つまらない小説を無理矢理褒めちぎるスレ14

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>>933
西尾維新『JOJO’S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN』

皆さんは「二次創作」に興味があるだろうか。
同人誌やWeb上、あるいはVIP系の板なんかで日々書かれている、あれだ。
一口に二次創作と言っても様々な種類のものがある。
もしあの女の子があの時ああしていたら……こういう設定だったら……
私の彼女だったら……むしろ私が彼女だったら……等等。自由すぎる有様である。

そういった混沌とした情勢の中で、私の友人は
「自分にとって二次創作とは原作の隙間を想像で埋める作業である」と言っている。
つまり、原作で語られない過去や日常シーン、事件の裏側で起きていたこと、
キャラクターの心情といった事柄を想像し、書くのが楽しい(友人自身が楽しい)のだ、と。

もちろんこの友人の意見は彼がそう思っているだけであり、これが唯一の正解、などというものではない。
しかし、そういった意味で、この『JOJO’S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN』(以下本作)は
実に正しい「二次創作」のあり方である、と言えよう。

本作について語る前に、本作の主人公である「DIO」について軽く説明させていただく。
DIOは大河少年漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のいわばラスボス格であり、
その言動や強さ、「悪のカリスマ」とも言える魅力から、ジョジョ全体の中でも
屈指の人気キャラクターである。
DIOは作中で強大な力を手にし、「取るに足らぬ人間たちよ! このDIOが支配してやるぞ!」的な
ことを言いつつ主人公に敗れて死亡するのだが、後に回想シーンで登場した際には、
自分の手にした力を捨ててまでも「天国」へ行こうとしていた、と言うことになっていた。
DIOが目指していた「天国」とは何か、なぜそこへ行こうとしていたのか、ていうか人格的に矛盾が無い? ということは
ジョジョファンの中でも定期的に話題に上る事柄である。
9522/3:2011/12/22(木) 00:15:04.77 ID:5ZAzQ0NL
前置きが長くなったが、つまり本作はその「語られなかった裏側」にスポットを当てた作品である。
本作はDIOが書いた日記と手記の中間のような本をそのまま見せている、という設定である。
すなわち本作の文章もまた、DIOの思考のままにあっちへ飛んだりこっちへ飛んだり、
現代と過去を行きつ戻りつし、腹心がやられちゃったわーマジやばいわーとか、
今度友達が遊びに来るけどなに喋ろうとか、そういや昔こんなことがあったなぁとか、
延々とDIOを思考させているのである。
これはそうとうDIO、ひいては『ジョジョの奇妙な冒険』が好きでなければできることではない。
ジョジョ好きをかねてから公言している西尾維新だからこそ書けた作品であると言える。

「主人公はDIO、『天国』とは何かが語られる」と聞いて、本作の読者が本作に期待するものとはなんだろうか。
それは例えば、「天国」へ至ろうとするまでの大冒険かもしれない。謎を解き明かした後の
驚愕のどんでん返しかもしれない。疾風怒濤の熱いバトルかもしれない。
こういった読者の期待に応えるのが普通のプロのあり方というものであろう。
しかし西尾維新は普通ではなかった。それらの期待を柳のごとく受け流し、ひたすらDIOに日記を書かせる。
そろそろ何かが起こるだろう、いや起きてくれという読者の希望をあざ笑うかのように、
西尾維新は丹念に丹念にDIOの思考を追いかける。その首尾一貫した有様には尊敬の念すら抱くほどだ。

例えば、なんかところどころで「ん? この話って前にも出てこなかった?」という展開があるが、
日が開けば同じことを二度三度と考えることもあるだろう。これはリアリティの演出の一環なのである。
部下が次々と主人公たちにやられて恨み言を言ったり組織運営に悩んだりするDIOなんて見たくないという
人もいるだろうが、悪のカリスマだろうと部下が減れば弱気にもなろう。これもリアリティの演出の一環なのである。
こうして西尾維新は原作に開いた、DIOの設定という隙間を次々に埋めてゆく。
具体的に言うと300ページほどかけて埋めてゆく。そして隙間を埋め終えると同時に本作も終わる。

9533/3:2011/12/22(木) 00:19:27.27 ID:5ZAzQ0NL
上のほうで私が「本作は正しい二次創作である」と書いた理由がお分かりいただけただろうか。
そう、本作は西尾維新による『ジョジョ』の二次創作なのである。

ちなみに本作に先立って、乙一、上遠野浩平といった人気作家が『ジョジョ』のノベライズに挑戦している。
これらの作品も分類するならば二次創作ではあるが、私は本作にこそキングオブ二次創作の称号を与えたいと思う。
自分のサイトでやれ的な意味で。


===
「作家・西尾維新」についての褒めちぎりは>>526が素晴らしい書評を書いてくれたので、
「ジョジョのノベライズ」としてどうかという観点で書いてみた。
正直に言うと読むのが苦痛だった。西尾維新は前から苦手だったが、苦手とかいう以前の問題であるように思う。
乙一と上遠野浩平のノベライズは本当に面白かった。ゴールデンハート? 忘れろ。