【9437】NTT docomo 【ドコモ】

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480山師さん@トレード中
アップルの密約 ドコモに与えた最恵国待遇
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1803K_Y3A011C1000000/

 米アップルの新型iPhone(アイフォーン)発売から1カ月。アップルはかつてのような熱狂までは生み出せず、
鳴り物入りで投入したNTTドコモはスタートダッシュでつまずいた。ところが、両社とも慌てふためく様子はない。
実は、「次」をにらんだ秘密の約束があるからだ。

■人影まばらなジョブズの命日

 「アップルの街」として知られるカリフォルニア州クパティーノ市。10月5日の昼下がり。アップル本社を訪れると、
正面のビルは白い布にすっぽりと覆われていた。布の下では、ビルの改装工事が進行している。

 この日は、スティーブ・ジョブズが2年前に他界した命日にあたる。最高経営責任者(CEO)の座をジョブズから
引き継いだティム・クックは社員向けのメールに「スティーブがわれわれ全員、そして世界にとってどれほど重要
だったか、よく考えてほしい」とつづった。

 ジョブズは、死してなおアップル社内でカリスマ的な存在であり続けている。彼が生み出した製品のファンも世界
中にいる。しかし、ときの流れは予想以上に早いのかもしれない。5日のアップル本社は人影もまばら。花束やロウ
ソクを手にした人々であふれかえった2年前とは、まるで別の光景だった。ジョブズの時代は確実に遠のいている。

 唯我独尊、秘密主義――。こんなジョブズ時代の経営スタイルも、クック時代のアップルから徐々に消えつつある。
今年6月末、この本社にお忍びでやってきた日本人経営者も、その変化を感じ取った一人だった。

 ドコモ社長の加藤薫。最終的にiPhoneの販売契約を結ぶかどうかを協議するため、クック本人を訪ねたのだった。
加藤はトップ会談の席に着くと、こう切り出したという。

 「アップルさんへのコミットメント、つまり、iPhone販売の必達目標は新規契約全体の約4割の台数でいかがでしょ
うか」

 ドコモがのめる販売ノルマについて、加藤は、それまで自社の年間新規契約数の25%程度を念頭に置いてきた。
「4割」という数字は大幅な譲歩だったが、あくまで5割を主張してきたアップルとはなお大きな開きがあった。加藤には
のるかそるかの大勝負だったが、トップ同士の本音トークにクックの反応は悪くない。5年越しの交渉が大きく前進した。

■「毒リンゴを食らわば……」

 iPhoneの販売を巡るドコモとアップルとの交渉の始まりは2007年の暮れが近づいたころとされる。それ以降、iPhone
の新モデルなどが発売されるたびに交渉を繰り返したが、結局、販売ノルマなどの溝が埋まらず、合意に至ることはな
かった。加藤自身にも、苦い記憶が刻み込まれている。

 加藤が経営企画担当の常務を務めていた3年前。アップルがタブレット(多機能携帯端末)の「iPad」をデビューさせた
ときのことだ。

 ドコモは、日本国内でiPadを販売する契約交渉をアップルと進め、最終サインを交わす寸前まで話を詰めていた。iPad
に使う通信カードの発注を済ませ、プレスリリースも準備した。

 ところが、すぐに大量の通信カードを転売して処分する事態に見舞われた。土壇場でソフトバンク社長の孫正義がジョブ
ズに直談判して独占販売契約を確保、ドコモとアップルの話が白紙に戻ったからだった。ドコモが孫に煮え湯を飲まされた
のは、日本で初めてiPhoneを扱う通信会社がソフトバンクに決まった2008年に続いて2度目。再び苦汁を味わったのだ。

 それ以降、加藤はアップルに「とことん天動説の会社」という印象を抱いていたが、クックとの会談は好感触。帰国の途に
つくころには、アップルと手を組む決意を強めていた。

 本社に戻って開いたドコモの幹部会議。役員の間には、アップルに依存してしまうリスクを心配する声も出たが、加藤は、
逆にたしなめた。強い意志を役員たちに示したかったのか、強い口調で、こう言い放ったという。

 「毒リンゴを食らわば皿まで、だ」

 加藤とドコモは本気になった。
481山師さん@トレード中:2013/10/21(月) 08:55:28.31 ID:fmW3zNjB0
>>480
■KDDIが漏らした不満

 アップルはどうか。ドコモには、先発組のソフトバンクやKDDIにはない「最恵国待遇」を与え、その一部は、すでに現実に
なっている。

 9月10日、アップルがクパティーノ市の本社で開いた新型iPhoneの発表会。プレゼンテーション中、新たな販売先として
ドコモのロゴがスクリーンに映し出された。発表会に出席していたKDDI社長の田中孝司は目を丸くした。プレゼンが終わっ
た後、クック本人に「アンフェアじゃないですか」と不満を伝えたという。

 しかも、アップルはドコモと共同でプレスリリースも出している。それはKDDIがiPhoneの販売をスタートさせたときには
なかった特別扱いだった。

 それだけではない。自社の電子商取引サービスには修正を加えないことで合意も勝ち取った。店頭で販売員がドコモの
自社アプリをホーム画面にインストールするよう顧客に勧めることも認めさせた。アップルの「Siri(シリ)」と重複するドコモ
の自動音声認識応答サービス「しゃべってコンシェル」もiPhoneで使えるようにした。

 しかし、iPhoneがドコモの救世主になるのだろうか。

販売開始直後のドコモショップの売り場を眺めてみる限り、混乱が広がっていた。
 「5sのゴールドが欲しいのですが……」

 「お探しのiPhoneはいつ入荷するかわかりません。代わりにアンドロイドの端末はいかがですか。画面が大きくて電池の
持ちもいいですよ」

 ある首都圏のドコモショップ。販売員の一人は、iPhoneの予約希望者に対し、米グーグルの基本ソフト(OS)である「アン
ドロイド」のスマートフォン(スマホ)をしきりに勧めていた。

 この販売代理店の社長が、アンドロイド端末を勧めるよう指示を出していたという。iPhoneが供給される日程の連絡がドコ
モから来ず、顧客からはクレームばかり。顧客に不満を抱かせないためには、仕方のない措置だった。

■「失敗だったのではないか」

 この社長は、「売りたいのに、人気の色の在庫が全くない。アップルはちゃんとマーケティングしているのか。こんな殿様商
売は長続きしないぞ」といらだちを隠さない。

 ドコモのiPhoneがなかなか離陸しなかった一因は、端末調達につまずいたことにあった。ドコモが最初の段階で確保でき
たiPhoneは50万台前後、その大半は消費者から「廉価版」のレッテルを貼られてしまった「5c」という。予約が殺到する最新
モデルの「5s」はなかなか供給されなかった。

 新型iPhoneの発売は9月20日。それから1カ月もたたないうちに、NTTグループ内からは「失敗だったのではないか」(事
業会社の幹部)という声も上がり始めた。

 一方、ドコモの受け止め方は冷静だ。実はiPhoneが爆発的に売れるわけではないことはドコモ社内では発売前から織り
込み済みだったからだ。

 他社のiPhoneユーザーのうち、ある程度の利用者を奪えるかもしれないが、毎月の顧客流出がピタリと止まるほどではない
――。8月時点でドコモが内々に実施した調査では、こんな結果が出ていた。そして、加藤自身は非公式な場では「iPhone導
入はあくまで通過点」と漏らし、アップルとの今回の販売契約が長期的な経営戦略であることをにおわせている。

 その答えがアップルとドコモが結んだとされる特別な約束だ。

 あるドコモ関係者は「アップルとは次世代通信関連の技術協力で、ほかの通信会社とは違う関係になっている」と明かす。
482山師さん@トレード中:2013/10/21(月) 08:55:51.69 ID:fmW3zNjB0
>>481
■アップルが欲しがったもの
 神奈川県横須賀市。今年の2月ごろからアップル関係者がひそかにドコモの巨大な研究開発パークを頻繁に訪ねている。水
面下でドコモのエンジニアたちと接触し、「通信に関してドコモの検証プロセスやノウハウは世界でもトップクラス」という感想を
抱いたという。

 アップルの横須賀詣での目的はドコモが持つ無線通信の技術水準を確かめること。無線通信で使う周波数帯をまとめて使う
次世代技術に、アップルは目をつけたのだった。実用化されれば、格段につながりやすくなるだけではなく、今まで以上に大容
量のデータがやりとりしやすくなる。

 実は、アップルとドコモはiPhoneの販売契約を結ぶ直前、次世代通信規格を採用した端末の開発で協力する契約を結んだ。
ドコモの「パテントプール」と呼ぶ特許管理の仕組みにアップルが加わったのだ。

 かつてのiPhoneを巡る交渉では、アップルがNTTグループの持つ技術をすべて開放することを求めたことが、交渉難航の
一因になったとされる。今回の落としどころは現実的だ。関係者によると、次世代の通信技術を使う端末開発で技術協力し、アッ
プルが優先的にドコモに端末を供給することが十分あり得るという。

 アップルはもともとパソコンの会社だ。無線通信関連の知的財産は、他の分野ほどの厚みがない。メガネや腕時計といった
「ウエアラブル端末」など新しい市場が生まれたとき、どんな特許が大事になるのかは読みにくい。ライバルの韓国サムスン電子
は、事業領域も保有特許の範囲も広く、アップルに対して優位に立つかもしれない、とも特許業界で言われている。

 カナダのオンタリオ州ケンブリッジ。アップルとは縁もゆかりもなさそうな街で、9月26日、アップルのイベントが開かれた。開催
場所は、大規模な人員削減や身売りを決めた加ブラックベリー(旧リサーチ・イン・モーション)の本社近郊。有望なブラックベリー
社員をスカウトするためにアップルが開いた特別なイベントだった。狙いの一つは、通信技術の獲得にほかならない。

 ドコモの次世代通信技術は世界のトップクラス。アップルが販売ノルマの要求を引き下げてまで、ドコモとの関係づくりに執着した
のもうなずける。しかし、この2社が世の中をあっと言わせるイノベーションを生み出せるのだろうか。

 アップルは「iPad」を最後に、もう3年間も新市場を切りひらくような製品を生み出せていない。ドコモも同じく、「iモード」以来、ユー
ザーに驚きを与えるようなサービスはつくっていない。アップルとドコモは、偶然にも「i」を冠する製品やサービスでイノベーションを
起こしてきたが、それを再現できるとは限らない。周囲は、少しクールに見つめている。

■孫社長の本音

 その代表がソフトバンクの孫かもしれない。ドコモとKDDIの経営陣が新型iPhoneの発表会などに忙殺されていた9月から10月に
かけ、孫は日本を不在にしがちだった。滞在先は米国。米スプリント買収で主戦場を米国に移したことだけが理由ではない。

 10月のシリコンバレー近郊。孫は完成したばかりのソフトバンクの新オフィスで仕事をスタートさせていた。この前線基地をつくった
目的の一つが、iPhoneに代わる次の商品や技術を探すこと。その孫に最近のアップルについて尋ねると、率直な感想を口にした。

 「真の天才、スティーブの後は誰でも大変だよ」

 生前のジョブズと個人的な親交もあった孫は、iPhone、そしてアップルそのものに限界を見ているのだろうか。

 ソフトバンクの拠点から車でほんの30分しかかからないアップル本社。その一室には巨大なジョブズの肖像写真と並んで大きな
白いパネルが掲げられ、こんなジョブズの言葉が記されている。

 「成功に長く安住するな。次の別のすばらしい何かをなし遂げるのだ」

 アップルの経営陣は「次のケタ外れな革新を生み出せ」という重圧を避けることはできない。そして、盟友の契りを交わしたドコモも、
アップル浮沈の余波から逃れられなくなっている。

=敬称略

(シリコンバレー=兼松雄一郎)