小野不由美&十二国記 其の34

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その頃…
慶国では、陽子が偽王の乱を平定し、龍旗(りゅうき)が上がっていた。
龍旗とは麒麟が王を選ぶと上がる旗のことである。
他国から慶国に戻る大勢の難民を乗せた船上から龍旗を眺め、蘭玉と弟の
桂々は国が平和になることを期待して、皆と共に歓声を上げるのだった。
その船のはるか上空、雲海の上を陽子と景麒が、景麒の使令の驃騎と班渠に
またがり、天勅を受けるべく(天から王位を授かる即位の儀式)蓬山に向か
っていた。
その儀式を済ませれば慶国の王宮の白雉が「即位」と鳴き、まだ陽子に
服従していない諸侯も陽子を王と認めるのだ。
景麒は、儀式のある雲悌宮に行く前に蓬廬宮に寄らせてほしいと陽子に
頼む。
蓬山の蓬廬宮に着いた二人は女仙の蓉可に案内されて山を奥に進む。
蓬山は大小の奇岩で針の山のような地形の山だった。細い道が迷路の
ように入り組んでいる。
物珍しげに進む陽子に、蓉可は麒麟の卵果が実る捨身木について説明する
のだった。見えてきた捨身木には金色の卵果が1つ実り、そのすぐ下では
女怪が愛し子見守るように片時も目を離そうとしない。
捨身木の見える東屋で、蓉可は行方不明の麒麟である泰麒の話を始めた。
景麒が慶国の先王予王舒覚を選ぶ前に蓬山にいた頃のこと…

暗い洞窟の木の根に実った白い卵果から1人の女怪が生まれた。
女で首は魚、上体は人、下半身は豹で尾はトカゲという奇怪な姿。
その様子を見守っていた老婆は、その女怪に白汕子と名付けた。