こんなマリみては嫌だ11 福沢設計事務所脱税疑惑編
騒がしさとは無縁のリリアン女学園高等部ではあるが、今日は特に静かで寂しさすら感じる。
それは、2年生が修学旅行に行っているからである。
しかし、私の寂しさは全学年に3分の1が不在であるからということから来ているのではない。
たった一人の私の妹がいない。
それだけで、私の心にはすきま風が吹くようになってしまった。
それほどまでに私の中で、彼女の存在は大きくなっていたのだ。
「チャオ・ソレッラ!」
流暢な日本を話すイタリア人のガイドが、あいさつ代わりに教えてくれる言葉だ。
「ごきげんようお姉さま」を意味するこの言葉を自らの姉に出す手紙の冒頭に書くのは軽薄な
生徒がよくやる事で、去年の修学旅行では私のクラスメイトにもそんなことをしていた人が
いた。
大切なお姉さまへの手紙の書き出しをそのような軽いものにすること人たちを軽蔑していた
私が、今年はその書き出しの手紙をもらっている。
しかも、そのことを我が妹らしいと、ほほえましく思っている自分がいるのだ。
人間は変わるものだ。
しかし、あの娘は変わらない。
今も、そしてこれからも、あの娘は他人のために走りまわり続けるだろう…
福沢祐巳とは、そんな娘だ。
祥子視点です、長文スマソ。