朝日ソノラマ その4

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240今月のメルマガにて
『最後にあたって』   

 先週末、「D−魔道衆」を校了しました。印刷所に頼み込んで締め切りを一日、
また一日と延ばしてもらい、昼は編集部、夜は自宅でゲラを読みながら菊地さんか
らの最後の原稿がFAXで入るのを必死で待つという、いつも通りの終わり方でし
た。おかげで、シリーズ19巻目(冊数では31番目)のこの「D」が朝日文庫ソノラ
マセレクションの新刊第1冊目であることなどどこかに吹き飛んでしまい、特に感
慨を抱く暇もありませんでした。それでも校了直後、ソノラマ文庫の最後の作業が
終わったなという想いに一瞬とらわれたのですが、勿論それは錯覚で、本当は今年
2月に出した「D−狂戦士イリヤ」が最後のソノラマ文庫だったのでした。
241今月のメルマガにて:2007/09/21(金) 02:21:52 ID:eqHhEFYX
 ソノラマ文庫は1975年11月に10冊同時刊行でスタートしました。通しナンバーの
1は「宇宙戦艦ヤマト」で、ソノラマ文庫の路線を決定づけた「連帯惑星ピザンの
危機」は93冊目にあたります。立ち上げから300番台に入りかけの頃まで(「キマイ
ラ」や「D」はすでに始まっていました)、おおむね一人で担当し、32年間常に現
場で関わってきた自分としては、最後の「ソノラマ文庫News Online」で本当はなん
らかのコメントをすべきなのかも知れません。しかし、別れの挨拶、ソノラマ文庫
消滅の釈明やお詫び、ソノラマノベルスや朝日文庫ソノラマセレクションでの再ス
タート宣言──何一つ言葉にならないのです。メルマガの担当者のO君から命ぜら
れても、メルマガにエッセイは書けない、もう書きたくないとごねていました。多
分、私の中でソノラマ文庫は未だになまなましく現在形だからなのでしょう。何よ
りも、ソノラマ文庫が下降線を辿りはじめて、こんなはずはない、こんなはずはな
い、ともがきながら退潮傾向を食い止めようとした最後の10年間のつらさ、苦しさ
が根強く尾を曳いていて、数多い思い出を断片的に取り出すことはできても、もっ
ともらしい物言いをすることを封じているのかも知れません。ただ、山あり谷あり
のどんな状況にあっても、本作りそのものは魅力的で、作業の過程ではすべてを忘
れて没頭させるものがありました。その積み重ねの中で、ソノラマ文庫が形作られ
てきたのも事実です。やはり、ここはきちんと、ソノラマ文庫を支えてくださった
多くの関係者、そして読者の皆さんにお礼を申さねばなりません。
「本当にありがとうございました」 (I)