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(さらにさらに警句の問題)
「市場は常に間違っている」という言葉がある。
一方で、「市場は常に正しい」という言葉がある。
一見この2つは両立しないようだが、実のところどちらも正しい。
問:「なぜ「どちらも正しい」と言えるのか。
どういう意味で、それぞれが「正しい」と言えるのか」
(その解答)
この問題のポイントは
「“市場は間違っている”と言うが、それは何に対して間違っているのか」
「“市場は正しい”と言うが、それは何に対して正しいのか」
ということにある。
まず「市場は常に間違っている」の方から。
この場合の「正しい/間違っている」の定義はこうである。
「市場がファンダメンタルを完全に反映していると思える状態を“正しい”ものとする」
最初に断っておけば、もちろん、市場はファンダメンタルを反映する。
もしもトレーダーが市場におけるファンダメンタル要素の種類とそれが価格に与える影響とを
完全に把握していれば、「100%反映している」と言ってもいいが、問題は
「誰一人として市場におけるファンダメンタル要素を完全に把握している者はいない」
という当たり前の事実である。
具体的な例を一つ。
あるトレーダーが「金利差があるから円は売られる」と言った時、それ自体はおそらく正しい。
金利差に起因する円売り圧力は間違いなく働く。
しかしながら、それは必ずしも「ドル円(ないしクロス円)の価格が一定水準以下に落ちることは無い」
ということを意味しない。金利差以上にインパクトのある円買い要因(あるいはドル・ユーロなどの売り要因)が
出てくれば、ドル円・クロス円が大きく下落することは当たり前に有り得る。
為替相場を動かす要因は多岐にわたり、どの要因がどの程度の影響力を持っているかは刻一刻と移り変わっている。
その複雑微妙な変化を完全に捉えられるトレーダーはいない。
出来ることはただ「目についた要因の影響力を推量する」ことだけであり、
推量であるからにはもちろん外れることもある。
つまり、あるトレーダーが
「現在のファンダメンタル要素はかくかくしかじかだ。だから市場はこう動く」と言った時、
そこには必ず「そのトレーダーが見落としている要因」あるいは
「そのトレーダーが図り損ねている影響力」といった誤差要因が存在し
(もしその誤差要因が存在しないのであれば、そのトレーダーの予測的中率は100%のはずだ)、
その意味において、
「市場は常に(自分が思う“ファンダメンタルを完全に反映した結果”に対して)間違っている」
のである。
一方の「市場は常に正しい」の方だが、こちらは割とおなじみの話で、
「市場における価格は、それがその時点での買い手と売り手のコンセンサスだという
点において、常に適正価格を示している」
という意味である。
「その時点でのありとあらゆるファンダメンタル要素と、
それに対する買い手と売り手の思惑の全てを織り込んだものがすなわち『価格』であり、
その意味において“価格は常にファンダメンタルを100%反映している”と言ってもいい」
と言い換えることもできる。
要するに、どんな価格であっても
「こんなに高い(安い)はずは無い」
ということはない、価格はいつでもその時点での「市場のコンセンサスの総和」であり、
そこに「正しい/間違っている」といった価値判断の入り込む余地は無い、ということだ。
もしも価格が間違っていると思ったのであれば、それは
「価格に対する自分の感覚が間違っている」のであり、そういう時にトレードをすると大抵痛い目にあう。
このことは「値頃感での取引」が強く戒められる理由の一つでもある。
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