『アリフレロ キス・神話・Good bye』(中村九郎)
私は、高名なロクメンダイスも、隠れた人気を誇ると噂の黒白キューピッドも読んだことがない。
故に、まっさら、新鮮な心持ちでアリフレロを読むことが出来た。
読了して思うのは、九郎先生(今の私はこうとしか彼を呼べない)の原作者としての力量だ。
所詮仮定の話だが、もし九郎先生が黒子となり、他の作家がアリフレロを書いたらと思うと鳥肌が立つ。
もしきのこが書いたなら、アリフレロは某エロゲなど足元にも及ばぬ新伝奇小説となったろう。
もし秋山瑞が書いたなら、ラストでイリヤの比にならない読者が鬱に突き落とされたことだろう。
もし古橋が書いたなら、そのグロ描写が健在であることを新旧の読者に知らしめたことだろう。
もし川上が書いたなら、αキスを巡り息をつかせぬ交渉と戦闘が繰り広げられたことだろう。
もしヤマグチノボルが書いたなら、奇矯なヒロインを飼い馴らし、アニメ化必須の一作となっただろう。
しかし、九郎先生は自ら筆をとられた。
八回に及ぶ書き直しを経て、自らの手でこの大作アリフレロを完成させられた。
原作として売り出せば、書き手は掃いて捨てるほど集まっただろうに、だ。
私はここに、九郎先生の一作家としての、否、一人の人間としてのプライドを垣間見た。
先生の渾身のアリフレロが編集者を退職に追い込んだという話も、読了した今なら納得出来る。
先ほど述べた“別の作家が書いたら”は、やはり仮定の粋を出ようがないのだ。
常人が書けば秀作のアリフレロは、九郎先生の筆で別の次元の存在として世に送り出された。
九郎先生のストーリーテリング力(ぢから)に、ただただ賛辞を送りたい。
褒めちぎり始まったな
キーワード【 神話 地雷 中村 九郎 文章 作品 スレ 】
大変なことにw。
バレ解禁からはや一時間が経過したというのに
褒めちぎりがひとつしかないとはどうなってるんだ!!
生き残った地雷除去人はほかにいないのか!!
前線の部隊、全滅しました……ッ!
今買ってきたところだ。
…だが俺にはまだこれのページをめくる勇気がない…
アリフレロ、本屋で見かけて数ページ立ち読んだところで挫折
無理だよこれ無理だよ、と購入を断念したら、目の前で購入する人を目撃
あの勇姿が忘れられないので明日また買いにいこうか悩んでいます
134 :
1/5:2007/03/24(土) 02:53:53 ID:GtK7BRHx
『アリフレロ キス・神話・Good by』 スーパーダッシュ文庫 著:中村九郎/イラスト:むらたたいち
独自のモノを創造する作家が居る。
『創作者』を名乗る者なら誰だってその人物唯一の物を作り出そうとするわけだが、
たまに独自すぎる、とんでもないモノを生み出す創作者が居る。
例えば、J・R・R・トールキンは自身の著作『指輪物語』の中でいくつもの人工言語を生み出した。
例えば、H・P・ラヴクラフトは自身のコズミック・ホラー小説の中にクトゥルー神話という神話を創造した。
現代のオタク系創作物においても、完成度の高い世界を構築するための設定や小道具
ないし雰囲気を生み出す者達の著作物は「○○オンステージ」や「○○ワールド」などと呼ばれ、評価される。
ならば、今回紹介する中村九郎の『アリフレロ キス・神話・Good by』はどうか?
私は自信を持って言おう。
『アリフレロ キス・神話・Good by』は、間違いなく中村九郎独自の、『中村九郎ワールド』である。
『アリフレロ キス・神話・Good by』(あまりにも長いので以下『AKSG』)を一言で説明するなら、
現代が舞台のファンタジー能力により進行するバトルモノだ。
現代世界を舞台にしたバトルモノなど、最早ライトノベル界においては氾濫などという言葉で解決できないくらいに溢れている。
もう例を挙げだすとキリがないのでやらないが、
(と言いつつ俺自身の部屋を漁ったらライトノベルという括りの中では奈須きのこの創作物と片山憲太郎の紅シリーズと
長谷敏司の円環少女シリーズと桜坂洋の現代魔法シリーズと古橋秀之のシスマゲドンくらいしか出てこなくて困った。)
ほぼ月一ペースで供給され消費されている。
その中にはあまりに凡百、テンプレートすぎてすぐに忘れ去られていくものも多いだろう。
135 :
2/5:2007/03/24(土) 02:55:23 ID:GtK7BRHx
が、中村九郎の場合は一味違う。
氏の小説はそこに非常に形容し難いものを挿み、埋め込み、同化させている。
劇中に常人の感覚では中々生み出せない歪なもの、不快なもの、おぞましいものを登場させ、
それら『異常物』の恐ろしさをこれまた奇怪な方法で描写するのが非常に上手い作家が居る。
例えば、『ドグラ・マグラ』という有名な小説がある。
読んだ人間全てを必ず一度、狂気の世界へ蹴り込むと言われている夢野久作の探偵小説だ。
私は、中村九郎の著作もそれらに非常に近いモノであると考えている。
以下はネタバレになるが、
『バラバラになった人間を組み立てなおす』
『その仮定でパーツが足りないから適当にそこらにあるものを代用品にして補う』
『脳髄の半分を化け物に齧られ失った少女。その頭にインターホンを埋め込んでインターホン・ガールと呼称する』
などの、シュールレアリズムとホラーが混在したような描写が多々出現する。
更に、氏が文の中で受け手へ与える情報が非常に少ないこともそれら名状し難き恐怖を煽る。
『AKSG』の表紙を飾っている斧少女、『黒園葵』の存在理由、行動目的、容姿といった情報は、割合早い段階から
ぽんぽんと与えられ、読者達が頭の中で造形する葵という少女の形を明確にしていく。
また、葵やその他登場人物が巻き込まれる戦い『αのローテーション・キス・ショット』や、
その戦いにおいて恐ろしき狩猟者として描かれる怪物『白いメイド/α・キス』や、
(ちなみに、劇中において『α・キス』はしつこいくらいにメイドと呼ばれているが、
俺は絶対に奴をメイドとして認めない。メイドのメの字もくれてやらん。メイド喫茶のそれ以上の紛い物だ)
戦いの背景にある『時の神α』『遊戯の神β』『神話』などは(中村九郎という枠の中では)割合丁寧に描写されている。
しかし、それ以外の事についてははっきり言って『投げた』と思われても仕方ないくらいに欠けている。
136 :
3/5:2007/03/24(土) 02:55:59 ID:GtK7BRHx
例えば『町野麻子』という人物が出てくる。彼女はひょんなことから事件に巻き込まれ、
その後にクランチという登場人物にくっついて行動するようになる。
しかし、『どうして町田麻子がクランチについていこうと思ったか』の理由が
「行くところがなくなっちゃったから、かな」という台詞一つで片付けられており、
しかも最後の最後まで字の文などにおいて明確な形を与えられない。
クランチと町田麻子が旧知の仲だとか、つり橋効果だとか、成り行きだとか、旅は道連れだとか、ストーカーだとか
そういうレベルではないのである。
『何故かついてくる』のである。
どうしようもない。この中村九郎、ノリノリである。
と言うか、『黒園葵』以外の人物については、容姿説明と背景説明があれば御の字というレベルだ。
こう書くと、素人小説に多い『言葉が足りなすぎて意味不明』という状況を想像することかと思われる。
そして「なんだよ。糞素人の小説か。とっとと滅びろ」と思うだろう。
だがちょっと待って欲しい。一見もっともな理屈のように見えるが、落ち着いて考える必要がある。
私はこう考えている。中村九郎氏の小説はポエムだ、と。
詩の世界に、詳しい背景説明を持ち込む人はそう居ないだろう。
詩とは、断片的な単語で、想いの全てを綴る。そういうものだと私は思っている。
谷川俊太郎という有名な詩人がいる。ここに彼の詩の一説を引用しよう。
「なんでもおまんこなんだよ」
そういうことなのである。
思ったままを書き殴るのが詩なのだ。きっとそうだ。
詩人から与えられた断片的な情報を深読みするのも良い。しかし深読みが無粋とされる場合もあるだろう。
お前が受け取ったとおりの意味だ。それが全てだ、と。
氏の小説はそれと同種である。
ブルース・リーの言葉ならばこうだ。
「Don't think. FEEL!」
そういうことなのである。
137 :
4/5:2007/03/24(土) 02:56:45 ID:GtK7BRHx
そうやって詩的な形式で綴られる『AKSG』は、ホラーとシュールレアリズムを孕んだポエム調のバトルモノという
他所とは明らかに違うものに仕上がっている。
『AKSG』がすぐに忘れ去られてしまう類のものではないことは、理解していただけただろう。
さらに、『AKSG』にはもう一つ、とても重要な要素がある。
それは恋だ。
中村九郎氏の前著『ロクメンダイス、』や『黒白キューピット』においても、登場人物の恋に重きを置いて話が進んだ。
氏の著作に置いて、少年と少女の恋は切っても切り離せぬものなのである。
他の作品とは違い、『AKSG』の恋愛は非常に淡白だ。と言うか、やはり描写不足に近い。
あまりに淡白で唐突で、別に無くたっていいんじゃないかと思いたくなるほどである。
しかし非常に重要な要素である。
それは何故か。
まず『アリフレロ キス・神話・Good by』というタイトルを思い出して欲しい。
ここからはネタバレが含まれるので注意していただこう。
『AKSG』の始まりは、一人の少女──後にインターホン・ガールと呼ばれる少女だ──が『α・キス』によって殺される場面である。
そして。
『AKSG』の終わりは、黒園葵が、かつて儚い恋心を抱いた三井川正人という少年を殺す前に、キスをする場面である。
つまり。
『α・キス』という名の神話の登場人物から始まり、
黒園葵という名の神話の登場人物のキスによって閉められるのだ。
『AKSG』と恋愛は切っても切り離せない。その意味を理解していただけただろう。
138 :
5/5:2007/03/24(土) 02:58:02 ID:GtK7BRHx
さて、実に稚拙な文章ではあるが、なんとなく中村九朗氏の敏腕具合は理解していただけたと思う。
付け加えるようで何だが、挿絵担当のむらたたいちについても一言述べておこう。
氏の絵はどちらかと言えばポップで可愛いタイプの絵である。
どちらかと言えば凄惨な『AKSG』とは一件ミスマッチに思えるが、そうでもない。
その可愛さが、『AKSG』のシュールレアリズム&ホラーな世界に更に歪さを書き加えることに成功しているのだ。
また、『AKSG』云々を除いても氏の絵は可愛らしく、魅力的である。
特に斧少女黒園葵の可愛さは逸品だ。
野良猫みたいな雰囲気の、黒髪ロングの華奢な少女が、手投げ斧。このアンバランスさ。俺によし。
オリジナリティとは何であるか、それを読者に実感させる一冊。
「最近のラノベ?どうせテンプレ小説ばっかりだろ、どうでもいいよ…」みたいに思っている人に是非読んで欲しい。
読み終えたその瞬間、あなたは必ず途方も無い疲労感と達成感を味わうだろう。
それが、『AKSG』の価値である。
まーなんだ。うん。纏められん。
どうしようもないよ。AKSG。
でもね、読んでみるといいよ。
きっとね、みんな色々なものを感じ
窓に!窓に!
や、やりやがった…
こいつはまさしく一級の処理人のワザだぜ…
> あまりにも長いので以下『AKSG』
これは流行る!
>窓に!窓に!
「ばかめ、ID:GtK7BRHxは死んだわ」
あれ……?
星がひとつ、今流れていったよ。
……まさか、ね。
ID:GtK7BRHxは元気だよね。
で、すごいな。
今日本屋にあったら自分も買う。
そして読了後は図書館に寄贈するよ。
>読了後は図書館に寄贈
つ【核拡散防止条約】
>>『AKSG』
byが省略されているのは読者が自然と呟くからか
すげえなあ。これが硫黄島アイランドか。
それとも937高地か。
ふと思い浮かんだぜ。
「この本は、俺たちをミンチにしようとしている」
ネタバレを読んでも全然ネタバレされた気にならない
…これが本物か
konosure ha seishinnkougeki wo ukete iru
machigai nai
a
なんだ…一体何が起こっているというんだ…
>>145 いやー、てーかね、ネタバレしてもどうしようもないんだって。
多分ネタバレを念頭に置いて読んでもまっさらな状態で読んでも変わらないと思うよ
次に何が起こるか推測しても全部無意味
例えるなら三冊ほどの小説をページ単位でバラバラにして合体再構築したような小説だ
ページ捲ったら画太郎絵で「くそしてねろ!」とか書いてあっても可笑しくない混沌具合なんだぜ?
>>148 すごい!!
中村先生の最新作は一冊で三冊分の濃度があるんですね!!
これは新品で購入しなきゃ!!
意図的に誤読してみた
ネタバレ無効とかやっぱり本物はすげー
2chライトノベル大賞はこれで決まりだな
さきほど本屋に行って…ダッシュの新刊を眺めていたら
横からアリフレロを取り、颯爽とレジに向かう人がいた。
……手を合わせて拝みたくなったの必死でこらえるのに苦労しました。
凄い、凄いよアリフレロ!
これ見た後に流水大説読んだら普通の小説だと思えたよ!?
154 :
イラストに騙された名無しさん:2007/03/24(土) 16:22:51 ID:yTpmLEWg
あまりの興奮に途中投稿しちまった・・・
>>152 そういわれて読み返してみたんだが、流水ってただのちょっとひねったつまらん小説だったんだな。
しかも肝心なひねってるところも、なんかあざとくて鼻につくし。
今日の今日まで流水信者だったんだが、目が覚めた。
これからアリフレロ読み返してその勢いでドグラマグラも再読してみようかな・・・
何と言うか…
チャチャラカ、チャカポコ、スチャラカ、チャカポコ、チャカポコ、チャカポコ
ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん!
って感じだよね
このスレバロスwww
君たちの勇姿を忘れない。
>152
オレがもう一人いる
中村先生に比べれば、清涼院なんて凡人としか……
ネタバレしたくても自分の筆力では神話的面白さを伝えられない
最初の数ページで精神が侵され……まる、しろ
ロクメンも黒白も捕獲できていない自分がアリフレロで中村に初挑戦ヒャハー!
…しようと思ったがマジ無理ごめんなさいすいません僕が悪かったです orz
あれだ。大げさに言ってこその褒めちぎりで、読みたくさせるのが職人の腕の見せ所だしとか。
SD公式の抜粋は、特に印象的な部分だけドカンと持ってきた販促だろ、逆効果っぽいけどねーとかさ。
そんな風に思ってたんだよ読む前は。
…冒頭の数ページと後書きを読んで前頭葉に鈍痛が。だめだ俺如きの手には負え
人はあまりに無力だったと後続に伝えてくれ
何だこの白面の者が復活したような状況は
もしやアリフレロって売れまくってるんじゃないか?
おまいらの宣伝活動のおかげで
>>159 冒頭、温いよ?
今だから言うけどぶっちゃけAKSGって言いたかったから本買って来て読んで褒めちぎったんだ。
冒頭か…
「白くて、丸い!」なんてとっても凡庸ですよ?九郎神の言語センスでは。
アリフレロ買って来ました
まだ50ページしか読んでないけど、これだけは言える
俺にこれを褒めちぎるのはむっむっむーり♪
一言で言えば『唐突』全てが唐突
さながらバラバラなジャズのセッションのよう
あ、バラバラならいいのか
作品的にはいいのかいいのか
世界は
世界は神話に満ち満ちている!
かも(アリフレロ要約)
書店に行ったのだが置いてなかった
これは幸運と解釈すべきか。それとも嵐の前の静けさなのか
ただスレの流れから一つ言えることは、もしAKSGを見つけたなら
それが俺の最後になることだけだ
いっそのこと九郎先生のwikipediaの項目を書いてくれよお前ら
今アリフレロを読んでるとこなんだが、だんだんと頭痛がしてきっ・・・きっきき・・・き?・・・・・・
昔のびたが自分がどのくらい本に弱いかという説明で、
本を手に取っただけで気が重くなり、開いただけで目眩がし、2,3ページで意識不明と
言っていたが
あの時の本はこの中村先生の本に違いない!
読む→頭がくらくらする→混乱して、内容がつかめなくなる→最初から読み直す→頭が(ry
つい きんだんの アリフレロをてにいれたぞ!
頼む、譲ってくれ!
ニア 爆死してでも踏みにじる