283 :
山師さん@トレード中:
電気自動車に交付される政府の補助金は経済産業省の「クリーンエネルギー
自動車等導入費補助事業」にかかるもので、今年度分は123億7000万円までです。
これを全て消化したら追加予算が認められない限り、それ以上の補助金は
出ません。(現状では先着順で超過分には交付されないでしょう。)
日産のリーフには1台あたり77万円の補助金が交付されますから、123億7000万円
をこれで割っても(つまり、リーフが電気自動車の国内市場を独占した場合でも
という意味です)1万6065台分で尽きてしまう計算です。現在のプリウス並みの
国内販売台数を目指すとしたら、1年間に30万台売らなければなりません。
国内の電気自動車市場をリーフが独占したとしても、現在の予算では5%強しか
賄えないことになります。
もし、リーフ30万台分に100%補助金が交付されるよう予算を組んでもらう
としたら、リーフが独占したとしても現在の約20倍となる2300億円強に
引き上げてもらう必要があります。が、それは老若男女を問わず、マイカーと
無縁な生活を送っている人に対しても、国民1人につき2000円近い負担を強いる
ことになってしまいます。
現実にはリーフの市場独占などあり得ないでしょう。
補助金制度には車種ごとに耐用年数が設定されており、それよりも前に廃棄したり
売却するなどしたら補助金を返還しなければなりません。自家用軽自動車は
4年、それを超える乗用車は6年となっていますので、電気自動車の性能の低さに
嫌気がさして売り払いたいと思っても、i-MiEVは4年、リーフは6年我慢
しなければ補助金を返さなければなりません。そういう意味ではi-MiEVを
選んだほうが無難かも知れません。
今年度の123.7億円という予算は昨年度の4倍増になるそうで、仮に毎年4倍増
が繰り返されたとしても、2012年度は1979.2億円ということになります。これ
をリーフとi-MiEVが同じ台数で分け合った場合、各々6万6607台分になりますが、
それでも現行プリウスが国内で発売されてから1年で売れた台数の2割強にしか
なりません。
補助金の予算に懸念がなくても、電気自動車が順調に売れる保証など何処にも
ありません。リーフよりユーザー負担額が15万円安く、維持費の面でも有利な
i-MiEVは今年4月に個人向けの販売が開始されました。が、案の定、あまり
売れていないようです。
現状では毎月230台に満たないペースですから、三菱が計画している年販
4000台に少なくとも30%以上足りないペースです。プリウス並みを目指すには
桁が2つも足りませんから、ゴーン社長が夢想するプリウス並みを目指すなら、
この百数十倍のペースでリーフを売っていかなければ、その分だけ海外で台数
を確保する必要に迫られます。
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-601.html
284 :
山師さん@トレード中:2010/10/14(木) 10:18:37 ID:1Hlo8Hy20
ハイブリッド車は海外であまり売れていません。プリウスの場合、海外での
販売比率は約40%になりますが、インサイトに至っては約28%という体たらく
です(いずれも現行モデルの発売から12ヶ月間の実績です)。三菱もi-MiEVの
海外販売計画を5000台/年としており、国内の4000台/年とは大差ないと考えて
います。
ゴーン社長が豪語する2年後に年間50万台の電気自走車を売るという計画は、
一体どのような計算によって導き出されたのでしょうか? 日産はリーフの
発売1年目の販売台数を国内6000台としていますが、2年目ではそれを何十倍に
も拡大できるというのでしょうか? プリウスでさえ、毎月の販売台数が
車種別上位30位以内にランクされるようになるまで3年半以上かかりましたが、
リーフは2年目でトップ争いができるようになるとでも言うのでしょうか?
こうした状況を現実的に捉えてみますと、やはり2年で年間50万台という計画
は全くの非常識で、私にはゴーン社長の言葉がただのハッタリにしか聞こえ
ません。
ゴーン氏はミシュラン時代もルノーでも日産でも、不採算部門の切り捨てや
資材調達ルートの見直しで経費を圧縮するなど、コストカッターとして辣腕を
振い、短期間で赤字から黒字への転換を成功させてきました。が、彼が新しい
創造的な事業を展開して何か大きな成果を上げてきたかと振り返ってみても、
特に思い当たるものはありません。
彼が社長に就任してから日産の商品展開に目新しい傾向があったか振り返って
みても、旧態依然の感が否めません。実際、日産にはトヨタやホンダが持って
いるような売れ筋車種が乏しいという状況が何年も続いており、そうした点で
彼に対する厳しい評価も時々耳にします。
彼は細かい問題点を見逃さずに経営状態を改善させるといった仕事には能力を
発揮するのかも知れません。が、将来を見据えた新たな事業を展開すると
いった、先見性を持ちながら現実も真摯に見定めるバランスがとれた仕事を
するには向かない人物なのかも知れません。いずれにしても、彼の電気自動車
に関する言動は常軌を逸したもので、もはや楽観的というレベルを超越し、
世間一般に誤解を与えかねない印象操作というべき領域に達しているかも
知れません。
ゴーン社長の豪語する電気自動車普及のシナリオや、悲観論を意図的に排除して
一方的な情報ばかり喧伝する大衆メディアに踊らされるのは賢明ではないと
思います。先のエントリで頂いたコメントへのリプライにも書きましたが、
現状は電気自動車を巡る情報のバランスがあまりにも楽観論に偏りすぎ、電気
自動車のほうが有利とする試算も出鱈目なものが多すぎます。
以前ご紹介しましたように、テスラ・モーターズも創業から7年間ずっと赤字
続きで営利企業として成り立っていません。三菱自動車も補助金頼みの状況が
いつ解消できるのか解りませんし、肝心のi-MiEVは多く見積もっても国内で
毎月230台くらいしか売れていません。電気自動車の市販を始めた彼らの
現実を見れば、ホンダの北条取締役が語った「採算は取れない」という言葉は
現実をありのままに伝えたものに違いありません。
北条取締役の正直なコメントは殆ど無視され、それがゴーン社長の具体性を
欠いたコメントにかき消されてしまうような現状では、電気自動車の今後に
ついて冷静な判断などできないでしょう。
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-601.html
285 :
山師さん@トレード中:2010/10/14(木) 10:26:01 ID:1Hlo8Hy20
日産がリーフの発売に合わせて設置を計画している主な充電インフラは、全国
の直系ディーラー約2200店舗全てを対象としています。が、急速充電器が
置かれるのはその1割にも満たない200店舗に過ぎません。これでは全国を
網羅できているとはいえないでしょう。急速ではない普通充電では200V仕様でも
満充電まで最大8時間かかりますから、ガソリンスタンドのような感覚で
利用できるものではありません。
そもそも、日本国内にガソリンスタンドは5万店以上あります今年6月末の
時点で38,600店あるそうですが、それでも地方へ行くとなかなか見つからなくて
(ナビに登録されていても実際に行ってみると閉店になってるケースなど
珍しくありませんし)心配になることがあるくらいです。
どれほど計画的に配置したとしても、日産が全国に設置する急速充電器が僅か
200台というのでは、どこへでも安心して出掛けられるという状況にはほど
遠いでしょう。ECOステーションや三菱のディーラー網など、日産以外の
インフラを含めたとしても、不安が拭える状況に及んでいないのは間違い
ありません。
もっとも、自動車メーカーにインフラまで全て面倒を見ろというのは些か酷な
ハナシです。旧来の枠組みからすれば、こうしたインフラは自動車メーカーが
主導的な立場になる分野ではありませんし、その普及も電気自動車の普及と
共に進めていけば良いことですから、現段階であまり目くじらを立てることも
ないでしょう。
私がこうして突っ込みたくなったのは、ゴーン社長が「我々は、EVに関する
すべてに携わる唯一の会社なのです」と豪語し、インフラや補助金制度に
ついても「EVに興味を持っている世界の街に指標を提供することができます」
などと電気自動車における全能の神として神託を授けることができるかの
ようなことを言うからです。
しかし、自動車メーカーであるからには肝心の電気自動車に関する発言には
相応の責任を持ってしかるべきです。くどいようですが、僅か2年で
年産50万台などという計画は荒唐無稽としか思えません。明確な根拠もなく
そうした数字を掲げるのは、何処の馬の骨とも知れないベンチャー企業なら
ともかく、現社名になってから76年もの歴史があり、社会的な影響力もある
大企業のすることではないでしょう。
リーフがネット予約(あくまでも「予約」で「受注」ではありませんから、
キャンセル料もかかりません)で好調だったからといって有頂天になり、
電気自動車の将来も明るいと考えるのは冷静な判断とはいえません。
日産はリーフの予約台数が日本国内で6000台を超え、アメリカでは2万台に
達したと発表しました。メディアもそれを嬉々として伝えましたが、
イノベーターが食い付いただけという現段階で順調に販売台数を伸ばせると
期待するのは気が早すぎます。
インサイトは販売開始から1ヶ月後には日本国内だけで18,000台も受注(予約
ではなく受注です)しながら、2年目は世界年販10万台も無理でしょう。これを
鑑みれば、リーフの予約台数が良好な数字でも、ゴーン社長がいうルノーと
合わせて2年で年間50万台の電気自動車が本当に売れると期待するのは
拙速でしょう。そもそも、それだけの台数を賄う補助金が支給されるかどうかも
怪しいところですし。
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-600.html