大震災の後に出会った女の子

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796恋する名無しさん:2014/03/12(水) 18:30:00.16
見てるぞ
797まさはる:2014/03/13(木) 01:32:52.49
>>769
ありがとう。亀の歩みですが、見てやってくださいなw

つづきを

おいらの風邪は、強靭な肉体とシャケちゃんの看病が相まって、すっかり良くなっていた。
寝ているシャケちゃんを起こさない様に体を起こし、熱を測ってみると36度7分であった。
ただ、咳だけは残っていて、コンッコンッと咳が出ていた。
それにしても、シャケちゃんの寝顔寝姿は良いもので、おいらは改めて惚れ直してしまった。
そして「この子はいいお嫁さんになるだろうな」と、自分の彼女なのに、
そんな悲しい思いを持ってしまった。
出来る事ならこのままずっと時は過ぎないでほしい、そんな思いを持ちながらシャケちゃんに見惚れていると、
おいらの視線を感じたのか、シャケちゃんが目を覚ます。
「おはよ」
「あ、マーちゃん起きてたんだ、おはよ。んで、具合どう?」
「おかげさまで良くなったよ」
おいらがそう言って、自分の体の状態の事を教えてやると、シャケちゃんは殊のほか喜んでくれた。
シャケちゃんはこういう事がしたくて、看護師さんになろうとしているのかな、などと思う。
具合の良くなったおいらは、朝ご飯をチャチャット作って二人で食べる。
この日は大事を取ってお盆休みにしてあったので、具合がよくなって調子に乗ったおいらは、
この後二人でイガでもどうだろう?と思って、その事をシャケちゃんに話すと、
「ダメっ。あたしも今日は用事あるし、マーちゃんは今日は一日寝てなきゃだめです」
と、叱られてしまった。
798恋する名無しさん:2014/03/13(木) 09:38:53.77
来れないときもあるけど、ずっと見てるよ
ましゃは宣言しないと寂しがるからねー

で、イガってなに
799まさはる:2014/03/14(金) 01:07:19.56
>>798
見てくれてるのね。ありがと。
エガって・・・ミスったw映画です。

ちょっとだけつづき

しっかり者の若い嫁に、その尻に敷かれるバカ亭主みたいだな、と思うとおかしかったが、
笑った後に寂しさに襲われ、冷めた感じの笑いが出る。
「何笑ってるの?」
シャケちゃんは不思議そうな顔をする。それに、おいらはありのままを答えられるはずもなく、
「ちょっと思い出し笑い」
と、とぼけた。
朝飯を食べ終えると、シャケちゃんは用事があるとの事で、薬とレットブルと
「ちゃんと寝てないとだめだからね」
と言う言葉を残して、家に帰っていった。

あまりにちょっとなので、名曲でも
http://youtu.be/9Q7Vr3yQYWQ
800まさはる:2014/03/16(日) 00:34:58.70
つづきを

おいらはシャケちゃんに、
「ちゃんと寝てないとダメだかんね。絶対ぶり返すから。風邪は万病の元なんだかんね」
と、きつく言われていたので、たかが風邪とバカにしないで、その日は一日、
事務所のベットでゴロゴロと過ごした。
するとどうだろう、おいらの風邪はシャケちゃんの心遣い等々で、ほぼ完璧に治った。
ただ、乾いた感じの咳だけが残った。
その事に関して後日出勤してきたシャケちゃんは、
「マーちゃんはタバコの吸いすぎでのどが荒れてるんじゃない?」
と、いう。
「うん?そうなのかな」
「これを機会に、良い事なんてないんだから、マーちゃんはタバコやめなきゃダメです」
シャケちゃんは両手を腰に当てて、そう言う。
おいらはその怒られている様な、注意されている様な感じが、
また尻に敷かれている感じがして可笑しかった。
確かに、おいらは少々タバコの吸いすぎな感はあった。シャケちゃんの言うとおり、
喉でも荒れているのか、タバコがあまり旨くない。
しかし、そんなことはそのうち治るだろうと、全く気にしなかった。
おいらは両親に、
「あんたは喉が弱い」
と、小さい時から聞かされていたので、そのせいもあって咳がずっと出続けるのかな、と思って、全く気にしないでいいた。何日たっても咳が治まらなかったのだ。
が、おいらが気にしていなくてもおいらを気に掛けてくれる、シャケちゃんだったりパチ子だったり、
友人や両親が、口々に「おかしいよ」という事を口にした。
801恋する名無しさん:2014/03/18(火) 09:56:33.11
もしや悪い展開?
802まさはる:2014/03/18(火) 12:18:04.08
>>801
それはちょっと・・・お楽しみということでw

続き↓
「マーちゃん、お医者さん行かなきゃダメだよ」
中でも、シャケちゃんの声は悲痛だった。
おいらはありがたい事だと思いつつも、みんな大げさだなぁ。症状悪くなる様だったら、
医者行こう、と軽く考えていた。が、シャケちゃんの悲痛な声、友人らの言葉を聞いていると、
だんだんと不安になってくる。
九月の初め、おいらは友人の森ちゃんの先輩と会っていた。
それを遡る事一週間ほど前、おいらは友人の森ちゃんとお酒を飲む機会があった。
獣医をしている森ちゃんの持論は、
「動物も人間も同じ病気にかかる」
と言う物だった。その事だけではないだろうが、森ちゃんはやたらと病気の事に詳しい。
「聞いてたけど、ほんと変な咳するな」
森ちゃんはそう言って、思う事があるのだろう、色々な事を聞いてくる。
咳はよく出るのか?痰は出るか?それに血は混じるか?などなど一通り聞いた後、
「最近、痩せたよな」
と言って、表情が浮かない。森ちゃんは友人だ。どういう事を想っているのか、
手に取るように解る。おいらは不安に襲われた。
「早く医者行け」
その断定的な口調に、おいらは更に不安になる。たいして具合も悪くないだろうと思うのに、
識者に医者に行けと言われるのがこんなにも怖いものなのかと、おいらはその時思い知った。
「え?大丈夫でしょ。どこも痛くないし」
出来る事なら医者など行きたくはない。不安で不安でたまらないおいらからはそんな言葉が出てしまう。
そこは友人である。森ちゃんはおいらの不安などは見通していて、うん?とちょっと考えると、
「俺の先輩に内科医が居るんだわ。それだったら、少しは気が楽だろ。
良く話しておいてやるから行って来いよ」
森ちゃんはおいらの住む地区では最も優柔な高校に行っており、その時の先輩で、
東京で内科医をしている先輩を紹介してくれるというのだ。
おいらは事の大きさに、更に不安が増したが、友人のありがたい申し出だ。
こんないい話、断れないし断るわけもない。
「うん。ありがとう。ほんと助かるよ」
そういう経緯があって、森ちゃんの先輩と会ったのだ。
803まさはる:2014/03/19(水) 02:04:33.00
つづきをば

先生は椎名桔平似な天は二物与えた様なイイ男なので、桔平先生とする。
桔平先生は、都内のとある大きな総合病院の呼吸器科のドクターであった。
桔平先生は色々と気を使ってくれ、何度も来るのは大変だろうからと、一泊の検査入院。
森ちゃんとほぼ同じ事を聞いた問診から始まり、詳しく調べちゃいましょうという事で、
一時検診を飛ばしてCTとPETなど.。
bronchogenic carcinoma
気管支原性癌
T1b
N0
M0
さまざまな検査をした結果が上記のとおりだ。つまり、転移していない、所謂初期の肺がん。
おいらは森ちゃんの様子を見て、多少こういう事を覚悟してはいたが、改めて医師の口から
病名を告げられると、絶望した。
おいらは自分の祖父がガンと分かって、そこから急激に弱って死んでいったのをつぶさに見ているのだ。
桔平先生は絶望して呆然としているおいらに、
「今の医学なら十分治りますから、そんなに気を落とさないでいいですよ」
と、声をかけてくれたが、絶望は絶望のままだった。
804恋する名無しさん:2014/03/19(水) 05:31:51.36
うむ。見てるぞ。
805恋する名無しさん:2014/03/20(木) 01:13:30.39
うわーっ
マーくんが今書き込んでる場所ってもしかして
そんな悲しい話だったらヤダ
806まさはる:2014/03/21(金) 01:11:07.69
>>804
見てくれてるのね。ありがとう。
>>805
ネタ晴らしはできんw

ほんと少しだけつづき
さらにおいらを絶望させたのは、手術が難しい位置に病巣があるという事だった。
「抗がん剤に放射線を合わせれば、完治も難しくありません」
桔平先生はそう言い切ったが、その時のおいらには、ただの気休めにしか聞こえなかった。
「ただ、福山君はこちらへ通うのは難しいだろうから、○○病院知ってるでしょ?
あそこに私の後輩が週2で行っているから、紹介しましょう」
○○病院とは桔平先生の地元の病院で、おいらも全然通える距離の病院であった。
そこで嘱託医をしている優秀な後輩が居るので、」紹介してくれるのだという。
おいらはそう言うありがたい話を、上の空で聞いていた。自分のこれからを思っていたのだ。
自分のこれからの事を考えた時に、真っ先に浮かんだのがシャケちゃんの事だったので、
シャケちゃんの事を考えていたと言った方が良いかもしれない。
807まさはる:2014/03/22(土) 01:18:57.10
つづき

おいらの頭の中で、シャケちゃんと出会ってからの事が走馬灯のように甦っていく。
バイトの面接に来て、緊張して「あのあの」と言っていた事。
シャケの親子丼を食べて泣き出してしまった事。
バービーちゃんと一緒に三人で買い物をしたこと。
いわきに一緒に物資を届けに行った事。瞬く間にそれらの事が浮かんでくる。
そしておいらの頭に自分の気持ちを伝えた手紙を思い出した時、走馬灯のように
甦った思い出が、その歩みを止める。
以下が、おいらが気持ちを伝えた手紙の元ネタとなる有名なコピペの全文だ。

どうして私がいつもダイエットしてる時に(・∀・)ニヤニヤと見つめやがりますか(゚Д゚)ゴルァ!
どうして私が悪いのにケンカになると先に謝りますか(゚Д゚)ゴルァ!
どうしてお小遣減らしたのに文句一つ言いませんか(゚Д゚)ゴルァ!
どうして交代でやる約束した洗濯をし忘れたのに怒りませんか(゚Д゚)ゴルァ!
どうして子供が出来ないのは私のせいなのに謝りますか(゚Д゚)ゴルァ!
どうして自分が体調悪い時は大丈夫だと私を突き放して私が倒れると会社休んでまで看病しますか(゚Д゚)ゴルァ!

どうして妻の私に心配掛けたくなかったからと病気の事を隠しますか(゚Д゚)ゴルァ!
おまけにもって半年とはどう言う事ですか(゚Д゚)ゴルァ!
長期出張だと嘘言って知らない間に手術受けて助からないとはどう言う事ですか(゚Д゚)ゴルァ!
病院で俺の事は忘れていい男見つけろとはどう言う事ですか(゚Д゚)ゴルァ!
こっちの気持ちは無視ですか(゚Д゚)ゴルァ!
正直、あんた以上のお人よしで優しい男なんか居ませんよ(゚Д゚)ゴルァ!
それと私みたいな女嫁にすんのはあんた位ですよ(゚Д゚)ゴルァ!

もう一つ言い忘れてましたが私、お腹に赤ちゃん出来たんですよ(゚Д゚)ゴルァ!
あんたの子供なのに何で生きられないのですか(゚Д゚)ゴルァ!
そんな状態じゃ言い出せ無いじゃないですか(゚Д゚)ゴルァ!
それでも言わない訳にはいかないから思い切って言ったら大喜びで私を抱きしめますか(゚Д゚)ゴルァ!
生まれる頃にはあんたはこの世にいないんですよ(゚Д゚)ゴルァ!
元気な子だといいなぁってあんた自分の事は蔑ろですか(゚Д゚)ゴルァ!
病院で周りの患者さんや看護婦さんに何自慢してやがりますか(゚Д゚)ゴルァ!
病気で苦しいはずなのに何で姓名判断の本で名前を考えてやがりますか(゚Д゚)ゴルァ!
どうして側に居てあげたいのに一人の身体じゃ無いんだからと家に帰そうとしますか(゚Д゚)ゴルァ!
どうしていつも自分の事は二の次何ですか(゚Д゚)ゴルァ!
医者からいよいよダメだと言われ泣いてる私に大丈夫だよとバレバレの慰めを言いますか(゚Д゚)ゴルァ!
こっちはあんたとこれからも生きて行きたいんですよ(゚Д゚)ゴルァ!
それがもうすぐ終わってしまうんですよ(゚Д゚)ゴルァ!
バカやって泣きそうな私を包んでくれるあんたが居なくなるんですよ(゚Д゚)ゴルァ!
忘れろと言われても忘れられる訳ないでしょ(゚Д゚)ゴルァ!
死ぬ一週間前に俺みたいな奴と一緒になってくれてありがとなですか、そうですか(゚Д゚)ゴルァ!
こっちがお礼を言わないといけないのに何も言えず泣いちまったじゃないですか(゚Д゚)ゴルァ!
あんなに苦しそうだったのに最後は私の手を握りしめて逝きやがりましたね(゚Д゚)ゴルァ!
何で死に顔まで微笑みやがりますか(゚Д゚)ゴルァ!(゚Д゚)ゴルァ!(゚Д゚)ゴルァ!
そんなのは良いから起きて下さい(゚Д゚)ゴルァ!
生まれてくる子供を抱いて下さい(゚Д゚)ゴルァ!
子供に微笑みかけて下さい(゚Д゚)ゴルァ!
たのむから神様何とかして下さい(゚Д゚)ゴルァ!
ダメ女な私にこの先一人で子供を育てろと言いやがりますか(゚Д゚)ゴルァ!

そんなあんたが死んで5ヶ月...
子供が生まれましたよ(゚Д゚)ゴルァ!
元気な女の子ですよ(゚Д゚)ゴルァ!
808まさはる:2014/03/22(土) 01:20:04.35
目元はあんたにそっくりですよ(゚Д゚)ゴルァ!
どこかで見てますか(゚Д゚)ゴルァ!
私はこの子と何とか生きてますよ(゚Д゚)ゴルァ!
あんたも遠くから見守って居てください。


何かしらの事情があって、福島へ帰らなくなったら・・・踏み台になると心に決めたとはいえ、
少なからずそういう気持ちはあった。が、そういう気持ちは持てなくなった。自分は
肺がんなのだと分かった今、手紙の元ネタの様になる可能性は高い。シャケちゃんを不幸にしかしないのだ。
シャケちゃんは若い。若さゆえの暴走があるかもしれない。おいらはシャケちゃんに病気の事は伏せ、
踏み台になるのだと決心した。
809恋する名無しさん:2014/03/22(土) 22:21:33.31
・゜・(ノД`)・゜・。
治ったとしても10代の女の子に癌経歴のあるオサーンはキツイな
810まさはる:2014/03/24(月) 01:12:15.43
>>809
間違いなくきついですね…

すこし続き
桔平先生は大変良くしてくれて、おいらは紹介状を書いてもらい、さらには直接電話までしてもらった。
つくづく友人と言うのはありがたいもので、森ちゃんが居なかったらと思うと恐ろしい。
自分の性格を考えると、そうとうガンが進行してから病院へ行っていたかもしれない。
無駄に自分の体に自信を持っていたのだ。
帰りの車中、おいらは、自分はあとどのくらい生きれるんだろう?そんなに長くは無いんじゃないか?
と、絶望しながらも、どうすればシャケちゃんが明るく希望に向かって進んでくれるだろう、
と考えたが、どうすればいいのか全く見当がつかなかった。シャケちゃんは以前、
元彼に裏切られる様な事があって、引きこもりがちになった。また、先日のおいらの浮気の疑いがかかった時の気持ちの落ち方。メンタルがあまり強い子ではないのだ。
おいらはシャケちゃんに、明るく希望を持っていてほしかった。そして嫌われることなく、
嫌な思いをさせることもなく、おいらの元から羽ばたいて行ってほしいと思ったが、
難しい話であった。
ともあれ、気持ちが落ちていたおいらは、何をどうしたらいいのか思いつかないまま
地元まで帰ってくる。
そしてその足で、森ちゃんの動物病院へ向かった。例と報告と、口止めだ。
811まさはる:2014/03/26(水) 01:13:34.86
すこし続きを

正直なところ、おいらは森ちゃんにも検査の結果を話す事は気が引けた。
TVとかの病気の告白等々を見ていると、可愛そうな人扱いを受けるだろうと思われる。
自分が病気と分かって分かったのだが、そういう扱いを受けるのは、あまり気持ちのいいものではないだろう。
しかし、そんなことは言ってられない。森ちゃんのおかげで病気が分かったのだ。
動物病院を訪ねると幸い患者はおらず、森ちゃんは暇を持て余してか、最近ハマっているゴルフの素振りをしていた。
森ちゃんは真顔になっていたわけだが、おいらの顔を見ると、いつもならばニコッとしてくれるのだが、
眉間にしわを寄せてハッとした様な顔をした。
「福山、結果どうだった?」
開口一番、森ちゃんは挨拶もなしにそう聞いた。それだけ気にしてくれているのだ。
「うん…初期の肺がんだって」
おいらがそう言うと、それを予想していたのだろう、驚くことは無かったが、
絶望した様な顔になる。
おいらはその表情と自分の病気の事を口にしたことで、急に怖くなった。
そして、森ちゃんを心配させないため、自分がその恐怖から逃れるためだろう、
おいらは自分のがんが初期で、抗がん剤と放射線で行けるでしょう、と言われたことを
ぺらぺらと話して聞かせた。そして最後に
「あのさ、この事は仲間内だけで人に話さないでほしいんだ。特にシャケちゃんには知られたくない」
そう付け加えた。
すると、それを聞いた森ちゃんは「ん?」という顔をする。
「前から考えてたんだけど、シャケちゃんと別れようかなって。つか、ガンとかってなったら、
別れないとダメでしょ。人生狂わせそうだもの」
おいらがそう言うと、悲しい笑顔を見せる。
これもこれで、その事を口にすると実感がわいて悲しくてたまらなくなった。
「辛いな」
これにはおいらも、悲しく笑うしかなかった。
812恋する名無しさん:2014/03/26(水) 21:37:53.69
実は書き込んでいるのはシャケちゃんという予想
813まさはる:2014/03/28(金) 01:20:51.32
>>812
なんでそんな風に思うんだ?w


つづきを

森ちゃんに報告を終えると、今度はシャケちゃんに報告。
森ちゃんの紹介で、東京の病院で検査を受けることになったと分かった時、シャケちゃんは
気をもんで気をもんで、鬱陶しく思えてしまうぐらいだったのだ。それで、返ってきたら
連絡をすることになっていたのだ。
おいらはシャケちゃんに連絡する前に、まずお店へ向かう。そして事務所でPCを開いてgoogle先生にお伺いを立てる。
おいらは病気の事にはまるっきり疎いのだ。
そしておいらのその症状などから咳喘息と言う病名をお教えいただき、おいらはシャケちゃんに電話をする。
「もしもし、今帰ってきた」
気持ちとは裏腹に、おいらは弾んだ偽りの声を出す。その声で少しは落ち着いたとは思うのだが、
シャケちゃんの声が緊張している。
「おつかれさま。そ、それでどうだった?」
そしておいらは約束してから幾日も経たないうちに約束を破った。
「うん。どうも咳喘息ってやつみたい。気にして損した」
おいらは嘘はつかないという約束を破ったのだ。
「咳喘息も大変だけど、もっと悪い病気じゃなくて良かったね」
シャケちゃんの声は電話を通しても明るくなっていくのがよく解る。
「よかったね。うんうん。ほんとよかった。」
明るくなった声と安どの言葉が、グサリグサリとつきさるように心が痛かった。
「森ちゃんが脅かすんだもん、なんてことなくてよかったよ」
自分のウソも、また心に痛い。あまりに痛くて気持ちが折れて、
洗いざらいすべてぶちまけたい気持ちになるが、あのコピペを思い出して思いとどまる。
おれはシャケちゃんを不幸にしたいのか?悲しませたいのか?いや違う。
電話で話しながらの自問自答。
「じゃーね、また明日」
「うん、また明日」
電話を切った途端、涙が出た。
814恋する名無しさん:2014/03/30(日) 09:09:24.23
うむ、切ない。
815まさはる:2014/03/31(月) 01:30:33.53
>>814
切ないですか。
こういう話嫌いじゃなければ幸いです

つづきを
森ちゃんとシャケちゃんだけではなく、親兄弟、気をもんでくれた親しい友人に話さねばならなかった。
これがまた辛く、泣かれたり心配されたり大変であった。
おいらがガンと分かって、周りに迷惑やら心配やらをかけ、自分もガンと言う病気に恐怖したのだが、
桔平先生に処方してもらった咳を止める薬が良く効き、体調も悪いということは無かったので、
表面上は病気だか何だか分からなくなった。
○○病院の予約は一週間後。そこで治療方針やらいろいろ決まる。
それまでは仕事は少し楽になるようにするが、これまで通りの予定だ。
「仕事であまり無理をしない様に」
桔平先生の言葉なのだが、これまで通りが無理をしているかどうか分からないが、
それをなかなか出来ないのが個人自営業者である。
翌朝、おいらはいつも通りお店で仕事を始めた。そして、いつもの様にパチ子が納品にやって来る。
「こんにちわー○○ミートです」
おいらはこの時も、まだパチ子には病気の事を話すべきか話さざるべきか迷っていた。
宮内親子にウソを突き通すのか?パチ子には事の真相を教えて、別れなきゃいけない理由を知ってもらって楽になるか、どうするのが良いのか、どうすればシャケちゃんを苦しませないか自分も苦しまないか、
訳が分からなくなっていた。
しかしパチ子はもう目の前にいる。
「おはよっ。聞いたよ。良かったねぇ、大したことないみたいでさ」
おいらはそう言われて、返事に困って固まってしまった。自分ではわからないだろうが、
返事が出来なくてワナワナしていただろう。
「ん?どうした?」
それでも返答が出来ないおいらはどんな顔をしたのか分からないが、おいらが解りやすいのか、
果てまた年の功なのか、パチ子はおいらが明らかにおかしいという事に感づく。
「福山、あんた本当は違うのか…」
こうなると、おいらはもう話さざるを得なかった。
「あのさ…シャケちゃんには言わないって約束してほしいんだけど、いい?」
これは大事な話なのだ。これまでパチ子に見せたこともない様な真剣な顔になっていただろう。
パチ子も生唾でも飲む様な顔になると、ウンウンと頷く。
「分かった」
おいらはその言葉を聞くと、ありのままを話す。
すると、パチ子の顔はみるみる強張っていく。まさか、と言った感じだ。かと思うと、
悲しいか顔をおいらに向ける。
「福山…」
おいらは言葉を続ける。
「おれさ、こんなんなっちゃったからってのもあるし、シャケちゃんと別れようと思う。
でさ、この事は知らない方が良いと思うんだ。内緒にしてね」
おいらはその気持ちの裏返しか、変に明るくそんなことを言ったが、実際は涙をこらえるのが大変だった。
816まさはる:2014/04/02(水) 01:38:51.23
つづきをすこし

おいらはその後の言葉が続かず、なんだか分からないが笑ってしまう。
すると、パチ子は嘆く様にため息をつくと、何か言いたげにワナワナする。
しかし言葉に詰まったのか、パチ子の口からは言葉が出てこない。
そんなパチ子を見ると、これまであった色々な事が思い返される。
「ごめんね、おれ、シャケちゃん泣かしちゃうと思う」
泣かすなよ、おいらはそうパチ子に言われたことを思い出すと、そんな言葉が出た。
パチ子はそれを聞くと、つらそうな面持ちとなってポロッと涙を見せると、首を振って否定する。
「そんな事より、自分の体のこと心配してよ」
パチ子のその悲痛な声を聴くと、おいらもさらに辛くなった。
その後、おいらとパチ子は何も話なせなかった。
「絶対よくなるから。また一緒に飲むんだからな」
帰り際、パチ子はおいらに声をかける。
「おう」
少々ぶっきらぼうで優しい言葉が身に染みた。
その日は夕方になるとシャケちゃんが出勤してくる。
健気に働き、ニコニコしているシャケちゃんを見て、この先自分が仕様としている事を思うと、
心が痛んだ。
いつも通り仕事をこなし、仕事の後の二人の時間。シャケちゃんは冷たい麦茶を用意して
事務所で待っていた。
817まさはる:2014/04/04(金) 01:28:22.10
つづきを

「お疲れ様。良かったね、マーちゃん。大したことなくて」
開口一番、シャケちゃんはニッコリ笑ってそう言った。当然、おいらの言葉を信じて、
全く疑っていない様子。
おいらはその無垢な感じに強い罪悪感を覚え、
「あ、ああ、うん」
と、はっきりと返事が出来ない。非常に分かりやすく、おいらはマズイバレると思ったのだが、
何処までも無垢なシャケちゃんは、その事に一向に気付く様子は無く、
「あ、マーちゃん、タバコはもうダメだかんね。ほんとに悪い病気になっちゃう」
と、真顔になって言っている。おいらは半端ではない罪悪感を感じると同時に、
どう別れたらシャケちゃんの傷が少ないか、それがわからないでいるおいらは、
ちゃんと別れを実行に移せるのかどうか、不安になった。
その後、おいらの身を案じて、シャケちゃんは一頻りタバコの害についてあれこれ話をすると、
話が飛んで急に友達の話になった。
「あ、そういえばさ、あゆみちゃんに彼氏で来たんだよ」
「ええっ、ほんとに?」
ちょっと驚いて、そんな声を上げてしまった。
あゆみちゃんとは少々お話したことがあるのだが、典型的な真面目ちゃんの眼鏡っ子。
彼氏と言うより、勉学と言った感じの子であった。
「もうね、コンタクトにしたり、すっごい可愛くなったよ」
「あゆみちゃんも女の子だねーよかったねー」
病気をしたからなのだろうか?人の幸せな話を聞くと、やたらと嬉しくなる。
「眉整えちゃってるし、お化粧ばっちりだし」
シャケちゃんもそれがうれしい様で、うふふとやっている。
おいらは、お前もなーなどと思ったがそれは口に出さなかった。
「ほんとよかったねー」
そんな話をしたからなのだろう、おいらを指でつついたりして来る。
やっぱり可愛くいじらしい。おいらはそう感じると、逆に気持ちが覚めて行った。
可愛ければ可愛いほど、おいらは何もできなくなった。
818まさはる:2014/04/06(日) 00:45:13.86
つづき

その日は何もしないまま、シャケちゃんの気持ちを受け入れず、アパートまで送り届けて終わった。
「じゃーね」
別れ際、シャケちゃんは寂しい様な不安な様な顔を見せる。
これまで、おいらはシャケちゃんのそういう気持ちを汲み取らないことは無かった。
また、おいらは年甲斐もなくがっついていたと思うので、これまでであったらこんな事はあり得ない話だったのだ。
お互い好きなもの同士、シャケちゃんも悲しかったであろうが、おいらも悲しかった。
翌日もシャケちゃんは出勤日。いつも通り出勤してきて、明るく振る舞い、イソイソと健気に働く。
いつもとなんら変わらない。ただいつもと違うのは、おいらのシャケちゃんを見る目だ。
おいらに向けられる笑顔、イソイソと働く姿、ちょっと考え事でもあるのか、物思いにふける姿、
おいらはシャケちゃんを見ているのが辛かった。
それだけでも辛いのに、シャケちゃんは麦茶を用意しておいらの仕事の終わりを待っている。
「おつかれさまー」
いつもの様に、はいと冷たい麦茶が出てくる。
「おつかれー」
「今日はマーちゃん忙しくて大変だったね。そういえば、忙しくても咳でなくなってよかったね」
言われてみると、おいらは忙しい時に限って咳き込んでいた気がする。シャケちゃんはよく見ていたのだ。
心遣いと優しい言葉が、身に染みるほどありがたく嬉しいが、その分だけ辛い。
その日も、シャケちゃんは友達の恋愛話をして、おいらをつついたりして意思表示をする。
が、おいらはまたそれを知らんふりする。その気持ちをくみ取ってやりたい気持ちはあれど、
出来ないものは出来ないのだ。
帰り道、シャケちゃんは言葉少なだった。ほぼ無言でトボトボと二人で歩く。
そして、アパートまであと少しと言ったところで、シャケちゃんが口を開いた。
「まーちゃん、何かあった?なんか冷たい…」
「え?そうかな…何もないけど」
おいらはまたウソをついた。寂しげな暗い顔をするシャケちゃんに、おいらは心の中で
「ごめんなさいごめんなさい」
と、つぶやくことしか出来なかった。
819恋する名無しさん:2014/04/06(日) 23:27:38.21
病状は酷く無いのに流れうつすぎる
まーくんは保険入ってたの?
820まさはる:2014/04/07(月) 01:28:27.73
>>819
親しい友人に保険屋さんがおりましてね。付き合いもあり、これ以上は言わないにしますうw

マジで少しだけつづき

そのまた翌日、シャケちゃんは休みで顔を合わせることは無かったが、仕事が終わった頃に
メールが入る。
これもいつもと変わりない。シャケちゃんは休みの時、必ずおいらが仕事が終わった時間を見計らって
メールを入れてくる。
いつも決まって、マーちゃんお疲れ様―から文面は始まり、今日は○○してきた―と言った感じで続く。
仕事終わりの二人の時間に話している事がメールになっただけだ。
その日は今日は友達とご飯食べてきた―と書かれていた。
これまで通りなら、お、どこで食べてきたのー、とでもすぐに返信するのだが、
おいらは返信しなかった。いつもと違って返信が来ない事をシャケちゃんはどう思っているのか、
それを考えると胸が痛かった。
こんな事を続けてはいけない、そう思えど、何をどうしたらシャケちゃんを傷つけないで済むか、
おいらはいくら頭を悩ませても思い浮かばなかった。
821恋する名無しさん:2014/04/07(月) 10:45:12.57
どう言ってもキズ付かない方法はないと思う
正直に伝えたほうがお互いにとって最小限のキズだと思います

お互い乗り越えられれば、そのキズはキズナに代わると思いますよ
822まさはる:2014/04/10(木) 00:33:46.94
>>821
マジレスありがと。
ちょっと心が痛いです。
実話じゃないので・・

その話の続き

こんな事を続けてはいけない、そう思えど、何をどうしたらシャケちゃんを傷つけないで済むか、
おいらはいくら頭を悩ませても思い浮かばなかった。
その日はその後もシャケちゃんからはメールや電話などは無かった。
その翌日、いつもの様にパチ子は納品にやって来る。
「こんにちわー○○ミートです」
いつもならばパチ子はおいらの姿を見て、「よっ」と手をあげて笑うのだが、
その日もパチ子は手を挙げて「よっ」と笑うが、悲しい作り笑いだった。
「よっ」
おいらもあいさつを返すが、やっぱり普通に笑えない。さらに、おいらは何を話したらいいか分からなかった。
それはパチ子も同じな様で、パチ子も悲しい顔を崩さないまま口を開かない。
重い空気は流れるが、気まずいということは無かった。
パチ子は友達だというのに、何を話したらいいのか考え、探してしまう。それはパチ子も同じだったかもしれない。
先にそれを見つけたのはパチ子の方だった。
「福山、仕事してて大丈夫なの?」
「うん。無理しなきゃ大丈夫」
おいらはそんなことを言いながら、どうしても作り笑いをしてしまう。
それが痛々しいのか、パチ子は更に顔を強ばらせると、
「そっか。ならいいんだけど…でさ、シャケの事なんだけど…」
と、お互い話したかったが触れずらかったことに言及した。
「うん」
「あの子ちょっと弱いとこあったから、福山はそれ心配してるんだろうけど、
もう大丈夫だから。だから、お願いだから福山は自分の心配して」
シャケちゃんはここ数日のおいらの事を話しているのだろう、そんな事を言った。
しかし、シャケちゃんの気の落ち方を見ていると、
「う、うん」
と、返事に迷った。おいらはよくは知らないが、福島にいた頃は引きこもりがちだったと言う
シャケちゃんに戻ってほしくなかった。その原因を作ったのは彼氏だったのだ。
しかし、おいらにはシャケちゃんがそうならないための具体的な案が無い。
おいらは下を俯いて、もう何度も何度も考えた同じ事を考えてしまう。
もし願いがかなうならば、シャケちゃんと付き合っていきたいが、それはかなわない。
ならば、願うのはシャケちゃんの幸せだ。
なら、別れた方が良いに決まっている。元々年の差がありすぎなうえに、おいらはガンという病気を患ってしまった。
将来の夢を持ったこれからの女の子と付き合っていいわけがない。
若い子は突っ走りがちだ。自分が楽になりたいが為、ぶっちゃけて病気の事など話せば、
ともすれば、おいらはシャケちゃんの夢や未来を奪わないとも限らない。
それはおいらの望むところではない。
では、どう別れたらいいか?おいらは出来るだけシャケちゃんを傷つけたくない。
だが、それがわからない。いくら考えても解らない。考えても考えても考えても、分からなかった。
どれくらい考え込んだだろう、ふとパチ子を見ると、パチ子はつらそうな顔をしていた。
それはおいらもまた同じ様で、
「そんな苦しむなよ」
と、パチ子は言う。かと思うと、パチ子はフッと笑うと、
「元気出せよ」
と言って、おいらをバシッと叩いた。
823恋する名無しさん:2014/04/10(木) 07:53:43.01
実話じゃない
824まさはる:2014/04/12(土) 06:15:35.65
すこし続きを

実にパチ子らしい、男っぽい様な少々ぶっきらぼうな優しい心遣いがありがたい。
おいらは少し気持ちが楽になった。
とは言え、何も解決はしていない。
だが、焦りの様な苦痛なプレッシャーはだいぶ消えた。
それにしても、幸せを作るのは困難があっても楽しいものなのに、
幸せなのに、幸せでいたいのに、まだ幸せでいられるのに、その関係を壊さなければならない。
その困難は非常に苦しいものであると、頭では分かっていたが、しみじみと思い知った。
おいらはフラれた経験はごまんとあるのでわかるが、フラれた方が遥かに楽だった。
そうは言っても、現実は思う様にはならない。好きなのに、好いてくれているのに、
顔を見るのが辛く、顔を合わせたくないとは思っていても、その時は一分は一分だけ正確に時は刻まれていく。
シャケちゃんは出勤日なのだ。
825まさはる:2014/04/14(月) 01:15:38.99
つづきを

おいらは例のコピペを思い返す。仕事をしながらでも、何度も何度も思い返す。
そして、これまで何度も出した同じ結論を出し、自分に言い聞かせる。
今、自分が望むことはシャケちゃんの幸せだ。ならば、今は辛いだろうが、別れた方が彼女は幸せになると。
夕方になり、パートのおばちゃんたちに交じってシャケちゃんも出勤してくる。
ここ数日の事があってか、シャケちゃんの顔は暗かった。
その日は日曜という事もあって忙しく、仕事に追われた。
それでも、おいらはシャケちゃんを知らず知らずの内に目で追ってしまう。
忙しい中、何度か目があったが、目があってもシャケちゃんは目を伏せてしまう。
シャケちゃんはこれからおいらが何をしようとしているのか、分かっている様だった。
シャケちゃんも辛いのがよく解る。
「ごめんな、どう考えてもこうするのが一番なんだ」
その都度、おいらは懺悔の気持ちで心の中でそう呟く。
そう懺悔したところで、シャケちゃんの辛さは癒されないのは分かっていても、
そうすること以外出来なかった。
仕事は忙しく、感傷に浸っているどころではなく、瞬く間に時は過ぎた。
店の片付けが終わると、パートのおばちゃんたちが上がっていく。シャケちゃんも一緒だ。
いつもならシャケちゃんは着替え等をすますと、事務所でおいらを待っていてくれるのだが、
その日は違った。
「お先に失礼します」
と、おばちゃんたちが家路につく。その中にシャケちゃんの姿もあったのだ。
シャケちゃんは伏し目がちにチラリチラリとおいらを見、目を泳がせながら
挨拶もせず、おいらから逃げる様に店を後にしてしまった。
その様子が挙動不審と言うか、気を病んでしまった者の様な感じだった。
「ごめんな、ごめんな」
おいらはまた懺悔する。しかし、いくら懺悔しても懺悔しても、気持ちが落ち着くことは無かった。
826恋する名無しさん:2014/04/14(月) 17:40:20.18
【勝手連・速報】

例の三陸の方・旅館 文金高島田?来て遣るらしい件に関して

職員と役場ボランティア 瓦礫拾いの人とか来たい人来ての方向 ナイト海でバーベキュー遣るしい。

他に福島原発デモ、七ヶ浜国際村や渡波辺りの人もゴールイン 今、被災地・地婚や入籍11日とか多い。
827恋する名無しさん:2014/04/14(月) 17:46:37.90
被災地ってマンパワーってか愛を感じる。触れ込みまた自主 

名前を聞かなかったけど、聞いたら出版関係の方、拘置所婚もある。
828恋する名無しさん:2014/04/14(月) 17:50:54.49
829まさはる:2014/04/15(火) 02:44:52.07
>>828
おいらも書いてて鬱

つづきを

その翌日もシャケちゃんは出勤日。
その日の朝にパチ子から再度、
「あの子は大丈夫だから。ね、福山は自分の事だけ考えて」
と、おいらの気がかりを見透かしたかの様な言葉をもらった。
おいらはその言葉をもらった時、パチ子と初めて会った日の事を思い出す。
パチ子がパチ子たる所以のあった日の事だ。人生と言うのは面白いもので、
泣かれ、叩かれた相手と仲良くなり、今はこうして娘の、彼女の事でフォローしてもらっている。
おいらは初めて会った日の事を思い出しながら、そんな事を考えていた。
そう、おいらは昨日空ぶった事もあってか気持ちは吹っ切れていて、
罪悪感、申し訳なさ、未練、そんな事はそのまま残っていたが、落ち着いていたのだ。
夕方になり、シャケちゃんはちゃんと出勤してくる。もしかしたら休んでしまうのではないか、
そう思っていたが、シャケちゃんは挙動不審になりながらもバイトに出てくる。
その責任感の強さをありがたく思いながら、その様子にただひたすら申し訳なく思った。
仕事が始まっても、シャケちゃんの様子はやはりおかしい。目が泳いでしまって挙動不審。
おいらは苦しかったが、
「いずれ話さなければならないことだ。このままずるずるするのも良くない」
と、自分に言い聞かせ、店が終わる頃シャケちゃんに声をかける。
「話したい事があるから、事務所で待ってて」
それを着たシャケちゃんの顔からは、表情と言う物が全くなくなってしまった。
これにはおいらも苦しかった。出来ればこういう事はやっぱりしたくない。
だが、もう後戻りはできなかった。
830まさはる:2014/04/16(水) 00:45:57.93
つづきを

片付けが終わって事務所へ上がると、シャケちゃんは麦茶を用意して待っていた。
「お疲れ様」
「お、お疲れ様です」
シャケちゃんの声は少々上ずっていた。麦茶も、どうぞでもなく無言で目を伏せたまま
ススッと出てくる。それだけで、シャケちゃんが果てしなく緊張しているのが解る。
そして、それはおいらにも伝染した。話す事はちゃんと考えていたのに、
頭が真っ白になって全部飛んだ。何を話したらいいか、分からなくなってしまった。
当然、シャケちゃんは目を伏せて緊張の面持ちでおいらの言葉を待っている。
こうなると、どうしても沈黙に支配されてしまう。
「どうして好きなもの同士なのに、こんな事になるんだ」
と言う思いが込み上げてくるが、おいらはこうする事がシャケちゃんは幸せになると、
何度の何度も出した結論を自分に言い聞かせ、思い直す。
おいらは口下手で話下手だ。それはこういう時でも変わらない。おいらはこんな時でも
ストレートな物言いしか出来なかった。
「あのさ、俺色々考えたんだけど…」
おいらが口を開くと、シャケちゃんは更に顔を強ばらせていった。


少しばかりなんで、名曲でも
http://youtu.be/bwB2A9HHaCU
831恋する名無しさん:2014/04/17(木) 10:58:07.45
無修正カリビアンコム http://hurl.me/fSMVBJ

いくくる http://hurl.me/Gt5VaD

はぴめ http://hurl.me/TbFyF1

わくわく http://hurl.me/ICe1T2
832恋する名無しさん:2014/04/17(木) 13:40:39.75
今までで最高の美しさ。。。

http://mt4-fx.com/life4/417.jpg

実際会ってみるとサービス凄すぎ!!!

顔見るだけでの価値はあるよ♪

ヒント・・・N市在住22才看護師
833まさはる:2014/04/18(金) 01:32:51.43
つづき

おいらはそこまで言うと、口籠ってしまった。そうそう簡単にサラッといえる事ではないし、
別れたいなどとは思ってなどいないのだ。
「・・・・」
シャケちゃんは何も言わない。俯き、顔を強ばらせ、目を泳がせながらおいらの言葉を聞いている、
と言うか、おいらの声は聞こえているのか、と言った感じだったが、どうしようもない位緊張しているのが伝わってくる。
「イヤ…イヤ…」
声にならない叫びも聞こえてくる。
そんな姿を見、叫びを聞くと、更に口が開かなくなるが、おいらは心を鬼にしなければならなかった。
どう考えても、付き合い続けてシャケちゃんの未来は明るくない。
「俺、前から考えてたんだけどさ…」
また口籠ってしまう。嫌いなわけでもなく、愛おしい子に別れを告げるなど、
おいらにはなかなか出来る事ではなかったが、看護師の学校行って、同世代の彼氏でも作って、などというおいらにとっては切なくさびしいが、自分の希望のシャケちゃんの明るい未来を考え、
おいらは口を開く。
「考えてたんだけど…別れよう」
834まさはる:2014/04/20(日) 00:10:47.43
つづきを

それを聞いたシャケちゃんは身動き一つしないが、泳いでいた眼が、ただ一点を見つめる様になる。
そして口を開いた。
「イヤ…」
シャケちゃんは絞り出し様な声で気持ちを吐き出す。
それにおいらはまともな返事は出来ない。本当の事は言えないのだ。
「勝手言ってごめんなさい」
下手なウソはバレるし、そうなったらなったでシャケちゃんを傷つけるだけだ。
おいらはそれしか言えなかった。
すると、シャケちゃんは息をすっと吸って面を上げると、潤んだ目でおいらを捕まえて離さない。
「なんで?やだよ」
シャケちゃんは涙声にもなっていた。薄々解ってはいただろうが、やっぱり辛いのだろう、
寂しいのだろう、悲しいのだろう、おいらと同じ気持ちだというのが嫌と言うほど伝わってくる。
「俺だって別れたくなんてないよ。やだよ。でもダメなんだよ」
おいらのその心の叫びは言葉に出来ない。
「ごめんなさい」
その言葉を口にするのが、おいらは精いっぱいだった。
「分かんない…あ、あの…マーちゃん好きな人で来たの?」
シャケちゃんはミムラちゃんが気になっているのかもしれない。
「好きな人が出来たなんてあるはずないだろうが。俺はガンになった。こうするほかは無いんだよ
ごめんな、ごめんな」
泣きたくなるような心の叫びはあるが、これも口には出来ない。
「そうじゃないけど…ごめんなさい」
おいらはそうとしか言えない。自分の心の内を、さらけ出せないというのは、苦しく辛いものであった。
835恋する名無しさん:2014/04/22(火) 22:08:42.28
こういう所はちゃんと大人だな
836まさはる:2014/04/23(水) 00:51:04.55
>>835
恥ずかしくなるので、そういうことは…


つづきを
おいらも辛く苦しかったが、シャケちゃんもまた同じであった。
「マーちゃん、あたしの何がダメなの?」
シャケちゃんは嫌な所があったら、直したいとでも言いたいのだろう。もちろん、そんなところは無かったのだが、
その切ない女心にもおいらはちゃんと答えない。
「そういうのじゃないんだ。ゴメン」
「年の差があるから?」
「遠距離になっちゃうから?」
そういうことにも、おいらはごめんと言うだけでちゃんと答えなかった。
それではやっぱり納得も何もできないのだろう、
「マーちゃん、ゴメンばっかりで全然わかんない」
シャケちゃんはそう言うと、俯いて涙を流し始めてしまった。
「ほんと、身勝手でごめんなさい」
やっぱり、おいらはそれしか言えない。
そして交わす言葉もなく、シャケちゃんのすすり泣く声だけが事務所を支配する。
一分が五分にも感じられる辛い時間、おいらは
「ごめんな。俺、ガンになっちゃった。こうした方がシャケちゃん絶対幸せだから」
と、謝りつつ、シャケちゃんの未来の幸せを願った。
どれくらい時間が経ったか、泣き止んだシャケちゃんは涙を手で拭うと、立ち上がっておいらを見て、
「あのあの、あたし仕事は?」
と聞く。
「もう俺ら会わない方が良いと思う。だから…」
その先は、おいらは口に出せなかった。
おいらもシャケちゃんとのつながりを完全に断ち切ってしまう事を口にするのは辛いのだ。
おいらが口にするのは辛いと思ったことを感じているのだろう、
それを聞いたシャケちゃんの眼から、また涙が溢れてくる。
シャケちゃんはその涙をぬぐおうともせず、
「短い間でしたけど、お世話になりました」
と、最後の挨拶をすると、事務所を後にした。
肩を落としたシャケちゃんの背中が、その心情を語る。
「ごめんな。ごめんな。幸せになってな」
おいらは伝わらないだろうが、遠く離れて行ってしまうシャケちゃんの背中に向かって、
声もなく語った。
こうしておいらとシャケちゃんとの短い恋愛関係は終わった。







見てくれている人、長い事お付き合いありがとう。
おわり








なんてことは無いので、まだまだお付き合いよろしくですw
837恋する名無しさん:2014/04/24(木) 02:11:40.67
ずっとみてるよ
年の差恋愛したことあるし別れるとき同じようなことした(笑)
つらすぎた、、、
838まさはる:2014/04/25(金) 00:29:23.92
>>837
ありがとうございます。
わかってくれるひとがいてうれしいw


つづきを
肩を落としたシャケちゃんを見送ると、終わってしまったんだなと、それが実感を伴って襲ってくる。
と同時に、シャケちゃんとの思い出がフラッシュバックする。
バイトの面接で緊張していた事。そしてそのまま仕事をして、晩御飯で泣いてしまった事。
バイトの先輩、バービーちゃんとファッションショーもどきをした事。
支援の手が届かないいわきの友人の所へ、二人で物資を届けた事。その時に、
おいらはバカな勘違いをしてしまった事。
今、思い出すだけでも恥ずかしい告白の手紙を出してしまった事。
仕事後の二人の時間を過ごしたこと。
どれもいい思い出で、思わずほっこりしてしまうが、フラッシュバックする思い出が止まった時、
もう新たに思い出を作っていくことは無いのだな、と言う思いが込み上げてくる。
そしてまた襲ってくる、終わってしまったんだという実感。寂しさ。絶望。
覚悟はしていたが、その喪失感はやはり大きなもので、おいらはぐったりと肩を落とすと、
何もできなくなってしまった。
酒でも飲むか…おいらは少しでも気を紛らわせたく、そう思ったが、明日はこちらの医者の方で診察を受けなければならなかった。
酒に逃避することを許されなかったおいらは、喪失感、悲しみ、絶望、それらと一緒に一晩過ごさねばならなかった。
そんなものを抱えていては寝れたものではなく、長く苦しい夜となった。
結局、やはり一睡もすることは出来ずに、おいらは朝を迎えた。
一睡もできずに朝日が昇っても、その苦しみは癒されることは無かったが、
おいらは大変難しい事だが、気持ちを切り替え、シャケちゃんを引きずってはいられなかった。
今日は病院の診察がある。桔平先生の話だと、おそらく治療方針も決まるだろう。
言わば、今日から病魔との戦いが始まるのだ。
肺がんか・・・
おいらは死ぬつもりなど毛頭ない。ガンという病気と付き合っていくという気も、当然ない。
未練タラタラなおいらには、健康な体に戻ったらまたシャケちゃんと、という身勝手なきもちがある。
しかしそれは出来ないだろうし、すべきではないだろう。
それがかなわなくとも、おいらはシャケちゃんの幸せな姿を見て、未練を断ち切りたいと思った。
シャケちゃんを失って、病気とだけ向き合った時、少し気持ちが変わった。
839恋する名無しさん:2014/04/26(土) 13:13:12.23
【年齢差】素敵なギャップル【え?親子!】8組目
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/lovesaloon/1385811409/l50

被災地に訪れ人の婚活や恋愛成立者

パワーストーンを相手に送り、お返しに、別のパワーストーンやジュエリー頂いてるらしい件に関して…。
840恋する名無しさん:2014/04/26(土) 13:14:08.42
どうりでね。街道沿いのホテル、UJIE、カサブランカ、ルネッサンス、アイネ、その他、ファッションホテルが混んでるわけね。
841恋する名無しさん:2014/04/28(月) 20:46:53.02
目から生理食塩水が
842まさはる:2014/04/30(水) 01:12:18.51
>>841
目から汗じゃないのねw

つづきを
おいらはちょっとだけ気持ちを持ち直すと、まだガラガラな海辺も道を車で流し、
風呂に入り、思えば昨日の昼から食べていない飯を味噌汁で胃に流し、
少し早かったが病院へ向かった。
桔平先生が紹介してくれた先生は、おいらと同学年で眼鏡の、
真面目を絵にかいたような先生であった。以下真面目先生とします。
「うーん、検査結果を見させてもらいましたけど、手術は難しいですね」
電子カルテで送られてきた検査結果を見た真面目先生の診断の結果は、桔平先生と一緒であった。
「抗がん剤と、放射線療法を合わせた治療をお勧めします」
PCと向き合って話していた真面目先生は、それをおいらと向き合って言う。
そしていろいろ話した結果、二種類の薬、プラチナ製剤の何とかと言うのと、
もう一種類の薬を飲み、放射線療法をすることになった。
そうは言っても、おいらの生活は今までとあまり変わらない。
親との話し合いの結果、飲食店ではありえない週休二日にお店をした事と、
予定だがシャケちゃんの後釜を二人入れて、仕事を楽にするぐらいだ。
だから、抗がん剤治療が始まった翌日も仕事で、いつもの様にパチ子との納品と言う名の
雑談の時間がやって来る。
この日はせんじつのことがある。やっぱりパチ子と顔を合わせづらかった。
「こんにちわー○○ミートです」
パチ子もおいらと同じなのだろう、声のトーンが低かった。
よっと、手を上げるパチ子がいつもの感じではなかった。
少々気まずく、話ずらく、聞いていいものかどうかわからなかったが、おいらは気になってどうしようもない事があった。
言うまでもなくシャケちゃんの事だ。
「おはよ。シャケちゃんどうしてた?」
パチ子はそれを聞くと、表情を曇らせ悲しげに笑顔を見せると、
「大丈夫だから。気にするなよ」
と言うが、パチ子の顔と仕草はそうじゃないと物語っていた。
843まさはる:2014/05/01(木) 23:45:46.91
今日もまた少し

それが解ると、おいらは気が気でない。未練たっぷりなのだ。
「気にするなって言われても…ほんと大丈夫?」
「まぁ泣いてたけどね。大丈夫だよ。心配スンナ」
「うん…」
気になって気になって、どうしようもない位気になって、何とかしてやりたいと思うが、
結局おいらには何もできないのだ。おいらはパチ子の言葉納得に納得できないが納得して、後は本人とパチ子や友人に託すしかなかった。
おいらは相当しょぼくれていたのだろう。がっくり肩を落としていたかもしれない。
パチ子はそれを見かねてか、おいらの肩を抱いてポンポンと叩くと、
「福山の気持ちは分かるよ。でも、あの子はもう大丈夫だから。心配ない。あたしもついてる。って違うか」
パチ子はそう言ってフフッと笑顔を見せると、
「福山は早くガン治せ。また飲みに行くんだからな」
と、話をガラッと変えて笑った。
ちょっと男っぽい感じだが、パチ子の優しさが身に染みた。そのせいだろう、目から汗もちょっと垂れた。
そして、この親子なら大丈夫かなと、ちょっとだけ安心できた。
パチ子のおかげで、シャケちゃんの事はちょっと安心できたが、そのシャケちゃんがバイトで抜けた穴はとにかくでかかった。
シャケちゃんの抜けた穴を埋めるまでは、おいらは休みたくとも休めたものではない。
早急に二名バイトを入れる必要があった。
844まさはる:2014/05/04(日) 23:03:03.76
れんきゅうでいそがしいっす。まぁつづきを

その日の午前中の内に店に張り紙をすると、その日の内に三件の問い合わせがあった。
そのうち、一人はおばちゃん。後は高校生の男の子と女の子で、面接になったのは高校生の二人であった。
その翌日面接をして、二人とも即採用となったのだが、新人君の方はあまり覇気も感じられず、
大丈夫かなと不安を感じさせたが、女の子の方は良かった。
問い合わせの時に感じたのだが、言葉の感じが福島の訛りで、つまり喋り方がシャケちゃんと似ていたのだ。
それだけで動揺して声が上ずっていたのは言うまでもない。面接の時もまた同じ。
その時に聞いたのだが、やはり福島の子で、やっぱり原発のあれでいわきから来ていて、
家は漁業関係だという事で、学校はシャケちゃんと一緒で、二年生という事だった。
これはシャケちゃんの影響だろう、福島からきているというだけで印象がすこぶるいい。
そうでなくとも、容姿はショートの小西真奈美の様でかわいいし、受け答えはしっかりできるし、
何も言うことは無かった。以下、真奈美ちゃんとします。
面接が終わって採用を言い渡した後、おいらは真奈美ちゃんに質問された。
「あのぉ、ここで福島の子バイトしてますよね?」
「ああ…こないだ辞めちゃったんだよね…」
「そうですか・・・」
真奈美ちゃんはこの千葉の田舎町にも、同郷で同じような境遇の子が居ると知って、
仲良くしたかったのかもしれない。実に残念そうであった。
それを考えると、真奈美ちゃんはシャケちゃんが引っ張ってきたような子であった。
この真奈美ちゃんが良く働いてくれて、気も利いて、何も言うことは無かったのだが、
ただひとつ難点があって、それは真奈美ちゃんの福島訛りがシャケちゃんを思い出させることだった。
何とも女々しいようだが、その通りだ。それはともかく、その一方新人君はと言うと、
無断欠勤を一度して注意をしたら、辞めるも言わず、来なくなってしまった。
845恋する名無しさん
キーパーソンの予感