万能細胞から心筋細胞を選別・移植 慶応大が新手法、再生医療へ期待
2009.11.30 03:00
あらゆる細胞に分化できる「万能細胞」から心筋細胞だけを選び出し、
安全で効率良く移植する手法を慶応大医学部の福田恵一教授(再生
医学)らが開発した。
心臓病の再生医療への応用が期待される。米科学誌「ネイチャー
・メソッズ」(電子版)に30日、掲載された。
万能細胞から移植用の細胞を作製する際、分化していない他の細胞が
混じっていると腫瘍(しゆよう)ができる恐れがあり、目的の細胞だけを
選別する技術が求められていた。
研究チームは、心臓を収縮させる心筋細胞に多量のミトコンドリアが
含まれることに着目。ミトコンドリアを蛍光色素で染めて目印を付ける
ことで、他の細胞と区別し、ヒトやマウスのiPS細胞(人工多能性幹細胞)
とES細胞(胚性幹細胞)から、ほぼ心筋細胞だけを取り出すことに
成功した。
この心筋細胞を1千個集めて塊を作り、マウスの心臓に移植したところ、
8週間後に移植細胞の90%以上が心臓組織に定着した。精巣への
移植で腫瘍ができないことも確認した。
万能細胞由来の心筋細胞は従来、他の細胞が約2割混じっていたほか、
選別の過程で遺伝子操作が必要など安全性に課題があった。移植細胞
の定着率も約3%と極めて低かった。
福田教授は「心臓病の再生医療への第一歩となる重要なステップだ。
できるだけ早く臨床応用したい」と話している。
http://sankei.jp.msn.com/science/science/091130/scn0911300300000-n1.htm