つまらない小説を無理矢理褒めちぎるスレ14

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451イラストに騙された名無しさん
『魔法科高校の劣等生 入学編(上・下)』
著/佐島勤 イラスト/石田可奈 (電撃文庫)

西暦2095年
魔法は科学技術として周知されていた。
核兵器すらねじ伏せる魔法技能は国家にとって力そのものであり、各国は魔法技師(略称・魔法師)の育成を競っていた。
国立魔法大学付属第一高校(通称・魔法科高校)
毎年多くの優秀な魔法師の卵を輩出しているここは、成績が優秀な一科生と、その補欠の二科生で構成されていた。
今年、この魔法科高校に一組の兄妹が入学した。
妹は主席入学した一科生。
しかし兄(主人公)はある問題を抱えていたため、二科生として入学した劣等生だった。

さて、あらすじを読んで頂ければわかる通り、本作品のジャンルはSFである。
一般的にSFは敬遠される傾向が強い。
理由はいくつかあるだろうが大雑把にまとめると
「何か設定とかいっぱい出てきてめんどくさそう」
だからではないだろうか?
残念ながら本作もその範疇にあると言わざるを得ない。
「入学編」という起承転結の起の部分だけで、上下二冊、合計560ページ以上のボリューム。
そのおよそ半分は世界観の説明に費やされている。
ページをめくるたび、次から次へとわんこそばのように設定と解説が盛られてくる。
これを聞いただけで拒絶反応を示す者が出てくるかもしれない。
だが安心してほしい。
基本的にこれら特盛の設定を覚えておく必要はない。

その作品が扱っている題材にうとくても楽しむことができる、それが優秀な作品の共通点である。
囲碁に詳しくなくてもヒカルの碁は面白いし、テニスとはどんな競技なのか理解できなくともテニスの王子様は笑える。
膨大なSF設定の上に築かれた本作も、それら全てを無視しても問題ない救済処置がほどこされているのだ。
452イラストに騙された名無しさん:2011/08/29(月) 10:32:13.88 ID:gvxtxRW0
例えば物語の華である戦闘シーン。
数多く登場する魔法設定を頭に叩き込んでいないと理解できないのかといえば、そんなことはない。

vs副会長戦
魔法科高校で五本の指に入る実力者であり生徒会副会長の服部〈中略〉範蔵との戦い。
離れた距離から超高速で魔法を発動しようとする副会長、しかし幼少のころより忍者の師匠に鍛えられていた主人公(劣等生)の身体能力は超人的であり
副会長は一瞬で間合いを詰められ、あえなく無力化。主人公の勝ち。

vsチャンピオン戦
剣術大会のチャンピオン、桐原との戦い。
高周波ブレードと呼ばれる殺傷性のある接近戦闘魔法を繰り出す桐原であったが
軍の人間でないと入手できない貴重な素材を使わないと使用できない技術と同等の技術を偶然編み出していた主人公は
それを使って桐原を難なく無力化。主人公の勝ち。

vsテロリスト戦
魔法発動を阻害するノイズを発生させ魔法師たちを無力化するテロリスト。
だがそのノイズを分解できる技術を持っていた主人公は普通に魔法でバキュンバキュンしてテロリストを制圧。主人公の勝ち。

そう、この物語の主人公は設定を超越した存在なのだ。
なお、文庫本の巻末には川原礫先生からの推薦文が掲載されており
「この物語の最たる魅力は主人公のとどまる所を知らない最強ぶり」だとおっしゃっている。
453イラストに騙された名無しさん:2011/08/29(月) 10:34:12.64 ID:gvxtxRW0
ところで、いま皆さんの脳裏には、こんな言葉が浮かんでいるのではないだろうか。
「ここまで優秀な主人公がどうして劣等生なの?」
愚かなことだが、人は極端に優れた才能を拒絶する。
それは嫉妬などではなく、単に信じることができないのだ。
100メートルを10秒で走れば賞賛されるだろうが、2秒で走れば疑惑をぶつけられるだろう。
物事は優れていればいいというものではない。常識をこえた才能は時に差別の対象にすらなる。
魔法科高校がテロリストに襲われたとき、活躍したのは優等生の一科生ではなく劣等生の二科生だった。
学校の作った枠のなかでは落ちこぼれかもしれないが、彼らはいつでもX-MENとして出撃できるポテンシャルを秘めていたのだ。
それでも彼らが劣等生であることに変わりはない。
このまま彼らは正当に評価されることなく終わってしまうのだろうか?
そんなことはない、と本作は身をもって示してくれている。

元々本作品はネットで公開されていた、いわゆるWeb小説だった。
3000万PVという圧倒的な支持を得ていたにも関わらず、膨大な設定が足かせとなり新人賞に投稿するにはあまりにも不向きだった。
つまり劣等生だった。
だがやんちゃな劣等生は嫌でも注目されてしまう。
優秀な編集者に発掘され、見事書籍化に至ったのだ。
ちなみに本作品は現在も絶賛ネットで公開中なので、無料で読むことができる
http://ncode.syosetu.com/n2569f/
にも関わらず文庫本が飛ぶように売れ、品薄が続いているという。
いいものは売れる。シンプルな理由だ。

作者の佐島勤先生がこの作品に込めたテーマはおそらく「人から劣等生だと呼ばれても、自分をあきらめるな」
もしくは「しょせん世の中、才能が全てです」のどちからだろう。
個人的には前者であると信じたい。
これは、劣等生のレッテルを貼られた者が突き抜けた才能を見いだされ認められていく物語である。
この物語は作品としてはあまりに規格外で劣等生ですらあった。
だがそこに可能性を見いだされ、世に出てヒット作となった。
物語の中の出来事が、物語そのものとシンクロしている。
この小さな奇跡こそ魔法と呼ぶにふさわしいのではないだろうか。
そんな奇跡をまとった、この長い長い、魔法のように長いプロローグを皆さんにもぜひ体験していただきたい。