マリアさまがみてる奇妙な冒険 第三部

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113イラストに騙された名無しさん
「ところで、グリフィス」
 蝕の最中、人面に覆われた巨大な手の上に立ちながら、ボイドさまはちょっと意地悪な目をして言った。
「それでも、お前の目にあの城がまぶしく映るのなら、」
「えっ」
「だって。いつまで待っても、あなた夢をあきらめようとしないんだもの」
 言いたいことは言ったという風に、ボイドさまはグリフィスに背中を向けて彼方の城を指差した。
「ボイドさまぁ」
 呼びかけようとしても、声が出はしない。
「夢をあきらめたくなかったら、ちゃんと宣言なさい」
 わかっているでしょ、って目を見ないですまして指を指す。グリフィスは、ぱくぱくと口を動かした。何だか、無性に照れくさい。
「……げる」
「聞こえなーい」
 こうなったら、絶対言わせるつもりらしい。
 グリフィスは、観念して辺りを見回した。幸い、ガッツしか見ていなかった。
「捧げる!」
 異形の手の平の上で、グリフィスの声は妙にはっきり通った。すると脳味噌むき出しの6本指の人物は、よく響く声で「よかろう」と、満足げに笑ったのだった。