「さ、さすがにまずいって! 前は子供だったから良かったけど、もう僕たちもそれなりにあれで、……だなぁ!」
半分立ち上がりながらそう捲し立てるが、もそもそと這ってきた彼女は、着替え直した僕のパジャマの裾をしっかりと掴んだ。
「分かってるってぇ。だからさ、私が眠るまでの間だけ手を握ってくれればいいから。ね?」
無茶言うな。そんなことして理性が保つほど、僕は聖人じゃない。いいのか? 襲うぞ? 幼馴染みという一線を越えてしまうんだぞ?
男があれして女がああなって、貴方私とのことは遊びだったのね、うるせぇガタガタ抜かすなぶん殴るぞ、
お腹の子供はどうするのよ、知らねぇよ俺の子じゃねぇ、最低男、黙れあばずれ、そしてめくるめく泥沼へ……。
「だいじょぶ、だいじょぶ。だって私君のこと信じてるし」
「だからって!」
そんな嬉しそうな顔で僕を見つめられても困ります。僕も男の子ですから、三段跳びでK点越えですよ?
「それにね……」
けれど、僕のそんな劣情を知ってか知らずか、彼女は一度俯き、恥ずかしそうに頬を赤らめて呟く。
「……私たち幼馴染みじゃない。……だから、信じてもいいよね?」
この時ほど、僕は自分が馬鹿だったと思ったことはない。自分の卑俗な考えで、
彼女との関係を取り返しのつかない事にしてしまうところだった。
急に冷めた脳は、彼女への誠実を盾に下卑た欲望を簡単にねじ伏せた。理性の剣が欲望の胸に輝いている。
「……わかった。寝るまでだからな」
「うん!」
とびきりの笑顔で見せた彼女は、そのまま僕の手を引いて自分のベッドに潜り込んだ。
彼女は眠りにつくまでずっと僕の手を握っていて、結局、熟睡した彼女が手を離すことはなかった。
薄暗がりの部屋の中、じっと時計の針に塗られた蓄光剤を見ていた僕も、やがては彼女の寝息につられて微睡み始めた。
明日から補習もないし、このまま寝てもいいか。
彼女の体温を感じながらそう思った僕は、ベッドにもたれたまま、睡魔の誘いに抗うことなく深い眠りの中へと落ちていった。
この時はまだ、僕と彼女の関係が変わるとは思ってもいなかった。
朝がくれば彼女とともに新たな一日を迎え、夜が来れば次の日のために眠る。
その繰り返し、単調ながらも幸せな日々はいつまでも続くと思っていた。
だが、僕は知ることになる。
この世には、明けない夜があるって事を。
645―647へ続く。
君が死んで、もう一年が経つ。僕は大人になり、君は子供のまま土に還った。
二十年に満たない人生に、君は何を見出したのだろう。
僕はキキョウの花束を君の下へ置くと、惜しむようにゆっくりとその場を後にした。
最期の最期に、僕は彼女を抱いた。
嫌がる彼女に僕は、「君が好きだから」という、世界で一番汚くて、もっとも卑怯な言葉を囁いた。
その時二人は幼馴染みという関係から抜けだし、男と女、愛し合う恋人へと変わった。ほんの一瞬の間だけ。
そして僕に抱かれたまま彼女は息を引き取り、もう彼女の笑顔を見ることは出来なくなった。死に顔はまるで寝ているようだった。
けれど、じっと彼女を抱いていた僕も、失われていく体温に死を実感した。
母さんが死んだ時、僕はまだ小さかったからよく分からなかったけど、今は、ああ、こういう事なんだって分かる。
それは、言いようもない喪失なんだ。埋めようのない空虚なんだ。
僕の心はもう、涙を流せない。
彼女の両親に彼女の死を告げた時、彼らは彼女が長くないことを知っていた風だった。
彼女の葬儀の日、ならば何故と噛みつく僕に、お義父さんは「あの子が望んだことだから」と優しく抱きしめてくれた。
僕よりも辛かったはずなのに、僕よりも泣きたかったはずなのに。
僕はお義父さんとお義母さんの前で、涙が枯れ、声が尽きるまで泣いた。
しばらくして、彼女の両親から一通の手紙が僕に手渡された。
それは僕宛の遺書だった。
便せん二十枚に渡って、彼女が自分の死について思うことを切々と書いてあった。
彼女はずっと前から書いていたらしい。最初の紙は日焼けして色が変わっていた。
どうして病院に行かなかったのか、どうして僕を遠ざけたのか。
彼女の言葉が、彼女の文章として目に飛び込んでくる。
涙は流れなかった。全てを受け止める義務が、僕にはあったから。
君を抱いて一年。君が死んで一年。
僕は家に帰り、二人分の紅茶を淹れた。
一口啜り、両手で持ったティーカップの、中に映る自分の姿を見た。痩けた頬の、疲れ切った顔をした男が睨み返してくる。
「馬鹿だなあ、僕も」
ぼやきに応え、笑ってくれる君はいない。ただ静かな家の中に、僕の声だけが響く。
一人がここまで孤独だと、君が居なくなって初めて知ったよ。
「本当に、幸せだったのかな……」
不意に、君の遺した手紙を思い出す。
最後の一枚に、一言だけ書かれていたあれは君の本心だったのだろうか。
今となっては確かめる術もないが、僕はそうであったと信じたい。
信じることで、君が報われるというのならば。
信じることでこれから先、僕の無意味な人生が救われるというのならば。
――私は、君に会えて幸せでした。
君の微笑みに、僕は情けない笑いで応える。
――僕は、ずっと一緒にいたかった。
僕らの朝は、もう来ない。
正直長くなってすまん。
徹夜して浮かれている頭ではこれが精一杯だった。
鬱堕。
。・゚・(ノД`)・゚・。
やはりうまいな・・・。俺は充分萌えられましたが、何か?
死に別れマンセー!
>921
う…うぉー。萌えー…。
と、同時に……うぉー、切ねぇー……。
ハッピーエンド信者の俺としては、>933-934は脳内あぼんですが、何か?
許してよう、鬱エンドは苦手なんだよう……
>940
分かった。鬱エンド以外のシチュを口直しに書いてみる。
それを書き込んでもいいかい? 明日の十八時くらいには出来ると思うが。
真面目に次スレ案を検討しようかと。避難所でコソーリとやるとかいう手がなくもありませんが。
新スレ立てますか?
ちと場違いになるかもしれないけども>645-647の二人を。
こんなやりとりとかあったんだろうなー、という妄想を元にした二時創作物で921氏のような出来は期待できません。
分かり難いかも…。
||
∧||∧
( ⌒ ヽ
∪ ノ
∪∪
部活で一汗流して、
「……ふぅ」
水飲み場で、顔を洗っていた時。
「よっ! そっちはもう終わったの?」
同じ体操着姿の友人が話しかけてきた。陸上部の、クラスでも結構人気がある可愛い娘。
「うん。レギュラーは、残って“秘密特訓”とか何とか」
そう言って、私は苦笑した。
「そっかぁ……あんた頑張ってたのに」
「仕方ないよ。私、取り柄無いしさ」
そう言って笑うと、友人はじっと私の顔を見つめる。
「……何、どうしたの?」
そしてため息の後に何事か呟いた。
「なんでこんなのに私は負けたんだろうねぇ」
その呟きは、水音でかき消され。私には届かなかった。
「え、何?」
次の瞬間には、友人は元の笑顔に戻っている。
「ううん、何でもない何でもない。あーそうそう、そういえば、この間見たわよ〜」
「……見たって、何を?」
「君の隣のおとぼけさん。彼と一緒に、スーパーから出てきた所」
「! そ、それがどうかしたの?」
「いやー参った参ったまさかそこまで深い中だったとは。君の友人として、君達の恋を応援してたかいがよ」
友人は笑顔で私の背中をばしばしと叩く。
「ち、ちょっと何か変な誤解してるよ。私とあの朴念仁は別に何もなくて、その、幼馴染みで、家が隣で、両方ともよく親がいないからその、ご飯一緒に食べたりしてるだけで……」
「ほぅほぅ。で、何処まで進んだの? キスぐらいはいつもしてるんでしょ?」
「き、キスって……。ちょっと、そんなの過剰妄想だってば! した事ない!!」
話題を反らそうと、さっき手に出した洗顔料を伸ばしもせず顔につける。
「あ。あんたさっき、チューブ握り締めて滅茶苦茶な量手に……遅かったか」
多過ぎる洗顔料で顔を洗い終えた私は、友人に文句を言う事にした。
「気付いてたんなら、もっと早く教えてよ」
だけど友人は、にやにやと笑みを浮かべたまま
「いやー、あんたの行動が面白かったからついね」
なんて言う。何で私は彼女と友達なんてやってるんだろ……。
「しかし、あんなにムキになるって事は。ほんとーに何も進展がなさそだね」
頭をぼりぼりと掻き、何処か遠くを見る友人。そして、後ろを向く。
「あのさ、あまり幼馴染みだからって。安心してない方が良いよ」
その時、友人が何を言ってるのか、よく分からなかった。
「多分、彼の心はあんたが繋ぎとめてるんだと思うけども。彼、密かに人気あるんだよ」
ただ、いつものような冗談だと思ってた。
「彼の部活のにいるクールな先輩や、可愛い後輩も。彼に興味あるみたいだし」
だから、何で彼女が……小さく震えてるのか。分からなかった。
「何……言ってるの?」
「あんた何ボサッとしてんのよ。女心は複雑って言うけど、男心も複雑よ? 何時、あんたの幼馴染みがどっか行っちゃうか……わかんないわよ!」
だけども、ようやく分かった。
泣いてるんだ。
「あんたにその気があるんなら、もっと、踏みこみなさいよ自分から。でなきゃ……あたしが、馬鹿みたいじゃない!」
「あ……」
そう言うと、友人は走り去った。
「やっほー」
下駄箱前に、君がいたので声をかける。うーん、我ながら妙な条件反射だ。
「あ……」
運動部系の部活を終えた女の子は、風呂上がりみたいで何処か色っぽいなーと思う僕は馬鹿なのかもしれないなぁ。
「とりあえず、終末もとい週末じゃないけど今日は僕んとこでご飯食べるんだっけ。海老フライ作るって言ったら目を輝かせてた君は」
「…………」
「じゃ、帰ろうか。海老の素焼きにしよーと思ってた分をまわせば君の分の海老フライも出来るし……ってあのー、どうかしましたか?」
「あのさ」
歩き出そうとすると、君が声をかけてきた。
「ん? あ、ソース無い事よく覚えててくれたねー。買って帰ろうか」
「…………」
君はただ、複雑な顔をして、僕を見上げるのみ。
「あれ。何か違った?」
「……あのさ。私達……幼馴染みなんだよね」
「何を今更。僕と君の関係がエイリアン&戦う女戦士、もしくは地球侵略を狙う宇宙人&それを歌で追い返す子供じゃないって事ぐらいみんな知ってるでしょ」
うーむ、相変わらず妙な例えだと思う。ここで大概はツッコミが入るんだけども。
「そうだね……」
無反応……。
「あのさ……何か」
「私達、これからどうなるんだろうね」
僕の言葉を遮って、君は歩き出す。
「ずっと側にいて、なんかまるで家族みたいで。……でも、今のままの関係はきっとつづけられないんだろうなって、思うんだ」
その言葉に、僕はぽつりと呟いた。
「え……?」
「ま、なるようになるよ。きっとさ。……ごめんね」
その“ごめんね”は、誰に向けた物だったんだろう。
小さい頃、悪い事をしたらごめんねって謝らないといけないって教えてくれたのは、君だったっけ。
僕が悪い事をしているとしたら……。
「うん。なるように、なるよね……」
この時僕は“幼馴染み”という立場に甘んじる事を選んでいた。
例え、周りがそれでどう思おうと良いと思ってた。だけど、君を苦しめてたなんて知るのは、もっと後の事で。
――ずっと二人で、歩いていけたらいいよね
そんな呟きが、彼女に面と向かって言えたら。
「ほんとに……ごめんね」
便乗して書きたくなって申し訳ありません…。
ライトノベル的に考えるんなら、こういう事もありえるかなー、という妄想から。
>947
オ、オリジナルだ……。まずい、逃げろ!
>948
私が首つるから帰ってきてちょ。別に私の子って訳じゃないんだしぃ。みんなで楽しくいきまひょ。
||
∧||∧
( ⌒ ヽ
∪ ノ
∪∪
>941
うぅ……我侭言って申し訳無い。期待してます。
>950
んだば、新スレよろ
>950
悪い、少し遅れるやもしれん。でも十九時までには仕上げる。
それは俺の意地だし、男が口にした約束だから。
それと、新スレよろしく!
ごめん。あたい、あほやってん。
ほんと、約束の守れない奴なんて最低だよな……。
モロッコ行きのチケット、手に入れてくる……。
>951-953
何時でも良いです〜。
元々は自分の我侭だし……って新スレかよっ!!
……どうにかやってみるので、何か意見、追加があればイマノウチにお願いします。
テンプレ&煽り文作ってくださる方募集中(w 居ない場合は自分で考えます……鬱。
>955
よし、スレ立てだ
>956
悪いけど俺は950じゃない。故に、950を待ちましょう。
もし、立てないようだったら立てても良いけど……。
959 :
イラストに騙された名無しさん:02/06/07 00:50
このスレ、落とさせるにはあまりに惜しい……よってage。
次スレが落ちてしまいました。(涙
>960
ちゃんと寝てますか?
>>963 ありがとうございます。鯖移動は知らなかったもんで、半分マジでした。
晩御飯を食べて、お風呂を済ませる。塾のある土曜日はそれらを終えて部屋で落ち着くのが普段よりも少し遅い。
「よーし、ドラマ、ドラマ」
今日はドラマの最終回だ。この日の為に今まで録画してきたようなものだ。本当はテレビで観たいが、
塾があるので仕方がない。早速準備にとりかかる。……と。
「だああ!失敗してる〜!!」
ナイター中継が延びたせいだった。途中で切れている。
「あ〜、もう、超ブルー」
落ち込んでいる矢先、携帯が鳴った。
――あいつだ。
嫌な予感がした。
「よお、俺だ。明日って暇だよな? 試合があるからさ、いつもの時間にいつもの場所。応援よろしく!」
「――ちょっと、待ちなさ――」
一方的に電話は切られた。
「あ〜もう、どいつもこいつも!」
翌朝、河川敷。冷たい水と温かい弁当をもって少女は現れた。
――1週間に1度しかない日曜日、本当はもっとゆっくり寝ていたいって〜の!
って、毎度毎度、直接頼まれてもいないお弁当を作ってる私も私か……。
少年が少女と出会ってから14年ほど、野球と出会ってから6年半ほどになる。
小学時代はリトルリーグで、中学に入ってからのこの2年半は、学校に野球部がないため、近所の草野球チームで活動していた。
――野球より私のほうが付き合いが長いんだぞ。毎週毎週飽きもせず……。
そこへユニフォーム姿の少年が近づいてくる。
「よ、遅かったな。……っと」
少年は少女から水を取り上げ、一口飲む。
「お〜い、守備練習いくぞー」
監督っぽい人が大声を上げる。
「今行きます! じゃあな。ゆっくりしていけよ」
少年は自分のポジション、レフトにむかった。
むかっ。
――何あの態度? お礼とか言えないワケ? あ〜もう、いっつもこうよ。デリカシーってもんがないのかしら。
少女は更に思う。許せない。もう今日は口聞いてやんない。野球をやるときだけ
誘うなって〜の。次の試合は絶対に行ってなんかやるもんか。
――ほんと、野球って最っ低のスポーツよね。
最終回。少年のチームが1点のリードを守ったまま守備についた。4対3。さっきの攻撃で少年も勝ち越しのタイムリーを放っている。
――このままいけそうね、相手の攻撃は下位打線からだし。しっかしさっきのあいつ、飛ばしたわねー。
なんだかんだ言いながら、彼女は試合に引き込まれていた。
相手チームの8番・9番を抑え、なんなく2アウト。しかしそのすぐ後、安打と四球で二死一・二塁。
少女はスコアブックに目をやる。
――次の人は……げ、今日、2安打1打点じゃないよ。
と思ったのも束の間。そして、快音。打球は――左中間へ。
少女は立ち上がる。あいつのところだ。……追いつけるかはきわどい。2アウトだから、ランナーはスタートを切っている。捕れなかったらサヨナラに――。
無言でボールと少年を目で追う。少年の必死の形相。
真っ白なボール、ただそれだけを本気で追いかけてる。……そして、その眼差し。
――どんなときよりもあいつは輝いてて――。
パシッ……という音が少女の耳にも聞こえた。ゲームセット。
歓声。
――仕方ない、今日は許してやるか。今度の日曜日も晴れるといいね。
整列を見守る少女は笑顔だ。
――ほんと、野球って最っ高のスポーツよね!
……私の逆転負け、か。
本スレが議論気味なのでこっちにこっそりと。
しかし落ちそうで落ちないこのスレは凄い。
実は微妙に完全なオリジナルというわけではないのですが、誰もわからないと思うので
オッケーということで。
本スレでも書いてくれた人だね。
萌えを有難う。
本スレではないとは言え、どんどん書いてもらえたらありがたいです。
私は文がかけるほどの人間ではないので、殆どROMですけど……。
もったいないお化け降臨sage
神様、折れにも幼馴染を下さい。
折れの人生ラスト30年差し出しますから(泣
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止め。