年金記録改ざん「厚労幹部も責任」 指摘の文書非公表
2009年10月1日4時2分
社会保険事務所の職員による厚生年金記録の改ざん問題で、有識者による
委員会が9月上旬、舛添前厚生労働相に提出した文書が非公表となっている。
職員が改ざんをした背景に年金制度の不備があるとして、制度見直しを怠って
きた厚労省や社会保険庁幹部の責任を指摘する内容だ。委員の一部も
「公表すべきだ」と話している。
委員会は厚労相直属の「年金記録問題拡大作業委員会」(委員長・磯村元史
函館大客員教授)で、弁護士や社会保険労務士ら12人がメンバー。改ざん
問題が起きた背景を分析し「『年金記録の遡及訂正』に関する作業について
のまとめ」と題する文書を舛添厚労相に提出した。
委員会は、厚生年金保険法がすべての法人を適用対象としたことに着目。
保険料を滞納する零細企業に対して、差し押さえなど強制的に徴収すれば
倒産という事態を招く可能性もあり、改ざんした現場の職員が「保険料滞納
の解消と、事業所側の倒産回避との板挟みにあった」ことを背景として明記した。
そのうえで、「制度見直しも視野に入れた根本的検討が必要」「歴代の幹部に、
当時の努力不足に対する釈明や現時点での見解の提出を求め、公表すべきだ」
などとし、現行制度を放置してきた厚労省・社保庁幹部の不作為責任を指摘
している。
委員会のメンバーの一部が加わった別の改ざん問題に関するチームがまと
めた報告書をもとに、社保庁が改ざんに関する内部調査の結果を公表。職員
2人(1人は退職)が関与を認めたとして現職1人を処分した。組織的な責任に
はほとんど触れなかった。
複数の委員が公表を前提に内容を確認してきたと言い、委員の一人は「大臣
が公表することを想定し、社保庁の事務方とも表現は調整してきた」と証言する。
磯村氏も朝日新聞の取材に「(公表するかしないかは)大臣の判断」と語る。
一方、舛添氏は「必要なものは全部公表している。まとめは委員長の所感だから
ご自由にということ。私は指示していない」としている。長妻昭厚労相は就任後、
「問題がなければ速やかに公表することが必要だ」と話した。(南彰)
http://www.asahi.com/politics/update/1001/TKY200909300419.html