「ならばあなたを斬った後に、彼も斬ります!」
……それは効率的だ、と。
「覚悟をきめましたか」
いつの間にか、僕は教室へと戻ってきていた。ここなら鞄の盾とか対刃机とか少しは対抗できそうな武器がある。
「……まぁた厄介ごと?」
何時の間にか、僕の隣にはいつもの君がいる。マイペースに僕の作った弁当を食べていた。
「うん。幼馴染みは禁止だから斬るって」
「なにそれ……」
そう君は言うと三角パックの牛乳を飲み、こう言った。
「一応聞くけど……幼馴染みがどうして駄目なの?」
「知れたことです。幼馴染みはマンネリで定石で、そして羨ましいからです!」
ほう、マンネリで定石で…………
『はぁ?』
僕と君は、同時に疑問符を発した。
「幼馴染み……それは最強、最大の属性です。
その属性の前には、綺麗な先輩や可愛い後輩とかミステリアス少女とか騒がしい情報屋とか関西弁に眼鏡っ娘とか果ては猫耳娘でさえ太刀打ちできないからです!
だから……。幼馴染みという存在は、そのバランスを大きく崩してしまいます。よって我々は、幼馴染みを斬るのです!」
「なるほど。その気持ちはよーくわかった。という訳だからほら容赦なく斬ってください」
「ってちょっと、人を羽交い締めにして何言ってるのよ!」
「いや、幼馴染みってのは多人数で成り立つ訳だから、君がいなくなれば僕の幼馴染みは消えるということで僕は助かる訳で」
と、我ながら良いアイディアだと思ったのだが。
「却下します」
「へ?」
「我等が副会長のご意向により、幼馴染みに萌える者、もしくは幼馴染みを持つ男のみ、斬るように言われているからです」
「……不公平だ。女の子の幼馴染みは斬らないなんて……」
「それはいいから、腕はなしてよ。ゴハン食べちゃいたいんだから」
僕はしぶしぶ腕を放した。
「んでも幼馴染みっても、結局は個人の『萌え』の問題でしょ?」
「萌える萌えないは関係ありません。我々撲滅委員会は、貴方のような幼馴染みと共にほんわか〜な日常を過ごしたり他属性を脅かす幼馴染み信者が我慢ならないのです」
「いや、でもさー。僕は幼馴染みより、やっぱいもうとだと思うけどなー。ぁ、この場合は『義理』の『義』の字がつくアレね。義理の妹。これ最強。
そんなんでさ、こーんな展開(
http://book.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1020927047/288-297n)に陥った方が萌えだしさー。
寝ぼけて夢だと思ってキスしてくれたり、二人っきりになった時に「おにいちゃん……」とか微妙に恥らう声を出してくれたり、学校の女友達にやきもち焼いたり、
一緒に暮らしてるからってかまってあげないとスネたり寂しさのあまり泣き出したり、休みの日なんかにゃお菓子つく……」
この直後、僕は窓を突き破って700メートル程空中を飛んだ後プールに飛び込んだ。よく死ななかったと我ながら思う。
ちなみにその一撃を見舞ってくれたのは僕の幼馴染みだった。
その後。
「……ぜ、全部?」
「全部捨てたけど。何か問題あるの?」
僕の部屋から『お兄ちゃんだいすき!』という、十何人の妹達関連の品物が全部消えた。
そして何故か。
「……あのさ。なんで君の隣にその……馴斬丸があるの?」
「知らない。義妹に萌えたければ萌えてればいいでしょー」
その時、僕は斬られそうな気がする。
「僕をブッとばしたあの拳なら、多分それ、いらないと思うけどもね……」