奈良県田原本町で2006年6月に起きた医師宅放火殺人を巡る調書漏えい事件で、
加害少年(19)(中等少年院送致)の供述調書などを漏らしたとして、秘密漏示罪に
問われた鑑定医の崎浜盛三被告(51)の判決が15日、奈良地裁であった。
石川恭司裁判長は、崎浜被告に懲役4月、執行猶予3年(求刑・懲役6月)の有罪判決を
言い渡した。
最高裁によると、同罪での司法判断は、記録が確認できる1978年以降で初めて。
公判で、崎浜被告は調書をフリージャーナリストの草薙(くさなぎ)厚子さん(44)に見せた
ことは認めたが、犯罪の成立要件を争い、無罪を主張した。
秘密漏示罪は、医師や弁護士など特定の職業(身分)の人が、正当な理由なく業務上知り
得た秘密を漏らした場合に適用される。
精神鑑定が医師の業務かどうかについて、弁護側は「治療を目的としない精神鑑定は
医師の業務にはあたらない」と争っていたが、石川裁判長は判決で、「精神鑑定は医師の
業務にあたる」と認定した。
漏えい行為に正当な理由があったかどうかについても判断。石川裁判長は「少年の利益
を図るためのものとは言えず、取材に対する協力としても『正当な理由』があるとは認めら
れない」とし、「少年がはられた『殺人者』というレッテルをはがすことや、少年の抱える広汎
性発達障害に対する世間の認識と理解をただすためだった」などとする弁護側の主張を
退けた。
奈良地検は当初、草薙さんについて、崎浜被告の了解を得て本を出版した「身分なき
共犯」にあたるとして捜査。しかし崎浜被告には、調書がそのまま出版される認識はなく、
共犯関係が成立しないとして草薙さんを不起訴(嫌疑不十分)とした。
公判では、草薙さんや講談社の幹部も証人として出廷し、証言が波紋を広げた。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090415-OYT1T00518.htm