巨人小笠原が降らせる五月の冷たい雨

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1風吹けば名無し
ある日、畜生(37)が降りてきて、ずぶ濡れな僕に「(濡らしちゃ)いかんのか?」と言った。
それに耳を貸さなかった僕は、雨に打たれながらずっと傘を探し続けていた。
畜生(37)は雨を降らせながら僕の後をずっとついてきた。別に何をするでもなく、まるで(僕が)雨に打たれるのが嬉しいかの様に、笑いながら。
ふと空を見上げると電線には一匹の小鳥。悲しそうに泣いている。
突然降り始めた五月の雨は、僕等には冷たすぎた―――――。
この雨が降り始めた頃皆と飛び立てなかった小鳥は、一人で飛び立とうとして深い傷を負ってしまう。
もう大好きなあの娘ともあの空を飛び回る事も出来ず、何も出来ずただ悲しいまま死んでいくのだろう。
結局雨がやむまで傘を見つけられなかった僕に、畜生(37)は隠していた小さな傘を差しだしてきた。
何も言わず叩き折る僕を見て「いらんのか?」と言った。
雨の中でひとりぼっちの僕と、群からはぐれて傷ついた小鳥。突然降り始めた五月の雨は、僕等には冷たすぎた―――――。
やっと雨がやみ明るい光が空から差し込み始める頃、小鳥は土の上に冷たい躯で横たわっていた。
あの日あの時あの場所にあの雨さえ降らなければ、小鳥は今頃皆と一緒に大空を飛び回っていたのだろう。