つまらない小説を無理矢理褒めちぎるスレッド

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903イラストに騙された名無しさん
『半分の月がのぼる空2』 橋本紡 電撃文庫

『わかっているぞ。
 俺はわかっている。
 おそらく、誰もが見過してしまうだろうが、俺は違う。
 気付いたぜ。
 うれしいか?うれしいよなぁ――。
 今まで誰にも認められなかった技を、俺が見切ってやったんだ。
 俺だけだ。
 俺だけが、お前という男を受けとめてやれるのだ。
 俺も、うれしいぜ。
 うれしくてうれしくて、イッちまいそうだよ――。

 さあ、やるか――

 心地よい夜風の中、聞こえていた蟋蟀の鳴き声が止んだ。
 それが、合図だった。』

半分の月がのぼる空。
それは病院を舞台にしてはいるが、その実態はルチャが、医者が、患者が、看護婦が、
一切のけれん無しでガチの殴り合いを演じる、今どき珍しいほどピュアな格闘劇である。

深夜の血闘。
ぶつかり合う男の意地。
エキサイトする医者。
倒れた相手への容赦ない追撃。
──弱点を狙うのは闘技者の常。まして人体を知り尽くした医者が、
相手の弱点である肝臓をこれでもかと蹴るのは、むしろ当然の領域だろう。
拳と拳が、鋭い膝が、巨体が、煩悩が、そしてみかんが、縦横無尽に紙面を飛び交うのだ。
男として生まれて、これに興奮しないものはいないと言い切っていい。

でも人から借りた本はもう少し丁寧に扱った方がいいと思う。そこだけが難点か。