日経平均6300万円の時代が来る? ハイパーインフレの現実味
仏投資銀行大手ソシエテ・ジェネラルのエコノミストであるディラン・グライス氏は、自身の連載コラム“Popular Delusions(大衆の妄想)”の中で最近、
いつもの控えめな語り口から一転、日経平均株価が15年後に6300万円に達する可能性があると予測した。
現在の日経平均が9500円前後で、史上最高値を記録した1989年末でさえ4万円の大台に達しなかったことを考えると、相当な飛躍である。
高齢化と経済の硬直化が進み、政府債務が急速に膨らんでいる国とあっては、なおさら非現実的にみえる。
グライス氏の主張はこうだ。今後、国債の継続的な発行を可能とするために日本に残される選択肢は、日銀がお金を刷って買い取るいわゆる国債の日銀引き受けだけになる。
つまり、日本はハイパーインフレに向けひた走っている。現在の日本政府の歳入は、年金支払いや健康保険への支出など非裁量的支出を賄うのにさえ十分でない。
債務返済(日本国債の満期償還分を含む)だけでも税収の60%を超え、うち利払い分は約30%に達する。
つまり最も政治的抵抗が少なくて済む方法はおそらく、政府が支払いに対応できる程度の水準に利回りを維持し、
金融システムの崩壊につながらないような水準で日本国債の利回りを安定させることだ。これはすなわち、
市場がもはや吸収しきれない国債の一部またはすべてを、日銀が購入することにつながる。
おそらくは人々のデフレ心理を打破するための「量的緩和政策」という名目の下でやるのだろう。
エコノミストは日銀がついに「日本の問題に真剣に取り組み始めた」ことが示されたとして、このような動きを歓迎するかもしれない。
だがこれは、実際には、インフレによる長く不安定な期間の序章にすぎない。
グライス氏がモデルとしているのはイスラエルである。同国は1980年代、増大する軍事費と社会的コストの資金繰りに苦しみ、
政治がまひ状態に陥るなか、ハイパーインフレーションに見舞われた。グライス氏によると、イスラエルのインフレ率は1980年代半ばに500%に達したという。
物価が上昇するにつれ、株価も上昇した。全株指数はこの間、6500倍に跳ね上がった。