「……『彼女』は黒化しているのか?」
「まず間違いないだろう。レポート売上はともかく評価が、な」
沈黙する高畑の代わりに、成田がかすかな期待を込めて、
「上手く誘導して黒古橋にぶつけることができれば……」
「確かに、『彼女』平静から懲罰棟に閉じ込められているようなヒト、作家力も電波度も最強クラスといっていいだろう。
それが黒化しているとなれば、その力は想像を絶する。誘導できれば黒古橋との相打ち、あるいは撃破さえ狙えるだろう。
いいアイディアだ、成田特派員。しかし――」
――ホヒィィィィィィィィィィィィィィィィ……
『彼女』の声が不気味に響き渡った。
「我々の目的は黒古橋の封印であって、古橋の消滅ではない。もし『彼女』が黒古橋を消滅させてしまったら、
怨念が爆発的に増加しその場で奈落落ちだ。『彼女』をぶつけるのは危険すぎるのだよ」
「そんな、じゃあどうすれば……」
唇を噛み締める成田。
「どうやろうと『彼女』がすぐそこにいるのは確かなんだ。やるのか、やらないのか」
「……」
イラついた口調で言う安田に、しかし秋山は沈黙を守った。
ラスボスがいきなり二人に増えたようなものだ。ほとんど反則。TRPGならテーブルをひっくり返しているところである。
しかもボス同士を合わせれば何が起こるか解らない。つまりやり過ごすだけでは駄目なのだ。
ここで戦力を二分し、『彼女』の足止めをしなければならない。最悪――この言葉を何度使っただろう。
神という存在はどこまでも自分たちを苦しめたいらしい。
「――クッ!」
壁に拳を叩きつけ、そのままの勢いで叫ぶ。
「阿智、上遠野、安田、高畑の四名は『彼女』の撃退に当たれ! 時雨沢、成田、乙一は俺と共に黒古橋の元へ向かう!」
一瞬の沈黙。
「――異論はあるか?」
「いいや」
安田が凄みのある好戦的な笑みを浮かべた。
「封印なんて面倒臭いことより、そっちのほうが俺向きだ」
高畑が苦笑する。
「正直きついが……まあやるしかないんだろうな」
阿智が緊張感のない笑顔で、上遠野に目くばせする。
「アノ人と黒古橋じゃあ、どっちとっても……ねえ?」
「まあ、いいじゃん」
上遠野はいつも通りだった。
すぐさま秋山の指示どおりのグループに分かれる。
「幸運を」
秋山がワイヤーブレードを捧げ持った拳を突き出し、静かに告げる。
「そっちこそな」
高畑がそれに応じ、差し出された拳に自らの拳をあわせようと――
「ホヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」
『彼女』は予想もできない所から現れた。
最初に反応したのは時雨沢だった。
即座に腰の『カノン』に手を伸ばし、次の瞬間に装弾数を全て撃ちつくしていた。
弾は全て赤い物体に当たり、それは水っぽい音を立てて潰れた。腐ったトマトだ。
溶けた天井から降ってきた『彼女』は、爆撃するようにトマトをばら撒いた。
強烈な腐食性をもつそれを、上遠野のワイヤーと秋山のブレード、さらに時雨沢の『森の人』が弾き飛ばす。
それらをかいくぐり、降り注いだトマトを阿智、高畑、乙一、安田が素早くかわす。
最も反応の遅れた成田がトマトを避けそこない、腐食作用により空いた床の穴に足をとられた。
「うわっ!」
あわてて振り仰げば、目の前には腐ったトマトが。
次の瞬間に襲いくる衝撃と痛みを覚悟し、ぎゅっと目をつぶった。
ベチャリ、という音が耳元で聞こえた。
しかしいつまでたっても痛みが来ない。
「おい、なに座り込んでんだ」
トマトの代わりに労わりの欠片もない声がかけられ、腕を掴まれ無理矢理立たされる。
「小僧。てめえは封印役だろうが。こんなとこでいちいち死なれてちゃ迷惑なんだよ」
声の主は安田だった。“疾風迅雷”の二つ名の通り、人外の動きで成田に降りかかるトマトを剣で弾き落としたのだ。
「とっとと動け。ここは俺らが食い止める」
「は、はいっ!」
トマトの第一波を全て迎撃し終えた時、『彼女』は踊り場に降り立った。
秋山が呻くように名を呼んだ。
「栗本、薫っ……!」
応じて、栗源が吠えた。
「我が グィンの 寿命は 世界一ィイイイイイイ!」
想像以上に電波ってる様子。
「どうにかして彼女にトマトを投げさせてくれ。横をすり抜ける」
「了解」
秋山の声に高畑が答える。
安田がいきなり正面から突っ込んだ。その後ろを阿智が追い、上遠野が中距離からワイヤーを振るう。
「ボーイズラブは純愛なのよぉぉぉぉぉぉ!!」
魂の叫びとともに第二波。腐ったトマトが広範囲に撒き散らされる。
一つ一つが必殺の威力を秘めたこの攻撃を前に、阿智はおろか安田でさえ近寄ることができない。必死で回避行動を取る。
高畑が生体ブースターの逆噴射によって大量のトマトを防ぎ、上遠野のワイヤーが残りのトマトを確実に打ち落としていく。
「今だ、行くぞ!」
大技を放った直後の栗本は硬直状態。
その隙に階段を駆け上る。
「小僧!」
怒鳴り声に、成田が振り向く。
戦闘の興奮に彩られた笑顔で、安田が言った。
「てめえの尻はてめえで拭いて来い。しくじんなよ」
「――そっちこそ!」
成田は不敵な笑顔で返し、階段を駆け上った。
「ホヒィィィィィィィィィ!!」
おぞましい奇声と共にトマトの第三波が残った者たちを襲う。
それらをどうにかかいくぐり、高畑たちは階段の前に立ちふさがった。
「さあ、ここは通しませんよ。栗本さん……」
「ホヒィ! ホヒィ! ホヒィィィィィ!」
「……もはや怪獣だね」
呆れたような上遠野の台詞に、安田がニヤリと笑う。
「怪獣――上等じゃねえか」
「粘土か機械なら戦いなれてるんだけどなあ」
この期に及んでまだのほほんとした口調の阿智。
仲間のどこか緊張の足りない様子に、高畑は苦笑いしながら拳を握る。
「まあ、せいぜい頑張るとしようか」
◆
「さあ、いよいよだ」
巨大な鉄扉を前に、秋山が振り返った。
この扉の先に、黒古橋が居る。
「作戦は簡単だ。俺と時雨沢は後衛から援護射撃。成田がこの封印の札をもって古橋の突撃。以上」
「ちょ、ちょっとまってくださいよ」
いくらなんでも簡単すぎる、と抗議する成田。
「案ずるな」
秋山がニヤリと笑う。久々の、彼らしい不敵な笑み。
「屋上ならば俺の最強兵器が使えるのだよ」
「ブラックマンタですね」
「その通り」
冷静な時雨沢の答えに対し、秋山は鷹揚に頷いた。
ブラックマンタ。UFOの技術を取り入れた最強の戦闘機。
「時雨沢はともかく俺の援護はかなり過激なものになるだろう。足の四、五本もなくなるかもしれんが、そのあたりは気合だ。
不死身の君にしかできない役目だよ。誇りたまえ」
「……足は二本しかありませんよ」
機銃が当たれば足どころか胴体が消し飛ぶような気がしたが……恐らく、これが秋山なりの責任のとらせ方なのだろう。
成田は己の過ちを今更ながらに悔い、現状を嘆いた。
「さて、乙一君は――」
秋山の台詞で、成田は初めて気がついた。
その視線を追えば、扉の前にもたれかかってナイフをいじる乙一。
今まで一言も発しなかった上、援護にも攻撃にも回ろうとしなかったため、成田はその存在自体を忘れかけていた。
未知数の力とミステリアスな言動を備えたミステリー校からの特待生。頼もしくもあり、恐ろしくもある。
「黒古橋と同行しているであろう野村さんの身柄の保護を頼む。それが君の望みだろう」
乙一は無言で頷く。
「では、一、二の三で突撃だ。成田、俺、時雨沢の順で。見つけ次第攻撃しろ。反撃する暇など与えるな」
秋山が押し殺した声で言う。その胸中には何が渦巻いているのか。
「いくぞ、一、ニの―――」
ココで1つでっかい訂正。
安田=安井健太郎
ファンの人、すまん。
栗本ファンにはあやまらんのか?
まあいいけど。
温帯スレ住人には大ウケですよ(w
温帯はこの板、っつーかこのスレじゃこーゆー扱いがデフォだしな
すみませんここでは青心社の電撃組の人や
角川春樹事務所のレーベルってなしなんでしょうか?
それと中村うさぎとあかほりさとるなんかも
「三っ!」
合図と共に扉が蹴り開けられ、成田が飛び込んだ。
間髪いれずに秋山、時雨沢が左右に展開した。
水の中を泳ぐような感覚。凄まじい濃度の怨念だ。
広い屋上。三人は瞬時に体の向きを変えて視線をめぐらせ、黒古橋の姿を求めた。
「……?」
構えたパースエイダーをそのままに、時雨沢が疑問符を浮かべる。
フェンスの端に、人影が二つ。
一つは倒れ、一つは頼りなげにゆれながら立っている。
その人影が何者かを確認した時雨沢は、一瞬目を見開いた。
そして内心の混乱を抑えながら秋山に呼びかける。
「秋山さん」
応じた秋山は、しかし呆然とした様子で呟いた。
「……どういうことだ」
隣の成田も固まっている。
無理もなかった。
立っているのは野村美月、そして倒れているのが――古橋秀之。
「一体、何が……」
成田の呟きが、時雨沢に僅かな冷静さを取り戻させた。
――痛がるのも、恐がるのも、疑問に思うのも、全て後で……
己のレポートの力を思い出す。疑問と混乱を打ち捨て、状況の把握に努めた。
――地に伏す古橋の体に力が宿っていないのは、遠目に見ても明らか。
あれがこちらの油断を誘うための死んだふりだったの ならば、秋山たちは今ごろ消し炭になっているはずだ。
つまり、手段も相手もわからないが、黒古橋は何者かに倒されたという可能性が高い。
これは我々にとって不利なことではない。黒古橋の封印という目的からすればむしろ有利になっている。
問題は黒古橋以上の力を持った何者かが存在しているということだ。
自分達が来る前に屋上にいたのは古橋と美月の二人。ならばその何者かとは――
ここまで考えた時、野村美月がこちらに注意をむけていることに気が付いた。
その目は虚ろで、酷く危険な匂いがした。
成田と秋山は未だ混乱している。
時雨沢は己の判断を信じ、野村に向けてパースエイダーを構えなおす。
その指が引き金にかかった瞬間。
ガギュッ、という鈍い金属音と共に、時雨沢の手元からパースエイダーが弾き飛ばされた。
――野村美月の攻撃、ではない。伏兵? 違う、気配が無かった。
湧き上がる驚愕と疑問を飲み込み、海老のように後ろに跳ねる。
時雨沢の動きに、成田と秋山も反射的にその場から飛びのいた。
まるでビリヤードの玉のような動きで、三方向に散らばる。
時雨沢は背中の『森の人』に手を伸ばしながら、襲撃者に疑問を投げかけた。
「何故だい? 乙一くん」
「……野村さんは僕が守ります」
影のように気配を消したまま、たたずむ乙一。
秋山と成田はようやく状況を把握したか、険しい視線を乙一に送る。
「待て、乙一特派員」
秋山は混乱が色濃く残った顔で、しかし真摯に呼びかけた。
「野村くんは明らかに黒化している。しかし古橋に封印の札を張りさえすれば黒化は解けるはずなのだ。我々は野村くんを
傷つけるつもりはない」
「……では何故、時雨沢さんは彼女に銃を向けたんですか」
「それは……」
説明している暇はない、という言葉が口をつく前に、
美月が動いた。
両手がかすみ、無数の白球が投擲される。
――ピンボール?
時雨沢は高速で迫る白球の中央に刻印されたマークを確認し、一瞬反応に困った。
しかし美月が古橋を倒した疑いがある今、それがただのピンボールである可能性はゼロに近い。
そう判断した時雨沢は『森の人』を抜き放ち、迫り来る白球をクレー射撃のように打ち落とした。
その瞬間、凄まじい熱波が押し寄せた。
白球に込められた力はどれほどのものだったのか、手榴弾ではきかないほどの爆発力。
しかし時雨沢は動じることなく『森の人』の引き金を引きつづける。
連続する爆音。
十ほども打ち落としただろうか。
やがて爆発が止んだ時には、削れたコンクリートと爆煙が舞い上がり、完全に視界が閉ざされてしまった。
「成田、時雨沢、乙一特派員! 無事か!?」
秋山の怒鳴り声。彼もなんとか凌ぎきったらしい。
「右手が吹き飛びました! 十秒もあればもどります!」
成田の声。大分遠くに離れたらしい。
「こっちも無事です!」
返事をして、爆煙を抜けるべく後退する。
すると前方から爆音が聞こえてきた。
――恐らく、乙一くんと野村さんか……
状況がこんがらがり過ぎている。何が、何故、どうやって……疑問が湧き出てくる。
――考えるのも、後だ。
時雨沢は走った。今はただ目的のためだけに。
◆
「……野村さん……」
白球爆弾を全て避けた乙一は、困惑と悲しみに満ちた目で美月を見つめた。
美月は虚ろな目つきのまま呟いた。
「乙一くん、来てくれたんだ……」
「野村さん、どうして……」
「……乙一くんが、悪いんだよ」
その目から、つうっと一筋の涙が零れ落ちる。
「乙一くんが、来てくれなかったから……わたしは……」
その言葉に、乙一は愕然とした。
「ぼ、僕はっ……!」
「うるさい!」
叫びと共に白球が放たれ、爆風が乙一の頬をなぶった。
「乙一くんがいてくれれば! こんな事にはならなかったんだ!」
癇癪を起した子供のように泣き叫ぶ。
噴出した憎悪は止まらず、油をそそいだ炎のように燃え上がる。
「あの怖い人たちだって殺さなかった! 先生たちだって殺したりしなかった!」
叫び声と共に美月の体から黒い靄が滲み出る。
「みんな、みんなあなたのせいでっ……!」
美月は体の奥から出てくる靄を抑えるように、両手で肩を抱く。
荒い息をはいて、膝をついた。
やがて黒い靄の噴出がとまった。小刻みに震える体。
下を向いたまま、深い悲しみに満ちた言葉を。
「わたしは、あなたを待っていたのに」
座り込み、俯いた美月の膝が濡れた。
「あなたは来てくれなかった」
空っぽの涙。
虚ろな言葉。
「あなたがいてくれればわたしは……」
自分の罪の重さに気が付いたとき、それはもう手遅れだった。
大切な人の心は引き裂かれ、誰にも癒すことはできない。全ては、手遅れ。
美月の悲痛な言葉に肺腑を抉られ、乙一はただ己の不甲斐なさを噛み締めるだけだった。
「あなたが憎いの」
俯いたままの美月が、ポツリと呟く。
その言葉は酷く悲しげで、それでいて冷たい憎悪が篭っていた。
「このままでは、わたしはきっとあなたを殺してしまう」
面を上げて、乙一の目を見つめる。
その目の奥にあるのは昏い憎悪と――
「わたしは――あなたのことが、好きなのに」
その言葉は乙一の時間を九秒止めた。
「あはは……言っちゃったね。ずっといえなかったのに……」
照れたように、寂しく微笑む。
乙一は錯乱した。
美月は自分のことが好きだといった。憎くて、でも好きだといった。
こんな根暗で、殺人鬼で、彼女のことも守れないような自分を。
嬉しい。素直にそう思った。
自分はどうだろう? 自分は美月のことを――
――僕は、野村さんのことが……
割り込んでくる『手』のイメージ。美しい手。美月の手。
――僕は……
好きか。嫌いか。それとも――
無表情のまま錯乱する乙一に、美月が微笑を浮かべたまま、
「もし……もし、わたしのことをちょっと好きだっていってくれるのなら」
最後の願いを告げた。
「わたしを、殺してください」
「僕は……」
美月を殺す。
その考えが頭に浮かんだとたん、全てを理解した。
――ああ、僕は……
簡単なことだったのだ。
鳥が空を飛ぶように、魚が水の中を泳ぐように、当然のこと。
「僕も――」
瞳に浮かぶのは虚無と純粋な欲望。
――僕が感じているのは愛情なんかじゃない。
ナイフを、構える。
「野村さんのこと、好きだよ」
――ただの執着だったんだ。
言葉と同時に地を蹴る。
目の前に迫った乙一を見て、美月は柔らかい微笑を浮かべ、恋人を迎え入れるかのように両手を開いたまま。
乙一のナイフは迷いなく美月の心臓へ――
「……いっちゃん……」
いつか決めた、親しみを込めて呼び合う字。
その呟きと頬を流れる涙が、乙一の心を乱した。
「――っ!」
一瞬の戸惑い。
乙一の躊躇を見透かすように、美月はスッと目を細めた。
「嘘吐き」
その言葉には、微かな悲しみの響きがあった。
しかし、白球の爆発で吹き飛ばされた乙一には何もわからなかった。
「いっちゃん、嘘ついたね」
無感情な声と共に、地べたに仰向けに倒れていた乙一は無理矢理引き起された。
ぼやけた視界の内で、美月が淡々と語る。
「いっちゃん、わたしのこと好きなんかじゃないんだ」
その瞳に憎悪も悲しみも無く、
「殺したかっただけなんだ」
ただ、虚ろだった。
「ごめんなさい。無理を言っちゃって。あなたに人は愛せないのに」
惜しむように乙一の頬を撫でる。
その手にはピンポン球が握られていた。
「さようなら。やさしい殺人鬼さん」
はじめはドスッ、という音が聞こえた。
続いて緑色の光が視界に溢れた。
獣のような叫び声を上げて、美月がのけぞった。
朦朧とした意識の中で、乙一は美月の体から何かが抜け出ていくのを感じた。
――泣いている。
美月が泣いていた。痛いのか、悲しいのか。
ただ慰めたかった。傷ついた腕を無理矢理持ち上げ、その頬に手を触れた。
――もう、大丈夫。
その手を頭に回し、グッとひきつけて抱きしめる。
美月の体が一瞬強張ったが、すぐに力が抜けた。
「いっちゃん……」
字で呼ばれ、ギュッと抱きしめられた。
このとき、乙一はやっと理解した。何故あの時、ナイフが止まったのかを。
人間は黒だけではない。白もある。みんな灰色なのだ。
自分は人を普通に愛せる。そして、多分この人のことを――――
◆
「ふう……どうにか間に合ったようじゃな。いや、よかったよかった」
暢気なことを言いながら、美月の影に突き刺さっていた怪吸矛を抜く。
彼が屋上についたとき、そこはワンダーランドの真っ只中であった。出口付近にはもうもうと爆煙が立ち込め、
そこらじゅうにクレーターのような跡が残り、ちょっと離れたところでは男女が絡み合ってなにやらボソボソと。
幸い彼の活躍のお陰で、男女は仲良く気絶した。これでお子様も安心である。
「ああ! なんでろくごさんがここに!?」
未だおさまらない爆煙から、文字通り煙に巻かれていた三人が姿をあらわす。ちと因縁の在る相手だった。
説明するのが面倒ではあるが、ある意味このためだけにこれまで苦労してきたともいえたので、まあ仕方がないと諦める。
「やほー。元気にやっとるかね、諸君」
ひらひらと手を振ってみる。
そんな彼の名はろくごまるに。
「……どういうことか説明していただけますかな、ろくごさん」
こめかみを抑えつつ、秋山。
「そのために来たようなものでな」
飄々とした態度で、ろくご。
「もうわけがわかんないですよ……」
脱力したのか、座り込んでため息をつく成田。
「乙一くんたちは無事ですか?」
やたらと冷静な時雨沢。
「うむ、彼らならそこで寝とる。問題も解決済みだからして、危険はない」
槍で指す方向に、確かに二人の姿があった。
「さて、何から話すかな……」
「まずは何故あなたがここにいるのか、『彼ら』とは何か……いや、そのまえに何故あなたがあんなことをしたのかを教えてく
ださい」
「ああ……すまんのお。ありゃちょっとした手違いだ。まあうまくいけば全てが元の鞘に収まる故、我慢しておくれ」
その言葉に、思わず成田が噛み付いた。
「手違いって……」
「まあ落ち着け。全ては奴――黒幕を追い詰めるためのことよ」
「……野村さん、ですか?」
「野村くんも、そこに倒れておる古橋くんも、完全な黒化などしておらんよ。古橋くんは切欠を作ったに過ぎず、野村くんは
とり憑かれておっただけだ」
「それはどういう――」
「そう慌てるな。苦労してここまでこじつけたんだ、もう少し語らせてくれんか」
槍をコンクリに突き刺し、自分もドカリと座り込む。
「立ち話もなんだ、まあ座れ。茶はでんがな」
三人は顔を見合わせたあと、渋々と腰をおろした。
そんな彼らの顔を見回し、ろくごがさて、と膝を叩いた。
「まずはわしの先までの行動の説明からいこうかの。わしの言った『彼ら』とは――」
「一般生徒達の事だ」
「待ってくれ。一般生徒にそんな力があるはずが……」
「君は重要なことを忘れておるよ、秋山くん。確かに一般生徒一人ひとりの力は弱い。しかし我等の力の源であるレポート
を支えるのは彼らの力だ。古橋くんの暴走を引き起こしたのも、一般生徒たちの力が大きな要因といえる」
「……仮にそうだとしても、一般生徒がそんなことを望むはずないのでは?」
「まあ正確に言うと一部のもの。それも無意識の願望によるものじゃ。古橋くんの支持者には過激なものも多いからのお…
…しかしそれ故に、彼らの意に沿った行動をとれば黒古橋領域内でも自由に動けた。だからわしは黒古橋領域内で状況をコ
ントロールするために、あのような行動をとっておったのだ。人手が足りなかったので甚来旗でわし自身を召還してみたり
もしたが……ありゃ失敗じゃったな。所詮欠陥宝貝、少々イカレたわしまで召還してしまいおった」
決まり悪げな表情で、ボリボリと頭を掻いた。
「黒幕の裏をかくために、今の今まで道化を演じてきたのだ。おかげで君ら電撃班や榊君にはとんだ迷惑をかけてしまったが」
すまない、と頭を下げた。
「……いや、納得はできんが理解はできた。それはあなたが選んだ道だ。謝る必要はない」
秋山の言葉に、ろくごは素直に頭を上げる。
「本当に上手くいっておればあそこまで迷惑をかけることもなかったのだが……」
「計画なんか上手くいかないものですよ。僕等の計画はもう滅茶苦茶ですからね」
あはは、と笑う成田だが、あまり力が入らない様子。
「それで、その黒幕とやらはどんなものなんですか?」
時雨沢の質問に、ろくごはポンッと膝を打った。
「うむ……それではそろそろ核心に迫ろうか」
「そも、この軽書校には膨大な数の世界観が混在しており、それ故に校舎の構造は閉鎖的にできておる。なにしろこの狂っ
た空間が外部に漏れたら大惨事だからの――しかし、それが今回仇となった。通常ならば拡散し消え去るはずの負の力まで
もが校内に充満してしまったのだ……これは明らかに編集のミスだからして、指摘すれば後で図書券がもらえるかもしれん」
「へえ……この学校ってそんな造りだったんですか」
成田が感心したように言う。
「しかし、何故そんな重大な欠陥がいままで気がつかれなかったんですか?」
時雨沢の指摘に、ろくごは大きく頷いた。
「そう、設立当初より少しずつ溜め込まれてきた負の力、それは通常の空間におけるそれの何倍もの濃度をほこったにもか
かわらす、この構造的欠陥に誰も気が付けなかった。なぜなら特待生徒たちのレポートが生み出す正の力によって、どうに
か均衡が保たれておったからだ。まあ、正の力を生みだすレポート――中には怪談や残虐劇もあったりするが――を作るこ
とこそが我等特待生徒の使命なのだから、当然のことといえば当然のことではあるが……まったく上手くいかないものだのぉ」
「何故、あなたがそれを知りえたのだ?」
秋山の質問に、
「九天象という宝貝があってな。有効範囲は界一つ。全ての事象が読み取れるという優れもの。未来や過去の検索ができなかったり、その膨大な情報を人間では処理できなかったりするのが玉に傷。この場合は『軽書校という一つの界』を見とおしてみたわけじゃ。
過去が見えぬので少々梃子摺ったが、何しろ全ての事象を読み取れるのだから推理もはかどる」
「なるほど……」
それぞれが解答を得て納得した様子の三人を見て、ろくごがにやりと笑う。
「さて、ここからが本題。なんの偶然か、軽書校の正負の均衡がちょいと負に傾いた時、古橋くんの怒りが爆発した」
ドカーンとな、と手振りでおどけた表現をしてみせる。
「先も言ったように、この時の黒古橋化は一般生徒達の願望によるもの。つまり不完全なものじゃった。これだけならば本
当に些細なことだ。それこそちょいと小突けば正気に戻る程度のことのはずだったのだが――均衡が崩れた事により一気に
膨れ上がった負の力が、切欠となった古橋くんの中へ流れ込んでしまった。そして彼の世界観を侵し、彼の内に一つの存在
を作り上げた。彼のレポートにはうってつけのキャラクターがあったからのぉ。たしか……ランドーとかいったかな? 実
体のない怨念の塊、影男よ」
「ああ、僕ブラックロッド好きなんです。ランドーはブラックロッドの悪役、人蠱の一種ですね」
ろくごの説明に、成田が補足した。
「その古橋くんの内に生まれた存在――仮に『ランドー』と呼ぼうか――は軽書校の生徒一人ひとりが少しずつ生み出して
いった悪意の集合体。それは全てを呪うことを望み、軽書校を奈落落ちへと導くべく動いた。……奴は生まれた瞬間から破滅
へと突き進むことしか選べなかった、哀れな存在でもあるのだ」
そこらへんはレポートとは違うな、と付け加える。
「『ランドー』は古橋くんの怒りと願望を利用し軽書校に戦乱を巻き起こした。怒りが憎しみをよび、憎しみがさらなる憎
しみをよぶ。それは古橋くんの能力によって生み出された『領域』という怨念増殖炉によってさらに加速した。しかし生徒
たちも黙っては居ない。対策班がつくられ、どうにかこうにか『ランドー』を依り代に封印する手立てが立てられた」
三人は口をはさむことなく、ただジッとろくごの話に耳を傾けた。
「あとはもう言わずともわかるじゃろ。『ランドー』は古橋くんの体を捨てて野村美月くんにとり憑くことでまんまと電撃
班の虚を突き、乙一くんをも退けかけた――そこへわしが颯爽と登場し華麗な技で奴を叩き出したというわけじゃな」
「ちょっと待ってくれ」
秋山が何故か右手を上げて発言する。
「うむ、何かね?」
「『叩き出した』って……」
「はっはっは、いやそれがな」
えらく爽快な笑顔。
「怪吸矛で野村くんから追い出したは良かったものの、奴めは元の依り代にもどりおったようでな」
その言葉の意味を秋山達が理解する前に、ろくごは何気なくこう言った。
「そろそろ起きてもいいんではないかのぉ? 『ランドー』よ」
「うっふう、うっふう」
ろくごの声に答えて、不気味な笑い声があがった。
元の依り代――つまり古橋の体がゆらりと起き上がる。
「まずは礼を言おう。よくぞ無駄な長話をしてくれたものよ……して、これよりうぬらはなんとする? 奈落の蓋が開くまで、
もう半刻を過ぎた。よもや儂を半刻足らずで封じられるなどと考えておったのではおるまいな?」
『ランドー』はニヤニヤと笑いながら言葉を紡ぐ。
その口からは、空気の振動と共に吐き気がするほどの瘴気が発せられた。
「なっ……これはどういうことだ!」
秋山が慌ててワイヤーブレードを構える。
成田、時雨沢もそれに続きそれぞれの武器を『ランドー』に向ける。
「無駄じゃよ。うぬらがいくら強かろうとも半刻では儂は殺せぬし、封ずることもかなわぬ」
クツクツと嗤いながら、『ランドー』はろくごを見た。
「ぬしは何を考えておったのだ? 儂があの程度で滅びるとでも思ったかよ」
ろくごは答えず、笑顔のまま。
「……気に入らぬな。ぬしは何故笑うておる」
「何、可笑しくてしかたがないのさ。なにしろ――」
ろくごは会心の笑みをうかべて言った。
「貴様はもう終わっているのだから」
ろくごの言葉の意味を『ランドー』が問いただそうとした瞬間、異変が起きた。
校内にポツポツと植えられた樹木の緑。それが急激に増殖したのだ。
緑の波は瞬く間に校内を埋め尽くし、文字通り樹海を形成した。
それと同時に空気が変質する。
「……これはっ!?」
狼狽する『ランドー』に、ろくごはかかと大笑する。
「甘い甘い。わしが意味もなく長話をしていたとでも思ったか? これは富士見ミステリークラスを中心とした全校生徒に
よる『王国』の召還、一つの新世界を作り出す荒業よ。新たな世界に塗りつぶされ、全性音楽もとっくに鳴り止み、これ以上
の怨念は発生せん。払いきることこそできんが――もはや奈落落ちには足りぬよ」
ろくごの言葉どおり、立っているのが辛くなるほどだった怨念が、今では殆ど感じられないほどに弱まっていた。
「うぬらは……!」
強い風が『ランドー』の頬を叩いた。
見れば、いつの間に現れたのか、巨大な黒い戦闘機が音も無く屋上の真上に滞空していた。『ブラックマンタ』。
「終わりだ。『ランドー』」
秋山は冷たく宣告する。
成田がナイフと符を構え、時雨沢はパースエイダーの狙いを絞る。
「まだ……まだ終わらぬ!」
打ちのめされ、それでもなお消えぬ妄執を込めて、『ランドー』は叫んだ。
「かくなる上は貴様等を滅し、『王国』を潰し、もう一度怨恨を集め、何度でも奈落の蓋を開いてくれるわ!」
「壮絶なまでの芸のない台詞じゃな……」
呆れたように頭を掻くろくごは、腰の断縁獄に手を伸ばす。
そして後ろの秋山達に向かってこう言った。
「ここで『ランドー』を封印するのは簡単なのだが――それをすると怒る者が居てな。この場は彼に任せようと思うのだが」
瓢箪を前に突き出し、その名を呼んだ。
「のう、『川上稔』よ」
途端、一陣の風と共に一人の白服の男が瓢箪から現れ、風の勢いのままに『ランドー』へ突進する。
虚を突かれた『ランドー』の胸に、男の持った神形具が突き立った。
「ぐぁ……」
神形具は『ランドー』の胸を貫通。しかし血は出ない。
「話は全て聞かせてもらった。ここは俺に任せてもらおう」
『ランドー』を貫いた神形具をしっかりと持ったまま、川上は静かにそう宣言した。
「……ぬしは儂を封じるか。それとも殺すかよ? どちらにせよ変わらぬ。うぬらは自身の穢れを打ち捨て、省みぬのだから。
儂は打ち捨てられたうぬらの穢れの塊よ。一度捨てられ二度目は殺され、されど三度目は必ず来る。うぬらがうぬらで在る限りな」
『ランドー』の捨て台詞に、川上が笑って応じる。
「ならばその穢れ、我々が受け止めようではないか。貴様の怨恨も呪詛もまとめて整調化し、風水して皆に返してやる。それで全てが元通りだ」
その言葉に『ランドー』は一瞬呆けた後、嘲笑った。
「ぬしにその力があるのか? 我が身は膨大な呪に因って成る物。その貧弱な神形具で風水仕切れるものか」
「“救世主”は莫大な遺伝詞の流れを全て見切る。貴様如きの呪なぞ物の数ではない」
言葉どおり、川上の左眼が碧眼になっている。
自らの目を抉り取り、そこにこの義眼を埋め込んだのだ。
「……愚かな。この学び舎に我が怨恨、我が呪詛をすべて受け入れる器が在るのなら、何故儂は生まれた? ぬしが儂を産みの
親どもに返せば、彼奴等の肉は溶け、骨は腐りおちようぞ」
「受け止めきれないのならばそれまでのこと。そんな器の小さいものはこの軽書校にはいらん」
川上のあまりの言い草に、『ランドー』はさらに大きく笑った。
「気に入ったぞ、最悪の偽善者よ! ぬしは儂すら足元に及ばぬほどの悪党よ。この学び舎を滅ぼすは怨恨に狂った儂ではなく
目先の偽善を振りかざす者。それこそこの学び舎に相応しい終焉。呪われよ、呪われよ、呪われよ!」
高らかに呪詛を叫ぶ『ランドー』に、川上はさらなる覚悟を言い募る。
「悪役を任ずる覚悟などとうにできた。舐めるな、影男。貴様如きの呪いを飲み込めずしてなにが作家だ。我等は貴様を受け入れて前にすすんでみせる……!」
「よ――――――――――――くぞ言ったぁ!! 川上特派員! 今すぐそのいじけた野郎を我等の中へ戻すがいい!」
秋山が最高テンションで叫ぶ。
「いや、僕は安全な封印のほうが……いや、なんでもないですハイ」
「……まあ、なんとかなるさ」
不死身のくせに妙に気の小さい成田にパースエイダーを突きつけて『説得』する時雨沢。
ろくごは秋山のテンションが感染ったか、かなりのハイテンション。
「はーっはっはっは! わしの人選に狂いはなかったようじゃな! 行け川上よ! これで全てが元通りじゃ!!」
「くっははははっ! 愚かものどもめが! 我が恨みの深さを思い知るがいい!」
応じて叫ぶ『ランドー』。心なしかテンションが感染ったように見える。
「貴様こそ、作家の懐の深さを思い知るといい……!」
川上は壮絶な笑みを浮かべ、朗々と詞を謳う。
≪誰もが、そのままで≫
≪ずっとずっと、そのままでいられるために――≫
叫びと共に“救世主”が装着者の意思を飲んだ。
言葉が、アというハミングになって停まらぬ中、右の目が強く赤の光を放ち、駕発動の力を発揮した。
“救世主”が川上の目に全ての遺伝詞を見せてくる。
このときだけの、しかし全ての答えを。
『ランドー』の姿が光と化し、やがてそれが全てを飲み込んだ。
光の破裂。それだけで全てが決着した。
救世者じゃなかったか?
566 :
LOVE:03/09/28 16:57 ID:jD3MLZA1
乙一が目を覚ますと、隣には美月の幸せそうな寝顔があった。
「野村さん……」
ここはどこかの教室らしい。しかし、壁、天井、床などは無数の草花に覆われ、まるで緑の箱の中にいるようだ。
「目覚めたか、乙一特派員」
不意に声がかけられ、乙一が振り返ると、教室の入口に秋山がいた。
「終わったよ」
秋山は小さく笑って、しかしさらにこう続けた。
「しかし、私たちの物語はまだ何も終わっていない」
乙一は、うなずいた。
自分も立ち上がろうとして、気づいた。
「……野村さん……」
眠れる美月の左手は、けれどしっかりと乙一の手を握り締めていたのである。
「乙一特派員、訊いてもいいか」
秋山の言葉に、乙一は小さなうなずきで応じた。
「何故、野村さんを殺そうとした?」
「野村さんが好きだから」
「何故、野村さんを殺せなかった?」
「野村さんが、好きだから」
そう言い切る乙一の目に、もはや何の迷いもないことを秋山は確認し、乙一の肩を軽く叩いて部屋を辞した。
「君たちにとって、これは『始まり』だな」
乙一はそして、再び壁に寄りかかって眠り続ける美月の顔を見つめた。
先ほどまでの迷い雲が、嘘のような晴天。
ああ、よかった。
僕はこの人を、きっと愛せる――
乙一の顔が、好きな人の寝顔に吸い寄せられていく。
そして、ついに重なるとき。
音もなく。
美月の両手が、乙一の背中に回された――
ライトノベル校職員室。
黒野村によって壊滅したそこでは、出来るだけの修復作業と、後片付けが行われていた。
おかゆまさきは、峯先生と三木先生と共に、その職員室のさらに奥にある「ライトノベル校大金庫」の中にいる。
そこには、「ライターのベルト」の他、様々な「禁断のアイテム」が収められている。本来、これらの道具は、このような事件の時に使われるものだ。
しかし、これらの「危険すぎる」アイテムを使用するためには、様々な方面に許可のあれこれをとることが必要であり、今回はあまりにも話が急だったため、峯先生たちが持ち出せたのは、おかゆが使った「ライターのベルト」だけだった。
おかゆは、金庫を満たす闇を覆うには、あまりにも不足な蛍光灯の明かりを頼りに、峯先生たちと共に歩いていた。まるで図書館のように並べられた棚には、その力を封じられた道具たちが、眠っているかのように置かれている。
三人は、ある場所で立ち止まると、その棚の空白に目をやる。「ライターのベルト」が入ったケースが置かれていた場所だった。
「よっこらせ、っと」おかゆは背を伸ばしてケースを持ち上げ、ケースをもとあるべき場所に収めた。その瞬間、おかゆはベルトの声を聞いた気がした。よくもまあ、わたしを使いこなせたものだな、と。
ん、と耳を傾けるおかゆ。心のアンテナの感度を高めると、様々な声が聞こえてくる。
「これでひと段落……、と。どうした、おかゆくん?」不思議そうな声で三木先生が問いかける。おかゆは本当の声が突然聞こえたので、亡霊が突然現われた時のような顔で、先生の方を向く。
「あ、先生……。い、いや、なんか、ベルトのケースを置いたら、ベルトの声が聞こえて、それから、色々な声が聞こえたので……」
「ここにあるアイテムが持つ心の声にょね」峯先生は始めから分かっているような声で答える。
「それより、おかゆ君、高橋君の様子はどうにょ?」
「え、ええ……」おかゆは背中に後ろめたいものを感じながら答えた。
「高橋先輩はかんふー……、もとい、清水さんのあのおぞまし……、いえ、激しい攻撃をボクの身代わりに受けて、体はなんともないんですが、精神的に……。保健室のベッドではZZのカミーユ状態で……。」
実際には、おかゆは高橋先輩を盾にして清水の攻撃を凌ぎ、ライダーエスカリボルグの一撃で倒すという、ある意味卑怯な手を使ったのだった。
「そうか……。高橋君はおかゆ君を守るために、自身を犠牲にしたのか……」三木先生が沈痛な面持ちで言う。おかゆが言った事が、全部真実だと思っているらしい。
「そうです、高橋先輩には、申し訳ないことをしました……」
「まあ、回復したら高橋君にはレポートの続きを書いてもらわないとにょ。……そういえば、おかゆ君、10月発表のレポートはどうしたにょ?未発表分はまだ職員室に来ていないにょ?」峯先生が、さらりと特別生徒の死活問題を語った。
「え゛」そう言われて初めておかゆは気がついた。騒動が始まる前、かれはまったく未発表分のレポートに手をつけてなかったことを。
「あの〜」恐る恐る問いかけるおかゆ。
「ん?」声をそろえる二人。
「ライターのベルト、もう一度使わせてもらえませんか?」
しばらくの沈黙。
「だめにょ」
峯先生の一言が、弔鐘のように大金庫内に響いた。
この後、おかゆまさきが10月10日に最新レポート、「撲殺天使ドクロちゃん2」を無事発売できたかは、神のみぞ知る。
マジで言わせて貰うが駄作だな
美月萌えに追求した時点でもう終わってたし
ここまで引っ張って綺麗に終れるはずがない
デブのマラソン大会みたいなもんだ もはや終らせる事に意義がある状態
それでも拍手の一つもしてやるか そうでなきゃ無視するくらいはしとけ
わざわざ鞭打つのは悪趣味だ ネタなんだからつまんなきゃ見るな
何はともあれ おつかれさん>ネタ師
まあ、どこかに着陸しなきゃならん訳だし・・・
温帯はどうなった?
>>572 気になるのはそれだけだな。
誰が止めるんだ、あんなの。週刊文春にでも止めてもらうのか?(すでにラノベじゃねぇ・・・)
>572
そんなもの作者が忘れ…(以下略
575 :
574:03/10/01 12:41 ID:bizNmhA9
フィナーレ中盤の作者さんへ
あなたに悪意があるんじゃないのよ〜。
ゴメソ
そうやって勢いが命のネタスレに整合性だの綺麗なオチだのが
つけられると勘違いするから、現状みたいなことになったんだ罠。
栗本関係のヤツはどこ行っても毒をまき散らすんだな・・・
気持ちはわからんでもないが自粛しれ。
ま、温帯だしな
ここでかどちんから一言があるようです。
『まあいいじゃん』
以上、ありがとうございました。
あぼーん
(瞳をうるませて)
・・・いく・・・イキます・・・ごしゅじんさまぁ!
(前よりも大きな声をだすとぐったりとして、
大きな胸を上下させながら呼吸をした)
はぁはぁ。
ご主人様、どうでしたか?
気持ち、良かったですか?
(潤んだ虚ろな瞳で大介さんに感想を求めた)
……誤爆、か? それとも続くんだろうか?
すみません、誤爆です
すごく、鬱
いってきます
川口大介を忘れるな
オコノミーナか!?
続きが気になるぞ
>>581は責任持って俺を該当スレに誘導してくれ。
そろそろ次スレの時期ですね