効く薬でしたこと。 捨ててしまおうかと思いましたが、どこでどうこぼれて大騒ぎになるか解りません。 危険物過ぎて一生保管して、私だけの秘密にすることになりそうです。 夜にいきなり思考が冴えてきて夜食をとりたくなりました。 いきなり−午前1:00だというのに−コタツのテーブルから顔をあげたとき、 部屋の冷たさを肌に感じ、自分の集中力に気づきました。 回復したのでしょう。それもいきなり。 これが薬の効力でしょうか? とにかくレンジの中にあったチーズ−結局冷蔵庫にしまいなおしておいたのです−を ブロック上に切って鍋へ。そして同時にパンを焼きつつ、チーズを焼き、ミルクとワインを注ぎます。 これで簡単なフォンデュの出来上がり。 冷蔵庫の中にあった野菜はバターで焼き、余ったチーズに投入して食べれる ようにします。あとはオレンジジュースを用意して終了。 かなりの高カロリー食品ですが、ここ数日の回復を考えると丁度よいでしょう。 食べつつお風呂も沸かしておきましょう。 久しぶりに気分が良好です。ええ、大丈夫ですとも!!
1999年03月08日(月) 三日ぶりの 会社でした。 昨日も休んでしまった−以前に日曜日は出勤してくれと言われていましたので−ことを所長にお詫びです。 早速ソウさんに嫌味を一ついただきましたが、今日は絶好調なので気にもとめません。 随分と剛胆になったものですね、私も。 なお、今日は富田林さんが休みです。 話によると6日に大阪で騒動があったらしく −私が寝ている間です− 富田林さんは早退して大阪に向かったそうです。話では明後日まで帰らないとか。 色々と世界は動いているようです。 今日はミーティングを終えてから女連中が集まって昨日の私のような問題を話し合いました。 ソウさんは適当に相槌をうつ役で、私はティーマ嬢の質問に答える役、 そしてヴァイベルクさんはじっと話を聞く役です。 色々と、ああいう時にどうするかという話をして、 まあ、殿方には聞かせられないようなことを言い合ったのですが、 よく考えるとこのメンバーでこういうことを話すのは、ええ、皆で集まって話すのは初めてな気がします。 富田林さんも戻ってこられたらすぐに会話に加われるでしょう。 色々と話して、皆が驚いたのは、ヴァイベルクさんにまだその機能が無いということでした。 確かにそれって自動人形の方から見たら、 「子供を生みたいと真に願う」 ことが必要な状況にならねばいけません。 まだ視覚もない彼女にして見れば、もしかすると、こういう知識を得たのも初めてだったかもしれません。 その割にはかなりスゴイことを言ってましたね、私。言葉を選べば良かったのですが。いやはや。 しかし、何となく、良い日でした。良い日でしたとも。 明日からは暇なときに皆が集まって私の御茶を飲んでくれそうな、そんな気がします。
1999年03月09日(火) 花を 商店街のご婦人方からいただきました。 話によるとこの会社が出来たことに対する一月遅れのお祝いと、 私が休んだ後の全快祝い−やはり解っていたのですね、あの頃疲れてたことが−とのことです。 花は今、ロビーのテーブルの花瓶に活けてあります。 不思議なものですね。 自分が知らないところで自分は誰かに自分以上の視点で自分をみられているのだと思います。 気が抜けないと同時に、また、それはとても快く気を落ち着かせてくれることではないでしょうか。 ええ、そうですとも、きっと。 さて、今日は大家さんから会社に電話がありました。 桐箱に入った大きな荷物が届いたので、忘れずに帰りに管理人室へ寄って欲しいとのことでした。 和服が届いたのでしょう。 そう、卒業式は18日です。 早いものです。19日から4月の1日まで、私は学生でも社会人でもない一人の人間になるわけですね。 友人は皆、卒業旅行とか言ってますが、 私はまあ、自費で家賃などを捻出することもあり、贅沢はしません。 大体今月は和服のせいでいきなりピンチですしね。 いやはや。 さて、ティーマ嬢が帰ろうと言っています。 それではまた明日。
1999年03月10日(水) 大忙し と思ったら、どうも午前中だけのようです。 午後はゆっくりと会社の事務の整理をしました。 近頃、日にいらっしゃる御客様は130人前後で安定してます。 どうやらこのあたりが平均数値、といったところでしょうか。 多いのか少ないのかはよく解りません。 ですが、時折私が忙しくなったり、暇になったりするのは、 上下のバランスがとれているということですわね。 さて、今日は御茶の時間に近くの八百屋で買ってきたグレープフルーツを剥いて出しました。 実家の方では割って出すのではなく、房から出してお皿に並べるのですが、 こういうやり方でグレープフルーツを食べるのは珍しいようです。 今日はそんな話題から皆に質問を受けました。 よく考えてみると、西欧系の異邦人で、 なおかつ料理などに詳しそうなのといえばこの会社では私だけなんですよね −グスタフ氏が詳しいとは思えませんし、 ティーマ嬢はそういうことにあまり興味がないようですし、 ソウさんは香港の方ですし、 ヴァイベルクさんはこちらに来てから意識が得られたそうですし− そういうわけで話は近頃話題のワインのことに移りました。 もともとワイン自体は単なる果実酒なのですが、 「誰に尊ばれたかで食品の運命とは変わる」 ものです。 広大かつ手間のかかるブドウ園を持ってこその貴族。 そしてまたブドウはそれのみでお酒のもとになる水分を容易に(他の果物と比べて、ですが) 絞り出すことができますし、濁りが少ない。 そういった要素から葡萄酒が果実酒として優れている、ということになり、 貴族達のおのとなったのでしょう。 麦飯と白米の違いはまず見た目と言いますが、それと似たようなことかもしれません。 皆が驚いていたのは仏蘭西にはワイン以外のお酒も多く存在するということでした。 当然のように、地中海沿岸は果物の宝庫ですから、 仏蘭西は南部を中心に果実酒が多く存在するわけです。 ちょっと酒屋を覗けば苺やオレンジといった、ちょっと日本では見受けられないお酒もあります。 逆に、ビールなどは少な目です。 「仏蘭西人は苦みに旨さを認めない子供のようなものだ」 と言ったのは独逸の誰でしたっけ? そんなことを色々と話していられるのも、やはり女連中だからだろうなあ、と思います。 今日は珍しくソウさんと言葉を良く交わしました。 彼女、結構飲むみたいです。ええ、そうでしょうとも。 でなければ今朝、二日酔い醒ましの仁丹を噛んでの出勤などしないでしょうに!!
1999年03月11日(木) 雨です 今日はひどく寒いです。昨日は雨の中に少しは晴れ間が見えたのですが、 今日は容赦のない天気でした。 ただ、それにしては御客様の多い日です。おそらく受験シーズンが終わるのではないでしょうか。 そしてまた、新しい季節が始まるのですね 忙しい中、今日は変わったものを見ました。 お昼過ぎにいきなり区役所の方から第二警報が鳴り響いたかと思うと、 環八の方に出る道路をアーミーの駐屯軍が駆け抜けていきました。 商店街の皆さんも雨の中、八百屋さんやパン屋さんのショップルーフの下に集まって大騒ぎをしています。 御客様も皆が外に出て行くので、私も−所長から許可を得まして−傘をさして外に出ました。 空。 厚い雲のかかる空が異様に暗いです。 何事かと思っていると、雨の中を走ってきたティーマ嬢が空を指さして教えて下さいました。 「はいがるど!!」 視界に広がる空一面の黒さは、雲だけではなく、それの影だったのです。 そう。第二次世界大戦で建造された「ガルド級」の飛行戦艦。 独逸にて六艦建造されたそれは、 そのほとんどが威力を発揮せずに連合軍の化学兵器で内部の乗員がいなくなりました。 が、化学兵器を用いて倒した最大の理由は、 「攻撃力故に近づくことさえかなわなかった」 からと言われています。 ティーマ嬢は、 「お爺さんが戦ったことあるんだ、あれと」 と教えて下さいました。ガルド級飛行戦艦の最大の特徴は自立航行と戦闘が行えることで、 乗員を全て失った六艦は、 「あてもなくただ戦うために空をさまよう」 のです。 以下はティーマ嬢からのお話です。 ガルド級飛行戦艦には幾度も米軍を筆頭とする列強軍隊が戦闘を挑みましたが、 全て完膚無きまでに叩きのめされています。 タチの悪いことに装甲に喪失技巧である強回復型紋章を使用しているらしいことと、 わずかながらも重力制御がつかえるために格爆弾の直撃さえものともしなかったとか。 十二年前に太平洋上で「みっどがるど」と「あーすがるど」が激突して、 両方とも海に沈んだと聞きます(その折りには近くの島が根こそぎ消えたそうです) 今や誰もガルド級飛行戦艦に喧嘩を売るものはおらず、 たまにトレジャーハンターが中の喪失技巧を求めて火傷をするそうです。 おれら、現在動いている四艦は少しずつですがその軌道を上にあげつつあるそうです。 噂ではあと3000年もしたら大気圏外に出るとか。 きっと、独逸軍が大天蓋の向こうに置いた第三の月に行きたいのでしょうね。 なお、はいがるどは三十分ほどで東京上空を通過しました。 グスタフ氏の話によればスケール速度的に見て異常な速度なのだそうです。 氏は子供の頃にガルド級飛行戦艦のプラモデルを作った話などを −珍しく−楽しそうに話して下さいました。 殿方はいつになっても子供ですわねホントに。 しかし、かつてはああいうものを作る技術が存在したのですね。 私はその存在を生で見るのは初めてでした。ひどく驚きました。 人は今、進化してるんでしょうか? はてさて、夜に蕎麦を茹でようとか考えている人間の思うことではないですわね。
Jounal de SATIE
1999年03月12日(金) 新聞を 読む一日でした。 気になったのは昨日の”はいがるど”のことです。 何故それが気になったのかと言えば、欧州にはやはりラグナロク伝説が伝わっていることと、 そして何よりもその存在感に興味を得たからです。 会社で取っている新聞にははいがるどの進行コースが地図上で示されていました。 はいがるどは東京南部側、神奈川沖からゆっくりと群馬、新潟方面へ抜け 今日の昼には日本海を北上するとのことです。 昨夜は群馬の山に戦車隊やVTOLが構えて大騒ぎだったそうで −はいがるどは自分に接近するものを無差別攻撃するので、 標高の高い場所を敵とみなして砲撃する恐れがあるのです− 新聞では山裾に布陣する戦車隊の写真が載っていました。 不思議ですわね。 あのガルド級飛行戦艦は、もはや私達の世界では作れないものです。 書簡都市−プラハ(漢字では”符等”でしたっけ?)の最下層、 地下6000キロの位置に喪失技巧の設計図群が隠されたと聞きますが、 溶岩を越えてそれを取りに行くワード・ロケッティアもおりますまい。 あの飛行戦艦は、おそらく、山や雲と同じように、もはや私達が作り得ない自然環境の一種なのです。 不思議な感覚ですわね。 人が作ることが可能だったものが、もはやかなわず、まるで神のように扱われる。 一昨年は香港で竜が生まれて大騒ぎになりましたが、あの竜もやはり喪失技巧です。 難しいことを考えているというのは、解ります。 旅行会社の社員が何を考えているのかと、身分不相応な思考だというのも解ります。 ですが、思うのは、 「この世界はどういう形をしているのでしょう?」 そのことです。 私は自分自身を夜の街と比較して見つめ直しました。 同じように、この世界は、夜の街なのではないでしょうか。 そんなことを思います。 空より広い飛行戦艦は私達を無視して動きます。 彼−と言って良いかは解りませんが−と自分を比較するのは馬鹿なことなのでしょうか。 そして考えます。 私は旅行会社の社員です。 世界を調べる必要が、あるのかもしれません。 いつか。いつでもいいですから。 この世界の多くを知り、自分がそこでどうあるべきなのかを考えたいと、 そう、社会人になってない人間は思います。 ええ、思いますとも。 かつて美術の先生は、ものの見方を教えて下さいました。 昨日のはいがるどは、私にとっての”球”の一面であった気がします。 これからもそういうものを、どれだけ見つけていけるでしょうか。 はてさて。
1999年03月13日(土) 13日の土曜日 タイトルに意味はございません。 今日は会社の近所の惣菜屋さんでコロッケが美味しそうだったので大量に買い込み、 ミーティング時のおかずにしました。商店街が近くにあると便利ですわね、こういう時って。 変わった惣菜屋さんで、毎週毎週新しい揚げ物を一つ作って試したり、 今までの商品と入れ替えたりするのだそうです。 家の近所でしたならば、揚げ物だけではなく、 一緒に並んでる鮭のマリネやらヒジキなどを買って楽しむのですけどね。ええ、家庭的ですのよ、私。 今日、アーケードに並んだのは”マヨ玉子コロッケ”でした。 中には荒く練った卵サラダとハムが入っており、意外と軽く食べられます。 食べ方も人それぞれで、ヴァイベルクさんが箸を使えたことに驚きました。 前にも蕎麦を食べるのを見ていたのですが、今回のように皿にとった上で割って食べるなど、 ええ、かなり驚きです。 なお、ティーマ嬢は手づかみ −英国では路上にこういうフライやチップスを売る商売がかなりあるんだそうで− でサクサク食べますし、ソウさんは箸で普通に食されます。 なお、明日は休みを取ることになりました。 これは私のミスで、ついうっかり今日お休みを取るはずが、忘れていたのです。 明日には富田林さんが戻ってくるとのことで、それと入れ替わりです。 このミスでソウさんから嫌味を言われ、つい言い返してしまいました。 ホントは自分が悪いのですが。いやはや、あの方には何故か強くあたってしまいますわね、 どうしたものでしょうか。 やはり第一印象なのでしょうかね……。
1999年03月14日(日) 友人と 買い物に出ました。 先日のはいがるど事件などを話題にしていたら、友人が一言。 「今日、会社の方が良かったんじゃない?」 「何故?」 「ホワイトデー。……私みたいなのと一緒にいていーのかアンタ」 しまった。 確かに今日は町中にアベックが多いと思ったら、すっかり日本的慣習を忘却して休日に酔ってました。 「社会人ねー」 と友人はからかいますが、確かにそうかもしれません。会社の感覚でいると 「会社の日常」 に捕まって、 「世間の日常」 とはずれてしまうんですよね。気をつけておかないとトシをどんどんとっていってしまいそうです。 しかしまあ、街はよく見ると本当にホワイトデーで −嘘のホワイトデーがあるとは思えませんが−賑わっています。 買い物でデパートを覗けば欲しい色の帽子などが安いのですが、友人曰く、 「オトコが買うために安くなってんのよ」だそうです。世の中ルールが複雑ですわね。 昼食をとらずに午後半ばまで街を歩き回りました。 友人に夜の街を歩いたことがあるかと問うと、無いと素直に言われて言葉を継げなくなったり、 月を見上げた歩道橋を渡っては足を止めたりと、私はどうやら過去に生きる女のようです。いやはや。 そのまま彼女を家に招いて近頃凝ってる蕎麦を茹でて食べました。 友人は私が箸を自由に使えることに驚いていましたが、 ヴァイベルクさんのことを告げると更に驚いていました。 日本の人にとっては異人が箸を使えることは驚きに……というか、私も昨日はそうでしたね。 それから友人を駅まで置くって、 実はひそかに一人でさっきのデパートに行って欲しかった帽子を買いました。 ええ、安く買いましたとも。 こういうところが段々と実家の母に似てきたと思います。 そうそう、実家の方に蕎麦を買って送りました。 パスタがゆでれる環境ですから、蕎麦も何とかなるでしょう。 麺ツユは保存を考えて粉末タイプにしました。 母のことですからアパルトメントの隣室の方達を招いて蕎麦湯までちゃんと作るでしょう。 今日はこれからお風呂に入って寝ます。いつもは疲れているせいか、 お風呂は”浸かる”という気分ですが、今日は心地よい疲労だけです。 一人暮らしですし、子供のように飛び込んで見るとしましょうか。
1999年03月15日(月) 逆バレンタイン なかなか圧巻です。 会社に来たら机の上にマシュマロの箱が五つ。しかも大箱。 何事かと思いましたところ、昨日のホワイトデーで、 所長とグスタフ氏と三人組の方々が皆で同じようなものを買ってきたと、そういうことのようです。 はてさて、これはどうしたものか。 大阪から帰ってきた富田林さんにお土産の通天閣置物をいただき、 それをカウンターに飾っていたら、御客様の何人かが大阪フェアか何かと思ったようです。 午後から大阪方面行きが混雑しました。 ミーティング終了時に女連中で額を寄せて話あったところ、 皆のところにもマシュマロが死ぬほど−ひどい表現ですこと−届いているようです。 どうして殿方はこういう場合、フォーマットに準じたがるのでしょうか。よく解りませんわね。 さて、結局、マシュマロの処理は私がすることとなりました。 富田林さんは一箱持ち帰り。ティーマ嬢は二箱くらいなら摘めると言うことです。 ソウさんは全ダメ、ヴァイベルクさんも同じく。 よって私のも入れて二重二箱のマシュマロが余りました。 しょうがないので戸棚を漁ってバレンタインの残りであったホットチョコの缶を発掘しました。 そして午後の暇な時に傘を差し、雨の中を近所のパン屋さんへ。 そこで同様のホットチョコの缶を三つほど、ミルクを5パック買いました。 あとは流し横のコンロで鍋一杯に牛乳を沸かし、ホットチョコを投入。 そしてカップの中にマシュマロを仕込んでホットチョコを上から注ぐだけ。 洋風のやり方ですわね。熱でマシュマロが溶けてチョコの粉っぽい感覚がなくなります。 ホットチョコは砂糖が入っていないものを買うのがコツです。 甘さは控えめに作り、マシュマロに大部分を任せましょう。 無論、これらは私達だけで対処出来ないので、その場にいらっしゃった御客様達にも給仕しました。 反応は好評です。雨で気温が高くなっているものの、濡れる冷たさがあったせいでしょうか。 紙コップはすぐに無くなって、暇そうにしていた所長に追加分を買ってきていただくことになりました。 いやはや。 結局、午後はずっと御客様相手にそれを振る舞い、 ミルクは12パック、ホットチョコは合計4缶を消費しました。 マシュマロは残り四箱です。 冷蔵庫に入れておきましょう。いずれ余裕がありましたらプディングの材料にしようと思います。 そんなこんなで今日は甘い匂いが体中に染みついた気がします。 甘い女でしょうかね? いえいえ、現実的な女のつもりです。 ええ、そのつもりですとも。 終業間際に不動産屋さんから電話がありました。 良い物件が見つかったのでFAXで送るとのことです。色々検討したいですね。
1999年03月16日(火) さて 今日は暖かい日でした。 新聞では春一番の南風が渋谷方面に舞い降りたらしく、おかげで東京圏は完全な小春日和となりました。 私も一昨年に南風が中央線と併走して飛ぶのを見たことがあります。 青いコートは南国の風の象徴なのだとか。逆に北風は黒。東風は白。 そしてゼピュロスの名前を持つ西風は女性らしくブラウンのさっぱりしたコートだそうです。 母方の田舎である倫敦では彼らの予備軍達が多くいるそうですが、 やはり現実世界ではそうも行きません。 でも、昼に商店街に出たら、区役所の職員の方達が白のペンキを持って通りを駆けていきました。 そろそろ桜が咲くのでしょうね。 春が近づいています。 明後日は卒業式です。 段々と、社会人になる被害か付いてきたのだなあ、と、そう思います。 今日は短いですが、これにて。 色々と考えていることがあるのです。 ええ、考え込んでいますとも。本当に本当に。
1999年03月17日(水) 明日は 卒業式です。 昨日からそのことを考えていました。ええ、考えていましたとも。 昨日、この日誌に卒業のことを書く前から、考えていました。 昨夜は何故か眠れなくなりました。 今日はうつらうつらしながらの就業です。 一体どうしたことでしょうね。 高校の折りにはさほど悩みもせずに次へと進んだ気がするのですが、大学卒業を思うと、 「もう二度とこういう時間は来ないのでしょうね」 と、そういうセリフばかりが心に浮かびます。 前にも後悔しないことをこの日誌に書いたばかりですのに。弱いですわね、私。 とにかく色々と思い出したり考えたり。 やはり、 「これで一つの世代的終わり」 だからでしょうか? 学生ではなくなるのですね。 学ぶことが終わって実践へ。そう考えたときに、本当に自分は大丈夫なのかどうかを考え、 また、今までの学んで遊んできたことを思い出すのです。 不思議な感覚です。 でも、無理に答えを出そうとは思いません。いつか、この疑問は解けることでしょう。 これを書いてる間に解けるかもしれませんし、死ぬ直前に解けるかもしれません。 気長に参りましょう。ええ、気長に待ちますとも。 この不思議さをもって明日は式に望みます。
ええと、全く今日の仕事について書いておりませんね。 今日の仕事の大半は、花瓶を買うことに費やされました。 商店街の御婦人が、会社に一つ、梅の枝を持ってきて下さったのです。 昨日に区役所の職員さんが塗って下さったに違いありません。 白い花びらは艶やかにまだ露濡れしており、ひどく色気を感じさせます。 これを流しで洗ったグラスに活けるわけにもいかず、 今日は所長の許可を得て色々と見ることにしました。 スーパーでは形のいい花瓶があったのですが、白ばかりで花が冴えません。 商店街の小物屋では首の細いものばかりで、枝を差すには向いていません。 結局、商店街の裏、もう一つの商店街にある骨董品屋さんで買いました。 店の中にはやはり骨董らしい電車の模型が走っており、何やら変わった雰囲気です。 本や戸棚や扇風機と並んで幾つもの花瓶やカップやお皿があります。 古い店だといっぺんで解りましたが、何となく、違和感がありました。 その違和感の中で見つけたのは黒い花瓶でした。 お値段は結構したのですが、店主さん−亀のように老いたご老人です−は、私の顔を見て、 「2000でいいから買っていきな」 と言うのです。私はお言葉に甘えてその通りにしました。 花瓶を包みつつ、店主さんは色々と話して下さいました。 花瓶は中国の古いもの−本当かどうかは店主さんも知らないそうですが−だが ちょっと口が欠けているせいでほとんど価値がない −そのとき見た時点では傷などありませんでしたが−こと。 それを売りに来たのはつい最近、異人の女性であったこと。 そして自分は昔から空襲にも負けずにこの付近で骨董品屋をやっていること。 「数年前まで敵の空襲に怯えてたもんだがねえ」 なるほど。 新聞紙にくるんでいただいた花瓶を受け取り、御礼を言って会社に戻りました。 そして気づいたのが、お金を払っていなかったということです。 所長にそのことを告げて出ようとしたとき、 ロビーで御茶を飲んでいたソウさんが首をひねってこう言いました。 「あのあたりに骨董品屋なんてあったっけ?」 所長も首をひねり、私も考えました。 グスタフ氏が言うには、 「向こうの商店街には、食料品屋と薬局しかないはずだが」 一体これはどういうことでしょう? 慌てて広げた包みの中から出てきた花瓶は、確かに口が少し欠けていました。 訳が分かりません。しかし、ここは矛盾都市です。 おそらくあの骨董品屋はこの商店街に何らかの条件で存在するのでしょう。 もはや行って確かめたところであの店は見つかりますまい。私が店内で気づいた違和感は、 「古そうなものが、新しいままで存在している」 という違和感に相違ありません。 不思議な感覚です。 花瓶を包んでいる新聞紙は1946年11月3日、トップ記事は、 「GHQにより真・日本国憲法公布」 です。新聞は新しいものでした。 不思議な感覚です。 今日は午後の間中、この花瓶を見て、卒業のことを思っていました。 そういう日です。今日はその新聞を持って帰って読むつもりです。
1999年03月18日(木) ではこれから 卒業式に行って参ります。 今夜はどうなるか解りませんが、おそらく、帰宅は深夜になるでしょう。 それは確実です。 では行って参ります。 一時帰還です。 表に友人の車が待っていますので和服から平服に着替えたらすぐ出ます。 はてさて。 今夜はかなり飲みそうな気配。
1999年03月19日(金) 飲んだ飲んだ 二日酔いでベッドから起きようとした瞬間に悶絶しました。 会社に昼出社と電話して一度ダウンです。 が、昼になっても頭痛がなかなか治まりません。 仕方がないのでもう一度会社に電話をして本格的休暇をとることにしました。 所長の勧めで大事をとって明日もお休みと言うことにしたのですが、まあ、確かにそれが正解です。 ようやく起きあがれるようになったのは夕方過ぎです。 妙にしなびた髪をかきあげながらベッドから体を起こすと、 自分が土足でスーツを着たまま寝ていたことに気づきました。 ついでに横に誰かがいる気配がしたので見てみれば、薬局のカエル人形がベッドに寝ています。 どうしましょう。 とにかくそれは深夜にお帰りいただくとして、まずは部屋の片づけです。 何やらひどく荒れています。 きっと友人達と酔っぱらって何かしたのでしょうけども、いやはや。書かない方が身のためです。 とにかくベランダに飾ってあるスタンドライトとコタツは急いでしまいました。 しかしまあ、私が前後不覚になるとはとんでもない状態です。 これでも実家は仏蘭西ですし、子供の頃からワインで鍛えていたのですけど。 掃除には時間がかかりました。 体を動かしていると、アルコールが抜けていくのが解ります。 酔いを醒ますためにほどよく冷たいシャワーを浴びて、買い物へ。 スーツもクリ−ニングに出したかったですし、身体が動きを欲しがっていました。 夜九時でしたので深夜営業のスーパーに行ってスーツを出し、ネギや白身魚を買って帰宅。 そのままブーリッドのお米版ともいえるものを作って夕食です。 日本では雑炊と言うのでしょうね、これ。 仏蘭西には無いタイプの料理です。 仏蘭西には料理が星の数ほどありますが、それでもやはり世界にはもっと多くのものが存在します。 たとえば仏蘭西では料理のほとんどが、 この”雑炊”にしてもパンを用いるものばかりで、お米の文化とはほど遠い食事ばかりです。 しかし、それらとお米を合成して新しい料理を作ったならば?私の好きなお蕎麦とかもそうです。 また、仏蘭西料理には醤油も味噌もございません。 こうやって考えると二つの国にまたがる生活というものは 非常に多くの可能性を含んでいると言えましょう。 と、何やら近頃は難しいことを言いたがるクセがついてるようです。 食事も終えてとりあえず人心地。 そして今、寝間着に着替えてからこの日誌を書いているわけです。 しかし、ベッドを占領している緑色の先客をどうしようか悩んでおります。 先に寝間着に着替えたのは失敗だったかもしれませんね。 いやはや。
1999年03月20日(土) 参りました 一昨日の夜にいきなり現れた同居者が帰ってくれません。 昨夜、車を持っている友人を呼び−その人から一昨日の夜の大騒ぎの話を聞きました。 実は皆が私が酔うか否かを確かめるために私に集中して飲酒させたようなのです。 話ではガロン単位で飲んだなどと言っておりますから、相当なものだったのでしょうね −同居者を”積んで”、私の記憶にある薬局へ向かいました。 駅の近くの薬局には確かに彼がいたハズです。 深夜四時、泥棒気分で現場に到着して何とか一息ついた私達を待っていたのは、 「薬局の前に既にいる同居者」 でした。 友人と顔を見合わせて車の中を見ると、私の部屋の同居者は後部座席に寝たまま微笑を浮かべています。 前を見れば、薬局の前にいる彼はやや色が違います。 何となく、後部座席の彼よりも年期が入っているようです。 「別人!?」 じゃあ私は後部座席の彼を一体どこから連れてきたのでしょう? 「あー、監獄行きかあ」 友人が煙草−女性なのにタールの強いのが好きな人です−を吸いつつ、つぶやきました。 しかし参りました。 それから帰宅して、彼をベッド脇に立たせたままなのですが、どうしたものか。 私の記憶にある範囲では、彼がいるような薬局はもうありません。 昼に色々と歩き回りましたが、該当するような場所も無いです。 そしてまた気がかりなのが、彼、どうやってこの部屋に来たのでしょう。 友人は、飲んで酔っぱらって脱ぎだした私を皆で押さえ込み、スーツを着せて 寝かせたと言いましたが、その時には彼の姿はなかったそうです。 だとすれば私は酔っぱらったままに外へでて、 どこからか彼を一人で抱えてさらってきたことになります……。 やっかいなことになりました。色々と理由は考えられますが、考えたくもない理由もあります。 とりあえず、酔ったままどこからか苦労してひきずってきたか、 別の友人を呼んで一緒にさらってきたか。 どちらかということにしておきましょう。 何しろひどく重いのですよね、彼。 私一人では、普通、抱えることもできないのです。 どうしたものでしょうか。 今夜は街を歩いて彼がいそうなところを当てもなく開拓してみましょう。 多分に、夜の街をまた歩きたいという、そんな甘い感情もあります。 ええ、好きですもの、夜が。 そういうわけで、シャツにジーンズ、上にダウンコートという格好でこれから外にでます。 懐中電灯は一応持っていきますが、つけないでしょうね。 明日は会社なのでほどほどにしたいところですが、どうなることやら。
1999年03月21日(日) いやはや 同居者は自宅に置いたまま出勤です。 結局、昨夜は街に出たものの途中で雨に降られて帰宅せざるを得ませんでした。 身体も冷えて御風呂を二度沸かすことになりましたし、参ったものです。 何となくきがかりではありますが、本日も無事に職務を果たしました。 段々と仕事になれてきたのか、それとも休み明けだからか。その両方だと思いますけれども。 そしてまた、皆さんから卒業祝いと言うことで一本、万年筆をいただきました。 所長がティーマ嬢に頼み、英国から取り寄せておいたのだそうで。 パーカー製のもので、母が持っていたものとよく似ています。 中を見てみましたがインクも同社製でした。高級品ですね。ありがたいものです。 不思議なもので、いつもはコンピュータに向かってタイピングをしているだけ で仕事が済むのに、万年筆などいただきますと無性に使ってみたくなります。 とはえメモ帳に落書きしていても仕方がありません。 当分、これはカウンターの下における番人として役だってくれるでしょう。 今日は雨でひどく寒いです。 ティーマ嬢が帰りにラーメン屋に行こうと誘ってくれました。 またロースカツラーメンかと問えば、今度は違うのだとか。 どうやってそんなに新しいネタを仕入れてこれるのでしょうか? 不思議な娘です。 とりあえず今日は彼女についていって新しい味覚に触れてきます。 ワインが無いのでやや不安ではありますが。いやはや、頑張ってみます。 ではまた明日。
Jounal de SATIE
1999年03月22日(月) 風がひどく強い日です 今日は午前中から夕方にかけて突風が吹く日でした。 気温は暖かいのですが、体感温度はひどく寒かったです。 話では群馬や長野方面に残っていた北風の旅団が一気に吹き降りたのだそうで。 町中では風をはためかせた黒いコートの男性方が多く見えたはずです。 彼らの多くは箱根を経由して海に出て、そのまま一気に空へと上昇します。 北風の遺伝詞はそのまま空気中に溶け、寒くなる頃にまた凍結凝固してもとの北風に戻る……、 不思議な話ではありますね。 風が強いので表の足拭きマットを片づけに表に出たところ、ものの見事に風に吹かれて転びました。 近所の八百屋の店員さん達が慌てて駆けつけてきてくれましたが、 彼の店の商品も風に煽られて道路にこぼれっぱなしです。 参った参ったと道路に座って空を眺めれば、 蒼い空には北風達の通り道が引っ掻き傷のように白く残っています。 グスタフ氏の話によれば、この雲の流れは神罰都市−横浜から南、 海上で一気に上に拭き上がる白い断層となるのだとか。 季節ものなので、今日を逃したら見れないのでしょうね。 何となく惜しいことです。 さて、今日はそのようなことがニュースですが、昨日のラーメン屋についても語らねばなりますまい。 ティーマ嬢に引っ張られていったのは、まあ何と会社の近くの、 いつも目の前に見えている−ゆえに利用しないのですが−ラーメン屋でして。 「ホントは焼豚麺が一番だけど、今日はこれ」 と彼女に勧められたのは、”冷・和風麺”。 一見するとただのラーメンのようですが、ツユは鰹出汁の蕎麦ツユに似たもので、冷麺仕立てです。 量も味もなかなか宜しいのではないでしょうか? 欠点は三つ。 焼豚が入っているのですが、これの油が時間とともにどんどん固まっていってしまうこと。 薬味としてワサビが小さくお椀の縁にもられているのですが、 これがふとしたはずみで−その気もないのに−中に落ち、 個人的に大騒ぎになる味覚を生んでしまうこと。 とにかく冷たいので昨夜のような寒いときに食べるものではないこと。 いやはや、とにかく身が冷えました。ええ、冷えましたとも。 よく見てるとティーマ嬢は餃子を頼んでいたりして、防寒態勢を整えていました。 今回もまた甘かったようです。ラーメンを食べに行った帰りに暖をとるため缶コーヒーとは、情けない。 やはりワインは必須ですね。 次は負けません。 何に勝つのかいささか解りませんが。はてさて。
1999年03月23日(火) 今日もまた ティーマ嬢が猫になって出社されました。 あとあとになて話を聞くと、混雑した列車の中で足を踏まれたのが原因だそうで、 慌てて鉄道会社に電話しましたところ、脱ぎ捨てられた女性ものの衣服が三組発見されたそうです。 衣服の特徴からその内の一つがティーマ嬢のものと解りました。 はて、他の二組は? やはり同じような方がいらっしゃるのでしょう。私達が使う鉄道は私鉄ですから、国鉄や、日本中、 いえ、世界中という観点で見たらティーマ嬢のような方はもっと多くいらっしゃるはずです。 そしてまた、彼女を助けて電話したり、 膝の上に乗せて人に戻るまでの時間を過ごす方も、それと同数はいるのでしょう。 世の中持ちつ持たれつです。 今日は彼女が人に戻る前に毛布でくるんでおけたので、大騒ぎにはなりません でした。所要時間は推定ですが四時間ほど。 今度はその時間になったら更衣室まで運んであげようと思います。 なお、明日はとうとう高機能化を使用する仕事が生まれました。 伯林方面の旅行者の方−留学生の親御さんらしいのです−で必要なデータを とにかく集めておきたいというのが理由です。 明日のお昼からの二時間ほどを予約を取られまして、 ヴァイベルクさんが高機能化して電詞空間に飛ぶこととなります。 DT、つまりはデトロイトからの共鳴都市データから色々と引き出して 早急にまとめあげねばなりません。 大事ですわね。ええ、私が機械を扱うわけですし、気合いを入れませんと。 そんなわけでミーティングにおいて私は今日、 早く帰ってマニュアルとシミュレートソフトの再確認だそうで。 家にコンピュータ無いんですけど……。 まあ、なんとかしましょう。 ヴァイベルクさんは所長やソウさんと残って色々と勉強だそうです。 所長はいつもご実家の方からそれですし、ソウさんは香港支社で幾度か高機能化を行ったことがあり、 その後の対処などに詳しいです。 ヴァイベルクさんの方はお二人に任せておきましょう。 はてさて、明日は大仕事ですわね。ええ、頑張りますとも!!
1999年03月24日(水) 三等身? 今日は会社に行くと、いきなり妙なものを見ました。 何やら小さな翼の生えた丸っこいものが私の椅子の上にいるのです。 何事かと思って近寄り、椅子からそれをどかそうとしたら、 翼が緩やかに動いて私の手をはじき返しました。 猫が近寄る手を払いのけようとする、あの仕草に似ています。 しかしそれをどかさないことには仕事になりません。 意を決して一気に持ち上げてみると、それはまあ何と、高機能化したソウさんでした。 彼女は私の腕の中で子供のように暴れて−いきなり抱え上げられてびっくりしたのでしょう− カウンターの下に隠れてしまいました。 見事な三等身です。 カウンターの下に隠れても突きだして見えている三枚翼がひどく可愛らしいのですが、 これでもやはり仕事になりません。 とりあえず冷蔵庫に入れてあったオレンジジュースを餌に何とか表に引き出しました。 しかし、何事でしょう? その原因は自分のコンピュータを立ち上げて分かりました。 私のコンピュータにインストールされていた高機能化変換装置の制御ソフトが、 もはや完全に使用できるスタンバイ状態になっていたのです。 おそらくソウさんが昨夜、泊まり込みでずっと作業したのでしょう。 それだけではありません。 ジュースを怯えた調子で飲むソウさんとは別に、 まだ誰もいないハズのロビーの方で小さな人影が立ち上がりました。 眠そうな顔の−高機能化した−ヴァイベルクさんです。 彼女はゆっくりと通路の方にでてきて、そのまま倒れてまた寝てしまいました。
どうも妙なことになりつつあるようです。気になって制御ソフトを調べてみましたところ。 お二人が高機能化をなさったのはどちらも午前三時前後。 ちなみに高機能化の継続時間は12時間という超尺を選んでいました。おそらく、 「そのまま今日の仕事をするつもり」 だったのでしょう。調べたところ、変換器の変換トナーが二本、きれいになくなっています。 いやはや、大事ですわね。このトナー一本で会社のいる土地が買えるくらいだと言うのに。 しかもお二人を見ていると、どうも変換時の、 「自分の高機能化」 において残した個性がいつもの人格とは別なようです。 ややクールにハキハキ動くヴァイベルクさんは、気づくと寝ている人形並ですし、 ソウさんは子猫のように表に出るのを怖がっています。 不思議なものです。 所長とグスタフ氏が来られてから、新しくなったお二人を紹介し、今日の仕事に備えました。 問題はソウさんで、ずっとグスタフ氏にしがみついたまま離れないという状態で、 外界を恐れているようでした。 香港案内所は今日のところ閉めまして、 二階の伯林案内所にヴァイベルクさんを連れていってからが大仕事。 二階の伯林案内所から学生さん達の嬌声が聞こえてくるたびに出陣です。 ぬいぐるみじゃないんですのよ……。 さて、予約のあった御客様が見えられました。 私は紳士的な老御夫妻をロビーにお待たせしてからヴァイベルクさんを連れてきて、 高機能化変換器の第二ポッドに冷凍食品的に叩き込みます。 起動はコンピュータから一発です。 すぐにカウンター側のコンピュータにヴァイベルクさんのアイコンが表示されました。 これが高機能化。個人の遺伝詞情報をデトロイト経由で 完全にデータ化してプログラムと同列存在させます。 ヴァイベルクさんは己の個性の定義付けに置いて 自動人形らしく機械的なASB系一族を選択なさいました。 高速で−マルチタスクはできませんが−情報を処理できます。 あとは映像変換プログラムを起動させればコンピュータ内の情報空間が 3Dの都市となって表現されていきます。 あとのことはグスタフ氏に任せ、私は事務処理です。 ヴァイベルクさんの仕事が終わったのは10分後と早かったですが、 私が今日行った事務の仕事よりも遙かに多量のデータを持って帰られました。 なお、ソウさんとヴァイベルクさんは見事、三時になると同時に普段のお二人に戻られました。 お二人とも高機能化していた時の記憶があるので、ソウさんなどは私の方を困った顔して見ています。 「ジュースは美味しかったですか?」 いつもの嫌味に負けない口調で言って差し上げました。 いやはや。 それから私はグスタフ氏を筆頭に皆をまじえて 高機能化の行い方と問題点などを入念に話し合いました。 これが簡単にできるようになればうちのウリが一つ確定できることとなります。 これから経験を積んでいかねばな、と思いました。 今日はそんなところでしょうか? 何やらソウさんとヴァイベルクさんがロビーの方で考え込んでいるようですが、 気にしないで放っておきましょう。 あれがお二人の本心だとすれば、なかなか可愛らしいものだと思います。
1999年03月25日(木) 昨夜は 雨が降っていたのですが。 今日は晴れです。 そういえば自宅で不思議なことがありました。 いつもベッド脇に立っている同居人が、朝起きたらなぜかドアの前にねていました。 どーいうことでしょうか。 さて今日の業務はひどく平和でした。 ソウさんをからかうことができるようなって気分はなかなか爽快です。 至高と言っても、 いえ、究極とか、極上とか、甘露とか(これは違いますね)言っても良いかも知れません。 何しろ昨日、怯えてカウンターの下から出てこなかったソウさんを救い出してあげたのは私ですし、 ええ、気分は良好ですとも。 ソウさんはミーティングなどが終わるとそそくさと自分の案内所に戻ってしまいました。 逆にヴァイベルクさんはいつも通りですし、私に昨日の自分がどうだったのかを問いかけてきます。 よく寝ていたことなどを伝えるとヴァイベルクさんは、 「まだまだ自分は人形でありたいのかもしれませんね」 と静かに言いました。 そうかもしれません。 高機能化によって本性が出たとするならば、 ヴァイベルクさんは眠り、つまりは動かぬことを望んでいます。 それは動くものである人とはまた違うものでしょう。 ですが、それが本当にそうなのかは解りません。 人に進化しつつあるヴァイベルクさんの本性がただ単に居眠り屋さんで、 今、彼女がテキパキしているのは人を模そうとしているだけなのではないかー……。 そのようなことも考えられます。 なかなか難しい問題です。 答えのでない問題でもあります。 そんなことを考えていたら、 カウンターの上に以前いただいた梅の花弁が散り落ちているのを見つけました。 掃除するのが惜しいですが、仕方ありません。 そろそろ桜の季節です。
1999年03月26日(金) 雨です 御客様も少ないので仕事中に一息つけます。 今日は会社で皆が使っていた半纏やベストなどをクリーニングに出そうと思ったのですが、 雨で断念しました。 また、昨日の梅の枝ですが、花瓶から出してみたところ、下に小さな根が出てることに気づきました。 どうしようか考えています。 これが腐って死んでいたならば生ゴミ行きですが、元気に生きているとなると別です。 問題なのは、今後、どうやって育てて良いのかが解らないことですね。 植木鉢を買ってきて差す、というのでいいのでしょうか? 今のところはまた花瓶に活けています。 ただ、花が完全に散ってしまったらカウンターから降ろして、下の机の上に置こうと思います。 と、まあ、そんなところでしょうか? たまにはこういう何事も平均的な日もいいものです。
1999年03月27日(土) 今日は昼から 一気に雨が降ってきました。 私は土曜日をお休みにしておりますので、昼前に外に出ようとした、その直前でした。 目の前、アパートの踊り場の前を一瞬で雨が通り過ぎました。 そしてそれと同時に湿った暖かい風。 春の雨の風でしょう。 今日はそのまま外に出るのをやめて家の中で本を読んでいました。 社会人の真似事−まだ本採用ではありませんから−をしていて気づくのは 自分の時間を持つことが難しいことです。 今までは自分をどうしようもなくなってしまうくらいに時間の余るときがあったのですが、 今は違います。 本を読む時間さえ捻出しなければならない生活。 考えてみると怖い生活ですね。 でもそれでいいと思います。 もし今の生活からいきなり暇な昔の生活に戻ったならば、 私は前以上に自分をどうしていいのか解らなくなってしまうでしょう。 もはや仕事というものは私の生活というよりも、呼吸や鼓動と同じようなものなのです。 それが無ければ生きていけない。 そうです。ええ、そうですとも。 私は仕事でお金を戴いてー……、と、これを書いて気づきました。 今日、外に出ようとしたのは御給料をおろすつもりだったからです。 行って参ります。 行ってきました。 で、話の続きですね。 でもその前に御夕食として買ってきました牛丼を戴きます。 戴きました。 で、話の続きですね。 そう。 私は仕事をして食べています。食べることは生活の一部です。 やはりこれも呼吸や鼓動と同じことです。 それならば仕事をすることも、そうあるべきです。 仕事を自分の中の自然としてやっていきたいものだと、そう思います。 無論、私は美味しい食事が好きです。 同じように楽しい仕事が好きです。 そういうことだと思います。 では、お風呂に入ってからまた本を読むとしましょう。 今日は仕事がございませんが、こうやって仕事ではない自分の時間を作ることが、 ある意味、私の今の仕事です。 ええ、そうですとも。
1999年03月28日(日) 休日出勤 とはいってもうちのような会社では当然のことなのですが。 でも日曜日の朝の列車は非常にすいています。 何となく、得したような、存したような気分ですわね。 さて、今日は全体的に肌寒い一日でした。 雨のあとが至る所に残っており、道を歩くのが大変です。 今日はお昼の休憩時間を使って不動産屋を訪ねました。前にも何度か来たのですけれども、 良い物件が無く、迷っていたのです。 今回もほぼ同様でした。ただ立地のいいところがあったので考えています。 さてどうしたものかな、と。 今の住んでいるところと比較して、今の場所への慣れを良しとするか否とするか。 また通勤時間というある意味、 「自分のための時間」 をどう考えるか。 なかなか難しいものだと思います。 そしてまたよく考えていると、私の部屋には今、妙な同居人がいるのです。 とりあえず私の新しい部屋を見つける前に彼の家を見つけなければなりません。 参った参った。 引っ越しをするのはいつになるのでしょうか。 また本当に引っ越す気があるのでしょうか。 自分でも良く解らなくなってきました。 今日はヴァイベルクさんがお休みでした。 何やら家族−今、彼女がいる家の方です−が熱を出されたそうで。 色々と大変そうです。
1999年03月29日(月) 引っ越す ことに決めました。ええ、決めましたとも。本気ですとも。 理由はしごく簡単で、自分の今の部屋には出窓があるのですね。 そして、そこには着替えの時のことなど考えてブラインドがかかっている、と。 そういうわけなのですが、出窓というものはよく見てみると、 正面だけではなく、サイド部分にも窓があるわけです。 つまり、 「そこから中が見える」 今日、いつものように壁に掛けた姿見を見ながら着替えていたところ、 姿見がいきなり下に落ちて割れまして−不吉なことですね−そのかけらを拾いつつ ふと後ろを見たら通りの方からこちらを見ている数人の人達と目が合ってしまったわけです。 いやはや。 大家の御婆さんに問うてみたところ、 「あら、アンタ有名人だねえ。もう二年前から朝は人が溜まってたよ」 などとノンキ調子です。 しまった。 二年前にブラインドを取り付けて喜んでいたのは何だったのでしょう? よく考えたらいつもの不精でブラインドを開け閉めするのは昼に起きたときくらいでしたからね。 まぶしいとすぐ目が覚めるので夜からずっと閉めっぱなしの習慣があったのですが……。 参ったものです。 朝、通り過ぎる人達の数人は私の着替えを見ていた−というか、見えます、角度的にアレは−わけで、 何とも気まずい感覚ですわね、これは。 ああ、しかし、参ったものです。私の背中とかお尻はどのように見えるのでしょうか? 単に無料だったから見られていたのか、見る価値があったから見られていたのか、 仏蘭西生粋のパリジェンヌとしては誇りにかけて問いたいところです。 個人的には結構自信が……、ええ、自信ありますとも、大丈夫です。 さて、そういうわけで引っ越しを決意しました。 問題は山積みです。 出窓の無い部屋にしようとか、 変な同居人を早い内に叩き出そうとか。 蕎麦の美味しい場所にしようとか。 難しいものですわね引っ越しは(私だけかも知れませんが、こんな話題)。 今日はお昼休みを使ってまた物件探しでした。 富田林さんが自分の部屋の方はどうかと勧めて下さいましたが、 都心部は御家賃が高くてとてもとても。 どこかにいい場所はないものでしょうか。
1999年03月30日(火) 今日 というよりも昨夜、変わったことがありました。 帰宅してみると、同居者がいなくなっていたのです。 前にも勝手に歩いてどこかに行ってしまったことがありましたが、今回は失踪です。 ドアが開きっぱなしだったので、鍵を持って出たわけではないようです。 慌てて友人を呼んで車を出してもらい、電話帳片手に相模原の薬局を回りました。 深夜二時。 とある薬局の前で彼を見つけました。 それだけではありません。薬局の店主らしい御婆さんが彼と立って待ってます。 私たちは車を止めて対面しました。御婆さんは笑って、 「待ってたよ。お世話になったらしいねえ」 と仰いました。 どうしたことなのか問うてみたところ、どうやら彼が一人でここに戻ってきたと、 そのようなことをお婆さんは仰るのです。 そんなバカなことが、と思ったのですが、お婆さんの話ではこの薬局、 もともとは東京にあったのを戦時の大空白襲を避けるためにこの地へ移したのだとか。 彼自身はその折りのものではなく、十五年ほど昔にお婆さんと生活を始めてここにいるそうですが、 おそらくはこの薬局自身が持つ東京の力を受けているのではなかろうか、と。 にわかには信じがたい話です。 しかし、彼がふとここに帰り着き、道に背を向けている日は、必ず彼の伺った家の人が訪れるのだとか。 私でもう二十三人目だそうです。 いやはや。 色々とお話を聞いて深夜の緑茶をいただき、友人と帰宅する頃には雨がぽつぽつと降り出しました。 そういうわけで今日は雨です。 御客様の数もやや少な目ですね。 で、昨日から続く引っ越し熱ですが、全く醒めません。 今日は出窓を避けて着替えたのですが、やはり通りを歩く人はこちらを窺っているようで −私の勘違いなのでしょうけど、自分で自分が嫌になります− やはりどうもいづらくなりつつあるようです。 なお、ソウさんも近い内に引っ越しを考えているそうで、数言、 会社の近所の不動産屋のことについて情報を交わしました。 さて、どうなることでしょうか。 今日は帰りに馴染みの不動産屋を見て、それから新しい場所を開拓します。 では。
1999年03月31日(水) 引っ越しの前に さて、一つ気がかりだったことがあったので今日は絵を早めに出ました。 会社にいつもより二十分早く到着すると、所長がいました。 で、聞きました。 質問にはすぐ答えがありました。 簡単にいうと、つまり、本採用です。 ええ、今までの試用期間を無事に終えて就職できた、というわけです。 良かったです。 何だか以前に比べて感動が薄い気もしますが、安堵感はやはりあります。 話を聞いてからとりあえず一息ついて、カウンターの上の掃除などをてきぱきとやってしまいました。 ええ、落ち着くんですもの、それをすると。 それを終えてから所長と引っ越しの話を煮詰めました。 今まではクビになることも前提としていたのですが、住宅手当や身分証明などの手配がいります。 色々とそういうことを窺っている内に他の方もいらっしゃって −既に出向社員扱いのソウさんを除いて−私達は正式な辞令をいただきました。 これで、社会人です。 就職祝いの食会などの予定も決まっているようで、 どうやら私達の試用期間というのはほとんど飾りだったようです。 良かったですわね、と、これは皆さんの分。 私には私の問題がありました。 今日はグスタフ氏が都内の本社に出張だとかで、背中が空いてる気分がありました。 朝の間は雨が降っていたので客足がひくのかと思いましたが、 昼過ぎからは晴れて一気に人が増えました。 そろそろ学校が始まる時期です。 受付で応対をしていると、近場の良い旅行場所を探す方が多いので、 おそらく、短い期間で始業式や就職前の休暇を楽しむつもりなのでしょう。 さて、就業後は皆で祝賀会とやらをしようということで、 先ほど、会社の近くの鉄板焼き屋さんに予約を取りました。 また、昼の間に不動産屋さんを回ったのですが、なかなか良い物件を見つけました。 調布の物件で、端部屋と、その隣が空いているそうです。端部屋をお願いするつもりです。 はてさて、どうなりますやら。 とにかく明日から社会人です。ええ、いっぱしの大人ですとも!!
-------------------------------------------------------------------------------- 小説『風水街都・香港』を語る BY 川上 稔 -------------------------------------------------------------------------------- これは、1998年・6/21日の午前0:00から、はいんりっひさんのホームページ上で行われた、 小説『風水街都・香港(作・川上稔)』上下巻発売を記念して行われたチャットのログデータです。 −INDEX− 第一回「魔骸編」 第二回「帝獄編」 第三回「勒虐編」 第四回「昇華編」 第五回「御礼編(笑)」 第六回「番外編(笑)」
[第二回ログへ] [第三回ログへ] [第四回ログへ] [第五回御礼編へ] [第六回番外編へ] -------------------------------------------------------------------------------- 香港上下巻無事販売記念CHATログ 第一回「魔骸編」 BY 川上 稔 -------------------------------------------------------------------------------- そういうわけで、6/21日の午前0:00から開始され、朝の5:30に終わったという 「社会人がいるのに平日の朝に何やってんだバカ>川上」なCHATのログが編集を経て完成しました。 これをまあ、読み物というかシナリオ的に読めるようにいじくりまして、 連続五回の予定で公表していこうと思います。 セリフとか、解りやすいように編集かかって185KBあったものが何とか100KBくらいにまで 落とせました。改行なども行っており、イイカンジではないかな、と。 なお、今回のステータスは以下の通り。 議題 :全体挨拶〜香港誕生秘話・俺的プロフィール 危険度 :60/100 Points 進行度 :00:00am〜01:10am/全体終了時間:05:30am 出場者 :ういんど・川上・キメラ・彼奴原・剣道男・こ〜・はいんりっひ・ B O N * N O B・御堂・むーま・Morita・矢神(敬称略・アイウエオ順) ※:ROMメンバーは混乱するので含めないことにしました。スマンす。
-------------------------------------------------------------------------------- 第一節:「出会い頭の一発」:(AM00:00) -------------------------------------------------------------------------------- ※以下、青い文字は「川上稔」による注釈。赤い文字は「テンキー社長」による注釈です TENKY・BBSを見れば解るとおりに、実は寸前まで議題の整理などに追われていた。 議題の整理ってのは、ホラ、CHATで会議するわけだから、 「言いたいセリフなど、決まっていたら、テキストにしてエディタに保存。現場でカッペ」 することによって、打ち込み時間の短縮ができる、ということ。 アンケート結果や話題の転換の為のセリフなどを先行的に保存しておくと同時に、 「ログをとるためのウインドウ」を開いたりして画面も整理。 ・主CHATウインドウ(ここで”読んで打ち込む”) ・副CHATウインドウ(読み込みを手動にし、ログをとるために使う) ・エディタ画面1(整理した議題をカッペするためのもの) ・エディタ画面2(副CHATウインドウから取り出したログを順次保存するもの) ・メールソフト(観客としてきている仲間達からの細かい連絡や、プレゼントCG送付用) これらを、 「重ならないように置く」 だけでもうパニック。議題と画面整理が終了したのが11:54。 そのまま食糧確保に冷蔵庫を開けて柿ピー出して気合いを入れて一息ついて、 「よし行ってみるか!」
■ 川上稔さんの取り調べ開始!牛丼は出ないぞ!(爆) ■ 御堂 > Ciao! ■ 川上稔 > や、どもども。俺、何人目? ■ 矢神 > 初めまして > 川上さん ■ キメラ > こんばんわ。お待ちしてましたよ。>川上さん ■ 剣道男 > 川上さん、来ましたな。 ■ こ〜 > あっ、川上さん、こんばんわ!はじめまして! ■ ういんど > おはようございます(^^) > 川上さん 時間感覚が何て対称的な二人だろうか。(笑) ■ 彼奴原 > はじめまして、出遅れました(謎) ■ 川上稔 > 初めての人は初めまして。それいがいの人は「や」ってことで(笑) ■ 矢神 > 挨拶ログ嵐ですねえ(笑) ■ Morita > こんばんわ>川上さん ■ 川上稔 > ……そういやあうちの社長が来るとか言って来てないですな。うーむ。違反だ。 ■ 剣道男 > テンキー社長も来る予定だったんですか?うわ、すごいな。 ■ ういんど > 何かすごい人が参加しますねぇ(汗) > 社長 ■ むーま > 違反なのか(笑) ■ 川上稔 > いやあ、連れてこれる人間は全て引っ張るつもりだったんで。 でも来てないなあ。こういうの好きだろーに。まあいいや、始めますか? ■ 矢神 > 実は紛れこんでいるとか言うオチは無いですよね(^^;;; < 社長 ■ はいんりっひ > さて、進行は川上さんに一任します<始めますか? 何やら既にもう盛り上がってるんですけど。 ちなみにはいんりっひ氏はWebmaster。 御堂氏、キメラ氏はOSAKAや都市シリーズの専用ページを 御自分のHPに構えて下さってる有り難い方達 社長注:この頃B O N * N O Bは、自宅からアクセスしようとするも回線状態が悪くてつながらず、 悪戦苦闘していたのであった。まさかCHAT人数が多すぎてパンクしてるのか!? と焦ったり(笑)
-------------------------------------------------------------------------------- 第二節:「とにかく開始と意思確認」:(AM00:03) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > じゃあ一丁いきますか。香港も上下巻が無事に発売され、皆様のご支援(政治家か)によりいやあ、 何だかハケてますよエラいことだな。ってなわけで無事販売記念のCHAT開始! ■ 矢神 > ぱちぱちぱち(サクラ) < 開始! ■ 剣道男 > 開始ぃ。 ■ 川上稔 > さて、今回のCHATですができましたら参考資料などとしてログを他HPで 閲覧させていただきたいと思います。 で、どこかと言えば「テンキーHP」だ。わはは。 メディアワークスにも許可を取ったし態勢万全です。 不可の人はソッコで挙手を。で、HNを変えればよしとか言う方もソッコで御願い。 ■ 剣道男 > おっけーです。 ■ ういんど > 全く問題有りません。 ■ はいんりっひ > 僕は全く問題ないです。(Web Masterとしてもです) ■ むーま > おお、TENKY・HPで掲載とは割と予想外。 ■ Morita > 問題ありません ■ キメラ > 問題なしです。 ■ 矢神 > 可です。と言うより希望してます(笑) ■ こ〜 > はい、大丈夫です。 ■ むーま > (不可じゃないから挙手しない…) ■ 彼奴原 > 私はかまいませんが。 ■ 川上稔 > よっし、んじゃあ、改めていきますか。 たまに誤字とかあるけど許してね。 ……さ、本日は予定では3時くらいまで騒ぐつもりですが準備はどんなもんでしょう? 俺はもうPSYSのCDと柿ピーと缶コーヒー数缶を手元においてスタンバってますが。
何が”3時”なんだか……。甘かった。 PSYSを挙げている理由は”香港”のあとがき参照ですな 社長注:PSYSといえば、昔の友達が「ブスだがうまい」といってLPを見せてくれたのが出会い。 それが13〜4年前。今川上のおかげで、このような形で再会できるとはなぁ ■ むーま > こちらはPSYSのCDとDEKAVITA Cと煙草で完全武装中(笑)です。 ■ キメラ > OKです。心残りはPSYSのCDがないことだけ。 ■ ういんど > (準備はいいです ⌒ω⌒ > 残念はPSYSがない…… 代用TMN(苦笑)) ■ はいんりっひ > 同じく準備完了 ■ Morita > 準備、OKです。
-------------------------------------------------------------------------------- 第三節:「香港発生緒言」(AM00:20) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > じゃあ、いきなりですが真剣な話をブチかましましょう。 香港って、いつ開始された企画だと思います? ■ 御堂 > 4年前。 ■ ういんど > 結構前の様な気がします。 ■ はいんりっひ > 一年以上前じゃないでしょうか?<いつ開始された ■ 彼奴原 > 2年前ぐらいですか? ■ 剣道男 > 予想としては、「パンツァーポリス」を書き上げたあたりでは? とおもいますが。 ■ 矢神 > 1年半と予測。 < 企画開始 ■ ういんど > 具体的に言うと……。う〜ん3年ぐらいから4年かなぁ? ■ 御堂 > つうかあとがきの日付はなに? ■ 川上稔 > あとがきは書き終えた日ですよ、と。半年以上かかるんです。本になるのに。 えーと、で、香港が企画というか、アイデアされたのは96年の4月。 テキトーに描いていた天使のラフが何か気に入ったからですね。 コイツを、 「飛ばすことができないか」 と……。 ■ ういんど > 96年でしたか……2年前ですね。 ■ 川上稔 > パンツァーを書き終えたのが4月だから剣道男さんが近いですな。賞品ないですが。 ■ はいんりっひ > 天使で思い出しました。 友達曰くなぜ「Nein Angel(ナインアンゲル)」なんですかと……。 語法的にはNeinよりNicht(=not)の方が良かったのではというんですが。 ■ 川上稔 > ナインアンゲル=ニッヒ(not)だと完全に拒否と感じたからですね。 欲しかったのはあらざる、否定される、という感覚です。 ■ はいんりっひ > 了解です、わかりました、不完全と言う感じですね<Nein ■ 矢神 > ……しかし、二年前=つまり、伯林より後ということは、 香港の発想は都市概念そのものよりは後なんですね。 たまに都市シリーズの作品名を以下のように言うときがあります。 ・パンツァーポリス1934 =伯林=パンツァー ・エアリアルシティ =倫敦=エアリアル ・風水街都−香港 =香港
-------------------------------------------------------------------------------- 第四節:「都市シリーズとは?」:(AM00:29) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > 都市シリーズはもともと中学の時に全体シリーズの「一部」として考えたモノです。 さて、一部ってのがどう一部か知りたいならば、香港の裏表紙を見ましょう。 それが全体シリーズ構造。 ■ 彼奴原 ・矢神> 3つ目が見えないですが……<裏 ■ ういんど > 確かに読めない…… > 3番目 ■ 矢神 > 単語が分からないのが致命的な受験生(笑) ■ 川上稔 > 三つ目は”EDGE” ■ Morita > EDGEでしたか。>3番目 ■ 川上稔 > FORTHが現代。 AHEADが近未来。 EDGEが宇宙。 GENESISがそれらから移行したファンタジー。 OBSTACLEが破壊世界。 これら全ての要素を各都市ごとに飲んだのがCITY。 社長注:さ〜て、こいつはいきなり都市シリーズについてのえらい重要な情報が。チェックチェック!! ■ ういんど > ふむふむ…… 位置にも意味があるように思えてしまう(苦笑) ■ 彼奴原 > エッジ……刃、鋭利さ、端……なんでしょう? ■ 川上稔 > つまり、都市シリーズの世界は我々現代世界の延長です。 それが何度か「理念から何から破壊されまくって」都市世界になった、と。 ■ キメラ・矢神> 時間軸の延長として、図の上から下へと流れていったということですか? もしくは平行?<現代世界の延長 ■ 川上稔 > YES、延長です。 並行宇宙でも並行現代でもないです。 ずーっと未来のことです。 ■ ういんど > なるほど。時間軸の延長……。 ■ 彼奴原 > 壮大なんですねえ(@@)<裏 ■ 川上稔 > 壮大……、か。不必要なまでにね(笑)。 パンツァーが賞を取った時点で全ての世界構成はできあがっていたのですが、 まあ、諸処の事情で果たせなかったわけですな。 ところが、何やらいきなり都市シリーズとして始めようと言う話になった。 簡単に言えば皆さんの応援のおかげですが。 ……と、一息。柿ピー柿ピー(笑 ) ■ はいんりっひ > となると、この裏表紙でまず世界構成の伏線を引こうかと思ったわけですね?
-------------------------------------------------------------------------------- 第五節:「性能」:(AM00:40) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > 伏線といえば……、そうですね。意味ありげですし、この系譜図。 大体、シリーズをするなって言われても、書いていったら自然とシリーズになっちゃうんで(笑)、 こういう系譜図が必要になるだろう、と。 出版社的に考えるといきなりシリーズを始めるのは危険なんですよね。 ウケなかったら二作目はどーすんだとか、ホントに書き続ける気があるのか、とか。 特に、昨今は一作で終わる小説家が近頃は増えてますしね……。 ちなみに自分はネタとして160本抱えてます。フルで小説書いても8年はいける。 160本のネタを溜めるには、思いついたネタというのをキレイに保存し、 「こんなネタできっこないなあ」 などと考えないことが重要です。 例えば、 「戦闘機+剣で斬り合う」 というのをずーっと考えたら、伯林になるわけですよね。 一見無理でも作り方によっては完成する。思いつきとか、柔軟な思考性を大事に、と。 また、普通の小説家は(二週間+数日の休憩)で一冊を書くことができます。 というか、そのくらいの速度がないと生きていけない。(笑) ここから逆算すると、フルで動いて8年ほどあれば160本は書けるが……、やる気が枯渇しますな。 きっと。 ■ キメラ・morita・こ〜 > すごい数ですね。(^^)<ネタが160本 ■ ういんど > 160! 香港の謎(飛翔歌の矛盾等)で苦労してるのに ■ むーま > つまり、それだけすでに書くネタが在る、と? ■ 川上稔 > ネタは死ぬほど持っていて当然なんです。 ものを作り続けないと、業界的にも読者的にも迷惑になるので。 ほら、一作きりだと、色々な人を期待させるだけだし。 発展がないんですよね。だから昔からネタだけは溜めていた。 実は出版社的にも迷惑かな、と。 いくらデキがよい小説でも、やはりデビュー作の部数は少ないんです。 しかも、その作家がそれ一本で終わった場合、 「少ない部数しか出ない本に、出版のラインを与えてしまった」 ことになる。 つまり、出版社が月に出す本の種類って決まってますから(電撃だと文庫は月に8冊くらい?)、 そこで将来性の無い作品(作家)にラインを与えるよりも、ちゃんと書き続けてくれる、 将来性のある作家(基本的に作品を出すごとに部数は上がりますから)にラインを与えた方が良い。 ついでに言うと、出版順番の争いもなかなか激しく、 一発屋が一人入ってくるだけで書きたい作家さんは自分の出版順番を一つズラされることになる。 ヘタをすると自分の書いた前作が出る前に、次の作品を書き終えることになってしまったりして……。 だからネタは持っておいた方がいい、と
■ 矢神 > 読者として、有り難い態度ですね(^^ < ネタは溜めておく ■ ういんど > でもそこまで貯めているとは……(汗) ■ 剣道男 > 160本中の何本かは、ゲームのシナリオで使うんですよね?(当たり前か) ■ 川上稔 > ゲームのシナリオはまた別です。 だって、これは俺の勝手では書けず、クライアントの要望とか、 既にキャラやプロットができてる場合もありますので。 PSじゃ規制も激しいから香港のようなSEXシーンは直接表現不可能ですから。 ■ ういんど > やはりゲームとのなると色々あるのですねぇ……。 ■ 剣道男 > 小説用とゲーム用で分けてるとすると……、合計するとすごそうですな。ぐは ■ 川上稔 > とはいえプロットやキャラができててもどーなるかメルリンやメルCDで俺の危険性を体験済みの社長。 一言どーぞ。 ■ B O N * N O Bさんの取り調べ開始!牛丼は出ないぞ!(爆) 社長登場。 しかしこのデフォルト登場メッセージってスゴイな。 ここがメルティランサーCHATルームなせいなんですけど 社長注:実は、この「ぎゅーーーどん!」という流行語の生みの親は川上なわけです。 その川上の作品を語る場の登場メッセージがコレだってのは、とても興味深いものがありますな ■ はいんりっひ > お待ちしておりました☆13人目(だったかな?)>B O N * N O B様 ■ B O N * N O B > 名前の色を変えて出直しました(汗)。やっと来れた。 とりあへず1時までの制限付きで参加します。 ■ むーま > (1時…って後20分無いらしい) 社長注:結局彼女は1時に退場しそこねてもっと居続けることになるらしい‥‥ ■ B O N * N O B > あーー。 話題振られた”危険性”については、まあ、メルティRでは、 メインシナリオライターが泣いていましたなあ(笑)。 私は笑ってましたけど。 ■ ういんど > (き、危険性?(汗)) 社長注:まずメインシナリオライター(メルティR・SS版おまけCDにも登場した新島平佐のことです) の指示通りには書かないのが川上(爆)。 ところが書くスピードが異様に速くて分量も多くて勢いが良いために、 結局川上に圧されて作品が偏向していってしまう。そこが”危険”だということ。 何度新島が「こ、これでいいのでしょうか‥‥」とか「こ、これはさすがに‥‥」 とか悩んでいたことか。 それをB O N * N O Bが、 「あーー、面白いからいいんじゃないの? まあ、ここをちょいちょいと直せば‥‥よし、こんなもんっしょ!」 とプロデューサー検閲して世に送り出したのがメルティRのシナリオ(笑)。 さすがにランディとメルビナのSMネタは没にしましたが。 ランディにエロ小説を読ませるメルビナとかいうネタもあったなあ‥‥(笑)
■ 剣道男 > テンキーHP掲載のシナリオを見るとわかるような……。 ■ むーま > (確かにSSメル1のCDは危険だった(笑)) ちなみに、俺が担当したメルティ関係は以下の通り、 ・SS版メル1追加シナリオ ・SS版メル1オマケCD ・PS版メルリン、コマンダー編、ジュン・ナナ・メルビナの日曜日、 ジュンの成人式やマスコミ、アンジェラクリスマスなど。 なお、たまに勘違いされるんですが「SS版メルリンオマケCD」には一切関わっていません。 ほら、CD見ると、脚本のトコに名前無いっしょ? 社長注:メルティR・SS版おまけCDの脚本を書いていただいて、Q出しもしていただいたのは、 文化放送の名物ディレクター「おたっきぃ佐々木」さんです。 自分が作っているラジオ番組を自らパロディにしたところにあのCDの意味があるわけです。 おたさささんのホームページはこちら ■ B O N * N O B > 危険といえば、メルティ危険シナリオ BY 川上 (メルティR・SS版オマケCDのために準備していたが、大人の都合により使えなかったもの) が実はまだ3本ほどあります。 近々掲載予定っす。 ■ 剣道男 > ……大人の都合っすか(笑) 社長注:簡単に言うと時間と予算が無かった(爆)。 これはドン・マッコウさんがラジオ番組で既にバラしているから、 言っちゃってもいいですよね‥‥? ■ 矢神 > 危険シナリオ三本とは、割合高いですねえ(^^;;; ■ 川上稔 > メルティ危険シナリオ<まだ出す気だったんですかアレを……。 社長注:掲載までもう少々お待ち下さい‥‥ 早く読みたい人はWEB MASTER JINNまで懇願メールを下されば少しは早まるかも
-------------------------------------------------------------------------------- 第六節:「現在進行形的走馬燈(笑)」:(AM00:46) -------------------------------------------------------------------------------- ■ こ〜 > ネタを暖めていたという話ですが、昔って、いつ頃からですか? ■ 川上稔 > 昔< 小学4年。その頃、コンピュータに触れたり、 自分でTRPGのシステム作ったり翻訳したりしてた。 ■ Morita・こ〜 > 小学4年でTRPGのシステムを作成ですか! ■ 川上稔 > 4年で作成……。 モトはD&Dのプラモ(ジオラマプラモですな)をオヤジが買ってきて頭突きで壊したのが原因で、 代用を作る必用が出たワケです。 あと、コンピュータで似たものを作る際、シミュレートしなければいけなかった。 それゆえですね。 ■ ういんど > 小4……。 やはりそれぐらいから暖めてないと、あれだけのものは出来ないのかなぁ? ■ 川上稔 > 暖めてないって(笑)当時のモノはほとんど役に立たない、今。 ただ、いろいろ見て、考えてましたね。 要するに色々考えていると新しいモノが出たり、自分で飽きるから、ネタをパワーアップする。 絵を描く際の訓練の一つとして、 「前日描いた絵を(服装など)パワーアップして、描く」 というのがあり、それをすることによって、 「自分の限界と、一つのジャンルに対して新しい発想を得ていく」 ことができるんですが (蓄積訓練ですね。フツーの訓練法が新しいモノのみを考えるのに対し、切り口を考えていくという……)、 俺の場合はずーっと色々考えていたおかげでそういう”思考法”が身に付いたのではないかな、と。 ここで自己分析をしても意味ないですけど。(笑)
-------------------------------------------------------------------------------- 第七節:「俺的小説系譜」:(AM00:54) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > で、中学の時に角川スニーカーや富士見ファンタジア文庫が発刊かな? そこで初めて体系化したライト系小説を見て、 「今までのSF(銀背)とかに対して、どう進化するかなあ?」 と思ってた。 ■ ういんど > 確かにライト系小説がでたばかりの頃はどうなるか注目でしたが……。 ■ 川上稔 > それからは、そういうのを読みつつも、メインには考えていなかった。 面白いと思ったモノもあればハズレも多かったですからね。 比率的にはライト系よりも、 当時、プライド的に別ノリのあった朝日ソノラマとかを読んでいた気もするんだが……、 まあ、既に一般小説(ノベルズやフツーの文庫)の方で自分の好きな作家がいたから、 そっちがメインでしたね。 そう、朝日ソノラマ。 俺が小学4年だった当時は背中が緑色で、 「SF」とか「推理」とかってショルダーに入っていたんだよなあ。 (これ知ってるヒトは図書館通いが好きか、二十歳以上だろうね) 当時はクラッシャージョウが映画になったり、 吸血鬼ハンターDやキマイラが動き出した頃で相当に今の小説と区別もなく、実験的にハデだった。 俺が文章ってのを考えるようになったのはこの辺りのモノを読んだ時分からだったりする
-------------------------------------------------------------------------------- 第八節:「どうしてライト系小説を書くのか・問題提起」:(AM01:00) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > 別にライト系に限らず、色々と違う方面の小説などにハマった。 バイオレンスアクションやビジネス系は特に好きで楽しんでいたな、と。 それから、まあ、しばらくしてライト系に戻って(というか振り返って)みたら、 こういうと失礼だけど、俺の読みたいものがなかった。 だから書いた、と。 ■ 矢神 > まあ、読み手の数だけニーズはありますね。読みたいもの ■ 剣道男 > いい動機じゃないですか。 ■ 川上稔 > その頃が18かな? で、俺の読みたいモノに比べてひどい言い方だけど、 「容赦のなさ」 ってのがヌルかった。 「あらゆること、死や感情、他人の言動において、現実的なショックが無い」 と言えばいいのかな? 状況のみがあって、その表面のみを見れば良く。そこ以外に何もない。 イヤだったんですよね。 もっとガツンと食らうようなモノはないのかな、と。 「金払って時間削って読んでいるわけだから、何か得たい」 のであって、笑えるマンガ小説なんて言われてていいのか、と。 一般小説にはマジなものとかあるけど、ああいうライト系には無い。 偏見かもしれんが、俺はそういうのを見たこと無いし、つまらんなあ、じゃあ、作ろう、と。 何故、そういうのを書く場所を、 あまり執着していなかったライト系小説に決めたかはおいおい話すと言うことで。 簡単に誤解を恐れずに言えば、俺って人間は、 「ライト系小説が嫌いなライト系小説家」 です。不満ばっかり。狭量だねえ(笑)
-------------------------------------------------------------------------------- 第九節:「俺的ライト系小説定義」:(AM00:59) -------------------------------------------------------------------------------- 実はこのあたり、読みやすくするために時系列をズラしています。 既に相互理解のある問題を離しているので、 初めに結論が出て、後に答えの確認として問いかけがきた、とそういう感覚ですね。 ああ、ここらが編集ってことで ■ ういんど > 確かに、川上さんの小説は今まで読んだもの全てにあてはまりませんねぇ……。 ■ 矢神 > しかし、 「ライト系」 の定義自体が、一番の悩みどころですが……。 ■ 川上稔 > 「ライト系の定義」 ですか? これに対して内容や書名など例を挙げても仕方がありません。 簡単に、しかも否定できない意見を言います。 「ライト系小説を読んだことが無い人間がイメージするライト系小説」 俺が心に抱いているのはコレです。 ■ 矢神 > 成る程、非常に簡潔且つ明瞭なくくりですね、読んでない人間の印象……。 ■ 川上稔 > 読んでない人間<簡単に言えば=親、だったりしますよね。 そういう人の揶揄に対して、胸を張ってられる本が作れないか、と。 マンガ小説じゃねえよ、っていうモノが欲しかった。 ■ ういんど > 確かに余り知らない人に自慢できるものはなかったですねぇ……。 以前のライト系には。
-------------------------------------------------------------------------------- 第十節:「内容確認」:(AM01:00) -------------------------------------------------------------------------------- 時系列的に見て、ここらへん、話題が集中してますね。 やはり大事なことなんだろーなあ、自分達が好きなモノの確認とかっていうのは、 などとオヤジ的達観をしてみたりして ■ ういんど > はじめて「パンツァー」を読んだとき、このアイデアは何処からと思ったものです。 紋章や精霊石とそれを利用した機関等、想像でいて全然無理がない。 ライト系かと疑いたくなったのを記憶しています。 ■ 川上稔 > 紋章や精霊石って、アレはやっぱ、ずーっと昔からファンタジー世界を考えていると、 「理論を作らないとツッコまれる事実に気づく」 じゃないですか。 だからああいう理論を作ってみたわけです。 ■ キメラ > ツッコミ……、それ、よくわかります。 ■ 剣道男 > まぁ、結構、よく読むとぼろの出る小説、ありますからねぇ。 ■ ういんど > "理論"…… 確かにツッコミを入れられませんね。 ■ はいんりっひ > そういう設定があるのは僕すごく好きなんです(笑) しかもわざとらしさがなく設定されているのが。 ■ 川上稔 > 倫敦とか、理論ギリギリなんですよね。 あれは実験的すぎて、一度出版社でボツられるとこだった、と。 当時の担当さんと、 「そんなことやって楽しいんですかっ!?」 「楽しいからまず書かせろっ!」 ってほとんど島本和彦のマンガみたいだなあ。楽しい時代だった……(遠い目)。 ■ はいんりっひ > ……そうですね。 倫敦は確かに、3作品の中で一番設定のつかみ方が難しい作品ですね(苦笑)。 ■ ういんど > 倫敦…… 未だに読んで、全て解っているとはとても言えない(汗) ■ むーま > 倫敦は一番読みました…多分10回以上。 ■ 矢神 > 確かに、あれは未だに悩みます。
倫敦で一気に、 「本性見せたるかっ」 って状態になったんだよなあ、と。 要するに、 「二度以上読める=モトがとれる本」 を作りたかった、ということですね。 伯林は速いパワーがあったけど、即効性。 倫敦は重いパワーで、重複がきくようなものが作りたい、という考えでした。 また、そうすることによって、 「自分の書きたいものを時分の書きたい風に書けるか否か」 を試す、って理由もありましたね……。 その結果、中学生から、 「八回読み直したけど、まだ考えてます」 というファンレターが来る作品になりました。よかよか ■ 矢神 > 倫敦、境目はどうなっているんですか? ■ 川上稔 > 境目……。 (現実との境目で言うならば)現実と小説という言葉の概念の妙ですね。 例えば今、 「実は貴方の後ろに人がいます」 と言われても、俺達、完全に否定することができないんです。 振り向かない限りは。 倫敦の現実は、そういう感覚の表現にあります。 ■ 矢神 > いや、もっと純粋に、 「周りから倫敦を見たらどうなっていて、近づいていったら、どの時点で何が起こるのか」 という意味だったのですが……(笑) ■ 川上稔 > あ(笑)。その場合は、冒頭、ラルフの登場シーンと同じです。 大西洋の一部に霧と闇があって、 「おーいどこにいるんだあ」 「ここだあ」 「何してんだあ?」 「メシ食ってるう」 とか、 「表現しあっていると、いつの間にかそれだけになる」 外から見ると英国本土は霧に包まれた、 「絵画のような島」 です。 (AM01:10)
-------------------------------------------------------------------------------- ってことで第一回分終了! ここから先、まずはシステム性の強い倫敦を引き合いにして作風などを語り、 どんどん危険な話題がでてきます。 自戒もとい次回は俺の現担当であるところのスポーン佐藤さんの紹介もあるぞ! (って内輪で盛り上がってどーする>わし) ちなみに、今回がプロローグ。 次回から用意しておいた議題などを用いて香港のアンケート結果や参加者各位の意見を聞いていきます。 うーむ。深い 社長注:ああ、次回は危険だ‥‥(涙)。 さて、今回はなりゆきで”社長注”となっておりますが、 テンキーでは私のことを「社長」と呼ぶとクビになります(ホント) -------------------------------------------------------------------------------- [第二回ログへ] [第三回ログへ] [第四回ログへ] [第五回御礼編へ] [第六回番外編へ] チャット・インデクスのページへ OSAKAのページへ -------------------------------------------------------------------------------- テンキー・オフィシャルホームページへ このページに関するご意見やご要望はこちらまで
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-------------------------------------------------------------------------------- 第一節:「勝負の理由」:(AM01:04) -------------------------------------------------------------------------------- ※以下、青い文字は「川上稔」による注釈。赤い文字は「テンキー社長」による注釈です また時系列を少し戻し、前回からの問題を整理しよう。 「倫敦」「香港」などの作品は間違いなく読者の負担が高く、既存製品のような、 「読むだけ」 では表層面しか理解できない。 どうしてそういう、 「読者の理解を必要とするもの」 を作るのか。 その理由について。 ■ 川上稔 > 「手は抜かない」 というのが信条です。 たとえ「ガキ向け」って言われるライト系でもね。 逆に言えば若い「素直に見る連中」だからこそ、ダマされ易くもあり、 また、どんなモノにもついてこれるだろう、と、そう思うんです。 ■ ういんど > 確かに「素直」だからこそ、その作品を根本から見るのですから。 ■ 川上稔 > もはやニセモノの現実はニセモノとしてしか捕らえられていない。 真剣に読んで欲しかったら真剣に書く必要がある。 「伯林」とか、人が死んでるっていう事実をやめてくれんかと、出版社から言われたりもしました。 が、やりました。 「倫敦」のようなシステム小説も、「香港」のような人物背景バリバリのも、容赦なく、やります。 だって、それに答える人がいるんですよ。 一昔前と違って、ね。 無論、バイオレンスを語ったり、システムを語れば真剣か、というとそうでもない。 それらをウリにするのではなく、普遍的に、当然のように持ち、必要なときに行使する。 それでまた、主となる問題がテーマとして存在するのがベスト。
■ ういんど > 登場人物がいかなる危機に出会っても死なない。 死んでも何故かよみがえる。 これはおかしいと思っていましたけどねぇ……。 ■ 矢神 > しかし、チェック来るんですか(驚) 人死にに対して。 近頃は大分メジャー化したと思っていたんですが……。 ■ ういんど > やはりライト系は現実に近いのを嫌うのだろうか? ■ 川上稔 > チェックについてですけど、「伯林」が受賞作で、明るいところのある話だったからだと思います。 今はもう向こうも諦めてくれてますけど。 ■ むーま > 諦め……(笑) チェックというよりも提言ですね。 「気分のいい話なのに凄惨な感覚を与えたら、主人公達が悪人に見えますよ」 と言われました。 が、冷静に考えたら、 「気分がよかろうと何しようと、主人公達はどう考えてもアウトローだよなあ」 ということと、 「死ぬときゃ誰が何と言っても死ぬし、書くのを止めても想像できてしまうだろ」 ってことで、そういうことに至る事実を無視しないようにしました。 よく考えたら些細な問題なんですけどね。
-------------------------------------------------------------------------------- 第二節:「スポーン佐藤氏、とは」:(AM01:17) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 矢神 > チェックの件で、「伯林」と「倫敦」に関してですが……。 読む方としては、主題なんかには特に変化を感じなかったんですけどね。 受賞作としての考えがあるというのは、やはり編集の仕事という事ですか。 あ、これは肯定的に 「ライト系小説の専門家としての仕事」 という意味ですが。 ■ 川上稔 > 編集の仕事ってーと、まあ色々とありますんで。 一概には言えないですね。 特に俺は色々知る前に、人事で担当さんが変わったんで。 以前の担当さんのことが知りたい人は、 「セブンスヘヴン:土門弘幸:電撃文庫」 のあとがきを読もう!(他人をCMするなんて俺は神的ないいひとだなあ)
■ 川上稔 > で、編集の仕事に関してですが。 これはあまり言い過ぎると現担当のスポーン佐藤さんが鎖振り回してやって来るんで。 あ、いい人ですよ。 マジに佐藤さんは(怪しくなるようなフォローをするなっ>わし) ■ ういんど > こ、怖い方なんですね(汗) ■ 剣道男 > 鎖振り回す編集……こわいですな(笑) ■ B O N * N O B > あのなあ。 だから誤解を受けるってば‥‥(^_^;。 スポーン佐藤さん、ホントにいいひとです。 「彼以外にメディアワークス社内に川上の担当が務まるひとがいない」 というほど、希少価値のある温厚な方。 俺はそこまで言われるほど非道じゃないつもりなんだがなあ(笑)。 で、解説足りないんだけど、メディアワークス社はアメコミの邦訳もやってます。 それが、トッド・マクファーレンの、 「SPAWN(スポーン)」 というシリーズで、現在15巻まで発売。サイドストーリーは4冊出てます。 川上稔という人間はグラフィック的にケッコー洋モノかぶれなトコがあり、このSPAWNも、 「スパーン? スポウン? どっちでしょーねえ?」 などと言いつつ原版(アメ公版)を横田基地近くのマンガ屋の店員と話しつつ買ってました。 それが日本で読めるとはねえ……。 話がずれた。 えーと、スポーン佐藤さんは、そのスポーンの編集担当さんでスポーンの邦訳版の、 「奥付」 を見るとしっかり名前が載っていて、本人もヘルスポーンです。 参ったなあ。慈母苦(おっと、地獄)の将軍か。 だがまあ今のところ問題もなく、良好に全て進んでいるので確かなのでしょう。 ああ、でも佐藤さん、 「今度できたスポーンの新刊、持っていきますんで!」 と言いつつ、 「にこやかに持ってくることを忘れたまま会議」 されちゃうともう何も言えません(笑)。 帰りに本屋に寄って、 「かなり上手いCMされたよなあ……」 って結局自分で買ってますから。ああ、俺って奥ゆかしい(バカ)。 ※社長注:なーにしみったれたこと言ってんだか(^_^;>川上。
-------------------------------------------------------------------------------- 第三節:「中学生並の雑談」:(AM01:14) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > 死んでも、っていうチェックの話で思い出しましたが、 「『倫敦』で結構、死ぬ話が書けるんだと知りました」 という意見をいただきますね。 この辺りでファンレター多いのはラルフとモイラですか、やはり。 あの二人は助演賞をあげよう。 ■ 剣道男 > 哀しいキャラクターでしたなぁ。 ラルフとモイラ。 ■ ういんど > 個人的にラルフは死なないと救われなさすぎると思った……。 私、ファンでして(笑) ■ B O N * N O B > ヴァレス−クラウゼル、アモン−モイラをくっつけろというのが、私の説ですけど(笑)。 ■ ういんど > 確かにアモン=ヴァレスで同じ「言葉」ですけどねぇ(苦笑) そのくっつけ方。 ■ むーま > ヴァレス=アモンはともかく、僕としてはクラウ≒モイラだなあ。 ■ ういんど > 彼女たち……、全く一緒ではないですね、確かに(汗)。 ■ 川上稔 > 読みとり難しいよなあ。 やっぱ。 補足説明。 「倫敦」を読んでいない人には何だか解りませんな、この会話(笑)。 「倫敦」は似たものどうしの男二人の対決を軸に、彼らが関わる人間の差異によって、 「二人の中にわずかにあった差異が、発現。両者がそれぞれ別の結論を迎える」 という変形のビルドゥングス型小説になっています。 書き上げたときにメディアワークスの次長さん(メルビナそっくり)に、 「鏡合わせにも似た人物配置と対立構図の展開が素晴らしい」 と言われた……、まあ簡単に言えば、 「俺の方向性を決めることとなった重要な作品」 です。 ※社長注:「倫敦」の読了後、 私は川上に「『死にたがりやのアモン』がちっとも死にたがってないじゃないか」と言った。 全登場人物の中で、アモンのベクトルは「生」に向かって伸びているように感じたのだ。 そういう彼のことを私は「陽」という言葉で捉えた。 つまり、アモン(陽)=ヴァレス(陰)、クラウゼル(陽)=モイラ(陰)ではないかと。 陰同士がくっついたのでモイラとヴァレスがああいう結末に至った。 ヴァレス(陰)−クラウゼル(陽)、アモン(陽)−モイラ(陰)をくっつければ、 (幸福の度合いはともかく)少なくとも誰も死ななくてすんだはずではないかと。 で、ヒロインとヒーローがどちらも陽であるのは、 川上の本質が陰だからではないのか?(陰は陽を求める)‥‥と見当をつけている。 ま、陰と陽というのは絶対的な判定方法ではないので、 相対的なバランスを見てそう感じたということですが。 絶対的じゃ無いという意味は、 クラウゼルとアモンがくっつけば、クラウゼル(陽):アモン(陰)となるってなこと。 つまりクラウゼルと一緒の時だけ、彼は「死にたがりやのアモン」でいられるのではないかと。 ま、記号遊びですけどね(こういう風に「読んで遊べる」小説がなかなか無かったからなあ)。
-------------------------------------------------------------------------------- 第四節:「読者の世代」:(AM01:21) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > でもね、一昔前だったらこういう内容をライト系小説をベースに話せなかった。 しかし、段々と俺の読者は増えてきてますし、意見も色々もらえてます。 しかも俺達より若い世代から。 おそらく、今の若い読者は下地的に我々以上のモノを持ってるんです。 なぜなら俺達がライト小説の黎明から見ていたのに対し、彼らは、 「今の完成された市場形」 から見始めているワケですから。 ※社長注:川上の小説を受け入れる素地のある今の10代に、私はとても期待している。 若い=未熟=>騙して商品を買わせる、だなんてとんでもない。 若いからこそ、我々以上の感性を持っているはずなのだ。 ■ はいんりっひ > 基礎が違いますからねぇ〜。 モトからあるということは価値的に、あってフツーですから。 ■ ういんど > 羨ましいですねぇ……。 でも、 「ライト系がどうあるべきか試行錯誤していたころの作品群」 もいいとは思うのですけどね。読むには。 「拙くても可能性のあるモノ」 と、 「完成されて可能性を封じたモノ(これはライト系に限らず、完成物の定め)」 のどちらが良いのだろうか、と。 俺的には両者が混在して、 「完成されつつ、可能性のあるモノ」 が出てくるのがいいんですけど。 ※社長注:んでは、「完成されつつ、可能性のあるモノ」を作るのが川上の責務、 ってことで、よろしく(笑)。
■ 川上稔 > でもなあ、読者が増えてもなあ。 やはり依然として問題が残る。 ……丁度社長もいるし、発表しますか! 「香港読者平均年齢当てクイズ結果発表!」 ■ 彼奴原 > ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち(^人^) ■ 剣道男 > 何歳ぐらいなもんでしょうな。 平均年齢は。 ■ 御堂 > まさか年齢上がった……? ■ はいんりっひ > あっ、僕言ってなかった(爆発) 20.3という事で(爆) ■ 矢神 > こちらも。 間に合っているのなら「23,4」 ■ むーま > どう考えても20歳以下だと思う。 ■ ういんど > (当たってくれ……(苦笑)) この年齢当てクイズに関してはテンキーBBS上で行いました。 景品は俺が描いたアキラ(笑)。 まあ、当時は香港の書き込みが多く、すぐに、 「皆の解答がBBSの次ページに押しのけられる」 のでチェックが大変でした。 ■ 川上稔 > 読者も、新しい人や若い人が増えています。 が、それ以上に多いのが、 「俺の作品を見てライト系に舞い戻ってきた大人」 ですね。 俺と同年代はやはりライト系を求めていたんだな、と。 んじゃ、発表!! ここら辺、初めに作っておいた議事内容をそのままカッペしてます俺。 そこで作った時間をもって、メールソフトで正解者にアキラの絵を送っている、と。 何故か忙しいんですよねーマジに(笑) ちなみに、このログも隙を見てはエディタにガンガンカッペして落としてます。
■ 川上稔 > 平均年齢は19.6才! さあ! ホールインワンがいるぞ! 自己申告!! ■ はいんりっひ > おっ、誰だぁ〜(笑) ホールインワン ■ ういんど > !!! は〜い! 私です! ホールインワン。 ■ 剣道男 > 19.6才か。 ほぅ、わかいですなぁ。 ■ キメラ > 惜しい! 私の予想は19.5……。 ■ 矢神 > おおう、未だ平均以下だったんですか、自分。 ■ 川上稔 > ちなみに正解のういんど氏には、今、アキラ絵を送りました。 160kb食らって下さい。(笑) ■ ういんど > ぐはぁ! 食らった……。 ■ 御堂 > 160kb……。 でかいっすね……。 ■ はいんりっひ > おめでとうございます(笑)ういんどさん(TENKYBBSで確認) ■ 川上稔 > ああ、こういうのデキるのってネットの強みだなあ。良かった良かった。 なお、ういんど氏はテンキーBBSに二番目に答えを書き込んだ人。 あとから書く人は氏の解答を見たりして、違う答えを考えるものなあ(笑)。 今後、こういうイベントがあるかもしれないので、その際は、 「掲示を見た瞬間に答えを書く」 方がいいと思います。
-------------------------------------------------------------------------------- 第五節:「俺達以上の世代(笑)」:(AM01:30) -------------------------------------------------------------------------------- ■ Morita > 最高何歳の方が読んでいるんですか? ■ 川上稔 > 最高は30才。 「倫敦」が最高33才。 「伯林」は44才。 当時の担当さんに言われたが、電撃最高らしい。 ■ ういんど > ……家の親(43歳)が読んでいました(爆) 「倫敦」。 ■ むーま > うちの親も(笑)読んでました ■ 川上稔 > 家の親(43歳) 非公式記録(追い風)ですな。 何言ってんだか俺。 怖いことに、親子で読んでいるという意見が結構あります。 「伯林」よりも「倫敦」にその傾向が強く、おそらく「香港」も「倫敦」に準じるでしょう。 これがただ単に、 「ライト系を読んでいた世代が親になった」 「ライト系を許容できる親が増えた」 のならば良いのですが、 「ライト系でも『倫敦』ならば読めた」 のだとすると、有り難い反面、怖い事実でもあります。 なぜならば、その場合は依然として、 「ライト系を読んで満足できる大人はさほどいない」 ということになりますから。 ■ 剣道男 > そういや、まだアンケート送ってないや……。 送っていれば平均年齢あがったのに。(笑) ■ はいんりっひ > しかし44才(電撃最高)というのはすごいですね(笑) ■ Morita > 44才……。 子供が買ってきたのを読んでみたら面白かったので、自分でも買ったんでしょうか(笑) ■ ういんど > 家の親曰く、「面白いわねぇ」とのこと。 でも「香港」…… 読ませられない(汗) エロシーンですか(笑) ■ はいんりっひ > うちの親が読んだら一気に電撃最高の記録更新だなあ(爆)。 ※社長注:いま、北海道にいる私の両親に全巻読ませてます。どっちも60歳だあ!!! 一気に記録を更新しちゃってスミマセンね。
-------------------------------------------------------------------------------- 第六節:「俺達以下の世代(笑)」:(AM01:32) -------------------------------------------------------------------------------- ■ こ〜 > 最年少は、どのぐらいです? ■ 川上稔 > 最年少? 「伯林」が14才。 「倫敦」が15才。 「香港」が14才。 ちなみに電撃の読者平均は15〜16だそうな。 ■ こ〜 > ふむふむ、「倫敦」は同じか……。 忘年会などで他の作家さんと読者年齢の話をすると見事に食い違う。 「川上さんとか、若い女の子のファンとかいるんすか?」 「ああ、大学生くらいの娘から意見もらうよ」 「いや、そーいうオヤジ的考えの若いじゃなくて、中学生とかの」 「へ? もらったことねえなあ」 「は? 何ソレ」 「いや、倫敦とか、アンケートをテメエで集計したら平均年齢20才越えたぞ。 俺、編集部のマルボルギア吉原さんに絞られたもん」 「すげえなあ、自分とか16才より上の人からファンレターもらったことないっすよ」 こういう年齢問題で話が合うのは、ブラックロッドの古橋氏。 「いやあ、俺達、きっと自分より年上のファンの方が多いよねえ」 (事実、アンケートを見ているとファンが重なっていることがある。 興味のある人は読んでみましょう。筆力ある人で、内容おもろいですから) なんて会話を二人でしてると、心配そうに編集部の人達が視線を向けます。 努力はしてますけど……、いや、マジに。
-------------------------------------------------------------------------------- 第七節:「高年齢理由」:(AM:01:36) -------------------------------------------------------------------------------- ちなみにここで社長退場。 挨拶の後に・・・ ■ 矢神 > ライト系に高い年齢の人達の意志が舞い戻る。 ……「枷」がないですからね。 ■ 川上稔 > 母親さん達に、面白いと言っていただけるのはありがたいですね。 手抜きやお約束はやってませんから。一般小説と同じなんです。 ただ、矢神さんの言うように 「枷がない」 だから、うまくやれば一番伸びる可能性のある小説タイプだと思うんですよね。 ■ ういんど > 確かに「枷」がないですよね、このような小説のタイプは。 だからこそしっしっかりした小説が欲しかったです。 重要発言ですね。 簡単にまとめてみましょう。 「ライト系小説の長所=枷がないこと :短所=枷が無くて荒唐無稽になりやすい」 「一般系小説の長所 =現実の重みがあること:短所=現実主義で想像性が無くなり安い」 この長所のみを抽出したい、というのが俺の考えです。 「想像性の高い世界で、現実の重みがある話」 を描く。そゆこと。 で、この点においては現状広まっているライト系小説の中で、 「都市シリーズはおそらくトップクラスの力を持っている」 と自負しています。 ■ ういんど > これからもきっと色々なタイプの小説でるんでしょうねぇ……。 ■ 矢神 > 「ジャンルのないジャンル」ですからねえ。ライト系は。
-------------------------------------------------------------------------------- 第八節:「他人評価と自己評価」:(AM01:40) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > んじゃ、ついでに質問のほう、移りますか。 第一の質問、テンキーBBSにあったアレ、行きます。 実はCHAT前にテンキーBBSで6項目の質問について考えていただいています。 内容はこれから順次紹介しますので、それを読んで下さい。 かなりトンデモない質問をしているのですが、やはり皆さん真剣な方達ですな。 なかには質問項目をBBSに挙げた一週間前から考えていた人もいました。 ■ 川上稔 > では質問1。 ・内容などは、市場的(年齢層、レベル)にあれでいいものか? 金額分の価値はあるか? ということです。 やはりプロ作品ですから損をさせてはイカンのですね。 まずは100点評価つけて答えて下さい。どぞ。 ■ 御堂 > 80。 ■ ういんど > 100点です。 年令層は広いと思いますし、レベルが高い(余りにもそのままに受けとめられる設定(?)) 価格もその意味で全然安いと思います。 ■ はいんりっひ > 95点かと。 ■ 矢神 > う〜ん、79点(香港)・80点(平均) 現行で100を満たす作品はないような採点ですが。 ■ 彼奴原 > 97点では、と。 ■ キメラ > 上下合わせて700P以上をを無駄なく使っているのはすごいと思います。 ……99点。 ■ こ〜 > 100点! どーでもいいけど、 「うへえ、皆、気を遣いすぎだあ」 とモニター前でのけぞっていた俺。 動揺して下で誤字出してやんの。
■ 川上稔 > じゃ、アンケートから得られた評価点をいきmす。 アンケートの四段階評価を、 「最良=4:良=3:並=2:悪い=1」 として総合計算。 全体で割って%による点数を出す、と。 ■ 全員 > …………。 ■ 川上稔 > それで出てきたのは内容評価:86点! いやあ、皆さんまだまだ甘いな。 俺。実は自己評価する際に、出てきた点を70%するってのが自己評価方法でして……。 これだとまだ60点だあ。くそう。 ■ 御堂 > その方法って70以上無いと50%未満に……。 ■ ういんど > はぅ……。 かなり低いんですねぇ……、自己採点が。 ■ 矢神 > 自己鍛錬はかくあるべきですね。 ■ キメラ > 自分自身で高い点をつけて満足するよりはずっといいと思います。 ■ 川上稔 > ちなみに俺評価だと伯林=35点。 倫敦=50点。 香港=55点ですが。 この、 「結果×0.7=本質得点」 の計算方法は中学時代の恩師から習ったモノです(笑)。 まあ、確かに厳しいと言えば厳しいが、中学っていったら受験だもんなあ。 こっちのは、自己採点のみで済むんだからまだまだ甘い世界でしょう。
■ 川上稔 > 自己採点基準は上記評価法の他、 「伯林=小説になってない」 「倫敦=技法に集中しすぎて話がない」 「香港=色々やったが、今後の発展性に期待」 と言うことで。 ■ はいんりっひ > 自分では全く満足していないんですか? ■ 川上稔 > いや、書けた瞬間は「俺天才モード」に入って電話しまくってあとがき直行ですが。 ああ、あとがきの電話って、アレ、マジですよ。 ■ 御堂 > 確かに、「俺天才モード」じゃなきゃ未完みたいなものを発表出来ないでしょう。 ■ むーま > あとがき……。 「伯林」の、 「見たぞ、見た見た見た!お前の恥ずかしいところを見てしまったぞ!」 も……、マジっすか。 ■ ういんど > 私の友人達に、とても好評です、後書き(苦笑)。 しかし、確かに自己採点は辛くするべきでしょうが……。 予測より低かったなぁ。 ■ 川上稔 > 満足という面ではまだまだかな、と。 書物を作るというのは他人に読ませ、影響を与えることに意義があると思うので。 (娯楽映画でも、”その気にさせる”ものってあるでしょ? アレ) その面で言うとまだまだ広まっていない。ということは力が足りない。 まーだちょっとカルト作家かな、と。 こういうのを「作っていい」っていう気風がまだ、さほどないんです。 内部にいると解るんですが。 自己採点ではルール上、なかなか70以上がつかないと思います。 大体、とにかくネタが控えているから、そっちがおもしろそうに感じるんですよね。 だから次へ次へ、ある意味で言えば、誰も知らないモノをどんどん作っていきたいから、 「点数はそのたびに新しくつけるようなもの」 ですね。
■ 川上稔 > でもまあ、今まで作ったモノは好きですよ、点数抜きで。 だって俺が読みたかったモノですから。 ■ Morita > 自己採点からみると、「香港」が一番好きということでしょうか? ■ 川上稔 > 「香港」が一番好き<最新作が自信作、ということで。 ■ キメラ > やはり「モノ」を作るときには、 「自分が求めていたものを作るのが一番」 ということですか? ■ ういんど > 更に…… ですか。 読者としてはとても喜ばしいことですな。 キメラさんの質問。 よく考えたら、 「自分の嫌いなモノを作ってどーする(笑)」 というか、やはり仕事で書いているイメージあるからそう思われるのかなあ? 皆が皆、金儲けのためだけにやってるわけじゃないですよ、とフォロー。 ただ、 「自粛して、逆らうことを試さずにそういうモノを作ってしまう」 気弱ないいひとも多いです。 そういう人は何か言えば解決になるのに、奥にしまって自壊していく。 もったいないんですけどね、本人にとっても他人にとっても業界にとっても、それって。
-------------------------------------------------------------------------------- 第九節:「他人の他人評価」:(AM01:58) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > さて、んじゃ、次の質問。挿画の件ですね。 ・質問2 挿画などのレベルはどうなのか? まあ、これは素直に御願いいたします。OSAKAの絵や今後のものにも関わってきますので。 これも100点評価と、できれば感想を。上下巻含みで考えて下さい。 ■ ういんど > う〜ん…… 60点ですかな……。上巻と下巻で絵が変わった様な気もするしなぁ……。 でも…… デヴァイスと「羽」がとても印象的ですねぇ。 ■ キメラ > 今までに見たことのない絵だったので……65点ですか。 (今後に期待) ■ こ〜 > 70点です。 ■ 矢神 > 50点。 全体としての絵柄には満足なのですが、表紙としての「押し」が弱いような気がします。 あと、好みの分かれるタイプの絵柄だと感じました。 ■ 彼奴原 > 「香港」は線の太さが好きですね。75というところでしょうか。 ■ はいんりっひ > 70点でしょうか……、初めてですしね。 ■ 御堂 > 独自のタッチで良いんですが……。 こいつは測定不可ってことで私には評価できません。 ちなみに御堂氏は御自分でも絵の修練中。 他人に対する視線は厳しいぜ。 ■ 川上稔 > じゃ、アンケートから得られた絵の評価=81点 実はアンケートは、 「カバーの評価」 なんですよね。 挿画に関しては、下巻を見れば解りますが、 「上下で全然レベルが違う」 から、下巻評価ではどうなることか。 ちなみに挿画はCGです。 うちの副業務でCG塗りってありましたよね。アレ。 ■ ういんど > なるほど……。CGですか。
-------------------------------------------------------------------------------- 第十節「絵の変遷」:(AM02:04) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > 挿画のレベル違いに関しては、一つ理由があります。 実は印刷能力が印刷会社の方で上がったようなんですよね。 今まで白黒は600dpi程度だったのが、二倍程度になっているのではないかな? 確証とってません。旭印刷さん、どうなんでしょうか(笑) ■ 川上稔 > コンピュータ上で描かれた規律あるグラデが、昔は出来なかったんです。 が、今はできるんだもの……。 上巻では今までとの違いに対処するノウハウが無かった。 というか違うと言うことをしらなかったワケです。我々的に。 dpiを細かくしていくと解るんですが、 600程度の印刷ではグラデの際に粒子の段階が見えてしまうんです。 逆に、これを利用して、トーンを貼ったような効果が得られる。 灰色が粗めの黒のツブで出るわけだから、 カラーチャートと粒子の比率表を作ればスクリーントーン無しで絵が描ける。 が、dpiが細かくなるともはや粒子が、 「灰色を塗っているのと変わらない」 状態になって、グラデは薄墨を使ったようなものになります。 コレが、正しい絵を出すという意味ではいいのですが、トーン処理を狙った絵ではガンになります。 軽く言えば、 「dpi粗め(トーン処理狙い)=灰色は濃くなると印刷で”粒子の大きい黒ツブの密集”になる」 「dpi精密(薄墨処理狙い) =灰色は濃くなると隙間のない黒に近づく」 解ります? 同じ色を塗っても、 「dpi粗め(トーン処理狙い)=必ず粒子の隙間が生まれおり、線とも完全に貼り付かないので、明るめ」 「dpi精密(薄墨処理狙い) =必ず線まで浸す灰色がベタで入るので、暗め」 なんですよね。 だから上巻を塗った際に、今までのトーン処理対応表を見てやったら、 「このくらいでOKと思ってたら真っ黒になってるう!」 っつー事態が発生したワケです。皆死んだ死んだ。 そこでテンキーの姉御達が研究こいたりシミュレート (フツーの白黒印刷と考えてレーザープリンターなど使うと 見事に”トーン処理”されるので試し刷りができない。 よって、カラープリンタで色が染みやすいコピー用紙に白黒印刷を行ってベタ感覚を確かめた) して、下巻のクオリティを作り上げた。 締め切り期間は上巻と同じだけしかもらえなかったので大変だったのだよ、アレは。
■ ういんど > そういうことでしたか。 急に絵が変わったので驚いたのですが(苦笑) ■ こ〜 > ふむふむ、なるほど。 ■ 川上稔 > あの絵柄が評価されたのはキャラのデザインってのもありますが、おそらく、 「格闘ゲームの影響」 とかもあり、 「クセのあるキャラを、皆が認められるようになっている」 んではないかと思いました。 現に、中学生がアキラのイラストとか送ってきてるんですよね。 ハガキに描いて。 ■ はいんりっひ > 本当にただの挿し絵なのか、内容を把握する手助けになる絵なのか。 という事も加味しないといけないかもしれませんね……。 ■ 川上稔 > とりあえず、ま、俺はやっさんの絵が好きですね(個人的ですが)。 あれほど艶っぽい線を描けてデザインがキレてる人はそういないので。 ■ ういんど > 小説の雰囲気を見事に伝えているキャラの絵だと思います。 ■ はいんりっひ > 雰囲気を伝えるという意味ではいいと思います。 ■ 川上稔 > ちなみに挿画に関しては担当スポーン佐藤氏とかなり話し合いました。 何しろ身内が描けるからダイレクトにイメージを伝えられる。 こっちでも手は抜いてません。 口絵の写真とか、上巻内部にタイトルを仕込むなど、その会議で生まれたモノです。 ■ ういんど > 空の写真ですか? あれ……、上巻と下巻で違うのは意味あるんだろうなぁ(苦笑)
-------------------------------------------------------------------------------- 色々考えましょう(笑)と。 こんなもんで第二回目終了! まだまだ質問は四項目もありますし、「香港」について全く語っていないぞ(笑) どうなることやら。 次号戦慄!(古いって) ※社長注:な、長い。まだ続くのか‥‥(汗)。 全部読んでくださった方、お疲れさまです。 物作りにはすさまじいエネルギーが必要なので、 川上+TENKYグラフィックチームのエネルギーの一部分でも感じてもらえれば、と思います。 -------------------------------------------------------------------------------- [第一回ログへ] [第三回ログへ] [第四回ログへ] [第五回御礼編へ] [第六回番外編へ] チャット・インデクスのページへ OSAKAのページへ -------------------------------------------------------------------------------- テンキー・オフィシャルホームページへ このページに関するご意見やご要望はこちらまで
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-------------------------------------------------------------------------------- 第一節:「キャラの好悪」:(AM02:10) -------------------------------------------------------------------------------- ※以下、青い文字は「川上稔」による注釈。赤い文字は「テンキー社長」による注釈です では、前回からの質問を受けつついってみよう。 ■ 川上稔 > さて、それじゃあ3っつめ、キャラの話にいきますか。 3・どのキャラクターがどのように好きか? 個人的には皆好きですが、よく考えて、一人1キャラのみとして下さい。 ちなみにクラウゼルとか言うのは無し。 どーでもいいがこう言った瞬間、ギャラリーやってる友人からメールで、 「え〜、クラウゼル無しかよお!」 の声殺到。黙れオマエら(笑) ■ 矢神 > 全体ならヴァルター。 香港ならばガンマル……。 捻りのある性格が好きなんですね(笑) ■ はいんりっひ > 将軍ですね(好きというか、こういうキャラの存在がいいです) で、実は設定に大きく関わりがあるという所かな。 ■ ういんど > う〜ん、やはりラルフ・グルトかなぁ……。 理由:自分の生き方を否定しないから。 過去をけっして話さないから。 ■ 川上稔 > だから香港限定だって(笑 ■ ういんど > う。香港だとガンマル。 決してみずからの苦悩を表に出さなかったから。 カッコつけると損をするといっていましたが(苦笑) ■ キメラ > ダブル・リー……。 一人でいろいろと背負い込んでいるキャラは好きです、個人的には。 ■ 彼奴原 > 警部……かなあ。将軍も捨てがたいけど。(って親父ばっか(爆)) ■ 御堂 > コウガっすね。 理由……・いいヤツじゃん<って理由になってないか> ■ 矢神 > 女性が一人もあがりませんねえ(笑) ■ 川上稔 > コウガとWリーはうちのCG班(女性陣)で人気が高いです。 なお、社長はリンが好き。 皆ヒネやがって……。 読者にはアキラのウケがいいですね。 ※社長注:下巻でリンが立ったのでええなあ、と‥‥。 Wりーはルックスがいいので(笑)一時自宅の壁紙にしてました。 今はクラウゼル(by KAWAKAMI to HEINLICH)がモニターで笑ってますが。
-------------------------------------------------------------------------------- 第二節:「怖い女(笑)」:(AM02:25) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 御堂 > 女性……。ジーニアスか……。 ■ 川上稔 > 俺の書く女性って「怖い」んです。 実際にいそうなんだそーで。 ジーニアスとか、怖い気がするなあ……、そう言われると。 ■ ういんど > ……あんな感じの人って、いますよねぇ、確かに。 ■ 矢神 > 存在感が感じられるのは、良いことですね < 怖い ■ ういんど > 特にアキラのような明るいトボけた(笑)女性は実際に存在するのを知っている(笑) ■ 川上稔 > ただ、女性を書く際に、 「都合のいい女を書くくらいなら、男を振り回すくらいの女を書きたい」 と思っています。 女性に、 「どうして? どうしてよ?」 と詰め寄られたときの怖さってありますよね? あれが欲しい。 ■ ういんど > それはいやな怖さですなぁ(汗) ■ 矢神 > 子どもの自分には、わからない怖さです(笑) 解る男は解れ(笑) ※社長注:なるほどなるほど。ナナ系のオンナですね。 逆に、何も言わなかったり本心を隠してしまっているオンナは川上には描きづらいのかな? サクヤとか(笑)。 ■ はいんりっひ > ジーニアス。彼女もまた斬新な存在だったと思います。 ■ 御堂 > いわいるイタい女っすか? ■ ういんど > 「名は体を表す」……。 香港の登場人物には多い様な気が(苦笑) ■ 川上稔 > <アーバンネームですから。 ジーニアス=天才とか、そういう意味ですが、スラングで馬鹿正直ですね。 そういうこと。 あまり名前に意味は込めていないつもりですが。 ソレってやりすぎると話が予定調和っぽく見えるので。 ちなみにガンマルとかって、意味は無いです。 初期設定でガンマルって名前を漢字で書いたら、 「銃丸」 かなあ、とか思って、そのまま採用しただけなんですよね。
-------------------------------------------------------------------------------- 第三節:「どうしたもんかねえと閑話休題」:(AM02:24) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > ちなみにアキラはフィギュア化希望。個人的に。三面図既にあるし。(笑) ちなみにあの翼が可動で、本体が支えなく直立すること。 ■ ういんど > あ、それ欲しい。 ■ 矢神 > 勇士募るですか(笑) ■ 御堂 > いらんいらん。これ以上増えたら作りきれんて。保存場所もないし。(笑) ■ ういんど > でも……。あの羽の色の再現、難しいなあ……。 ■ 矢神 > 翼はクリアパーツで再現でしょうか?(笑) ■ 御堂 > 羽根と肌の生え際が難しいかと。 構造・色彩・可動技術的構造からみて。 ■ 川上稔 > 羽根と肌の生え際に関しては完全解説三面図ありますよ。 小翼や主翼、微毛などに分解解説して主翼の展開方なども見せている三面が。 いずれテンキーHPに載せますが。 実は実家が造形関連(映画や遊園地のセットやロボットの設計作成、構造企画)の 仕事をしていたりするんですよね、俺。そういう意味で言うと3Dというのは興味があります (自分で買ったり作る気にはなれんのだが……、と言いつつ、 アキラの翼は絵の立体をとるために立体モデルを自作しました(バカ)) ちなみに三面図は近日公開予定。 ※社長注:アキラを立体化したいという企業及び個人の方、大歓迎。こちらまで。
-------------------------------------------------------------------------------- 第四節:「さて話を戻そう」:(AM02:32) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > では、 4・話のどのあたりが好きか? もしくはキライか? どちらかを書いていただければ結構です。 はてさて。俺の小説は中盤がタルいんで有名なんですよね……。 この質問マズったなあ、どっちも答えてもらうべきだった。 今頃になってテメエの甘さと逃げを痛感する次第。 ■ ういんど > ガンマルとアキラのやり取りが面白くて、しかも現実でもありそうだから好き(笑) 他には、ジェイガンの最後が。 とても悲しい場面とも思いました。 印象の強さで言ったらやはり最後の、 「ねぇ、聞こえる!? わたしのこたえが!」 ですが(笑) ■ Morita > 私は「始末書なら書き慣れてるもん」という台詞が好きです。 (これでアキラが気に入りました) ■ マリュウ > 好きなシーンは、ラストです。 ■ 矢神 > 「鍵は壊したら開いちまうしさあ」 は好きですね。(笑) ■ キメラ > 「重なる二人」の二人のやりとりと、「午後の部・最終幕」以降。 最後はマジで涙を流しました。 ■ はいんりっひ > 下巻の第八幕でしょうか。 「こうなるのか?!」と言う感じでしたんで。 会話のやり取りもいいですけどね(笑) ■ 川上稔 > 八幕は何度も書き直した章ですね。ありがたい 最後の「ねえ〜」は、あの字を大きくしてくれたスポーン佐藤さんに感謝しよう! 始末書なら、っていうところは、社会人だよなあ……。
やはりラストとかのイメージが強いですね。 ファンレターでは、面白いとか云々より、 「凄い」 とか、 「泣けた」 という意見が多く、安堵の一息をつきました。 実は小説家やゲーム制作者にとっては、 「面白い」 というのはありきたりの言葉で、賞賛にはならないんです。 贅沢な話ですが、だけど、モノを作る人間が、 「面白い」 の一言で終わるモノで満足してたら、イヤでしょう? ※社長注:川上作品の特徴=「文字で視覚的に遊ぶ」。 ゲーム「奏(騒)楽都市OSAKA」でも存分に遊んでおります。 日本で初めての記号論小説家と私は呼んでいる。 フランスの小説家のM.ビュトールとか、 イタリアの哲学者&小説家のウンベルト・エーコとかに近いセンスを持つ。 しかし呆れたことに彼はこのような作品を読んだことが無いと言うのだ(汗)。 「なに、するってえとアンタは天然でコレを書いているわけ、え? バカ言うんじゃないの、ちょっとここにお座りなさい」ってかんじ(笑)。 OSAKAにおいてゴダール(ヌーヴェル・ヴァーグを代表するフランスの映画作家) そのものみたいな記号遊びのシナリオを見たときには、 私は超個人的に感涙にむせんだのであった。 ちなみに、日本で初めての記号論漫画家は、 やはりOSAKAに参加している飛鳥五郎氏です。
■ ういんど > スポーン佐藤さんに感謝せねば。 ■ キメラ > まったくです。感謝。 ■ 川上稔 > 作者がこんなこと言うのもなんだけど。 どのあたりが好きかといえば上巻ではガンマルと将軍がセリフのみ進めるトコ。 下巻ではアキラが昇っていって歌を歌うトコと、エンディングかな。 セリフでいうと、「えーヨーロッパの〜」「黙れバカ」かな。 ひどくリアルだとツッコミ多数。 しかし、エロ場面に対してのツッコミはBBSとかではもちろんだが、 ファンレターでは一つも無かったなあ。 皆、禁句だと思っているのだろーか。照れ屋さんだなあ(バカ) ※社長注:そうそう、読者アンケートでは例のシーンについて誰も触れてないんですよね。 みんな若いなぁ(爆)。あのシーン、アキラの描写がリアルなので 「ガンマルじゃなくて、アキラの方に川上が入ってるのでは?」と川上に突っ込んだ私。 ■ ういんど > 「えーヨーロッパの〜」 って、あれは苦笑しか出来なんだ(汗) ■ マリュウ > えーと、他には市役所のシーンとか。 リンとコウガの何気ない会話とか、好きなとこはいっぱいあります(^^ ■ 御堂 > コウガが頂きに行くとこあたり。 ■ 川上稔 > ム、ムチャクチャにシブいなあ……。 ※社長注:私は上巻の導入、開幕〜第一幕が好きです。何度も何度もここだけ読んでいる。 この作品、「ランダムアクセス読み」できるところがまさに音楽CDそのものだよなぁ。
-------------------------------------------------------------------------------- 第五節:「天使の夜」:(AM02:41) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > と、えーと、ちなみに参考までに。あとがきで言ってるPSYSの曲を聴いたヒト〜。 ■ ういんど > PSYS、買わないとなぁ(苦笑) ■ はいんりっひ > 残念ながら入手できず……(むーまさんが一番知ってるはず=PSYS) ■ 矢神 > 手に入りません(T_T)PSYS ■ マリュウ > 見つかりませんでした(^^;<PSYS ■ キメラ > 「Angel Night」は聴いたことがあります。PSYSは好きですから。 ■ Morita > PSY・SのCDは手に入れました。(TWO HEARTS) ■ 川上稔 > ラストが好きな方は「TWO HEART」を。 「FROM THE〜」の曲で、エンディングが見えてきます。 ■ ういんど > なるほど。 さっそくさがそう(苦笑) ■ マリュウ > また、探してみます<CD いや、良いんだ、マジに! 俺は歌や曲のイメージから話を作ることが多く、前述二曲はモロに香港のそれです。 友人がそれらを聞いて、 「ああ、オマエがやりたかったことが解った」 って言ってたくらいなんで、相当、イメージ引きずってんですね。 なお、エアリアルもパンツァーも同様です。余裕があったら捜してみよう。
-------------------------------------------------------------------------------- 第六節:「前との比較」:(AM02:47) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > はてさて、それじゃあ次に行きますか。前二作との比較。 5・前二作と比較してどうなのか? 何が”どう”なんだろう?(笑) ただ、ちゃんと小説として進化しているか否かが聞きたいですね ■ マリュウ > 正直にいって、パンツァーポリス読んで、その感触のままエアリアル読んだら、面白くなかったです 香港読んでから読み返すと、おもしろかったんですよね、エアリアル。 ……なんでだろう?よく分からない(苦笑) ■ ういんど > 前二作に比べて更にテンポがよくなっている様な気がします。 タイムリミットの仕掛けがそうさせているやも知れませんが…… ■ 矢神 > 書き慣れてきているのは感じます。 ただ、敢えて否定的なことを言いますと、伯林に一番強く「語りたいこと」を感じました。 この問題、重要なのであとで語りますね。 ■ はいんりっひ > 遺伝詞を読む→外燃詞とか、紋章とかの点で前作を踏まえてたのはいいと思いますけど。 もう少し英国色(エアリアルの概念)を濃くしたほうがいいかな? とも思ったりしました<比較 ■ キメラ > 「娯楽性が高い」(伯林)→「設定が濃い」(倫敦)→「難解で読みごたえがある」(香港) ■ キメラ > 私も一番影響を受けたのは「伯林」でした。 ■ 御堂 > 取りあえず、香港・倫敦>似てる 伯林>別物。 ■ マリュウ > 伯林を読んで、何気なく「続編」と思って倫敦に手を出すと、弾かれるような・・・ ■ ういんど > 「設定」の倫敦と「底が深い」香港。 そして中心に「訴えかけてくる」伯林の様な作品が出たらもうすごいことになるのでしょうなぁ…… ■ 御堂 > 香港はALLキャラ総動員で展開する話。 倫敦はアモンとクラウゼルの関係重視の話って感じですか。私的にいうと。 ■ マリュウ > 警部の存在が唐突で、ラストの前につまづきがあるような感じがしました。 よく分からないキャラは結構なんですけど……。 ラストで置いていかれるのはちょっと嫌ですね・・・。 それと比べて香港は、最後の最後まで、全キャラが関わる話でしたね。 ■ はいんりっひ > 登場人物たるものそうあるべきではないでしょうか?
-------------------------------------------------------------------------------- 第七節:「猫娘」:(AM02:57) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 御堂 > ところで倫敦の続編とか、出すんですか? でないとフィリアスが可哀想です。 ■ 川上稔 > 御堂さんはフィル好きですか……。 ■ 御堂 > いや好きってほどじゃないっすけど……。 キャラ紹介までされていたのにも関わらずかなり薄かったので……。 ■ 川上稔 > 倫敦続編とかは考えてます。伯林の続編も。 香港はムリだけど。 ■ 剣道男 > おもしろそうですねぇ。伯林・倫敦続編か……。 ■ 川上稔 > しかし、フィルは絵を描くか……。 ■ ういんど > フィル1匹希望(爆) ■ 剣道男 > クラウゼル、一人ください。(笑) ■ キメラ > 私もください、マジで。(爆) ■ 川上稔 > 皆さん落ち着きましょう。(笑) だけど何だか希望者多いなあ。絵はあげますが本体権利はあげないということで。 貰い手は小説内にいますので。 いずれテンキーHPにアップしますんで。 これは約束守ったぞ。 しかし、やっぱりこういう希望が出るキャラって倫敦のキャラなんだよなあ。 作品的には渋くて人間性重視の内容なのだが、その分、キャラが、 「身近」 なのかもしれない。 ちなみに倫敦挿画の中北晃二さんはHPに挿画など使わせていただく際、 快く許可をして下さいました。どうもありがとうございます。 ※フィル絵はこちら。
-------------------------------------------------------------------------------- 第八節:「おいおい他社のCMさせてどーするよ俺」:(AM03:05) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > んじゃあ、最後の質問。 6・皆さんのお勧めゲーム・小説などをご紹介下さい。 ちなみに俺の作品やテンキーの作品は不許可です。 御自分のベストを一つずつ。御願いいたします これを終えたらアンケートから解った細かいデータをお見せします。 ■ ういんど > そうだなあ、最近いいゲームやってないなぁ……。 う〜ん……。 「ポポロクロイス物語」(SCE)かな?(爆) 小説は最近全くいい小説がなくて……。 ……「モモ」<ミヒャエル・エンデ>(苦笑) ■ はいんりっひ > 僕は「ポリスノーツ」(コナミ)ですね<ゲーム 小説は「深夜特急」(沢木耕太郎)がいいですね(というかこれは体験記か……) 本当の意味での「小説」で、いい! って思ったものは……。 (あまり量を読んでないからなぁ……) ■ 矢神 > ゲームでは、「タクティクス・オウガ」(クエスト) 小説だと……難しいですね。「好き」の方向性も色々ですし。 強いて言うのなら「卵王子カイルロッドの苦難」(冴木忍・富士見ファンタジア)ですか って、 ああ!! 「アルジャーノンに花束を」の存在を忘れてました! ■ マリュウ > テーブルトーク……はカテゴリだから違うか。 「グランディア」(ゲームアーツ)ですかね<お勧め 小説は司馬遼太郎の「菜の花の沖」 ■ キメラ > 小説=「卵王子カイルロッド」(冴木忍) ゲーム=(この場であえてあげるなら)「YU−NO」(エルフ) ■ 御堂 > カイルロッドですね。 ゲーム……。部分的にいいと思ったのはあるけど総合的にはないですネェ。 ■ 彼奴原 > 一応私は某魔術師オーフェンシリーズが好きですね。 ■ 剣道男 > ゲーム「ガングリフォン」(ゲームアーツ) 小説「亜州黄龍伝奇」シリーズです。 読みにくいけど「封神演義」(講談社文庫)もいいですなぁ。
■ 川上稔 > カイルロッド強いなあ。アレは読みましたね。 でも、個人的には角川の「風の歌〜」だったかな? 弘司挿画のアレ。 話まとまってないけど雰囲気が好きで。 ■ 矢神 > あれも好きですよ(笑)「風の歌星の道」は。 ■ 御堂 > それいったら空みて歩こうのが良いですって。 ■ 川上稔 > 小説家として好きな人を個人的にあげると 「夢枕獏」 「船戸与一」 「神林長平」 「落合信彦」 かな? 全然ライト系じゃないでやんの。 実はライト系はほとんど手を出してないからよく解らん(笑) たまたま読んだのが話で出たからいいけど、突っ込まれたらボロ出てるしなあ。 やっぱ電撃の友人作家以外のライト系も率先して読むべきなんだろーか。 ※社長注:↑あーーー読まんでええ、読まんで(笑)。そんな時間あったら、 ノンフィクションとか学術書とか読んだ方がまだエサ(肥やし)になるって。
-------------------------------------------------------------------------------- 第九節:「香港他男女生息比率」:(AM03:15) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > さてさて、じゃあ、香港の細かいデータを行きます。まず、男女比率。 女10% 男90% これはピッタリでました。 なお、パンツァーは未計測ですが、倫敦は、 女35% 男65% という異例の数字でした。やはりああいう話は女性が好むのかなあ……。 ■ ういんど > 随分偏っていますねぇ……。 ■ マリュウ > やっぱ女の人少ないんですね、香港。 ■ 川上稔 > 実は男女比率10%でも女性は多いほうです。 ■ マリュウ・ういんど > そうなんですか? ■ 川上稔 > パンツァーは女性が4%くらいだった気がします。 向こうの測定のまた聞きですが。 ■ はいんりっひ > 倫敦は、表紙が女の人にとっつきやすそうな感じだからじゃないですか? ■ 川上稔 > エアリアルの表紙、友人はクラウゼルのハダカが恥ずかしくて買えなかったそうな。 ※社長注:エアリアル、中のイラストにも結構恥ずかしいものが一部あった、と思う(笑)。 パンツァーは表紙の「元気で気の強そうな女の子」の印象が女性受けしたのかも。 ■ はいんりっひ > ごく普通に買えましたけど(笑) ■ 矢神 > 抵抗を覚えるべきだったんでしょうか?(笑) ■ 剣道男 > 自分の方が恥ずかしい格好で買ったから大丈夫(笑、そして謎) しかし、まあ、倫敦、って退廃的(?)な感じがするからでわ? ■ ういんど > 表紙は全く気にしてなかった(汗) 今表紙見て理解。 全体的には結構女性の方も読んでいると思ったのですがねぇ。 ■ マリュウ > いま表紙しげしげと眺めても、あんまし恥ずかしいとは思いません。 終わってるのか? 私(笑) ■ 御堂 > 大丈夫です。電車の中でえろ本とかそっち系漫画平気で読めますから、私は。 まあ、香港も下巻のアンケートを集計したら相当に変わる気もします。 グローバルに売っている製品のように見えて、反響としてみたらこれだけ違う。 おそらく男女の、 「アンケートなどに対する情熱比率」 の差異もあるんでしょうけどね。
-------------------------------------------------------------------------------- 第十節:「最高登場人物」:(AM03:17) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > さて、次はベストキャラ。香港抜きですが。 ちなみに今までのベストキャラは以下の通り。 全体:一位:ヴァルター :二位:クラウゼル :三位:エルゼ :四位:マイアー :五位:ラルフ おいおいアモンはどこだあ? ■ マリュウ > エルゼってクラウゼルに負けてるのかー・・・ ■ ういんど > ヴァルターのように生きて見たいものだ(苦笑) ■ マリュウ > あんなふうに生きてたら、ソッコー死にますねぇ(笑) ■ ういんど > やはりそうかなぁ?(苦笑)ソッコー死ねるか。 ■ 矢神 > 敵作りますね(笑)ヴァルター。 破天荒さだけなら、自分も似たようなものですが(爆) ■ マリュウ > 性格でなくて、あんな生き方したら死にます(笑) イラストの影響が大きいと思います。 しろー大野先生のマンガって熱いですから(笑) メディアワークスの忘年会で、しろー大野さんとウチ(テンキー)の社長を会わせたのだが、 しろー大野さんの”いいひと”さに社長がビビってました。 いやあ、ヒゲと筋肉だけどマジでいいひとなんだホントに。 そういうわけで興味ある方は、 「OZN(オズヌ):メディアワークス:しろー大野著」 (電撃GAOにて連載中:単行本は現在5巻まで、続刊中) ということで一つ御願いします。 ※社長注:この忘年会でお会いした作家&イラストレーターの方々、 みなさま「いいひと」でらっしゃいましたよ。 そうでなきゃフリーで食っていけないよなあ、と。 藤岡建機先生と出会えたのもこの忘年会のおかげ。ビンゴで空気清浄機をもらったし(笑)。 メディアワークスさん、ありがとう!
■ 川上稔 > ヴァルターと言えば俺は性格ムチャクチャ似ているそうな。死ぬけ? ■ ういんど > もしかしてモデル、川上さん本人?(苦笑) ※社長注:言葉遣いが似てるっす(笑)。最近はヴァルターよりもガンマル寄りか? ■ 川上稔 > マイアーは女性ファンが多いです。 倫敦のファンレターに「前作のマイアーが可愛くて」と書かれたのはマジ。 可愛いか? ■ 剣道男・ういんど > ……ぬぅ。かわいい……?? 性格かなぁ? ■ マリュウ > 可愛いんじゃないですか?(笑)相対比として。 非道な先輩にあえてつっぱねる後輩 ■ 矢神 > その手の「可愛さ」の判断基準は、謎ですね(笑) きっとダブル・リーにも来るのではないでしょうか ■ マリュウ > やおい系のかわいさでないですかね(笑) 伯林はオヤジオヤジ、美形、ヤな男(笑)、女の子でしたからね〜 ■ ういんど > それも渋いオヤジばっかり…… ■ はいんりっひ > 何か「優男」的な部分がいいんじゃないでしょうか? ※社長注:マイアーって女の子に人気あるのかぁ(驚き)。 「甘いな」っつーか、「隙がある」というか、 彼のそんなところが母性本能をくすぐって「可愛い」印象となったのでしょうか。さて。
■ 川上稔 > ヤな男(笑)、女の子、というより迷惑な女の子、かな? カラミティジェーンが頭の中にあった。 あと、ラルフが好位置なのはしょうがないかな、と。 いいヤツなんだよなあ。 挿画の中北さんがデザインしてくれたんですよね。 銃器など、お任せ状態。ありがたい。 中北さん。こだわってる方ですよね。 長銃と書いただけの描写なのにGewをラルフが持っていたりして。 説明くさくなるから描写カットした文章を、絵で補っていただきました。 ■ マリュウ > ラルフ、一番好きです。エアリアルの中で、いちばん分かりやすいキャラ。 ■ 矢神 > 口絵見たとき、「サイバーパンク入ってるのでしょうか?」とか思いました(笑) ラルフは。 ■ マリュウ > いますね、あーゆーの<目が埋め込みの照準機とか。 ■ ういんど > とても神父には見えなかった(苦笑) ■ キメラ > このシリーズのカラーページって、無駄がなくていいと思います、個人的には。 ■ 御堂 > それよりコウガぁ! ■ ういんど > コウガ…… いいところ、押さえていますなぁ(笑) ※社長注:コウガって、私の目から見て、一番さとやすっぽいキャラクターだと思うっス。 なかなか描けないよ、あーーーゆう「チンピラ曲線」は(←いま名付けた)。
-------------------------------------------------------------------------------- 第十一節:「読書量」:(AM03:30) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > さてさて、そろそろ最後の情報、 「どのくらいの読書量を持つ読者が読んでいるのか?」 いってみましょう。 ライト:19%: 年間10冊以下の方達です、意外と多いので驚き。 だが、電撃に言わせると少ないそうな。やれやれ。 並 :12%: 年間11〜30冊の方々です。 普通ならこの辺りがメインになるそーなんですけど。アレレ? ハード:69%:年間31冊以上: うーむ、すげえ支持をうけてるなあ。どうなってんだろうか。 ■ キメラ > なんか、わかる気がします。<読者層 1000はいかないけど、700近くはあるような気が……<持ってる小説の数 ■ マリュウ > ハードですね、僕は(苦笑) 小説のみで、月だいたい3〜6冊。年80冊弱ってとこです。 捨てたり売ったりした奴も合わせたら、1000行くかな・・・行くなぁ(^^; ■ 剣道男 > 私も「ハード」の部類に入りそうですなぁ。 ■ 矢神 > 現在460冊強。月10冊弱というところですね、読書量は(漫画・小説含む) 古本買わない派なんで、毎月破滅寸前です(笑) < 自分 ■ はいんりっひ > 年間10冊以下の方=僕がそうですね。 ■ 御堂 > 1500冊以上は読んでますけど……最近は金銭的にあんまり読んでませんね。 せいぜい月に10冊いくかいかないかです ちなみにファンタジー限定です。ちなみに古本との確率は半々です。 ■ 川上稔 > 実は皆、俺より本を読んでるんじゃない?(笑) ■ はいんりっひ > 一番読んでないのは僕ですね(苦笑) 僕なんか時間の余裕がきついです……本しか読めない時にしか読んでません(苦笑) ■ 御堂 > 通学中に絶対読めます、私……。 ■ ういんど > 通勤中なんぞ、よめやしない(汗)超満員電車のため。
-------------------------------------------------------------------------------- 第十二節:「望むもの」:(AM03:39) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > ちなみに、伯林で面白い結果があります。 14〜18才:ヴァルターが好き 19〜23才:エルゼ、マイアーが好き 24才以降 :全体が好き ■ ういんど > ……読んでいるときに見ているポイントが違うのか? ■ マリュウ > 僕は全体が好きです。とすると、こーゆー世界に憧れてるんですかね(苦笑) ■ キメラ > 私なんか、かなりエルゼに影響受けましたが。 ■ はいんりっひ > エルゼと言うと……、僕もどちらかというとそうでしょうね。 ■ マリュウ > 願望と合致してるからじゃないですか? ■ キメラ > それって、年齢ごとの「理想像」なのでは? 鋭い。 ヴァルター=反抗心の固まり エルゼ =成長期の人間 全体構造 =大人と子供の闘い という構造から逆算すれば、この年齢層ごとの好みの意味が解ります。 ■ 川上稔 > ここに俺の 「語らないようにした」 理由の一つがあります。 実は、エルゼの意見とマイアーの意見をぶつけつつ、全体構造を行きたかったのですが、 「狙いが読者層によって固定できない」 事実があるんです。 ならば、語りたいことを前面に押し出して他の意見を読みたいヒトを消去するよりも、全体に、 「探ってもらうべき」 と考えました。 ■ マリュウ > なるほど……。 厳しい意見ですが、読者には、 「押しつけられることを嫌うのに、自分から読みとろうとしない」 ということが多々あります。 読解という言葉がありますが、俺は、 「本である以上、読みとりに対応できる底力がなければならない」 と思っています。 なぜ語らないか疑問に思ったら、探って読みとらねばならない筈ですよね、 フツー。 それをせずに作品を批評するのは、 「良い読者であることを放棄した」 のだと俺は思っています。 無論それをせずとも良いものを書いているつもりですが。
■ 矢神 > プラス要素として、捉えるべきだったわけですか……。 ■ 川上稔 > いくらエルゼやヴァルターの人気が高くても、皆が彼らを求めるわけじゃあない。 ライト系で、しかも年齢層が上の連中も考えなければならないのは自明だったので、 キャラに語らせるよりも、 「全体として色々な見方ができるようにする」 必要があったんです。 ■ ういんど > 成程。 ■ 川上稔 > ちなみに、俺の文章はもともと主人公を追い掛けるタイプのものではないんですよね。 (そういう書き方ってわからん) 様々な事実を羅列していくだけなので、そちらの全体手法を使う方が楽でした。 あとは読者が御自分の情報処理能力でその事実を飲み込んで下さればいいだけです。 ■ はいんりっひ > そこから、読者全員に選択肢を、という事ですか? ■ 川上稔 > 歴史書と同じなんです。 実はストーリーが無い。 あるのは事実で、教科書のように読者は自分で意味を拾うしかない。 ※社長注:↑ゲーム「OSAKA」をプレイする時に、どうかこの言葉を思い出して下さい。 この意味が、より明確にわかっていただけるものと思います。 ■ マリュウ > そ、そういう考え方もあるんですね……。ストーリーが無い、か。 ■ 矢神 > 「何を学び取るか」 ですかね。
-------------------------------------------------------------------------------- 第十三節:「ライト系小説現俺的総論」:(AM03:48) -------------------------------------------------------------------------------- ■ ういんど > つまり「事実」の前にはいかなる造り話も霞むと、いうことですか。 だとしたら、その手法が逆にそれぞれのキャラをたてることになったのでしょう。 ■ 川上稔 > だから読者は俺の小説を読む際に、考えなければいけなくなってしまう時がある。 これってライト小説にはあってはいけないことなんです。 少なくとも、今までのものには。 ■ マリュウ > 確かに、 「考えなくても読める」 のがライトですね。 ■ ういんど > それはありましたねぇ。 なにも考えずに読みはじめ、なにも考えずに読み終える(苦笑) はっきり言ってつまらなく感じましたが、このような作品は。 ■ 川上稔 > で、こういうやりかたは、 「通じない」 と言われたことがありました。 が、しかし、支持者が増えつつある。 これはどういうことかな、と。 ■ キメラ > 私のとっては理想の小説像ですが。 いや、でもやはりどこぞのサイトなどには、 「川上稔の小説はいつも何が書いてあるか解らないから読むな」 と、スゲー批評(批判か)が書いてあって思わず尻から内臓出そうになりましたな。 好悪ってありますよ、きっと。 ※社長注:それは誉め言葉でしょ(笑)? 「いつも何が書いてあるか解る」小説ってのは、「読む必要が無い」と同じ意味ですから。
■ 川上稔 > 倫敦でかなりヤバイことをやってしまったという自覚はあったんですよね。 でも、こちらの攻撃に撃ち返してくる読者が多かった。 それも予想外に。 「作者にしか解らないだろ」 って言われていたことが、です。 そこで悟ったのが、 「これはもはや威嚇射撃じゃいかんぞ」 ということでした。 だから覚悟を決めて香港です。 実弾? 撃ちまくり。 読み解けっ! って姿勢ですよね。 ■ ういんど > とっても苦労していますよ(苦笑) 読解に。 ■ マリュウ > 未だにジェイガンの無念が解りませぬ(苦笑) しかし、考えなしに読める(頭のしわを使わない)ものがあふれすぎてるからでは? 支持者が増えている理由として。 ■ 矢神 > 「ライト小説=考えない小説」 という定義は、早く無くなることを祈るばかりですね。 ■ ういんど > 川上さんの様な作品によって定義が消えることになればいいですが。 ■ 川上稔 > 無くなることを祈る、と言っても、 「おそらく不可能です」 なぜならば、そういうものが必要だからです。 ただ、そうではないものが無いのはいけない。進化が停まる。 ■ はいんりっひ > 「作者は何を言いたいのか?」 っていうのが(国語のテストみたいなの)がないんですよね。 ■ マリュウ > ライト=考えないとは思ってませんが……。 オ○フェ○の本編が、少しだけ脱却してる感じですが。 ■ 御堂 > でも定義の否定の、全てが全て良いというわけでもないとは思いますが……。 今までのライト系にはライト系なりにいい点があるとは考えられないかネェ? ■ 川上稔 > ライト小説とは、文の世界の入り口なんだと思っています。 中学生とかの多感な頃に文字に触れたいが、現実とかはイヤだ、という人達のための。 でも、そういう頃だからこそ、難しいものも(怖れがないので)読めるし、そこで、 「ガツンと食らうモノ」 を読めたら最高ではないか、と。 ■ ういんど > 確かに。 完全に消えるのはまずいかもしれません……。 何故なら一概にそうと決まってないのですから。 「壊れる」 が正解かな? 活字へのなじみやすさがとても高いという事実はありますからね。 ■ マリュウ > 今、居続けてるこの世界の門を、けなす気にはなりません。 正直なトコロ、それでしょうね。 だけど、こちら側としての正直なトコロは、以下の通り。
■ 川上稔 > 「本当に気楽に読みたいときや、ヒト」 や、 「本当に気楽なモノが必要なときや、ヒト」 はいますし、そちらが主流です。 問題は、そこで終わっているか否か、です。 俺はこの先がちょっと現状ではマズいと思っていますし、それだから書いている。 たとえ誰かが何か言っても、そう思い続けますね。 何しろ自分の読みたいモノが市場に無いので。 ■ キメラ > 確かに必要な時はありますね。考えてばかりでは疲れますから。 ■ マリュウ > 軽いモノと重いのと、中間が無いなと。 いい具合に淘汰されてくれると、とてもありがたいんですが。 そーはならないんでしょうね ■ 矢神 > まあ、それぞれにはそれぞれの、役割と意味があるんですね。 ■ ういんど > あってもなくてもいいものなど、この世には存在しませんからね。 ないものは自分で造りだす……。 簡単のようでとても難しいですよ、それは。 ■ 御堂 > 自分の欲しているものは自分で作る。この考えは共感できます。 またそれに対して評価を求めるのもいいと思います。 良い方に発展していきますから。 ■ はいんりっひ > 定義(常識)というのは一定じゃないんですよ……多分。 ■ 川上稔 > このテの議論はキリがないのでやめましょう。 既に淘汰がおきていますし、時代が全て証明するから。 一つ言えるのは、ライトにしろヘビーにしろ、同じコトを続けてきた大家と、 中途半端な連中は既に淘汰され始めてるってことです。 俺達のいる側(仕事として物を作る立場)を目指している人達に、これだけは言っておきたいなあ。 「表向き、見えていないところで強烈な淘汰が始まっている」 のです。 昨年、倫敦のアンケート集計をしている際、 「好きな作家は?」 という質問の答えのほぼ90%が、 「とある王道ファンタジーシリーズの作者」 「とある王道ライト系シリーズの作者」 の二人の名前でした。 が、今年、丁度一年たってからやってみた香港のアンケート集計には、 「彼らの名前を書いたアンケートは二枚しか無かった」 のです。 俺のファン層の質の変化、ということもあるでしょうが、これはあまりにもおかしい。 様々な理由があり、その辺りの解明も大体終わりましたが、結論として出たのが上記の言葉であり、 下にあるウインドさんのセリフがモロに我々が考えついた言葉を代弁しています。 はて、俺達はひょっとして惰性で付き合っていたのかな、と。 ■ ういんど > あってもなくてもいいものなど、この世には存在しませんからね。
-------------------------------------------------------------------------------- てなトコで長かったけど今回分は終了! いやはや、スゴイ方面に話が発展してるなあ。 次回からよーやく香港の解説ですな。いやあ、長かった長かった。 ※社長注:参加者全員、真面目で驚きました。不真面目な乱入者がいないかと期待してたのに(笑)。 しっかし、やっと次回から香港の解説が始まるのか‥‥やれやれ。 でも、クリエイター志望の人にはぜひ読んで欲しいコーナーです、ここ。 -------------------------------------------------------------------------------- [第一回ログへ] [第二回ログへ] [第四回ログへ] [第五回御礼編へ] [第六回番外編へ] チャット・インデクスのページへ OSAKAのページへ -------------------------------------------------------------------------------- テンキー・オフィシャルホームページへ このページに関するご意見やご要望はこちらまで
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-------------------------------------------------------------------------------- 第一節:「ついに香港」:(AM04:01) -------------------------------------------------------------------------------- ※以下、青い文字は「川上稔」による注釈。赤い文字は「テンキー社長」による注釈です ■ 川上稔 > んじゃあようやく「香港」質問会にいきますかあ。 ■ キメラ > 待ってました♪<質問会 ■ マリュウ > しかし、もー4時超えますね……。 それは言ってはならんぞ(笑)。 いやあ、俺もここまで引っ張るとは思ってなかった。 それだけ色々と言いたいこととかあったってーコトですかね。 では以下、自己解説も入ってケッコー見苦しい「香港」謎解明。
■ ういんど > いやぁ、どうしても解らないこと、一杯あって、「香港」は(汗) ■ 川上稔 > 成程。 ではまずいきなり大玉。 将軍の謎からいきましょう。これがないと始まらないってかこれが全て。 ■ マリュウ > 李・琥ですよね? 将軍は……。 ■ キメラ > 「時間を超えた」李・琥では? ■ ういんど > いまいち解らなかったです(汗) 何故に黄と争ったか? とかも。 ■ 矢神 > 「琥にならなかった琥」でしょうかね。将軍は。 ■ 川上稔 > 惜しいか、な? 将軍のキーとなるのは、口絵の説明文と、ガンマルとの会話(上下)。 そして最後のリンとの会話。 まず第一ヒント。 :「将軍は李・琥が死ぬのを見ている」=同一人物ではない :「将軍は、自分が”飛翔歌の無い世界”にいた」と言っている。 ■ ういんど > ……時を超え、残らざるを得なかったリ・フーですか? ■ 川上稔 > 簡単に言えば、二重のタイムトラベルです。 1:飛翔歌のない香港で第五神罰戦の最中に、李が黄と戦闘、ルナとともに過去に降りた。 2:過去に下りるための巨大風水紋章は、李とルナと黄の力で起動するモノであった、と。 だが、彼はルナの病を治すために黄を倒して彼の遺伝詞をルナに与えてしまう……。 3:よって帰りの風水紋章は不完全起動。 そこで香港の破滅の未来などを見て、二人は第四次神罰戦の時代に降ろされる。 李・琥は神罰戦の戦闘で将軍と呼ばれる男になる。 ■ ういんど > その結果、もう戻れなく、ですか。 全て理解しました。 ■ はいんりっひ > 上巻口絵に関する部分ですね。あとがき見終わったあと読み返して、 「そうか!!」 と思いました。 下巻口絵の説明文の「彼に似た人」=(上巻口絵の)彼=将軍でしょう。 ご名答。 上巻も下巻も口絵の説明が、 「本文と似た流れ」 でありつつ、わずかな差異があります。 口絵の下に、 「1971・ある風水師の手記」 と書いてあり、同じ手記を下巻でコウガが将軍から預かっていることから、以上の事実は導き出せます。
■ マリュウ > フーとルナが延々とループしていると考えた時の、 便宜上「最初の」フーじゃないかなと思ったんですが、あう。違ったか。 ■ 川上稔 > リンとの会話、 「途中から二人の人間に」 という意味ですね、それが。ループはしていないんです。時を移っても、着々と年を経ている。 3の続きを言うと、 4:当然、過去は変わっていない。 「どう頑張っても過去は変えられない」 ならば、 「未来を変えるしかない」 だが、 「香港は破滅に向かっている」 のですね。だから、 「過去に置いて未来を予言する(人々がそれにすがれるモノ)を作り、なおかつ、香港の破滅を救う」 必要があった。 「未来は明るいと謳う歌」 を作り、人々にそれを信じさせることによって、時代の流れを変えようとしたわけです。 予言とは、それを信じる人々によってなされることが多いですから。 ■ ういんど > そのために、「寿命を交換」したうえに「歌」を……。 ■ マリュウ > 口絵の手記は、その頃ですか……。 口絵で言うと上巻口絵のラスト、 「それは重大なミスだった」 というあたりのことですね。 香港が半崩壊したあと、ガンマルと戦車上の将軍が語っているのは、このあたりのこと。 「時代も上塗りするように繰り返された」 俺的な理念もありますが、過去を書き換えることは不可能、です。
■ 川上稔 > 5:第四次神罰戦で将軍と呼ばれた男は、自分が李・琥と会って命令を下す時を待つ。 6:そして、再び命令を下すとき、彼と彼女に歌を作るように言ったわけです。 あとは下巻の口絵のような流れ。 ■ ういんど > 誰が未来を見たかが間違っていたなぁ…… 将軍とは。 ■ 川上稔 > この頃に作られたのが、将軍の妻となったルナが、自分達に再会する前に書いた手記。 のちにこれは全てを知ったルナ(アキラ母の方)によって、 「新・1971」 とシャレを含んだタイトルで新盤が作られます。 ■ 川上稔 > 7:なお、全てを知っている李は、彼が地上に行くことでアキラとダブルリーがああいう成長をとげることを知っていた。 だから地上に出て、妻の書いた手記を将軍に渡し、そのまま地下に戻らなかった。 アキラを待っていたのかもしれないですね。 ■ マリュウ > 深いですね……なんとか、理解しました ■ キメラ > 将軍の奥さん=ルナは読めたんですけど……。もっと深いんですね。 ■ 矢神 > タイムパラドックスは、取り敢えず置いておいてですか。 タイムトラベルぐるぐるですけど。 ■ マリュウ > 過去が不変である場合、タイムパラドックス自体が意味ないと思います。 ■ ういんど > 僅かにしか修正できない。 と、聞いた事があります、過去を変革した場合は。 えーと、一つ質問。 かなり性格が違うようですが……、将軍ルナとアキラ母は。 ■ 川上稔 > 性格は同じですよ。 ただ、あの手記を作った時点で、ルナの方が飛翔歌を知っている分、冷めている。 Wリーと同じ理由で。 自分の作った歌が、必要ではあるが、現状ウソであると知っているから。 ■ ういんど > 理解しました。 そうか、そういう理由か…… 確かに冷めますね(汗) ■ マリュウ > 成程……。いま読んでます、口絵。 「過去は不変」 なんですね。 それは「伯林」や「倫敦」でもそうなのかな、と。 バックボーンは否定できない。人にしても都市にしても。
■ ういんど > 結局、将軍の見た未来は、今(小説の舞台)と(経過や結果が)少し違ったのではなかったか。 と思うのですが……。 ■ 川上稔 > 下巻でWリーがジーニアスに言っていますね。 「ジェイガンの死んだ意味」 を。 過去に大人達が投げ与えた問いというレールから、彼らは外れて来ているんです。 方向性は同じだけど、やり方自体はもはや自分達なりの方法になっている。 ■ キメラ > (口絵読み返してすべてを納得……) ■ 矢神 > 元々、仲が悪かったんですか? 李と黄は。 ■ ういんど > そうそう。 「黄につくられたルナ」とは、一体? ■ 川上稔 > 李と黄の戦いですが。 もともと、黄自身が香港の過去を変えるために風水紋章を開発しようとした。 ルナは黄の手によって作られた天使です。彼女は匪天じゃない。 彼女が香港市街に逃げ出して生活を始め、李と出会ってからが全ての始まり。 作られた天使ですし、もともと天使は架空都市の文字世界の生き物。 現実においてはフツーの天使より弱いんです、ルナは。 だから第五神罰戦より前に言障という病にかかっている。 この辺りはほぼ語られていませんね。 あるとしたら、上巻、Wリーがジーニアスに語る両親と黄に関する数言、 「一人の女に懸想して、香港を救おうと闘った人達」 などから、ストーリーを勝手に想像していただきたいものだな、と。 俺的なものとしては存在しており、この辺りは後述、と。
■ マリュウ > 黄はどの時点で飛翔歌を知ったんでしょう? ■ 川上稔 > 黄は飛翔歌については何も考えていませんでした。 その理論を思いついたのは手記を書いたルナ(将軍妻)ですから。 ただ、殺されずに戻ってきた黄(後に老人化)は、李やルナとともに飛翔歌を作っているはずです。 ■ ういんど > なるほど。そう言うことだったのか……。 ではそのためにアキラ母や李・琥、そして黄色は、 「似たような病気で死んだ」 のですか。 ■ ういんど > そして、李・琥はどれだけ過去に戻ったんでしょう。基礎的ですが。 ■ 川上稔 > 基本スタート地点は第五神罰戦です。 :第一期=第五神罰〜第一神罰へ=黄死亡〜第四神罰へ戻る :第二期=第五神罰〜第一神罰へ=飛翔歌を作る〜第五神罰へ戻る。 ■ 矢神 > タイムテーブルが欲しいぐらいの過密スケジュールですねえ(笑 ■ ういんど > ちょっと図を書かないと解らなくなってきた(滝汗) ■ マリュウ > すごいややこしいタイムテーブルですね(汗)図が見たいです(笑) ■ キメラ > 試しに書いてみるか……。タイムテーブル。 ■ はいんりっひ > こりゃ、このログ見ながら、も一回読む必要あるな……。 ■ キメラ > 今ログ見返してみたけど、理解しきれない……。 頭が死んでいるのか? ■ マリュウ > 時間が時間ですから(笑) ■ ういんど > ……と、やったね♪ もうばっちり(苦笑) ■ キメラ > ?!! あ、いきなりわかった!(笑) ■ マリュウ > 頭が死んでる〜(泣) ■ 川上稔 > 何だか皆、大騒ぎね。 でも、なぜ将軍がアキラに優しいか、これで解ると思います。 ちなみに、将軍は黄を殺した経験があるので、第四次神罰戦に戻ってきたとき、 黄が生きてて憤慨したハズ。そこで生きてる黄は自分が殺されたなんて知りませんけど(笑) この二重のタイムトラベルと、二重になった人物関係。 やっていいかどうかが最大の問題でしたが、スポーン佐藤さんが、 「面白いと思います。やりましょう」 と言ったのでやってみたってカンジです。いやあ、シャレにならねえ。
スポーン佐藤さんと話していたんですが、その中で、 「昔、俺達はこーいうのを読んでましたよね……」 という会話が幾度かなされました。 読解。 というのはライト系に似合わないかもしれませんが、よーく考えてメモとか取れば解る。 そーいうのが欲しくて、 「奇書」 になったかな、と。 この奇書は、昔だったら平均だったんですよね。 こういうことをすると更に奥が見える小説と、そのまま読めてしまう小説、 どちらがいいのかは読者次第です。はっきり言うと、俺は前者のタイプしか、 「書かない」 と決めているフシがあるので、俺に後者を期待する方は変な期待をやめておいた方が無難か、と。 逆に言えば、 「何が書いてあるか解らない」 という否定は、俺にとってはある意味賞賛であり、その人にとっては自己の読解力への疑問詞でしょう。 ■ マリュウ > 口絵の年表にある、第五の時の悪夢は、時間跳躍の反動ですか? ■ 川上稔 > YES。 香港の破滅を遺伝詞分解して風水治療した際に発生した共鳴現象です。 変な伏線が変なトコロに……。 ■ ういんど > くだらない質問ですが……。 飛翔歌の2節目の「朝」はいつに当たるのです? ■ 川上稔 > これはどこにでも見えます。 第一神罰で地下に潜った人々はそうだったろうし、同じようにしてるWリーもそう。 自信を無くして飛ばなくなったアキラもそうですよね。 ■ ういんど > アキラだけしか見てなかった……。 そうですね、地下の人もWリーもそうですよね。 後解らないのは、フェイとリンの間に何があったか。 どうやら、 「ナイン・アンゲル狩り」 の時に風水で何か(多分人を傷つけて以上のことをした)をしたのは解るのですが…… ■ 川上稔 > それが解ってれば充分(笑)。それ以上を言うのは謎解きではなく解説ですな。 ■ ういんど > 確かに(苦笑) ■ マリュウ > フェイとリンは半ばフレーバーとしての存在のような・・・。人と匪天との。 ■ 川上稔 > 話として幾つかあるテーマの一つが異族との共存問題です。 アキラは自分の両親が別れたと思っていたが実はそうではなく、仕方のないことだった。 だからリンとフェイも同じ問題を語っているから最終的に和解する。 香港も、ね。 ■ ういんど > 飛翔歌通り、ですね。 大体の謎がとけたときに、最後の「私の答えが!」見たときはとても感動したし、悲しかった。 作者側としては、 「賭けに勝った」 というのが本音ですね……。 とにかくバクチ実験のようなことの多い作品なので慎重に作りました。 上下巻を溜めて出したのもそのせいです。
-------------------------------------------------------------------------------- 第二節:「香港の出生」:(AM04:38) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > もともと「香港」は三回プロットを作り直したんです。 「第一稿」 モトは香港にボーカルのアキラとギターのガンマルがいて、中国軍が攻めてくる……という単純な話。 香港洞のような地下都市と、中国軍が狙う歴史の遺伝詞があり、というのが話の核。 過去の神罰戦のモデルですね。これを上下巻で考えていた。 「第二稿」 次に考えたのが、香港の派遣を巡って企業相手に五行師が闘う話で、これがアキラの父親達のベース。 この時、ガンマルが主役で、アキラはもっとクールな大人の女性だった。 これはアキラの両親のモデルですね。 「総合」 次が、今の「香港」。 第一稿と第二稿を歴史的に合成して、更に新しいキャラ設定を含めた、と。 でも、遺伝詞理論と、ラスト、竜になるのと、エンディング部は変わっていません。 これだけは昔から、ずっと同じ。 ■ ういんど > しかし……、二重のタイムトラベルといい、全体が二重構造ですね。 二重螺旋も出てくるし。
-------------------------------------------------------------------------------- 第三節:「香港の出生」:(AM04:34) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > 二重螺旋は、ガンマルの家紋にDNA配列ってヤツですね。 ラスト、竜のロンドはもう家紋の設定作った時点で、 「バレるなよー、仕掛けと伏線!」 って叫んでました。 そう、二重のタイムトラベルも……、遺伝子配列なんですよね。 ■ 矢神 > 発想の根っこ部分ですか。 ■ はいんりっひ > 遺伝詞(ライブ)とかけてたりします? DNAを。 ■ 川上稔 > ライブと遺伝詞は、かけまくりですね。 ■ ういんど > 遺伝詞理論ですか。 セッションも遺伝詞関連ですしねぇ…… ■ 川上稔 > ライブ=音楽。 遺伝詞=生命。 この掛詞は全てにつながってますね。 唄うというのも「ライブ感覚」のノリですし、 ガンマルとのSEXシーンもどうして意志が伝わるのかわかりやすい……。 よーく考えるとアキラとガンマルのSEXシーン、 アキラがガンマルの遺伝詞を欲しがってるわけだから、何をして欲しいか実は相当にアレだ。 ■ はいんりっひ > DNAとなると必然的に出てくる事ですね(笑) 社長、ツッコミプリーズ(爆笑)。 ※社長注:二重螺旋とは気がつかなかったなあ。くそう。 さて、DNAねえ‥‥。自己の複製を残そうとする本能が全ての始まりですから。 文化も戦争も恋愛も。生き物はDNAに操られて生きるしかないのよ(笑)。 ゲーム版OSAKAにカンブリア紀の生物が出てくるのってその暗喩なのかなあ (<ちがうって) さあ、クリエイターどもよ、みんなで己のDNA=ライブを増殖しようではないか! それが戦争だ!
-------------------------------------------------------------------------------- 第四節:「緩和給弾」:(AM04:46) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 矢神 > 本筋とは全く関係ないんですが、 「WS(ウェブリースコット)」 は、 「S&W」版権対策なんでしょうか? ■ 川上稔 > いや、あまり関係ないっす。 ただ、種類を特定しても資料がキツイので、ああいう呼び方。 だけど銃器は凝ってます(そのハズ)。 皆、イギリス製でクセがあるのを選びました。 できるだけ英国軍か英国警察の正式採用銃だったものを選んでいます。 ■ ういんど > リボルバーの中折れ式、でしたっけ? WSは。 ■ 矢神 > 成程。 コルトが出てたんで、ちと悩んでいたのです。素人なもので(笑)
-------------------------------------------------------------------------------- 第五節:「音楽、ということ」:(AM04:49) -------------------------------------------------------------------------------- ■ マリュウ > えーと、本文入ったとこの詩は、ルナからアキラへですよね? ■ 川上稔 > 本文前の詩……、誰へだろう?(笑) 上巻はWリーからアキラという意見もありますね。 下巻はアキラからWリーという意見と、アキラからガンマルという見方もある、と。考えましょう。 ■ マリュウ > ガンマルからアキラ・・・あぁそうか。下巻は特にそーだよなぁ……) ■ キメラ > 一つ聞きたかったんですが、各幕のタイトルの後の数字は一体何ですか? ■ マリュウ > 曲の長さでしょ? ■ キメラ > そうだとはおもったんですが、規則性が見当たらなかったんです。 ■ マリュウ > 規則性……無いですね。 そうだと思ったから、あんまり深く考えなかったですが。 ■ はいんりっひ > 規則性=間奏との違い(時間なし)とか。 一つミスったのは下巻青焼き時にスポーン佐藤さんと、 「ぐげえ、下巻、第一幕って言ってませんね」 ということ。 画竜点睛を欠くとはまさにこのこと。上巻では開幕と一幕を分けてるんですよね。
■ 川上稔 > 各幕の数字は、「ライブ」の際の一曲あたりの長さ、です。 ほら、タイトルを見るとサイン会とかあるでしょ? ■ ういんど > ライブのプログラム? ■ 川上稔 > ライブコンサートなんです。 本当は目次をライブチケットにするつもりだったんですが、そこまで融通がききませんで。 無念。 ■ マリュウ > アドリブ入りまくった1曲って、長いッスからねぇ(苦笑) ■ キメラ > なるほど。わかりました。1曲あたりの長さが。 ■ 川上稔 > ラスト数曲はほとんど独奏で、アンコールに皆が観客も含めて飛翔歌を唄う、という構成なんです。 ■ ういんど > とてもライブのままですね(苦笑) アンコール後の大合唱とか。 ■ キメラ > 「香港」のすべては「ライブ」という言葉で表せるということですか。 ■ マリュウ > 成程。 いま見返してたら、なんとなくライブというより歌曲みたいな感じがしてきました(^^; でも、全部、ライブバージョンの曲なんですか? ■ ういんど > 「香港」上下巻 = ライブCD2枚組?(笑) ■ 川上稔 > ほら、コンサートと思って口絵をみると……、CDのジャケットの曲紹介と同じなんですよね。 作りが。 ■ キメラ > 言われてみれば……。 ■ マリュウ > 確かに……。 とことんまで音楽のイメージでいきたかったんです。 気づかれなくても良いからホンモノを作ろう、と。 モデルにしたのはタイトーのレイフォースの音楽CDジャケットや、PSYSのATLAS。 こういうことをしたいってのをスポーン佐藤さんと話し合ってやってたのよね。 去年の十二月くらいから、ずっと。 ■ 川上稔 > ライブCD2枚組という感覚は正しいです。 だから表紙の左の縦赤ラインはCD付属のインストラクション風(笑)何を考えてるんだか。 ■ はいんりっひ > あの帯ですね(笑) ■ マリュウ > こ、細かい(汗)気付かなかった……。 ■ 矢神 > 拘りというか、趣味の領域に入っている気もしますね(笑) ■ マリュウ > しかし、2枚で入りきらないような(笑) ■ ういんど > さすがにそこまでは考えなかったなぁ、後書き読んだ後でも(苦笑)
-------------------------------------------------------------------------------- 第六節:「ジェイガン」:(AM04:55) -------------------------------------------------------------------------------- ■ ういんど > そうそう。 ジェィガンはなにでリピートを? 子供がいるのを知っていた? ジーツーの語源は予測着くのですけど。 ■ 川上稔 > ジェイガンは、 「死んでしまうことをジーニアスに謝った」 のです。 自分が死んでジーニアスに謝罪すべき理由は? Wリーは彼にソレを要求したのであって、決して闘いを求めたワケじゃない。 ■ ういんど > そうか。 それで守る闘い以外はしないのか。 ■ マリュウ > くだらない質問ですが(笑)ジーツーってジーニアスツーなんですかやっぱり。 ■ はいんりっひ > ジーニアスとジェイガンでしょう<ジーツー ■ 川上稔 > ジーニアスとジェイガンの子供なんでガンマルが勝手にジーツーと名付けてるだけ。 大体ジェイガンはJなんだがなあ=ガンマルらしいか(笑) 本名は別にある。 ■ ういんど > ガンマルらしいなぁ(苦笑) ■ マリュウ > ジーニアスとガンマル(ジェイガンのアーバンネームの方)って解釈もありましたね(笑)
-------------------------------------------------------------------------------- 第七節:「ちょっとよけい解説」:(AM05:05) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 川上稔 > なお、細かいネタをバラしていくと、マルドリック家の前の五行宗家はボルドーゾン家。 ボルドーゾン=ライクル・ボルドーゾン=ヴァレス・リックラントです。 「倫敦」のあの事件の後に五行宗家が不在となり、 ガンマル達のじいさんがハデに竜を倒して家紋と宗家の地位を得た、と。 ■ ういんど > あ、やはりそれでボルドーゾン家は絶えたのですか? ■ マリュウ > こんなとこに、「倫敦」の影響が。 あと、花言葉に気づいた人もいましたね、身内ですが。 「6/30日だっけ? 誕生花が忍冬でしょう?」 ってことですが。いやはや。 ちなみに忍冬の花言葉は、 「秘めたる愛」 だったかな? それの花弁を壊れた非皇の上に置いて次のステージに向かうところにアキラの心情がある、と。 これを含意と取るか自己満足ととるかは読者次第ですか。
■ 川上稔 > 趣味の領域=文章の遊びといい、もう自分的に楽しいですよ。 「ついてこれるヒトー?」 ってカンジで。 ■ ういんど > めちゃめちゃついてきてしまった(汗) ■ マリュウ > ギリギリ、ついていってるかなー(苦笑) ■ キメラ > いまだに各幕の「言葉の遊び」を全部見つけてないです。 ■ はいんりっひ > 無理かもしれない(ってもうついていってない・苦笑)<。 ■ 矢神 > 読み手としても、楽しませて頂いてますよ(笑)文章の遊びは。 読み返したときの楽しみがあって良いですよ。 ■ マリュウ > 読み返すだけで楽しいですよ、「香港」は(笑) コトバ遊びはいくつかわかりました。 ■ 御堂 > 正直、無理っすねー。 ■ ういんど > はっきり言って、無視しました(爆)コトバの遊び解読……。 ■ 川上稔 > 言葉の遊び<解るかバカ! というレベルなので考えないように。 ■ キメラ > いつかすべて解明してやる……。 ■ 川上稔 > 言葉遊び=トークショーで、将軍とガンマルがトークショーしちゃってるのが解るくらいかな? フツーに探すと。 遊びになってねえぞ、ってのもあります。 基本的にパズルのような遊びであって、「香港」の内容にはあまり関係ないんですよね(笑) 一部、サギくさいのをヒントで簡易解説。 ・上巻第一幕=始めの数行が等しい位置で整っている。(他にも揃えたが、ルビ振りでズレた(泣)) ・第二幕、第三幕=同上、しかも同じ理由でズレてるとこも一緒(更泣) ・第五幕=各節の終わりと始めのコトバが……(参照、「重なる二人」) ・第六幕=始めの2ページほど、文章構造をよく見ましょう。四行1ブロックで……。 ・第七幕=これも完全ではないですが、A=1(個数)ということで、 始めの各センテンスの一音めを……。 「あ・か・さ〜」オイオイ何やってんだオマエ。 ・最終幕=攻撃ローテーション表現。 大したことないと言えば、そうなんですが、”〜”を本文に使うか? ・下巻開幕=各節始めの一行を読んでいって、4節ラスト一行を読むと、本文がいらん(笑)。 ・第三幕=俗称「カッコ状の垂直双線」各節一行目が長く、行の段がまっすぐ真横に……。 ・第四幕=各節、第五センテンス目から各キャラの現状説明。 ・第五幕=1〜2節、1行目から数行に渡って、 五文字目(3節目は写植関係で余分な字が入っているから5〜6字目の1音目を読む) を続けて読む。3節目は写植関係で崩れたが、やれば読める。 これをやって、 「ちょっとムチャクチャだなあ!」 と思ったので、これらをメインの仕掛けとは考えておらず、オマケ的サービスとしてます。 (ホントによく出来てたらもっと喧伝するって(笑)) ぐわー、こんなの解るかー、とか、こんなの謎じゃねー、って人は勘弁。 ※社長注:これは「都市シリーズ99の謎」本を出すしかないですよ、メディアワークスさん。 「都市シリーズ研究序説」でも可。
-------------------------------------------------------------------------------- 第八節:「ガンマルと将軍」:(AM05:10) -------------------------------------------------------------------------------- ■ ういんど > くだらなくてどうでもいい質問ですが(苦笑)、上巻のオープニングの場所は何処でしょう? まさか日本? ■ 川上稔 > アメリカあたりですね。 アリゾナとか、そういうカンジ。 実はインディアンの居住区に御神体としてジェイガンが神形具を納めていて、 それを破壊するくだりがあったんです。 でも40ページあるのでカット。 ■ ういんど > それ、読みたいですねぇ(苦笑) ■ 矢神 > 日本に見渡すばかりの広野が出来たら、大変ですね(笑 ■ ういんど > ……ずっとジェイガンのデバイス壊していたんですねぇ……。 ■ 川上稔 > デバイス壊しに大阪にも来てますね。 ■ ういんど > さすがに「大阪」には出ないでしょうけれど、ガンマルは。 ■ ういんど > でも、いいコンビですね将軍とガンマル(笑) 一応、義父になるのか?(汗) ■ マリュウ > 将軍って、身元引受人(みたいなもの)なんでしょーか。アキラの ■ 川上稔 > 複雑だったろうなあ、と。ひょっとしたら生まれていたかもしれない娘を目の前にしてるんですから。 ■ ういんど > 確かに……。 ■ 矢神 > そういえば、「将軍」に子どもはいないんですか? ■ 川上稔 > 生まなかったというのが本当でしょうね。将来に全てつなぐのは李達だと解っていたから。 ■ 矢神 > では、ますます情感募っているのでしょうねえ……。
-------------------------------------------------------------------------------- 第九節:「アキラとダブルリー」:(AM05:20) -------------------------------------------------------------------------------- ■ 御堂 > アキラって匪天だよねぇ? 突然ゴメン。 ■ 川上稔 > アキラは匪天ですよー。 ■ 御堂 > アキラの母親は? ■ 川上稔 > さっきも言ったように天使です。 ちなみに、 天使×ヒト=匪天 匪天×匪天=匪天 匪天×ヒト=匪天 匪天×天使=匪天 です。 ■ 御堂 > 天使に戻れることはないと。 ■ ういんど > 優性遺伝子なんですねぇ(笑) ■ キメラ > 女神転生みたい……(笑) ■ 川上稔 > 一度混ざったらアウト。血統か? ■ はいんりっひ > 優性遺伝子というか、血統論(競馬の)で考えてもわかりますね(爆) ■ 矢神 > どんどん増えるんですね。 ■ 御堂 > そのうち匪天だらけになりそう(爆) ■ 川上稔 > それは無いかな。現に白人と黒人の問題は現実にありますから。 ■ マリュウ > 元になった人種がまた問題になるわけですね・・・ ■ 矢神 > 種類の違う匪天が掛け合わされたりすると、どうなるんですか? ■ 川上稔 > パターンは三つ。 ・どちらかの形質を完全に遺伝する ・半分ずつ遺伝 ・奇形 の三種どれかがほとんどです。 Wリーは母親似の羽に父親の髪色と母親の目色。 アキラは奇形だが、母親の髪色で父親の目色。 ■ ういんど > これは、遺伝詞のセッションも同じですか? ■ 川上稔 > 正しく平均的にイコライズされます。 この場合は”生まれの遺伝詞”と違って意志が強く介在されるので。 ただ、よほど遺伝詞同士がうち解けてないと不可能ですが。 ■ ういんど > 結構面倒なんですねぇ……(笑)
-------------------------------------------------------------------------------- 第十節:「んでもってOSAKAへ」:(AM05:20) -------------------------------------------------------------------------------- ■ ういんど > しかし、「倫敦」の「かみさま」、また書類で埋まっていそうな気が(苦笑) ■ マリュウ > Wリーの再生ですか(笑) ■ 川上稔 > この時代、フィルはいませんけどね……。 ■ ういんど > さすがにねぇ(苦笑)時間がたち過ぎ。 ■ はいんりっひ > えーと、「大阪」は3作品とリンクする部分あるんでしょうか? ■ 川上稔 > 「大阪」は小説として見た場合、人物的にはさほどリンクしません。 が、神具や神器などの設定としてかなり密にリンクします。 ■ 矢神 > まず、ハードを手に入れないと……。「大阪ゲーム」のために。 ■ 川上稔 > なお、「大阪ゲーム」の方は人物関係が「倫敦」中心に、 設定は「伯林」の紋章学を中心に展開します。 ベースは「大阪小説」ですけど。 ■ マリュウ > プレステ〜!持ってない。 「グランディア」クリアしたらサターン売るか……。 ファンレターやアンケートで、 「プレステ買います!」 という猛者が多かったです。いや、マジに。 こりゃあ損はさせれんなあ……。 ※社長注:ゲームの予価が6800円‥‥小説10冊以上ですからねえ。 でもその値段分を楽しめる物量は入っていると思いますよ。 テンキーのHDDがぱんぱんになっておりますので、それは保証します (もちろん品質も保証済み)。
■ キメラ > ゲームと小説とどっちが出るのが早いんですか? ■ 川上稔 > 小説。 今のペースだと「大阪」上巻が11月。下巻が12月。 ■ ういんど > おや? また上下巻の2冊? ■ マリュウ > また、上巻読んだら身悶えして下巻を待たねばならんのですね(笑) ちなみに上巻の締め切りは3日後だ! 急げ俺!(1998/8/14記述) ※社長注:小説「奏(騒)楽都市OSAKA」の正式発売日はまだ決まっておりません。 このぐらいを予定しているということでお読み下さい。 ゲーム「奏(騒)楽都市OSAKA」は12月発売予定です。 ■ マリュウ > 話が変わるんですけど、天界の復興の余波は、「倫敦」には無かったんですか? ■ 川上稔 > 天界がつながっているだけなので、本土の余波はありませんね。 ■ マリュウ > そうですか……、と、うわぁ、夜が明けた(笑) ■ 川上稔 > ヒグラシ鳴いてる。 ……そろそろ時間かなあ? ■ マリュウ > 5時半ですか。 ここらで一気に皆がヒケる。 ■ 川上稔 > ふむ。じゃあ、そろそろ俺もヒケますか。 どうも俺がいる限りは完全解散が無いようなので(笑) ■ はいんりっひ > そうですね。 それでは、記念チャットはお開きという事ですね? ■ 川上稔 > YES。 色々と「香港」について語りましたが、「考えて欲しい」というのは基本ですね。 最後の「こたえ」ってのは何なのか。 そこまで読んだならば、与えられた情報をもう全て自分のものとして、「こたえ」が御自分にとって何なのかを考えていただきたいな、と。 ではでは。 ■ はいんりっひ > それじゃ、Web Masterの責任(記念チャット終了まで存在しておく)というのは達成されたんで、僕もそろそろ落ちる事にしますか…… ■ 川上稔 んじゃ、また。 ■ 川上稔さんの取り調べ終了!反省したか?(爆)
-------------------------------------------------------------------------------- いやあ、反省してねえなあ(笑) とにかくこれでCHATログは終了! ここまで読んだ人っています? と、まあ、次は総論! 「香港」の設定やら何やらをガシガシ見せていきましょー。 第五回……、急がないとなあ。 ※社長注:第5回はCHATログではなく、 川上が作ったあんなのとかそんなのとかこんなのをお見せします。お楽しみに〜。 -------------------------------------------------------------------------------- [第一回ログへ] [第二回ログへ] [第三回ログへ] [第五回御礼編へ] [第六回番外編へ] チャット・インデクスのページへ OSAKAのページへ -------------------------------------------------------------------------------- テンキー・オフィシャルホームページへ このページに関するご意見やご要望はこちらまで
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-------------------------------------------------------------------------------- 第一節:「黎明期」:(PM01:07) -------------------------------------------------------------------------------- ※以下、青い文字は「川上稔」による注釈。赤い文字は「テンキー社長」による注釈です ■ 当時(そろそろ3年前になっちまうなあ)ボケーっと大学生をしていた俺が、 授業を受けつつノートに楽書きをしていたトコロから生まれたのがアキラの原型だったりする。 ※川上は大学3年の冬にテンキーの内定を取った。 成「っつーことで。じゃあ、4月から来てね」 川「‥‥あのうオレ、4月から4年生なんスけど」 成「なにぃ!?」 ってなかんじで。という事情で、当時彼は、半社員半学生半小説家の生活を送っていたわけだ。 PSYSのANGEL NIGHTを車で聞きつつ、 「現代に天使かー……」 というところで、同じ頃、頭の中にあった風水ネタとの融合開始。 「天使=唄う(聖歌のイメージ)」 「唄う=遺伝詞への介入」 「遺伝詞への介入=場の遺伝詞を治療する=風水」 「風水=香港」 「香港=英国領」 「英国領=架空都市−倫敦=天使オッケー」 ほらもう設定できた(笑)。 ただ、この段階ではまだ何をどうするかは決めていなくて、 「歌を朗ずるということで名前は良月でリャンユエかー」 くらいにしか考えていないし、同じ頃に煮詰めていた自分の絵の、 「練習をする題材」 にしようかと考えていた。天使の翼とか服形状には何か新しいアイデアが必要そうだったから。 そんなことを考えつつの授業中ラフ。 ※以下、どのグラフィックをクリックしても大きな画像が表示されます。
■■ これが服装デザイン。 「背から翼が生えている種族の衣服とは?」 インナーのノースリーブってのはほぼ初期段階から決定されていたのが解る。 あと、タイトかキュロットか(フレアは飛びにくそうなのでパス)迷っているが、 結局、あまり描いたことのないキュロットを選択した。 そして顔設計。何やら強気女を描きたいよーだ。上の二つの顔を合成して更にやや幼く、と。 帽子を被っているが、この頃は人民帽だったのだなあ……。そんなん忘れてたよ俺。 全身像と相方を考える必要もあったので、次のラフ。 ■■■ これはアキラの最古立ち絵。イメージとシルエットはさほど今と変わっていない。 特徴的な上着の袖処理などもこの時既に生まれている。 なお、この時点では翼が現状のような一本羽とほぼ同じになっていることに注意。 上着の裾やギミックにファンタジー入っていることと、インナーが白ではないのが今との大きな違い。 昔は上着が白で導師服のイメージがあったのだろう。なお、手持ち武器は矛ではなく杖。 横の男はガンマルの初ラフ。実は当時、 「人狼」 という設定で、それゆえ義腕であった。とかやっていたら授業終了で下まで描けずアウト。
-------------------------------------------------------------------------------- 第二節:「初萌期」:(PM01:18) -------------------------------------------------------------------------------- ■ そんなことをやっていたら伯林が受賞こいたり倫敦を書くことが決まってしまう。 「うーむ、次か。じゃ、ちょーどいいからコイツ行くしかねえな」 というわけで担当さん(当時はスポーン佐藤さんではありませんでした) に提出したキャララフが以下の通り。 ■■ 絵がマンガ調なのは相手の色を考えてのこと。 キャラの目が縦目になってるが、これ以降二度とやっていない。 ここのアキラの翼が一本羽でなくなっているのは、イラストレーターさんに見せたとき、 「通じない」 と思ったから。 自分が直で描いたラフ画はまず向こうに手渡されないのがルールなので、 妙なモノは(いくら良いと信じていても)考えるだけムダなのである。(いやあ厳しいですな) この時点で考えていたストーリーラインは、中国政府軍と香港側の戦争、というもの。 才能あるけどバンドで遊んでるアキラが、 バンドを抜けて敵側にスカウトされてしまった妹分のリンを相手にするというもので、 ……これはこれで面白いかもなあ(笑)。 なお、コウガは敵でリンをスカウトする風水師でした。 このあと下克上がおきて両者の立場が逆転するのですな。 アキラはまだ警官じゃあないし、ガンマルは全然違いますな。 リンのイメージはわずかにOSAKAの九条・句刻に入っていったような気がします。 また、コウガはどう見てもダブルリーの原型。
-------------------------------------------------------------------------------- 第三節:「新生期」:(AM01:24) -------------------------------------------------------------------------------- ■ と、まあスタートするかに見えた香港だが、 第一、第二アイデア、また第三アイデアとして書かれたものまでが見事にボツって立ち消える。 (かなり危険なことを書いてるなあ)なお、第三アイデアは現在の香港とほぼ同じ内容。 ボツの理由は、 「解りません」 というもので、そりゃーまあ確かにそうだろな、とこっちが思ったのも事実。だが、 「俺、何故かこーいうのしか書けないからなー」 だったらしょーがないし、ゲームの方も忙しいから当分ゲームシナリオに専念するべと結論。 小説はいずれ”解る”もんを思いつくだろうから頭冷やすか、と。 マジにそう思っていたので香港をゲーム用企画にしよーかどーか考えていた矢先、 いきなりスポーン佐藤さんが香港の資料と原稿を持って現れ、 「これやりましょう。面白いですから」 っつーたのには焦った焦った。どうしたものか。 香港を書き直すにあたって、内容的にまた第一、第二アイデアを復活させることも考えたが、 結局、一度上巻分を書いた第三アイデアをとった。 そのためにまたキャライメージをかためる必要が出る。 そこで、全体イメージを決めようと、まず、トビラになる絵を描いた。 ※このイラストを見せられて、私は「いける!」と判断。 「香港の街並み+羽のある女の子」。これだけでツカミはOKだ。 ■■ この頃、テメエの絵のラインとかを模索していた最中だったのでイテテな気分だが、 香港で何をやろうとしているのかは解ると思う。 今回、取り込んで壁紙用に加工したが、色合いがコレなもんで、 「銭湯の手ぬぐい」 にしか見えないなあ……。 これを描き、あとは第三アイデアの設定に基づいてキャラを一気に描く。
■■■ 描きつつ、右側に設定をガンガン固めていっているのが解る。(やや変更の入った設定もアリ) この時点でアキラは制服姿になっており、 「いやあ、制服好きな人、多いですから!(スポーン佐藤氏談)」 なカンジでなかなかグー(激死語)だ。 ガンマルやダブルリー、リンなどの基本設計も終わっている。 (ジェイガンが本番になってラインが複雑すぎ、デザイン変更となった) ただ、アキラは前述の理由から翼形状がまだ並。 なーんとなくつまらんので同時期にPOWER GALLERYにあるGOUTENを描いて 形状など確かめてみたりする。 「通じないかねえ」 と思ってもしょーがない。通じるイラストレーターをつかまえるか自分で描くしかない。 ついでにまあ、人物関係相関図も作るかというので、描く。 ※この表があると何かと(なにだ?)便利。ぜひクリックしてご覧下さい。 ■■■■ 何て見にくい相関図だ(笑)。 当時、長老という将軍女房がいて、初稿段階まではいたのだが製品版までにその存在を削られている。 なお、複雑な将軍設定も出来上がってはいるのだが、あまりに話が複雑になるので保留としてあった。 なお、実はここではまだ、 「さとやす氏が挿画を描くと決まっていなかった」 のである。 しかしまあ、どーしても適任者が諸処の理由(そりゃあ夏頃にアポとろうってもムリだよなー) でつかまらず、一時期はマジに俺が描くことになっていたのだ。ほとんど同人誌(笑)。 そんなこんなで大騒ぎをしつつ、香港ネタで色々作ってみたりする。 ■■■■■ これは、 「伯林に初回ファンレターをくれた人に返信した暑中見舞い」 で、原版高解像度データを失ったから二度と再版できないものだ。ムチャ貴重。 なにしろ宇宙において50枚くらいしかなくて、 その内何枚かは俺が宛名を書き間違えて捨てたので多分、地上に現存してるものは40枚前後。 持っている人は素直に自慢しちゃって構いません(笑)。 なお、ここでのアキラは一本羽。これは暑中見舞いが、 「俺画だから好きにデザインしといてもいーだろ」 と思ったとこから来ている。 右のは香港の表紙デザイン例としてメディアワークスさんに提出したもの。 都市シリーズの表紙特有の縦ラインをそのままCDのインストにあてはめたデザイン。 こちらも一本羽。 てなことをやっていると、頭の中でアキラが一本羽じゃないとダメ状態になってきたので、 一気に路線変更を決意。 「こーいう羽形状ってのをイラストレーターさんに言って下さい」 として俺原画、 CGを”しのざきあきら”氏という2000万パワーズなコンビでアキラの新バージョンを描き、 プレゼンテーションも含め、メディアワークスさんに提出している。 これに関しては壁紙としてあとで紹介。
-------------------------------------------------------------------------------- 第四節:「無茶期」:(PM01:40) -------------------------------------------------------------------------------- ■ さて、ガシガシと小説を描いている最中、香港のイラストレーターにさとやす氏決定! よっしゃ! というのはやはりテメエの気に入った絵が入ると確信できていると、文章描写に、 「かなりムリを入れてもいいやって気分になる」 からであり、デザイン面では前々から思っていたとおり、 「アキラの翼を異質化する」 ことに決定した。 これはテンキーHPのPOWERGALLERYにある俺画のGOUTENのように、 翼を一本羽にして、 「空気を叩いて飛ぶ」 という描写をやりたかったためである。 (フツーの天使画にある翼では、はばたくと後ろに飛んでしまうというのは かなり昔から言われていたことで、その解決を行いたかった) よーく考えてもらうと解るのだが、 こういう意図というのは企画側と描く側にかなり密なモンがないと大概がダメになる。通じないのだ。 だが今回は間違いなく通じるので、 「じゃ」 と決めて、形状が一発で解る絵を描いてみた。 ■■ そして、さとやす氏が、 「えー、この翼ってどーなってんの?」 というので三面図とインナーなどの設計図を描いた。 以下がソレ。 ※この図面さえあれば、アキラのガレージキットが簡単に(?)作れます!>モデラーの皆さん。 誰かぜひ作って下さい(図面は川上稔の著作物ですので、作る場合はご一報下さい)。
■■■ ここまで一気にまとめて、ようやくアキラが飛べるようになった。 今までのデザインとの最大の違いは、 「ノーブラになった」 違う。 羽の形状だ。 現状アキラの基礎となったのはこのデザインである。 これをさとやす氏が、 「せめて人間らしく」 リファインしたのが今のアレ、というわけだ。本人いわく、 「いやあ、描いてて『大丈夫か? こんなの』とか心配しましたよお」 ううむ。深い。 なお、こんなバカなモノも作った。 ■■■■ これはスカピーをコネてソッコで焼いて作った翼形状のモデル。 パーツの立体取りを考えるためにだけ作ったデッサン人形のようなものなので、 線に色気は入れていない。 アキラの翼の動きとかを説明する際にはコレを用いて談議した。 なお、顔の構造についても色々と。 とりあえず単なる感情バカとかにはしたくなかったし、 いいキャラになりそうだったので細かい指示を出してしまった。飲んでくれるさとやす氏に感謝する。 以下が顔のデザイン考。 ※このころ私は、毎日毎日アキラの新しいラフ画を見せられていた。 日々アキラの顔の造形が変わってゆくのが面白かった。 「丸くなったね。さとやすの影響?」とか「これじゃケモノ顔だよ」とか 「あ、また角張った」とか(笑)。 おかげで私の机の上は川上が置いてゆく原稿やらラフ画やらで山のようになってしまった。 今では「カワカミ」と名付けた専用引き出しを作ってそこに放り込んでいる。 ■■■■■ よーく見ると解るのだけど、髪型が妙なのだよね。 「色々な角度から見たごとに、全然違うものに見える」 というのが鳥の飛行形状や飛行機の美しさだと思うので、アキラにもそれを応用。 活発に見えたり大人っぽく見えたりするものを作った。 まあ、何やってんだろーかと言う人もいるだろうが、こういうやり方だってのあるわけなのだよね。 ともかく言えるのは、 「俺ぁ間違いなくコイツら好きだよ」 ってコト。手ぇ抜かなかったもの。
-------------------------------------------------------------------------------- ■ そーいうわけでダン吉・ナオミのオマケコーナ〜。 今回のネタは俺原画に彩色「しのざきあきら」氏というコンビで作った香港プレゼン画像。 なお、アキラ画像は壁紙加工。 ■■ どんなもんでしょ。合計40枚に満たない小説の挿画や表紙のために、 もしくは小説という文字媒体には関係ないキャラのイメージを作るために、 ここまでする必要があるのだ。 参ったものだね。 ってなカンジで香港関係のテンキーでのフォローはひとまず終了。 あとは応援して下さっている方のHPか、年末ぐらいに公開予定の俺HPを訪ねて下さい。 とにかく、個人的には、 「ここまで色々な人に愛された作品ってのは滅多にねえだろ」 ってことです。ありがとう。 いや、マジにね。 -------------------------------------------------------------------------------- [第一回ログへ] [第二回ログへ] [第三回ログへ] [第四回ログへ] [第六回番外編へ] チャット・インデクスのページへ OSAKAのページへ -------------------------------------------------------------------------------- テンキー・オフィシャルホームページへ このページに関するご意見やご要望はこちらまで
[第一回ログへ] [第二回ログへ] [第三回ログへ] [第四回ログへ] [第五回御礼編へ] -------------------------------------------------------------------------------- 香港上下巻無事販売記念CHATログ 第六回「番外編(笑)」 BY 川上 稔 -------------------------------------------------------------------------------- そういうわけで、6/21日の午前0:00から開始され、朝の5:30に終わったという 「社会人がいるのに平日の朝に何やってんだバカ>川上」なCHATのログの更なるアフターケア。 何だか前回の設定紹介とかが内外に渡って評価が良かったので、 「んじゃあ次行こう次!」 とイカリヤズムに侵された俺はとりあえず絵師さとやす氏の机を漁って 色々と資料を引っぱり出してみちゃったりしちゃったりしたというわけなのだ。 どうでもいいけど句読点着けて話せ俺。 さて、そういうわけで前回の絵と見比べつつ色々見ていってもらえると嬉しいというか、 俺達の仕事というかデザイニングというか何というかがまあ、解ると思うぞ。 いやあ、まーた昼休み中にテキスト打てるかな、俺。 ま、いつもどーり行って見ますか。 今回のステータスは以下の通り。 議題 :突発期〜付属期 危険度 :80/100 Points 進行度 :昼休み 出場者 :俺のみ ※:ROMメンバーは混乱するので含めないってかいないよ全く。
-------------------------------------------------------------------------------- 第一節:「突発期」:(PM01:02) -------------------------------------------------------------------------------- ※以下、赤い文字は「テンキー社長」による注釈です ■ 今から一年と二ヶ月ほど前(今:1998・9/29)のこと。 いきなりやっさんにアキラを描かせてみた。 その理由は、 「やっさんの絵が好きだから」 というムチャクチャに個人的なものである。 が、うまくいったらそれをモトにメディアワークスにプレゼンしようかな、と。 何しろ当時、香港を描くイラストレーターがつかまらず、どうすべえかと思っていた時期だったのだ。 そんな中、設定と軽いラフを見せて描かれたアキラが、以下のモノ。 ※以下、どのグラフィックをクリックしても大きな画像が表示されます。 さ:「ってわけでこんなんでどうっしょ?」 俺:「先生〜! 先生〜! 幼女ですかあ!?」 さ:「え? ダメ? やっぱダメすか?」 俺:「あー、何て言うか〜、エロシーンあるんすけど」 さ:「いけないなあ、犯罪じゃないですか。こんな小さな子に」 俺:「勝手に幼女描いたのは誰だっ!?」 というわけで作り直し。何度か叩いて以下の形。 おお、大人になった。 ※大人になったことはなったけど、どことなく男とゆうかオカマっぽいよなあ(汗)。
俺:「あー、それでさあ、やっさん」 さ:「ハイ、何でしょう?」 俺:「この模様とか、マジで描く?」 さ:「ああ、大丈夫っすよ。大丈夫」 俺:「んー、じゃあ、本文内容に合わせて挿画っぽくやってみよーか」 で、完成したのが以下のモノ。 ※おーーーーいろっぽい。これでギャルゲーも作れそうである(爆)。 俺:「うーむ、できたできた。イイなあ、やっぱ」 さ:「あのー……」 俺:「ん? 何?」 さ:「やっぱ模様無しにしましょう」 俺:「…………」 さ:「あ、ホラ、俺も若かったということで、面倒だし、ね? ね?」 俺:「キミ、俺が実は拳王親衛隊のメンバーだって知ってた?」 さ:「ヤダなあ、冗談やめましょうよお」 俺:「あァ? 聞こえんなあ〜!」 ■■ そんなワケでさとやす氏に挿画師が決定し(紆余曲折あったのよ、簡単に一言で言ってるけど) 例のごとく、 「一本羽の天使」 の造形にとりかかった。 そんなこんなでラフや服装例が大量に生まれる中の一枚。 本に載っているアキラに比べると随分と大人びているし、翼の色とかが逆面。 「ブラックアキラ」 とか、 「2Pカラー」 とか言われてるけどまあいいや。 こういうのを経て出来た決定稿が下のモノ。 うーむ、イイじゃない。 ちなみに挿画っぽく描いてもらったのは、 「香港上巻第5章1節で、リンからジーニアスのモンタージュをもらったあたり」 の絵である。 これらをプレゼンなどに使い、売り込み開始。
-------------------------------------------------------------------------------- 第二節:「継続期」:(PM01:12) -------------------------------------------------------------------------------- ■ はてさて、実作業開始。まずは表紙とかをソッコで作らねばならない。 が、イメージが固まらない。 とにかく表紙が狭いし翼はデカイしガンマルは大きいしで、スペースがうまく作れない。 苦肉の策でこんなのを作ってみたりもした。 実はコレ、5回目チャットで載せた暑中見舞いのアレンジだったりする。 当然、ボツ。 世の中って厳しいなあ(笑)などと言ってる間もなく締め切りが過ぎ、今の形に落ち着いた。 次は口絵 (というか、平行作業。挿画も含めて締め切りまで一ヶ月(フツーのイラストレイターとは違い、 当時のさとやす氏はOSAKAの原画とかもやっていたのでスケジュール過密だったのだよ) しかなかった) 下は口絵のアキラのラフアイデア。 イイねえ、元気あって。 というか、脚の曲線とか、もはや勢いの産物が見事にソレっぽい。 シャレにならんなあ、こういうのって。 でもボツ(笑) 泣けるとか言ってられんのが現実で。他にもとにかくいっぱい描いてもらった。 でもどんどんスカートの丈が短くなってないか?(笑) 下はガンマルの口絵ラフ。 ガンマルは読者の方達に聞いても、 「年齢不定なイメージ」 「諦観か気楽か解らない」 というつかみどころのないこと自体が個性となっているキャラ (俺の小説にはつきものと言える役)であり、挿画イメージも相当に苦労しているようだ。 こちらが条件に出したのは、 「ガタイはいいけどデブらせないで」 という、ハッキリ言ってカンケー無いコトのみ(笑)たまらんなあ。 細かいチェックを入れて完成した彼は、上巻P95のような、 シブいトコロも見せれるキャラになっていたのでした。 なお、リンなどは当初からかなりイメ−ジが決定しており、 こんなカンジ。 実はタレ目なのですね。キツイ性格してるようだが、実は違う、と。そういうキャラ。 何かやっさん気に入ってるっぽいので、リン好きの人は感謝するように。
-------------------------------------------------------------------------------- 第三節:「慣徹期」:(AM01:27) -------------------------------------------------------------------------------- ■ さーて、一ヶ月後に下巻作業突入。 上巻の表紙が明るかったし、相手がガンマルであったのに対し、 下巻では哀しげに、相手をダブルリーにすることを話し合って決定していた。さーて、いってみよ−。 実はコレ、やっさんが描いたのを90度ほど右に回してます。 もとは倒れかかるように泣いている絵なんだけど、それを回して落ちている絵にした。 イメージは香港洞の泉に沈んでいくアキラ、ということで(脈絡ないなあ) ただ、どことなく不幸というか暗いイメージが下巻にはあったのだよね。 それを上手く表現できんかなあ、と。かなり長い間、やっさんが粘っていた。 (いつも明るい絵ばかりだから、苦手なのだろーか) 同じように口絵のアキラも、 やや暗め、というか、艶っぽいほどに泣きの入った絵になっている。 これはやっさんと話していたことなのだが、 「アキラが悲惨だよなあ、中盤とか……」 というイメージがそのまま出ているのだろう。 また、Hぃシーンがあるというのも念頭に置かれていたことは事実。 このあたりでアキラを気に掛けてもらわないとしょーがなかったんだよなあ……。 結局、表紙とイメージが重ならないよう、武器を持たせ、口絵では笑顔ということになった。 なお、この時点でのジーニアスとジェイガンはこんなカンジ。 下巻口絵を見れば解るが、二人のポーズが逆。 これに関しては、あまり意味も理由もないぞ。 ついでに言うと、下巻で最大問題となった、 ※サムネールは自主規制により一部モザイク処理してあります(汗)。 生絵はクリックしてご覧下さい。 アキラの尻原画の候補一枚。 採用されたのとはちょっと角度が違うことに注意。 採用されたのとコレとを、やっさんが寝てる間にメディアワークスに送ったら、スポーン佐藤さんが、 「こっちのはモロに見えちゃうからヤバイですねえ」 とにこやかに却下してくれました。 そういう危険物資を今回は公開〜。 やっさんが徹夜でスサんでる書き込みもそのまま掲載だ。貴重だなあ。 ■■ そんなこんなで香港の作業は終了。 やっさん有り難うねー、イヤ、マジに。 あとCG塗りをカマしてくれた姉御と見城さんもお疲れさん。 土日出勤でこだわり見せてくれて、アンケートとかの評価も上々でした。 よかったなあ。
-------------------------------------------------------------------------------- 第四節:「付属期」:(PM02:02) -------------------------------------------------------------------------------- ■ と、ここで終わったらここまで見て来た人に申し訳ない。 やっさん、何か無い? ……っつーカンジで引っこ抜いてきました。 まずは、 ほい、やっさん特製のエアリアルシティ、 「アモンとクラウゼル」 別にクラウゼルのスタンドをアモンが背負っているわけではない。 色を選んで作ってあるので、フォトショなど持ってる人はバリエーションで色をいじってやって下さい。 黒に見えてる部分は灰色加工なので綺麗なセピアバージョンが作れます。 ■■ ふむ、そーゆーわけで、やっさん的に一言。 ※これはサムネールと壁紙用とではレイアウトが違います。クリックしてご覧下さい。 マウスパッドに丁度良さそうなデザインですな。 あー、はいはい。よく解りました。 ちなみにコレは壁紙加工。800×600です。 ■■■ 何とか終わった。 懐かしいなあ。 でも、挿画で描ききれなかったやっさん的都市シリーズキャラの魅力というものが 少しは解っていただけただろうか? こういうカンジなのであるよ、都市シリーズのビジュアルというのは。 ハードなようでいて、でも何か艶っぽい柔らかさがあるんだよなあ。 実はまだまだ資料があるので、好評だったならばいずれまた紹介します。 (しかし、前回あんなことを言っておきつつ、いつになったら香港から完全に離れるんだろーか。 参ったねえ(笑)) ※ホントに、下手するとまだ続きそうな気配‥‥。でも今回はとりあへず、これにておしまい。 -------------------------------------------------------------------------------- [第一回ログへ] [第二回ログへ] [第三回ログへ] [第四回ログへ] [第五回御礼編へ] チャット・インデクスのページへ OSAKAのページへ -------------------------------------------------------------------------------- テンキー・オフィシャルホームページへ このページに関するご意見やご要望はこちらまで
ふへ〜、終了〜 画像は初代スレの211が網羅しているようなので、そちらから飛んでみてください。
第三章、絵があるのをすっかり忘れてました。 すまんす、近日入荷。 -------------------------------------------------------------------------------- 1999年02月16日(火) 昨日同様 -------------------------------------------------------------------------------- 昨日と同じように体調が悪いです。 でも、昨日のようなけだるさではなくて、息苦しいというか、胃の上のあたりに何かがつかえているような、そんな気分です。 今日は朝から所長とグスタフ氏が出てしまってます。何やら昨日所長と会った方に話が−色々と複雑なようです−あるらしいのです。 そういうことは近頃またとみに増えてきている御客様の対応は私が行わねばならず、ひどく多忙です。 ええ、受付を担当する私が多忙なのは会社にとっていいことです(※1)。 でもソウさんがまた休暇届けを出されたときに、私がとった表情は、それで正解だったのでしょうか? よく解りません。 これで三週間近く無欠勤で働いてます(※2)。 でも、今日のようにグスタフ氏や所長のいない日−この御二人は本社の急な呼び出しで外に出るため、休日の予測がたてられない立場なのです−には私は絶対にここにいなければならず、それを果たすためには休めないのです。 どういうことなのでしょう? 倫敦のビッグベンの最上階にいる時計人形(※3)は、こういう気分を抱いて時報の音楽を鳴らしているのでしょうか? よくわかりません。 ただ、解るのは、この体調不良を早めに治してしまいたいということだけです。 お昼です。 幾つか 終業時間になりました。お昼過ぎから一気に御客様が増えてとても良い日だったと思います。 以上。 ※1 ……結構日本人的発想だと思うのは自分だけだろうか。 ※2 ……要領が悪いというか真面目というか、他者に期待する性格な気もする。 ※3 ……BENDAUGHTER、倫敦にいるのは三姉妹バージョン。
1999年02月17日(水) 気づいたときには -------------------------------------------------------------------------------- 抱きかかえられてました。 朝、出社してきて、まだ所長もグスタフ氏もおらず、奥のマシンルームから陽気な歌声が聞こえてるだけ、と、そういう状況だったのは憶えてます。 感覚としては何だか眠いな、という気分と何だか胃が痛いな、という痛覚とそして気が重いな、という思いでした。 気づくと一人の人に抱きしめられていました。 女性だと言うことはすぐに解りました。シャツの匂いが心地よかった(※1)ですから。 色あせた金髪で、私と同じくらいの背の高さの年老いた御婦人−変な言い方ですが、母よりも年上の方なので−が、しっかりと、椅子の上で貧血を起こした私を支えてくれたのです。 話によるとその方と所長達が来るまで十分ほど、私は気を失っていたことになります。 何だか話が前後してまとまっていませんね。 その方のことをまず書きましょう。 デトロイトの本社からいらっしゃった、イータ・テクストさんという方で、仕事は主に外部の監査などを行っているそうです。 ここは興したばかりの会社なので、様子を見に来たそうで。 でもその監査の折りに私が倒れてたなんて、これは会社にとってあまり宜しいことじゃありません。 しかも情けないことに、抱きしめられていると言うことが自覚できた瞬間、泣いてしまいました(※2)から。 安心したのと同時に、護られてしまったことに対する、つまりは自分に対しての怒りのようなものがあったのです。 イータ女史−この言い方の方が良いですわね−は、私の頭を撫でつつ、 「そろそろこうなるんじゃないかと思ってたよ」 と、ひどく強い調子で言って−おそらく本社には私のデータがきっちりと送られているのだと思います−私の背を優しく叩いてくれました。 今は私も泣きやみ、カウンターをグスタフ氏に任せてます(※3)。 私自身はカウンターの奥で座って、帰り支度です。 イータ女史は所長と二人で所長室に入り、何やら会議中です。 私はどうすべきなのでしょう。 イータ女史から強制的に三日分の休暇をいただきました。 それは望んでいたよりもひどく重い休暇です。 みっともないところと−自分でも理解していなかった−弱いところを他人に見つかってしまい、それが会社のイメージを悪くしてしまった。 就業時間中で無かったのが幸いですが、所長に対するイータ女史の目が厳しくなったのは事実でしょう。 「こうなるんじゃないかと思ってた」 その一言はやはり、私がバイトだということをイータ女史が知っていたから言えたセリフでしょうし、それはまた、私が私の思うよりも遙かに力がないと言うことです。 とりあえず、色々と考える三日間の休養になりそうです。 一応、日誌は家でもつけようかと思います(※4)。 では、今日はこれで早退です。 ※1 ……男性に抱きしめられた経験があるのだろうか。意味深ではあるが、単に強気な見栄かもしれない。 ※2 ……情けないとは言っているが羞恥心は無いようだ。よく泣くのかもしれない。 ※3 ……この人に接客させるのも間違いな気もするのだが。 ※4 ……家にコンピュータが無いようなので、日誌は手書きで、持ち帰り管理可能なものらしい。
1999年02月18日(木) 初休暇 -------------------------------------------------------------------------------- 起きたら時計が八時をさしていて、 「遅刻した!」 と思いました。でもよく考えてみたら今日は休暇です(※1)。 休みなんだと思ってふと外を見たら暗いので、日本の冬はひどく朝が遅いな、とつぶやきテレビを着けたら何故かクイズ番組が。 「夜!?」 そう、気づいたら十五時間ほど寝てたのです(※2)。 参りました。 これから三連休、初日はゆっくりと洗濯などして残り二日を優雅に凄そうと思っていたのですが、世の中ままならないようですわね。 とりあえずおなかが減っています。テレビを消して十二時間遅れの朝食と参りましょう。 えーと。 食料品がありません(※3)。 戸棚の中にクッキーがあったのでかじりつつ、これからどうしようかを考えつつ、そしてテレビを見つつ、この日誌を書いてます。 起きてから少し目が覚めてくるとどうも不安のようなものが胸の中にあります。その最大要因は、 「私はこれからどうしようか」 ということです。 あんなことになってしまったバイトの人間を会社が正式採用する筈は無いですわね。やはり今後のことを考えようかしら、と。 何だかとても一人でいたくはない気分です。 友人のところに電話しました(※4)が、平日のこの時間はどこかで遊んでいるのでしょう。誰も出ません。 仕方ないのでテレビを見続けます。早口の日本語は何を言っているのかよく解りませんが、人の声が聞こえるのは安心できます。 こういうとき、そばに誰かがいて欲しいと思うのは単なるワガママなのでしょうか。神様に頼み事が出来るならば(※5)寄り添って話をしてくれる、頼れる肩−方ではないです、寄り添うためのものですから−があればいいのですけど。 でも、私の中にある小さな声のようなものが、 「こんなのはきっと一時期のものさ」 と言っています。それを信じて願い事はしません。 明日になれば、朝の太陽でも見れば、この胸の中から何かがすっぽ抜けてしまったような感覚を無くせると信じましょう。 今日は自分で自分を抱きしめて、また、寝ることにします。 でも本当に、これからどうしましょうか。 寝ます。 ※1 ……社会人になるとよくやることである。 ※2 ……これもよくやる。が、複合技になるのは希有だと思う。 ※3 ……大雑把な性格らしい。食料品は無くなったら買い込む習慣なのだろうか。 ※4 ……誰かと話したくてすぐ”友人”というのは、結構色気の無い話だと思う。 ※5 ……倫敦あたりではデキてしまうのだが、そーいう意味ではない。
1999年02月19日(金) じっと -------------------------------------------------------------------------------- 色々と考えました。 結局、掃除もせず、洗濯もせず(※1)、ただテレビから寂しさをまぎらわす雑音を流しつつ、自分が今後どうすべきかを考えていました。 その結果は簡単です。 「まず、外に出よう」 これしかありません。 今は午後八時。寒い雨がやんだ頃合いです。 外は冷たいことでしょう。 ですが、私の中には私自身を抱きしめたくなるような疑問があります。 誰かに問いかけたい疑問です。でも、誰にも言えません(※2)。 だから外に出ます。 疑問を問うことなく、持ち歩き、私は私を抱きしめようと思うのですが、はてさて、駅前(※3)にでも行きましょうか、とりあえずは。 ライトアップされた光を見て、外に出たことを実感しましょう。 そう。 私自身は間違いなく、一人で悩むことよりも、外気の中、外を意識して悩むことを望みたいです。 こんなときに誰か知っている男性に会えたら運命的な伴侶と錯覚(※4)してしまうかもしれませんね。それほど私が弱っているということなのでしょう。 ええ、弱っている自覚があります。 自覚があり、そして、昨夜に感じた、 「一時期のものさ」 という思いがあります。 自覚とその思いがあるならば、この鬱屈した気分を晴らさなければなりません。自分を抱えて外へ。 目を覚ますために、部屋の暖房を切って、着替え、冷たい外へ。 行きましょう。 夕食はどこで摂りましょうか? ここは一つ自分の冒険心に応えるためにも未だかつて入ったことのない”牛丼屋”(※5)などに入るのもいいかもしれません。 まあ、それも何も、ともかく駅前まで歩いてから。 何て無目的で非生産的なんでしょうか。 でも、私には必要なことです。 では、外に行って来ます。 ※1 ……食料品を買いに行きなさいってば。 ※2 ……誰彼と悩みを相談できる人間は、ストレスがたまっているだけで悩んでいないのだと思うこともしばしばある。 ※3 ……相模原の駅かと思われる。 ※4 ……錯覚と言い切るあたり、妙に現実思考だ。 ※5 ……だから久しぶりの食事でそういうキツイの食わないように。
1999年02月20日(土) 朝帰り -------------------------------------------------------------------------------- してしまいました。 いえ、別に運命的な伴侶に出会ってしまったというわけではなく、ちょっと街を歩いていただけです。帰宅は午前四時でしたから、夜帰りと言えない(※1)こともありません。 駅前を歩いたり、夜の暗い町中を眺めたり、通りを単車の−暴走族というものでしょうか−集団が走っていくのを見ていたら、いつの間にかそういう時間になってました。 本当は朝日が出るまで外にいたかったのですが、三時頃から急激に冷え(※2)はじめ、根性無しの小娘は部屋に逃げ帰ったのでした。 しかし、面白いものですね、夜の街というものは。 「私のものではない」 のですから。 人が生活して、動きや光があるから街は人々のものだと思っていたのです。 しかし、誰もおらず、動きもなく、光もない街はそれこそ、 「だれのものでもなかった」 のでした。 これには困りました。何しろ、私が街の中で一人になっている責任を誰かのせい−街の所有者が街を所有しているので私は何もできないと言いたかったのです−にできないのですから。 でもそのおかげで一つ助かりました。 ひどく冷えたのです。身体も頭も、そして考えも。 今まで引きずっていた、言葉に上手くできないものが急速に消えました。 そのキーワードは、 「自分はまだ何もかもを知らない」 ということです。 いつもの町並みも、帰宅途中に寄るスーパーも、豪勢な食事−と私が思っている−レストランも、道路も、朝に子供達が駈けていく学校も、冬枯れした並木の色も、無人の夜の中では全てが私の知らないものでした。 私が多くの人と熱気に囲まれるべき場所が、全てにおいて私を私一人だけで置こうとします。 どこまで行っても私は一人でした。 初めはそれが怖くて、走ったりして、色々なところを回ったのです。 しかし駅前のホテルの窓明かりを見つけたとき、自分がその中には入れないと思ったとき、不意に力が抜けました。上記のようなことを思ったからです。 あとは、苦笑さえ出しても構わないくらいの気分がいい、散歩でした。 歩行者用の信号が点滅してても急ぎません(※3)。 歩道橋に昇り、辺りを見回すと、夜景が見えました。 民家の白い明かりが幾つか見えました。 そこにいる人達は、おそらく、私と同じなのではないかと、そう思います。そう、おそらくは、一人でいるということは夜の街を歩くときも部屋に一人でいるときも同じであって、ただ単に普段はそれに気づいていない−気づかされていない−だけなのだ、と。 高校の時に美術の先生が似たようなことを言っていました。 その人は高齢のご老人で、言うことがうまく聞こえないのでしたけど、あるとき、白い石膏玉と黒いビロードを持ってきて、こうおっしゃったのです。まずは白い玉を窓際の明るい方に掲げ(※4)て、 「ここに真っ白い玉がある。これを描くとき、我々は真っ白な玉をわずかな陰影で描くしかない」 そして、その玉を黒布の上に置き、 「しかしこうすると、陰影は強くなり、我々は黒の影を持ってこの白い玉を描くことになる。 しかし、気をつけねばならん。 どのように陰影があろうとも、この玉は常に白いのだ。 それを忘れて、灰色の影が着いた玉を描いてはならん」 友達達は皆、彼のことを”何を言ってるか解らないオヤジ”として無視した−課題は出せばいいという方でしたし、私も皆と同様の扱いをしていた−のですが、私はその言葉を憶えています。 不思議な感覚です。
どうして偶然に憶えていた言葉が、今の私が感じる私なりの考えと合一するのでしょう? 私は昔からそれを感じていたからその言葉を覚えていたのか? それともその言葉を覚えていたから考えることが出来たのか? どうなのでしょう? でもまあ、構わないでしょうね、私はそのときそう思って、必要なのはこれからだと考え直したのですから。 空はひどく綺麗に晴れて寒いくらいでした。 路面が凍り始めた時間に帰り、シャワーを浴びたとき、御風呂場の中で笑ってしまいました。 「どうして今まで悩んでいたのだろう」 歩きすぎでハイになっていたのかもしれません。 でも、寒さで目が覚めて、心を入れ替えて、空に浮かぶ月を見たあとでは、それらを知る前にここで縮こまっていた自分がひどく滑稽にしか見えなかったのです。 シャワーを浴びながらそのままお湯をためて(※5)お風呂に浸かり、出た後は身体を冷やさないようにお酒を少々。 本当の意味で疲れをとるために寝ました。 起きたのは午後四時です。 結局、洗濯も掃除も無し(※6)。 なんて堕落した三連休なんでしょうか? 夜は友人から電話がかかってきました。お昼に電話をかけてきたらしいのですが、私は起きなかったようですね。 色々と話しました。 そしたら彼女ったら、 「最近、仕事はどう?」 などと、まるで社会人のようなことを言うのです。 私はつい、答えてました。 「私がいなくても何とかなるみたい」 そして、 「でも、私がいた方がいいみたい」 うぬぼれなのか何なのか、よくわかりません。でも、昨夜まで落ち込んでいた小娘の意見としては上出来でしょう。 とにかく明日は出社です。 そしておそらく、3月に入った時点で私が採用か否かの判決が下るはずです。 それまでは頑張ろうと思います。あれだけの失態を連続しておいてまだ勤めたいと思うのは傲慢ですが、こう思うのです。 「あの会社は私に陰影を与えてくれるのではないか」 と。 私が白い玉−要所は丸いですが実際には太ってないつもりです−だとすれば、あの場所の忙しさと人々の個性は、私が私を発見する”鏡”になるのではないかと思うのです。 だって、家庭でも学校でも得られなかったくらいに私は落ち込まされて、それだからこそ昨夜のようなことを感じたのですから。 良いことも悪いことも社会には最大限で存在するのでしょうね。 私は所長さんもグスタフさんも、陽気な三人組もティーマ嬢もヴァイベルクさんも富田林さんも、えーと、ソウさんの翼の色も好きです。 逆に言えば好きなものに圧倒されて自分が嫌いになっていたのでしょう。 そういうことだと思います。 いえ、そういうことだと思いましょう。 考え込むには時間が必要ですし、今のところ、昨夜の月の美しさと街の厳しさに勝てる思考は作れそうにありません。 月と寒さの印象。 これは私が半分だけ倫敦の血を引いてるせいかもしれません。 でも、本当にいい夜でした。 明日からはいい昼を作りたいです。 では、寝ます。 ※1 ……言わない言わない。 ※2 ……1999年の冬は暖冬だったが、朝方の冷え込みは当然キツかったりする。 ※3 ……いつもは急いでいるらしい。 ※4 ……デッサン練習の基礎だったりする。ちなみに光と影による形の把握が重要なのであって、外形線のみにこだわるのは悪いとされる。 ※5 ……贅沢な話ではあるが、お湯が溜まるまでハダカでシャワーなのだから悠長でもある。 ※6 ……だから食料品を買いにいきなさいって。
1999年02月21日(日) 出社! -------------------------------------------------------------------------------- これからはあまり暇でない限り、もしくは重大時ではない限り、終業後に書こうと思います。 今日は朝から意外なほどに普通でした。 誰も私に気を遣うことなく−実はそれこそが気を遣っていた(※1)ということかもしれません−通常業務のまま。所長には一応、謝罪をしておきましたが、 「イータ女史が上には何事もなかったと言っておくと」 とのことです。あの方、見た目は怖そうに見えましたが、やはり私を支えてくれた手の感触といい、親切な方なのでしょう。 そうそう、ティーマ嬢から聞きましたが、この付近の御婦人達がここ数日、ここに遊びに来ては私がいないことを気にしていたようです。 今度来られたら御茶(※2)でも差し上げましょう。 また、ヴァイベルク女史も私が朝からいることに気づき、一礼して上に向かわれました−意外と珍しいことなのです−富田林さんは前と代わらず関西訛の挨拶、ソウさんにいたっては、まず私を見て、 「ほほう」 という顔をしてからの無視です。こりゃあ嫌われてますわねきっと。 今日は意外と忙しかったですね。 何よりも三日も休んでいたために戸棚の食料品や冷蔵庫の中がほとんど空っぽの壊滅(※3)です。お昼過ぎに時間ができたので色々と買ってきました。そしてこの付近の商店街を見て思うのはやはり先夜の街の印象。 ここも夜には街だけの街となるのでしょう。 そういう機会があればいいなとは思いますが、そうなったらそうなったで大変でしょうね。御化粧直しや髪のしつけ直しとか−と、何を本気で考えているんでしょう。きっとおそらく、今月でここをやめさせられるかもしれませんのに。 とにかく頑張りましょう。 所長は週休二日で、日曜は出て欲しいが金土で休めないか否かと言っていましたが、はてさて、受付嬢が週休二日で大丈夫なものなんでしょうか? 女に甘いとロクなことになりませんわよ(※4)。 と、そろそろ書くことが無くなってきました。 明日は商店街で本格的なお買い物です。 今日は先ほど買っておいたケーキを奥のマシンルームの前に置いてそれから帰りましょう。 追記 そういえば、以前、私より先に奥のマシンルームにケーキを置いて行ったのは誰なんでしょう? ※1 ……本当に忘れていた者も数名いると思う。 ※2 ……紅茶である。 ※3 ……自宅とあまり変わらない管理態勢のようだが、彼女が休みの間に他の連中が貪ったのだろう。 ※4 ……こういうことを自分で言う人が一番甘い。
1999年02月22日(月) 大忙し -------------------------------------------------------------------------------- いやはや大騒ぎですわね。 週明けは学生さん達が立ち寄る(※1)ので一気に混みました。二階の方も大忙しだったようで、何度か二階から内線でコーヒーの”出前”(※2)がありました。 受付の方は掲示板がまた賑わっており、なかなか熱が冷めません。 いいことだと思います。 なお、今日は通勤途中にパンプスの足がとれてしまってひどい目に遭いました。それが起きたのは列車の中で−私が乗る時間帯はラッシュが空く頃合いだということもあり−いきなり片足のかかとが崩れ、そのまま誰からも支えてもらえず、尻餅を着いてしまいました。 何ともまあ、異人の小娘が列車内で転ぶというのはひどく目立つ見せ物らしく、皆がじろじろと注目して−スカートは押さえてましたとも(※3)−とても恥ずかしい思いをしました。 会社に着いてからは来客用−所長室用の−スリッパを借りてましたが、昼過ぎに外の商店街で色々と買い物をするついで、靴屋でパンプスの修理をお願いしました。明日には修理出来るそうです(※4)。 また、商店街で自分の家用の食料も密かに買い込みました。 ここから相模原まで、大断層を越えて果物や野菜が運ばれていく、そう考えると私もなかなかの輸送役です。今日は早く帰って自宅の冷蔵庫の中を賑やかにしてあげたいものですね。 では、今日はこんなところで。 先ほどから、ヴァイベルクさんがまたロビーで腕の修理をしています。 それを待って、帰りましょう。 ※1 ……逆に日曜日は空いていたりする。 ※2 ……コーヒーなので、ヴァイベルクかソウではないだろうか。 ※3 ……押さえているから尻餅で転んだ可能性が高い。 ※4 ……修理に行ったというよりも、代わりの靴を買いに行ったついでだと思われる。 -------------------------------------------------------------------------------- 1999年02月23日(火) 商店街
今日は色々と商店街を回ってきました。 食器屋のおばさんは私のことを知っていたようで、カウンターに商品を並べるなり、 「あら、仕事に戻ったのかい?」 などと問われ、思わず慌てたのか、私、仏蘭西語で(※1)答えてしまいました。 面白いことが色々とあります。文具を買い、最後に寄ったお店が靴屋。 昨日、かかとの取れたパンプスの修理を頼んだお店です。 修理は終了してました。 店主のおじいさんから直った白いパンプスを預かり、お金を払おうとした時、おじいさんが私の姿を見るのです。 「どうなさいました?」 「いや、アンタ……」 「?」 「向こうの旅行会社の人かい?」 「ええ、そうです」 「じゃあいいや、タダ、タダで構わねえ」 「は?」 どういうことかを尋ねれば、ここのところ夜になると私と似た格好の小さな三人組が現れ、陽気な唄を謳いながら壊れた靴などを修理して去っていくのだそうです。これは靴屋だけではありません。 奥の小物屋でも裁縫途中だった衣服が一晩で誰かの手によってきちんと完成されたり、はす向かいのパン屋でも、主人が朝、自分の店にやってくると、棚にパンが全て焼かれて並んでいたりするそうです。 その折りに聞くうわさは、そういうことが起きた前の晩、仕事場から陽気な歌声が三人分響いたことと、今、私が着てるのと似た服を着た三人組が町中を歩いてるのを見かけた人がいるという、そのことです。 間違いなく、例の三人組(※2)です、ええ、そうに違いありませんとも。 でも、罪でも何でもないのが快いですわね。 これが地元密着型企業というもので−……はありません、そんな気がします(※3)。 さてさて、三人のおかげで私はタダで靴を直してもらえました。 ひょっとして、パン屋にこの格好で入ったら、パンをただでもらえるのでしょうか? と、甘い考えですコト(※4)。 さて、今日はまたソウさんが休暇届けを二日分出していきました。 私は動じません、といよりも動じなくなりました。 不感症? いえいえ、不干渉。 色々と疑問はありますが、悩んで答えが出るならば悩みます。 悩む以外の方法で答えが出る疑問もあり、これはおそらくそっち側にある疑問です。 ならば、気楽に待ちます。そういうものです。 では、そろそろ帰ります。 ティーマ嬢が何やら美味しい店を見つけたとかで、ついていきます。 ※1 ……難しい単語など、自国語でつい会話に混ぜてしまうことはある。 ※2 ……ブラウニーはもともと穀物倉や靴屋の手伝いをする妖精。好きでやっているのだと思われる。 ※3 ……確かにそう思う。 ※4 ……とはいえ、結局もらえた可能性が高い。
1999年02月24日(水) 胃がもたれ気味 -------------------------------------------------------------------------------- 雨のせいか御客様の数が少ない日でした。 おかげで書くこともあまりございません。 就業中にあったことと言えば、富田林さんが大阪に今の一時期だけでも帰ろうか否かを悩んでいたことです。お昼をカウンターの内側で皆で−ここのところ、ミーティングを兼ねてこういうことが行われるようになりました。今日は所長の御馳走で天ザル蕎麦(※1)でした。御馳走様です−話し合っていた時に出た話題です。 大阪では先年からBABELという名の広報塔が建てられ、色々な騒ぎとなっていましたが−私の記憶では昨年12月に放送権をめぐるゲームが終了した筈でしたけど−何やらまた問題(※2)が起きて大阪は大騒ぎになっているのだそうです。 富田林さんの妹さん(※3)は大阪圏の総長連合にいるらしく、その仕事が大わらわで家事−父子家庭だそうで−が何にもできないそうです。 「私が戻らんと、お父んが飢え死にするかもしれんわなあ」 と富田林さんは言っていましたが、相変わらず休暇は取りません。 御父様は大丈夫なのでしょうか? まあ、何かあったら会社に直接連絡があるでしょう。 って、他人事ですわね、私。 と、タイトルに書いたことの原因にも触れましょう。 昨夜、ティーマ嬢につれていっていただいたのは東京大断層東側、船を空に飛ばすことのできる大空港を有する調布でした。 駅近くにあるラーメン屋に美味しいものがあると聞いたのです。 で、それは何かというと、 「ロースカツラーメン」 中華蕎麦の上に六つ切りのロースカツが無造作に乗っているという代物で、何というべきでしょうか。冗談?(※4) そういった趣です。 ついティーマ嬢につられて餃子まで頼んでしまった私は、敵の圧倒的な質量−焼豚なら解りますが、ロースカツって大きいんですのよ−を前に思わずひるんでしまいました。 横を見るとティーマ嬢は既に食事中。こちらのことなど気にしておりません。 おそるおそる食べて見ますと、カツに見えたのは唐揚げ(タツタ揚げと言うのでしたかしら? 濃い味付きの皮なしフライは)にされたカツで、スープ内でも衣が分離しないようになってます。 が、その油の重さと来たら。 私、体育会系ではないのですけど。(あとでティーマ嬢に聞いたところ、ミカンとイカ以外は何でも食べれるのだそうです。ただ、塩系の味が好きなのですが、ウェアキャットは心臓病で死ぬ方が多く−多分、ネコの時に人間達が焼き魚などをそのままあげるからだと思います。話によるとネコの身体にしてみれば人間と同量の塩分摂取は危険なのだそうで。野良猫が飼い猫より長生きする理由は大半がそれだそうです−普段はこういうものを食べないそうです) しかしまあ、自分でお金を払う、そのお金自体に対する義理やティーマ嬢への義理もありますし、ええ、食べましたとも、全部。勢いにのってスープまで全部飲みましたとも。 その途中で気づいたのですが、 「私、脂物がここまでダメだったかしら?」 という妙な事実です。 そして気づいたのは、 「おそらく、ワインが無いせい?」 ということでした(※5)。 実家や自宅、良く行くレストランでは、ステーキなどとともに赤を頼みます。 脂物や臭いのきつい場合にはHermitage・Margaux(※6)などを用意するのですが、この中華蕎麦も同じですわね。 日本人は本当に色々なものを礼儀や体の調子を考えずに食べると思います。 ともあれはてさて、そのおかげで今日は髪と肌が重く、石鹸にでもなった気分です。 ティーマ嬢は、 「また行こーね」 などと言って下さいますが、そのときはワイン持参です。ええ、ポットに 入れて持っていきますとも!! ※1 ……蕎麦好きらしい。 ※2 ……BABELの閉鎖問題。SATIEは12月に終了したと思っていたようだが、実際は2月半ばまで最終戦があった。 ※3 ……富田林育華。総長連合の特務であるため、この時期は三年生最後の仕事として大人達との折衝で多忙だったと思われる。 ※4 ……実在する。 ※5 ……というか、単に最近が粗食だったからリバウンドが起きたのでは。 ※6 ……ヘルミタージュとマルゴー、ワインは産地名が名称となる。どちらも有名な赤。
1999年02月25日(木) 明日はお休み -------------------------------------------------------------------------------- 昨日が少なかったせいか、今日はたくさんの御客様がいらっしゃいました。 中には私がまだ休んでいると思った方もおられたようで、ロビーの方からこそこそと噂話が聞こえたりします。気分的に有名人ですわね。 今日のお昼のミーティングでは、本社からの要請で就業時間帯が色々と変更になることが伝えられました。 今、私は9:00〜17:00までの八時間勤務ですが、三月以降−三月以降もここにいられればですが−は9:00〜18:00の九時間勤務で中に一時間休憩、もしくは13:00〜22:00で中に一時間休憩かの、どちらかを選択していく、という形(※1)になるそうです。 これはつまり、この旅行会社が10:00〜21:00の間、開いているようになるということです。(開店前と閉店後、それぞれ一時間ずつ準備や後片付けがあるのですね) いやはや、夜にここに来る方はいらっしゃるんでしょうか? 細かい事件としましてはタイトルに書いたとおり、所長がそうするように言ってくれたことです。 いやはや、前回のことで随分とご迷惑をおかけしたのですが。扱いづらいバイト(※2)でしょうね、私って。 でも、休みをいただけるならば、ええ頑張って休ませていただきますとも。 追記1 明日が休みだということは、明後日出社して、さらに次の日、判決が下るわけですわね。私がここにいていいか。 判断の近い今、休みをとるように言われるなんて、これはかなり望みが薄いのでしょう。いやはや。 追記2 実家からハンガーが多数送られてきました。 一緒についてた手紙によると、前に送ったシャツ用らしいです。 でも御免なさい母さん、近所の100円セールでハンガーは買い揃えました。幾本か、会社用に持って来た方が良さそうですね。 ※1 ……要するに早番と遅番の概念である。結構フレキシブルなようだ。 ※2 ……言っているのは本人だけなのは周知の事実。 -------------------------------------------------------------------------------- 1999年02月26日(金) 掃除!!
今日はお休みということで、この前の三連休にはできなかった念願の掃除を慣行しました。 いやはや、ゴミが出るわ埃が出るわで大騒ぎですわねホント。 しかもそろそろ花粉の季節ですし、布団を干すなら今の内(※1)。一人で寝るには広いベッド−深い意味があっての発言じゃございません−から毛布やら何やら一気に剥がしてベランダへ。 そして部屋のゴミなどをまとめてみました。 気づいたのは、意外と食材関係のゴミがないことです。これはつまり私が落ち込むと食べなくなるタイプ(※2)だということですね、きっと。 ゴミがかなり多く出たので、ゴミ袋などが足りなくなりました。 お昼御飯を食べる−昼で外食だなんて大きくでましたわね私−のと一緒に色々な買い物と、そしてそう、昨日付けで御給料が銀行に振り込まれていたのでした。14万円。バイトでこんなにいただいていいのでしょうか。 よく考えたら久しぶりの労働の成果でした。 昔はパン屋でバイトをしつつ、やはり毎月こうやって働いた分のお金をいただいていたのですけど。その感覚を忘れていました。 そうやって得たお金を持って何か食べようと思ったのですが、何故か外食をする気が無くなっていました。 何というべきか。 私は意外と家庭的な上で叙情的(※3)なのかもしれません。 そのお金を持ってスーパーに行き、ゴミ袋などと一緒にお肉やパスタにワインなどを買い込み帰宅。自分のお金で買ったものを自分で調理して自分で食べて自分で片づける。それが一番に感じるのは地味なんでしょうね、芯の部分が。 気づいたらマットだけのベッドの上で寝て(※4)ました。ワインがきいたものと見えます。 起きたのは午後八時。寒い空気が部屋を洗っていることを感じつつ、寝ぼけ眼で冷えてしまった布団などを取り込みました。 と、ふと気づいたのは台所のゴミ袋のことです。 視界に入った袋は三つ。 しかも今日は日曜日ではなくて金曜日。 しまった。と思ってももう遅いです。回収日は来週の月曜日。 休暇と言うことで休みの日と勘違い(※5)してたのです。 参りました。 まとめたゴミの袋三つと三日間過ごせと神は仰ってるようです。 いや、でも、しかし、自分が生んだゴミです。三日間ぐらいはつきあってみせましょう。ええ、大丈夫ですとも!! ※1 ……花粉症? ※2 ……というか単に買いに行かなくなるだけなのは今までの記録通りである。意外と内向的なのかも知れない。 ※3 ……貧乏性で思いこみが激しい、という気もするが、ものごとは良い方に考えるべきである。 ※4 ……部屋の鍵は開けっぱなしなのだから、ひどく無防備な娘である。 ※5 ……社会人特有のミス。この分だとビデオ録画の予約なども間違えるタイプだと思われる。
1999年02月27日(土) 静かな土曜日 -------------------------------------------------------------------------------- 御客様が少な目で静かな日でした。 今日はヴァイベルクさんがお休みです。何か理由があったわけではなく、正統な意味での休暇とのことでした。私と同じですわね。 近頃は段々と暖かくなってきており、会社の前を掃除していると薄着の方が多く通り過ぎていきました。ふと気づいたので、うちの会社の制服にも夏服(※1)があるのか否かをグスタフ氏に聞いてみました。 「当然ある」 とのことです。ですがその後に氏はひどくおごそかに、 「だが着るのは自由であり、個人的に言えばキミが着ることはあまり感心できない(※2)」 んだそうです。はあ、何事でしょうか一体。 ミーティング時の話だったのですが、ソウさん−彼女は香港支社で制服を着てた経験がおありですから、夏服がいかなるものかを知っておられる筈です−はその話題をハッキリ無視し、 「その前に社員になれたらねー」 と、一番気にしてることを軽い口調で言いました。 ええ、そうできればいいと思ってますとも。それも心から!! 就業時間が過ぎ、先ほどグスタフ氏が帰られました。 この社内にいるのは私と、奥のマシンルームにいる三人組だけです。 明かりを消して自動ドアの電源を落とし、軽く施錠して裏口から出ていくだけなのですが、ひょっとして、変な思い無しでここから帰るのは今日が最後になるかもしれません。 明日はひょっとすると負け犬気分で帰ることになるかもしれませんから。 でも、まだ負けたわけではないので気楽に行きましょう。 帰りに明日の夜に食べるものを豪勢に買っていかないと(※3)。もし正社員になれていたらウカれて騒ぐ(※4)でしょうし、なれていなかったら沈んで買い物に行く気も失せてしまうでしょうしね。 しかし、履歴書とかはまだ買いません。 敗北宣言を今からするようなことを、どうしてできましょうか!? ※1 ……デザイン画は存在しているが、まだ未発表。 ※2 ……また、サイズ的に問題がある服だったりするようだ。(ログ1参照) ※3 ……このことから、この日は早番で入っていたものと思われる。 ※4 ……彼女がウカれて騒ぐというのも、一度見てみたい気がするが、何となく悪い予感もする。
1999年02月28日(日) 今日 -------------------------------------------------------------------------------- 何だか色々とあった気がします。 本当はあまり大したことではなく、一つのことで、それがどういったわけか私の中で広く派生してしまったために一つのことがたくさんに感じられて色々と−何を書いてるのか自分でも良く解らなくなってしまいました−改めて思考を整理しましょう。 今日はいつも通りに御客様が見えられました。午前中だけで60人です。 その際、所長は何やら奥の方で仕事をなさってました(※1)。 私はいつ、所長から正式な辞令(と言うんでしょうか、この場合)として、この会社に採用されたか否かの通知が来るかを待っていました。 昼になって、ミーティングの際も、私はそれを待っていました。 午後になって、御客様が入れ替わる中、やはり私はそれを待っていました。 三時になって軽い休憩のときも、私はそれを待っていました。 休憩の後の最後の勤務時間も、ずっとずっと、待っていました。 私は待っていたのです。ええ、本当に(※2)。 でも、それはやってきませんでした。 就業後に声がかかるのかと思い、着替えるのを控えていたのですが、やはり所長は声を掛けてきません。 どうしたものでしょうか。 そう思い、でも、長くここに留まるわけにもいけませんから、私は自分から所長室のドアを叩きました。 中には所長はおらず、グスタフ氏がおられました。 本当は、遠回しに探ろうと思ったのですが、うまくいかないものですね。 率直に問いかけたのは、私がそれを気にかけてたまらなかったということでしょう。 「私は明日からもここに来ていいんでしょうか?」 私の問いに彼は振り向きもせず、 「? 明日、初日からいきなり休暇が必要かね?」 と言いました。 その瞬間、全てを私は悟りました。 何故か、全てが私にとって幸いな方向に動いていたことを。 私は−本当は喜びというか興奮というか、まあ、そういったもので−声も出せないほどでしたが、何とか吐息三つで喉に言葉を通しました。 「いえ、休みは必要ありません」 「ああ、では良かった。キミがいると助かることが多い」 「……助かる?」 「無理に働かせて倒れたもので、ここで働くのを拒否されたらどうすべきかと思っていたが」 「まさか」 何とか小さな笑いが作れました。そして、 「できましたら早急に採用通知をいただきたいです。実家の方に送って、母を安心させたい(※3)ですから」 「了解した」 そういうグスタフ氏は一度もこちらを振り返りません。 私はそのまま受付に戻り、職員用のトイレに駆け込みました。 個室に入って蓋を閉めた便座を椅子代わりに座り込み、そして一息。 すると身体から力が一気に抜けて、笑いがこぼれてきました。 「なあんだ」 と、つぶやく余裕がありました。 何しろ、ここ数日ずっと気に掛けていたことが、単に私の思いこみであったというそのことが解ったからです。 何てことでしょうね。 あれほど疲れて倒れたことや、一人で何も考えずに悩んだ(矛盾してますわね、この言い方)ことや、夜の街に感じたことも、全て私の空回りであったなんて!! 「なんてバカなんでしょう」 つぶやき、小さく笑いました。 そこから先はよく解りません。 笑みが段々と身体のふるえに変わって、気づいたら泣いてました(※3)。 笑って済ませて元気に終わるはずが、何故か涙がこぼれて止まりませんでした。 近頃、泣いてばかりです。 しかし、前とは違う涙です。それは解ります。 「良かった」
それだけが口から紡がれる言葉でした。 本当に、それだけだったのでしょう。 泣くときのコツが涙がこぼれても目元をこすらないことー目元をこするから目元が赤くなるのだそうです−と知っていたので、涙に全てを任せました。 胸ポケットの懐中時計(※4)にして三分、私の感覚にして数月分、泣きました。 そして軽く涙を拭って洗面所の鏡を見たら、化粧が淡く崩れた自分(※5)が当然のようにそこにいます。 顔を洗って出直しです。 胸のつかえもございません。ええ、ありませんとも!! 明日からは一ヶ月の研修期間としてこの会社に来ることとなります。 バイトではなくなり、研修社員という、やや不確かな身分になるわけですね。 でも構いません。 今日はすぐに帰って自宅や皆に電話です。 その後、一人で、昨日買っておいたものを食べるとしましょう。 こういう時は、一人の方が都合がいいんです。 また泣くかもしれませんからね。 ではまた明日!! 追記 どうして人は嬉しい感情というものを誰にも習わず書けるんでしょうね!? ※1 ……仕事に見せかけて寝ているだけの可能性が非常に高い。 ※2 ……度胸が無いのかもしれない。 ※3 ……母子家庭であるのは前述の通りだが、本人は全く苦に思っていないようである。 ※4 ……事務作業をしていると、わずらわしい腕時計などをつける習慣が薄れていくことが多い。 ※5 ……いつの間にやらそういう芸当も出来るようになっていたようだ。
208 :
イラストに騙された名無しさん :2001/07/14(土) 22:45
Q.手に持っている武器をその場に捨てるのにかかる時間は何秒でしょうか。 A.特に固定されていないなら一瞬です。何かがひっかるような構造なら、一秒と考えてください
209 :
イラストに騙された名無しさん :2001/07/15(日) 02:18
どうしてこのスレ荒らされるのだろう。 新人賞スレは、応募の為に我々は何をすべきか、と言う要素が強い。 このスレを立てた人がおそらく求めている、 「新人賞を取った作品の批評・その後の作者の可能性」を 語る為には、既存の新人賞スレではまとまらないと思う。 個人的には、荒らしさんに矛を収めてもらって、 このスレが活性化して欲しいと思うのだけど。
>>209 たしかにそういう議論をするためのスレにしたかったのでしょうが
上でも言ってるように、受賞作品の批評や作者についての話はは各レーベルスレで
やった方がいいだろうという結論に達して、このスレは終了してるのです。
で、このスレは現在は地下スレ「都市シリーズ情報保管倉庫」として再利用されているのです。
>>29 -207は荒らしコピペではなく、過去に発表された資料なのです。
そこの所ご理解して頂きたいと思います。
212 :
イラストに騙された名無しさん :
2001/07/15(日) 22:40 なにが「再利用」だ。ふざけるなボケ。