「電波的な彼女」 片山憲太郎

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609イラストに騙された名無しさん
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電波的な彼女 〜幸福ゲーム〜
片山憲太郎 イラスト/山本ヤマト
定価650円(税込)

ターゲットにされたジュウ、犯人の目的は!?
些細な嫌がらせも、積み重なると苦痛になる。人に恨まれる心当たりのあるジュウはあまり気にせずやり過ごしていたが、ついに限界に達し、雨をつれて犯人探しを始める。
人の弱さが歪んだ強さに変わる恐怖、犯人の行動理念に驚かされる!
電波系サスペンス第3弾!!

「ま、待ちなさい! 彼は痴漢の現行犯なんだよ!」
「何勝手に連れてってんだよ、おまえ!」
光は、それらをただの雑音のように受け流し、己の考えのみを主張した。
「彼が痴漢するなんて、あり得ません。彼が痴漢なんてするわけないんです。
だって、あたし、彼をちゃんと満足させてるもの」
それを聞いた駅員が、若者が、それどころか野次馬の中にいる男たちまでもが思わず顔を赤くしたのは、光が健康的な美しさに溢れる「女」以外の何者でもないことに、改めて気づいたからだろう。
そんな彼女の口から今のような発言をされては、男なら誰でも妙な想像を喚起させられてしまう。
「あ、あなた、ふざけんじゃないわよ! だいたい変じゃない、偶然こんな場所に恋人が来るなんて! あなた、ウソついてるのよ!」
 それに対して光は、最も効果的で、視覚的にも説得力のある方法を実行した。
 ジュウの顔を両手で掴み、何か言いたそうにしているその唇を、自分の唇で封じたのだ。
場が静寂に包まれる十数秒。