【4452】KAO・花王part32【1/20(金)12時〜新宿】

このエントリーをはてなブックマークに追加
73山師さん@トレード中
小噺を一席

「御隠居!御隠居!てぇ〜へんだぁぁぁぁぁ・・・」
「どうしたんだい?そんなに泡食って」
「いゃね、かかぁどもがなんだかシャモジ持って、繰り出すとか言ってやがって」
「穏やかじゃないね〜、忠臣蔵じゃあるまいし、いったいどうしたって言うんだい?」
「ほら、御隠居さんも知ってると思うが、例のかわら版屋の八富士堂の一件ですよ」
「あぁ、あの・・・」

「それがね、どうやら裏に、茅場町の花王屋が絡んでるらしくって」
「花王屋?どういうことだい?」
「八富士堂ってのは、賂(まいない)を貰って朝鮮だか何だかの歌舞音曲が江戸に流行ってるって、書いてやがっただろ?」
「うん、そうらしいね〜」
「そんなの聞いたこともないし、変だ変だと言ってたんだが・・・」
「うんうん」
「あと、雷電の相撲結果を書かなかったり、成田屋の名芝居をコキおろしたり・・」
「そうだったね〜」
「で、かかぁたち、いい加減にしろってこって、八富士堂に文句つけようってことになったんだけど」
「八富士堂にゃ、勘定奉行の田通様も付いてなさるから、難しいんじゃないかね?」
「お〜よ!そう言うこったから、かかあども、八富士堂に文句言うなら、
 手っ取り早く、かわら版に宣伝出してる花王屋へ押しかけようってんで・・」
「なるほどね〜『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』ってことかい」

(後日)

「で、花王屋に押しかけたのかい?」
「押しかけたんだけど、素浪人の有即に水かけられて、追い返されたらしい」
「そりゃ、残念だったね」
「で、かかぁたちは、今までかわら版見て信じて買っていた花王屋の品を金輪際買わないってことにしたらしい」
「そりゃ、困るんじゃないかい?日々に必要だろ?」
「ところが御隠居さん、話は違うんだ」
「そりゃ、どういうことなんだい?」
「いぇね、花王屋の洗濯タワシを長屋の熊公手作りのタワシに変えたら、これがなんと、すごく塩梅が良いらしい」
「ほう、それはそれは」
「花王屋のお高い『鶯のふん』を牛松屋や三つ輪屋の『米ぬか』に変えたら、これもまた良いらしい」
「え?そうなのかい?」
「とどのつまりは、裏長屋に巣くってる浪人の瀬鋤水之助」
「瀬鋤水之助?」
「お〜よ!あの人が水周りの掃除上手だって誰かが言い出して・・・」
「お侍に、なにをしたんだい?」
「今じゃこの界隈を、掃除しまくり!重宝してるぜ」
「そりゃまた・・・・」
「で、買うのをやめて花王屋を弱らせて、八富士堂も弱らせようって寸法だ」
「なるほどねぇ〜、で、首尾は?どうだったんだい?」

「大成功ってやつよ」
「大成功?」
「月が印の花王屋だけに  『手元金もつき果てて 欲に任せて運のつき』

(お後がよろしいようで)