Mail.app part5〜Spotlightで見つけてダーリン〜

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私の名は、メガネ。かつては友引高校に通う平凡な一高校生であり、退屈な日常と戦う下駄書きの生活者であった。
だがあの夜ハイヤーのコクピットから見た衝撃の光景が私の運命を大きく変えてしまった。
ハイヤーであたるの家に強行着陸したその翌日から世界はまるで開き直ったかのようにその装いを変えてしまったのだ。
いつもと同じ町、いつもと同じ角店、いつもと同じ公園。だが、何かが違う。
路上から行き来する車の陰が消え、建て売り住宅の庭先にピアノの音も途絶え、牛丼屋のカウンターであわただしく食事をする人に姿もない。
この町が、いや、世界全体が、我々だけを残しあの懐かしい人々は、忽然とその姿を消してしまったのだ。
数日経ずして、荒廃という名の時が駆け抜けていった。
かくもしずかな、かくもあっけない週末をいったい誰が予想しえたであろうか。
人類が過去数千年に築き上げてきた文明とともに、西暦は終わった。
だが、我々にとって週末は新たな始まりに過ぎない。
世界が終わりを告げたその日から、我々の生き延びるための生活の日々が始まったのである。
奇妙なことにあたるの家近くのコンビニエンスストアは、押し寄せる荒廃をもろともせずその融資をとどめ食料品、
日常雑貨等の豊富なストックを誇っていた。
さらに奇妙なことに、あたるの家には水道、電気、ガスが依然として供給され続け、
驚くべき事に新聞すら配達されてくるのである。当然、我々はあたるの家を生活の拠点と定めた。
しかし、サクラ先生は、早々に牛丼屋「はらたま」をオープン。自活を宣言。そして竜之介親子も学校後に浜茶屋をオープン。
そして、面堂は・・・、日がな一日戦車を乗り回す。恐らく欲求不満の解消であろう。時より発砲を繰り返す。何が不満なのか知らんが、実に可愛くない。
あの運命の夜からそれほどの歳月が流れたのか。しかし、今の我々には時計もカレンダーも不要だ。
我々は、衣食住を保証されたサバイバルを生き抜き、かつていかなる先達達もなしえなかった夢を、あの永遠のシャングリラを実現するだろう。
ああ、恍惚と不安ともに我にあり。人類の未来がひとえに我々の双肩にかかっていることを認識するときめまいにも似た感想を禁じ得ない。
友引全史第一巻「週末を越えて」序説第3章より抜粋。