浅川によれば、農業を取り巻く論調として、農業は弱い。
だからもっと農業を保護しないと日本人の食料は大変なことになる。
いまの日本農業のままではダメだが、構造的な諸問題を解決すれば、成長する可能性を有している。
という2つが主流となっているが、そもそも両方とも日本農業が弱いことを前提にしている。
農林水産省が発表している日本のカロリーベース食料自給率は1965年の73パーセントから2009年では40パーセント
まで大きく低下しており、これは先進国の中でも最低の水準にある。
しかし、一国の特定産業の実力を評価する世界標準がマーケットの規模であることからすれば、農業の実力を示す
指標は「農業生産額」であるはずで、それによれば、日本は、中国・アメリカ合衆国・インド・ブラジルに次ぐ世界5位の
「農業大国」なのである。
ところが、食料自給率をカロリーベースで計算している国は、世界的にみれば、日本と日本の影響を受けた韓国だけ
であり、日本でも1983年(昭和58年)までは生産額ベースで計算していた。
また、カロリーベース食料自給率という指標を国策に用いているのは日本だけであり、比較のために示される主要先進
国の自給率も各国が算出・公表したものではなく、農林水産省の官僚がFAOの統計から導いたものにすぎず、
計算根拠も未公開である。
カロリーベースで食料自給率を計算する場合、浅川は、カロリーの少ない野菜・果物の自給率は低く計算される。
大量に捨てられるコンビニ弁当など売れ残りの食品、外食産業の食べ残しの食品が分母として算入される。
家畜の良質な飼料をほぼ海外からの輸入に頼る日本の畜産業の場合、とくに低く計算される。
自給的・副業的農家や土地持ち非農家の生産する大量のコメや野菜、自家消費分は計算されない。
などの問題があるとしており、小売店で見かける食料や食品は国産の割合が非常に高いのに、農水省の示す食料
自給率は過剰に低くなっており、実際の生活実感との乖離がみられるとし、現実に即した自給率はむしろ高水準で
あることを指摘している