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『Voice』 2010年2月号
普天間騒動・米国の「演技」
上杉 隆(ジャーナリスト)

 普天間飛行場の移設を含む、沖縄駐留海兵隊の移転に関しては、2006年、日米両政府によって
「グアム移設協定」として締結・合意している。
 さらに日本政府は、2009年5月、同協定を国会で承認し、あらためて移転先を沖縄・辺野古の
キャンプ・シュワブ周辺と決めて、米国側にも伝えているのだ。
 となれば、仮に日本側の都合によってこの「合意」に変更が加えられれば、米国政府にとってみれ
ば、外交上、不本意な「譲歩」をしたと見なすことができる。外交における「譲歩」とは、逆に
「見返り」を要求する権利の獲得ともいえるのだ。
 今後、米政府は、この「譲歩」を武器に、日本政府に対して、いくつもの「見返り」を迫るだろう。
たとえば、2014年までのグアム移転の遅れへの賠償請求、さらなる代替地の要求、そして
究極的には、海兵隊のみならず米軍(陸・海・空・海兵隊)全体の再編費用の負担も求めてくる
かもしれない。
 そうした「見返り」は、「演技」によってさらに膨れ上がる可能性がある。これこそが米国の外交上の
狙いである。
 また、仮に普天間飛行場の移設が遅々として進まないとしても、じつは米国は外交上、少しも困る
ことはないのである。
 日本からみれば、普天間飛行場の移転は大きな政治問題になっている。実際に、日米同盟と
政権が崩壊するほどのスケールで語られている。
 ところが、米国からみれば、普天間飛行場の問題は、所詮、西太平洋(極東)の、日本の、沖縄の、
海兵隊のオペレーションにおける変更程度にすぎない話なのだ。けっして、座間にある米陸軍第一
軍団前方司令部が移転するという米軍のプレゼンス全体に影響を与える話ではないのだ。
 米政府の本心では、普天間問題の解決が長引いても一向に構わないとみているだろう。なぜなら
ば、この問題がもめて、解決が長引けば長引くほど、現行での運用を続けることができるからだ。
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