「今回争われている新株予約権発行をニッポン放送が行わなかったとき、当該企業が陥る状況としては、以下のものと推測できる。 @ ライブドアがニッポン放送株の過半数を保有する意志をもち行動する結果、ニッポン放送はライブドアの傘下となる。 A ライブドアはリーマンブラザーズにMSCBを発行しており、その権利行使の結果、ライブドアはリーマンブラザーズの傘下となる。 B @Aの結果、ニッポン放送はリーマンブラザーズの間接的傘下となる。 C Bの結果、ニッポン放送は外国資本の資本参加制限に抵触し、放送免許の取り消し処分が成立する。 D Cの結果、ニッポン放送は放送分野の経営能力を逸する。 E ニッポン放送がライブドア傘下に入った時点で、フジテレビグループは、 ニッポン放送に優先的に与えてきたコンテンツ提供を中止することを決定している。 F Eの結果、ニッポン放送は放送分野以外で現在行っている経営が成り立たなくなる。 G DとFの結果、ニッポン放送が従来の商取引の一切を失い、 その代替として、ライブドア資本を拠り所に、従前以上の経営が行われることを期待することができない。 @からGまでの事実によって、ニッポン放送は著しくその価値を毀損するものと容易に推測できる。 以上の事態を避けるため、ニッポン放送がフジテレビに対して新株予約権を発行し、企業価値を損なわないように取締役会が判断したことは 当然のものであると認められる。 加えて、ライブドアがニッポン放送の株を大量に購入した時点以前に、リーマンブラザーズグループから資金を調達したことは、 ニッポン放送の株式購入の意図がライブドアにあったものと判断できる。 ライブドアが時間外取引でニッポン放送の株式を取得するよりも前に、その取引が成立していなかったと考えることは容易ではない。 しかし、ニッポン放送が、特定株主の地位を恣意的に下げる行為を行うことは商法に抵触している。 なをもって今回ニッポン放送新株予約権発行差し止め請求を行った、特定株主であるライブドアは、 その株主としての存在に不透明さを抱え、この立場を守ることは、商法の特定株主保護の本来の趣旨ではない。 前述のニッポン放送株の価値を維持する面、そしてライブドアのニッポン放送株取得経緯の不透明性とその株主地位の両面から判断し、 今回ライブドアによって申立てられた、ニッポン放送新株予約権発行差し止め仮処分を棄却するものである。」