つまらない小説を無理矢理褒めちぎるスレ11

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478聖剣の刀鍛冶1
KYという言葉に代表されるように、とかく個を殺し曖昧であることが求められる窮屈な現代日本
人間関係を円滑にすすめるためには衝突などもっての他です
何かちょっとした意見を述べる際にも気を使うこと夥しいといったらありません
「いやぁ、僕的にはこう思うんですけどネ。え? いやぁ、やっぱりダメですよネ」
「それは最高ですヨ! ただ、いえ、まぁ一つの意見としてはこんなのもアリじゃないっすかねェ?」
相手の意見を真っ向から否定するなんて言語道断、面子を潰さぬよう話は婉曲的にすすめていかなければなりません
この2ちゃんねるラノベ板でさえ「個人的にはこの部分が少しだけ気になったナ、いや俺の感性の問題だろうけどサ」
なんて風に注意深く言葉を選び、熱烈なファンを刺激しないように努めなければ
たちまちアンチのレッテルを貼られ、3分5レスぐらいの風速でフルボッコされてしまいます

そんな毎日にフラストレーションをためる現代人の貴方に、今日はお勧めの超人気作を紹介したいと思います
そう、アニメ制作も順調に進んでいるという話題の熱血ファンタジー「聖剣の刀鍛冶」です
さてこの作品、何が熱血かといえば主人公兼ヒロインである、直情的な新米騎士セシリーが威勢良く啖呵をきってみせる痛快さにあるようです

1巻クライマックスの、シリーズを象徴する決め台詞
「宣言するっ! (略)私はこの目に映るすべてを救う(略)何処までも理想を掲げて全部叶えてみせるッ」
を筆頭に、言ったもの勝ちという言葉が喚起される開き直りの数々が、読者を痛快な気分にさせてくれること請け合いの本作
この一例だけでもわかるように、なんといってもスケールが大きく歯切れが良い見得の切り方が魅力です
479聖剣の刀鍛冶2:2009/08/17(月) 23:12:29 ID:MfxZeoBa
<「宣言する」「誓う」「決めた」という今をさておいた壮大な願望>
+ <「すべて」「理想」「信念」「人々」といった抽象的で聞こえのいいワード>
+ <「救う」「守る」「叶える」「通す」という端的な動詞のもつ力強い安心感>
これらのハーモニーによって紡ぎ出されるの発言のビッグぶりは、世の疲れたサラリーマンを奮い立たせる週刊モーニング誌上の偉人たちにも決してひけをとりません
「私は無力だ、しかし」「偽善かもしれない、しかし」という、頭文に頻繁に張られる予防線には創造神の逃げも垣間見えますが、重要なのは「しかし」以降なのであまり気にしてはいけません

勢いだけで周囲を黙らせるなんてチンピラのDVみたいで格好悪いと思ったあなた
もろん彼女が啖呵をきって場が収まるのは、親しい間柄の人間相手にとどまりません

敵役である帝国幹部に対してだって、セシリーはいつの間にか自都市のスタンスを表明し
負の側面のある悪魔契約という力なぞ、自国では認めねーと言い切ってみせます
彼女は都市の代表でもありませんし、根拠も実績もありませんが「(そんな力はなくても)私が守る」とオールOKです
ちなみにほとんどの都市はこの力を必要悪として認めており、セシリー自身は同じように悪魔契約が関連する魔剣というチートアイテムをコネで入手し使用しています
おまえが認めないからなんなんだ、と、今時は小学生の学級会議でも容赦のないツッコミが入ろうというものですが
ことセシリー嬢の偉大な人間力を前にしては、そんな当たり前の文句を容れる余地などありません
他の登場人物より「ッ」「っ」「!」「!!」が5割り増しで多い台詞群を前にしては、その場はなんとなく丸く収まってしまう他ありませんし
読者はなんとなくエピソードが奇麗にまとまったような気分にさせられて、「深く考えるのはよそう」と、うやむやのうちに本を閉じる他ありません
「ッ!!」の使いこなしにかけては、かの範馬勇次郎氏に匹敵する有無を言わせぬ力強さといっても過言ではないでしょう
480聖剣の刀鍛冶3:2009/08/17(月) 23:14:52 ID:MfxZeoBa
セシリー嬢の勢いはとどまるところを知らず、例えその場が大陸各国の首脳が参加する列国会議の場であっても同様です
伝説の大魔獣復活に向けての対策という全世界の命運がかかっているはずの会議、
それが各国の思惑が入り乱れ敵役が暗躍する不毛な状態に陥っているという現実を前に
重要人物にくっついて会議に潜り込んだセシリー嬢の怒りゲージはマッハで振り切れます
「ここに誓おう(略)いつか必ず、私が(大魔獣を)討つ――そう決めたッ!!」
一喝してみせればセシリー嬢の熱血力の前には各国首脳など最早案山子同然です
軍国軍師やら敵役の帝国戦士団長といった大層な肩書きのついたメンツは強がって反抗もしてみせますが
「さえずるな小者」「(おまえらは)無駄な話し合いをしていろ、お似合いだ」と言い捨てて出て行くセシリー嬢にはどんな反論も通用しません
相手すら不要で自己完結できるセシリー宣言を前にしては、一応対話が前提の上条さんの説教などなんと生温い悠長さでしょうか
ちなみに会議はそのまま流れ、セシリーが決意をみせるちょっといいエピソードとしてこの短編は終わります

自国の偉い人も私たち読者と一緒に痛快がってくれるのでお咎めもありません
いかにファンタジー世界といえども、そこは重責を担った立場のある人間、こんな行動を平然とやってのけるセシリーに痺れて憧れてしまう気持ちは心底理解できるというものです
「もうおまえはおまえの好きにしてくれよ」と思ったそこの人、それはまだあなたが「聖剣の刀鍛冶」の熱血ぶりを理解できていない証拠です
「ッ!!」に力を入れ、宣言を10回ぐらい音読してみるといいかもしれません

さて腐った政治屋共と訣別し颯爽と会議場を後にしたセシリーですが、とりあえず当面は何もしません
もう一人の主人公格である鍛冶屋の男からは「金さえ払えば聖剣を作ってやんよ」的に言われていますが、金策なんてもっての他、鍛冶屋に入り浸っては聖剣をおねだりをしてみせます
481聖剣の刀鍛冶4:2009/08/17(月) 23:15:44 ID:MfxZeoBa
なお、このセシリー嬢、これまでたいした敵を倒していません
作中でベトナム帰りみたいな扱い・能力の退役軍人にさえ圧倒されてしまい、手厚いサポートを受けた上で魔剣を使いやっとのことで勝利を納めます
「いつか」という壮大な計画なので、別に嘘はついていませんよね
この器の大きさ、簡単に胃に穴を開けたり自殺までしてしまう軟弱な現代人は少しは見習うべきではないでしょうか

以上、駆け足となりましたがどうでしょう
自己評価の低い謙虚な現代人でも、範馬勇次郎氏は無理としてもセシリー嬢なら自分を重ねることも可能といえるのではないでしょうか?
とはいえ油断は禁物です
私自身は本作の熱血ぶりに目眩がするほどボルテージがあがってしまい、これ以上のストーリーを知ることはかないませんでしたが
このまま順調に巻を重ね、セシリー嬢の人間力が増していけば10巻目あたりでは
「おまえは既に死んでいるッ!!」
と断言するだけで、大魔獣が3秒後に爆散するぐらいの迫力を身につけていることも十分ありえますし、20巻目前後では更なる人間革命を経て
「私がセシリーだッ!!」
と宣言するだけで、相手は体中の体液を噴出させながら懺悔するぐらいのことがあっても、全く不思議ではありません

最後に私もセシリー嬢に倣って断言してみたいと思います

私は宣言するっ 私には何の責任を負うこともできないっ!
しかし――これこそが熱血ファンタジーだッ!!

これだけで小市民の断言力は枯れ果ててしまった気分ですが、本作の内容の充実した熱血ぶりがほんの少しでも伝われば、これに勝る幸せはありません