それはそれとしてレビューだ
>>74にもあるが、ちと違った角度から…
「ぼくと魔女式アポカリプス」 (著:水瀬葉月/イラスト:藤原々々) 電撃文庫
「 痛 さ 」
これがこの小説のメインテーマである。
第一に物理的な痛さ
「包丁の先端がゴリゴリと前後に動いている(中略)彼女は肉を裂き、筋を切り、関節に達すると
刃先を捻って白骨同士の結合を断つ」
これが魔女っ娘ヒロインの初魔法シーンである。なんというビビッドで美しい表現だろう。
ヒロインが自分の指を切断するという一見するとグロテスクなシーンが美しく、詩的に、格調高く
しかもリアルに描写されている。
第二に主人公の痛さ
「この『普通』から脱却できる人間はいない。(中略)けれどもぼくに微かに残っている矜持は
無駄な抵抗を止めることは許してくれない」
平凡を嫌う言動の痛さ。上滑りするセリフ回し。空疎な独白。素晴らしい人物描写力だ
これだけ「痛い」主人公を表現できる作者の感性には、読者は皆、驚嘆を覚えざるを得まい。