◇山田健太氏(専修大准教授・言論法)
日本社会全体に安心・安全のためであれば、個人の表現の自由やプライバシーの制限はやむを得ないとする考え方が強まる中で、
インターネットについても同様にサイトへのアクセスログなどの犯罪捜査への利用は仕方がないとする意識が広がりつつある。
しかし、憲法が保障する通信の秘密や表現の自由の優越的な地位を考えると、国家による介入は最も注意しなければならない。そうすると、
いまのブロッキング導入論には▽青少年保護という価値が表現の自由の例外となり得るのか▽名誉棄損やプライバシー侵害はなぜ権利侵害の例外とならないのか−−など憲法論に立った議論が、あまりに軽視されていないか。
ブロッキングは表現の自由や通信の秘密の侵害につながる規制でありながら、
児童ポルノサイトのアドレスリストづくりには警察の影響下にある民間団体がかかわるという。独立性や中立性、信頼性の欠如を示している。「官」による検閲になりかねない。
一方、日本では、犯罪捜査の検挙率や刑事事件の有罪率は極めて高いうえ、性犯罪の発生率は欧米に比べて低い。
そもそも表現の自由が規制される場合、明確で厳格な基準が求められる。そのことに照らしても合憲であるとの説得力のある説明もされていない。
根本的な議論がないまま、なし崩し的に制限されるのはおかしい。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100614ddm012040031000c.html