「グッドウィルM&A脱税事件」で家宅捜索を受けた「ワールド」畑崎広敏氏の懲りない仕手体質
大手アパレルメーカーのワールドを一代で築き上げた畑崎広敏氏は、仕手株好きの投資家として知られる。
大株主として名を連ねているのは、バナーズ、アイビーダイワ、CHOYA、宮入バルブ製作所、ユナイテッドアローズ、キムラタンなど、業績不振で株価が低迷、わずかな“材料”で株価が乱高下する株が多い。
その畑崎氏の自宅が、10月15日、東京地検特捜部の家宅捜索を受けた。グッドウィルM&A脱税事件に絡む関係先としてである。
約50億円の申告を除外、約20億円を脱税したとして逮捕状が出ているのは公認会計士の中村(旧姓中澤)秀夫容疑者。
畑崎氏は、この中村容疑者が買収した東邦グローバルアソシエイツ(旧千年の杜)の大株主として、中村容疑者に株を売却した。そういう意味で脱税事件としては遠いのだが、なぜ目をつけられたのか。
「特捜部の狙いは、主犯の中村が海外逃亡しているので、強制捜査を通じて彼を追い詰めることと、千年の杜の仕手戦に絡んだ久間章生元防衛相の関わりを解明すること。だから畑崎に対する捜査も欠かせなかった」(事件を追う全国紙記者)
千年の杜株は、08年1月から2月にかけて、2014年に黒海沿岸のロシア・ソチ市で開催される冬季五輪向けに人工島を建設すると発表したことで高騰した。直前まで20円台で低迷していた“ボロ株”が400円を突破、証券界で話題になった。
この計画に信憑性を与えたのが久間氏。ソチ冬季五輪協力委員会で会長を務め、パーティーでは、「オールジャパンで推進する!」と、ぶち上げた。
しかし千年の杜は、従業員わずか14名で経常欠損が続く企業。人工島建設を遂行する能力はなく、事実、計画はすべて絵に描いたモチに終わり、株価は暴落、元の“ボロ株”に戻った。
畑崎氏は、黒木正博氏(マザーズ上場1号のリキッドオーディオ・ジャパンのオーナー)の要請に従って出資、それを黒木氏は証券ブローカーの鬼頭和孝氏を通じて中村容疑者に売却した。
特捜部は、その過程で起こった仕手戦と久間氏の登場に、畑崎氏も関与しているのではないかと見ている。
淡路島に生まれ地元の商業高校を卒業、23歳で独立してワールドを立ち上げ、有数のアパレルメーカーにした畑崎氏は、97年、60歳の若さで社長を退いた。
その立志伝はよく知られ、去り際の潔さに対する評価も高いのに、なぜか投資では西田晴夫、小林達也、黒木正博といった名うての仕手筋、金融ブローカーと組んでしまう。
それは、仕手株好きの“性”なのかも知れないが、今回は政界を巻き込む大型経済事件に関与しただけに、
神戸経済同友会幹事、神戸商工会議所副会頭を歴任、2011年ラグビーワールドカップ日本招致委員会委員を務める関西の有力財界人としての顔を汚すことになるかも知れない。【悌】
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