つまらない小説を無理矢理褒めちぎるスレ 2

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それはそれとしてレビューだ >>74にもあるが、ちと違った角度から…

「ぼくと魔女式アポカリプス」 (著:水瀬葉月/イラスト:藤原々々) 電撃文庫

  「 痛 さ 」
これがこの小説のメインテーマである。
第一に物理的な痛さ
 「包丁の先端がゴリゴリと前後に動いている(中略)彼女は肉を裂き、筋を切り、関節に達すると
  刃先を捻って白骨同士の結合を断つ」
これが魔女っ娘ヒロインの初魔法シーンである。なんというビビッドで美しい表現だろう。
ヒロインが自分の指を切断するという一見するとグロテスクなシーンが美しく、詩的に、格調高く
しかもリアルに描写されている。

第二に主人公の痛さ
 「この『普通』から脱却できる人間はいない。(中略)けれどもぼくに微かに残っている矜持は
  無駄な抵抗を止めることは許してくれない」
平凡を嫌う言動の痛さ。上滑りするセリフ回し。空疎な独白。素晴らしい人物描写力だ
これだけ「痛い」主人公を表現できる作者の感性には、読者は皆、驚嘆を覚えざるを得まい。
1192/2:2006/02/14(火) 16:14:06 ID:MNAbZP4d

第三に登場人物の痛さ
男言葉の隣の幼馴染、「お兄ちゃ」と呼んでくっついてくる妹、メガネの内気なヒロイン。
これだけベタな登場人物をあえて配し、正面からぶつけてくる作者の心意気に圧倒される。

第四に精神的痛さ
なんといっても、ラストシーンにおける「あの人」をピーしなければいけなくなるという切なさ、
主人公の悲しみが読者を打つ……しかし実は「あの人」では無く「この人」をピーしなければ
ならなかったのだ……しかししかし本当は「この人」では無く「その人」をピーしなければ……
……痛い。 なんつーか痛い。 クドイぐらい痛い。 これはもはや読者の痛みレベルに対する
挑戦と言って良いだろう。

最後に、最も痛いのは「魔法メガネっ娘が鎖に縛られて、肌も露な格好をしている」イラストで
本書を買ってしまった我々であろう。 作者の深謀遠慮は痛みをメタレベルまで引き上げること
に成功しているのである。