「憂鬱だな」
「何がです? さっきはあんなに晴れ晴れとしてたのに」
「また正しいことをそちまったからさ」
「え?」
「嬢瑠璃ちゃんに、正しいことをしちまった。
本当に……わたしは正しいことしかできない。これじゃあ人間じゃないよな。
人間は時に間違える生き物だ。それが人間らしい人間ってものだ。
でも私は常に正しい」
「……充分に間違えてるじゃないですか。はっきり言って滅茶苦茶ですよ」
「何言ってるんだ。こんなに正しいことがあるか。
どうしてこういつもいつもわたしは完璧なんだ。無謬なんだ。
こんな正しいだけの奴、人間じゃないだろ?」
女子中学生を奴隷にして(その証に靴の裏を舐めさせた)両手の薬指を吹っ飛ばした三十路近くの女の台詞。