冲方丁4 月刊冲方 沖方じゃないよ(゚Д、゚)

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922イラストに騙された名無しさん
監督×シナリオ・コーディネイター熱血会談

「傷ゆえに絆を深め合う二人の少年」
――まず、ファフナーはどのようにして生まれたのか、と言うお話から伺いたいのですが。
監督 僕は、冲方さんから物凄く分厚い企画書を頂いたのが最初です。
内容も深くて、「これはおもしれー」って読んで。でも、今までやったことがないタイプの
作品だったので、やりたいと思う反面、果たして自分に出きるのかという不安もありました。
冲方 僕も、最初にプロデューサーさんから、アニメのロボット物の企画に参加して欲しいと言われた時に、
僕にできるのかなって思いました。でも、せっかく話がきたので、やってみようと。
島が舞台の群像劇としか言われなかったんで、そこから何ができるだろう、と考えていきました。
アイディアの出し惜しみをせずに、いつか小説で書こうと思っていたネタもぜんぶ入れちゃえと(笑)
監督 企画書を読んで、まず感じたのは「あなたはそこにいますか?」と言う言葉に託された深いテーマ性でした。
一つの場所に存在するという事はどういうことか、そこがこの作品のポイントだと思ったんです。
人は、一つの場所にいて、ほかの人にかかわる事によって初めて、存在意義が出てくる。
それがこの物語では、親友、親子、恋愛と、色々なパターンで表現されていて、まさに大河ドラマだなと思いました。
冲方 人間って単独で存在していても人間にはなれない。当り前の感情、当り前の絆があって、
初めて人間だと言えるんです。それを全否定するのが戦争。「あなたがそこにいる」という事自体が
悪であると言う事から、戦いは始まるんです。そんな風に考えた時、じゃあ、人にとって最も恐ろしい敵は、
相手の存在を完全に消した上で、自分だけがそこに存在しようとする敵なのではないかと思いました。
フェストゥムと言うのは、他者を認めない存在。お前もオレだ、と。それは究極の貪欲だと思うんです。
923イラストに騙された名無しさん:04/07/08 10:28 ID:F0holv9x
――そんな敵が最初に投げかけてきた言葉が「あなたはそこにいますか?」だった……。
冲方 そうです。そう聞かれれば、「ここにいます」と簡単に答えてしまいそうだけど、
ちょっとまて、この質問には一体なんの意図があるんだって不気味さですね。
だから、敵の一番最初はスフィンクス型という、相手に謎をかけるものにしたんです。

神話上のスフィンクスは、「朝は四本足、夕方はニ本足、夜は三本足」と旅人に謎をかけますが、
答えは人間。ようするに「お前は何ものなのだ?」と問いかけているわけなんです。
監督 フェストゥムをどう映像化するかには、かなり迷いました。結局、神々しい感じにしようと思ったんですけど。
想像以上にキレイなデザインが上がってきまして。それを見た冲方さんが、スフィンクス型を見た人間に、
思わず「キレイ」と言わせようと。そして「キレイなものが人類の味方とは限らない」というセリフを続けようと。
冲方 監督さんから、「敵はキレイにしようと思う」と言われた瞬間、「それだ!」って思ったんです(笑)。
監督 ありがとうございます。撮影処理も加わって、かなり美しい敵になりました。もう一つ、冲方さんが賛成してくれたのが、ファフナーのコクピット。
子宮の中の胎児のイメージだったので、コクピットは上下がさかさまになっているんです。結局、映像では分かりにくいんですけど(笑)
冲方 僕は大賛成で、パイロットが胎児の姿勢になるって聞いて、またまた「それだ!」と(笑)。
元々、パイロットがロボットを操縦する事から一歩踏み込んでロボットそのものになるというイメージにしたかったんです。
ファフナーのパイロットは、コクピットの中では深い眠りに落ちていくというイメージがあったので、それしかないと。
もう一つ面白いと思ったのは、ファフナーの中では一騎のすぐ後ろに総士がいるんですよ。二人の能が直結してる状態なので。
監督 一緒にいる感じ。
冲方 モニター越しに指示してるんじゃなくて、背後霊のような感じでそこにいる(笑)。
監督 直接脳が繋がっている表現として、あんな感じにしてみました。それに主人公のふたりが一緒に戦いたいじゃないですか。
お前とオレは繋がっているんだというところがあれば、より信頼感もアップするはずですから。
924イラストに騙された名無しさん:04/07/08 10:29 ID:F0holv9x
――一騎と総士の友情というのはドラマ的にも重要ですね。
冲方 彼らは単なる親友同士なのではなく、お互いに傷つけ合ってしまった親友同士なんです。
自分が相手を苦しめているんじゃないか、相手に何かしてあげたいという気持ちが、信頼に繋がっている。
だから、二人の間にある傷というものが、実は二人を結びつける一番の絆になっている。
監督 傷と絆は、本来なら相反するものなのに……。
冲方 償いとか許しの関係を主人公二人に添えたいなと考えたんです。一方、
ヒロインの真矢は、わりと距離をとって二人を同時に見ている存在にしました。
監督 でも、真矢もだんだん立ち位置が変わってくるので、その辺も楽しみにして下さい。
冲方 真矢役の松本まりかさんも、「真矢に恋愛をさせてください」って言ってましたね。
監督 言ってましたね。
――他にも、大人同士とか親子とか、子供同士とか、様々な人間関係が出てくるんですけど、どれも深いですね。
監督 深いです。本当にセリフ一つ一つが重くて、聞き逃せないものばかりなんですよ。是非二度三度と見返して、深読みしていただきたいなと。
――得に興味深い人間関係は?
監督 最初の頃に出てくる親子関係では、春日井甲洋の家族と羽左間翔子の家族の対比が面白いんじゃないかと。
冲方 子供たちの戦いを描く時に、親という存在も同時に描きたいと思ったんです。子供に戦えと言い、しかも、武器弾薬を補給する親という。
そのこと自体は非現実的なんですけど、ある意味、「社会に出ていけ」と言う事と同じだと思うんです。
其の辺は、価値観が多様化して、何が正しいのか分からない現代社会と直面しなければならない子供と、それを見守る親と言う構図になっている。

925イラストに騙された名無しさん:04/07/08 10:30 ID:F0holv9x
――彼らが住む竜宮島にも、深い意味が込められていそうですね。
監督 SFを書く時の大前提は、僕は、やっぱりリアルさだと思うんです。リアルさの中に架空が入ってくるからこそ、架空が生きてくる。
だから、竜宮島に暮らしている人たちがちゃんと地に足がついている事が大事なんです。そこに突然、巨大なついたてが現れるから、ビックリする。
冲方 島と言う題材も面白くて、まず僕らが住む日本が島なんです。島は周りを海に囲まれていて、
海は恵みを与えてくれるものでもあり、危険な場所でもあり、下界との境である。
そんな海に囲まれた島で生きていくためには、お互いの権利とか義務とかをきちんと意識する必要がある。
その中で、対立、葛藤、共存、いろんなドラマが生まれてくるんです。
――では、最後に、これからの見所を教えて下さい。
監督 今ちょうど後半のストーリーをみんな作ってる最中なんですけど、すごい事になってます。
とにかく一話たりとも見逃さないようにしていただきたい。最後まで気を抜かずについてきて下さい。
冲方 以下同文(笑)。全てのシーンが人間関係に重点をおいた作りになっているので、
自分が島に来ているかのような気持ちになって見てもらえると、もっと面白いんじゃないかと思います。
監督 半年間、竜宮島で僕らと一緒に暮らしましょう、と(笑)。