農地売買や農家への無利子貸し付けをする農林水産省の特別会計(特会)予算で、
2006年度に余った約470億円の一部が翌年度、コメや麦の輸入など全く別の事業
に流用されていたことが、中日新聞の調べで分かった。この特会は近年、事業の縮小
で1000億円前後の剰余金が毎年発生。05年度には会計検査院の指摘を受けて
一部を返還したものの残りは返さず、07年度まで繰り越して流用していた。
特会は特定事業のための予算で、他事業への流用は認められていない。農水省は
これらの剰余金を新設された特会に繰り入れ、流用を可能にしていた。
問題の特会は1946年に創設された旧・農業経営基盤強化措置特別会計(旧基盤
特会)。自作農育成や農地拡大のため、都道府県の農業公社を通じて農地売買や
無利子融資事業をしてきた。
しかし、農地整備が進む一方で農家が減少。農家からの返済金も増えて、すべて
特会に戻るため、99年度以降は毎年1000億円を超す剰余金が出ていた。
国の一般会計からの資金も01年度まで入っていた。
こうしたことから、04年度も807億円が余ったため、会計検査院は05年、「貴重な
資金が効果を発現せずに滞留している」と指摘。旧基盤特会の設置法で「剰余金は
一般会計に繰り入れることができる」と定めていたにもかかわらず、国庫に戻さなかっ
たとして、同特会の資金の縮小と是正を求めた。
05年度決算では再び813億円の剰余金が生じたため、農水省は初めて295億円を
一般会計に返還。06年度に残りを繰り越したが、再び467億円余った。
農水省は07年度、政府の特会改革を受け、旧基盤特会と、コメと麦の輸入を行う
旧・食糧管理特会を統合、新たに食料安定供給特会(安定特会)とし、剰余金は安定
特会の中の「調整勘定」に繰り入れた。
調整勘定は一般会計から繰り入れた資金をいったんプール。コメと麦の輸入の際、
それぞれの勘定に移して使う仕組み。調整勘定に入った剰余金は本来の農地売買
などの事業以外に、一部がコメや麦の輸入に流用された。
剰余金は07年度も228億円が発生、08年度予算に繰り越されている。
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2009031002000135.html