先日会ったよそのトメ。
当方寒冷地在住。仕事帰り同僚と歩いていたところ、寒空の中、子供(どう聞いても
赤子、それも新生児に近い)泣き声。こんな寒い中誰が連れてるんだ、と思ったら
角を曲がってバギーカーを押した老婦人登場。
しかし、この寒空の中(もうすぐ雪降りそうって天気、風もある)当人はセーターと
スカート、靴下ははいてるがタイツなどもはかず、帽子もマフラーもない。子供の泣き声
はベビーカーの中から。
信号待ちで並んだので、ふと見ると、赤子はなんと薄物一枚、素足、他に並んだベビー
カーの子供が帽子やマフラーやハーフケットで完全防備してるのに比べれると、完全
にへん。しかも子供の手足はすでに血色なし。
こりゃいかん、と「すみません、お孫さん(そうだと判断して言った)このままじゃ肺炎になり
ますよ」と言うと、老婦人にっこりして「可愛いでしょう?」 会話しても噛み合わない。
同僚と顔見合わせて、これは変だと思い、同僚が老婦人を引きとめてる間に、近くの交番
から巡査を呼んでくる。
巡査も変だと思ったらしく、「おばあちゃん、ちょっとお話聞きたいから、そこまで来てくれ
る?」と言った。私たちはそこで行ってもよかったんだが、赤子の様子も気になるし、成り行
きでついていく。その間も赤子はずっと泣きっぱなし。
交番のあったかい中で見ると、赤子は室内着とおぼしき薄物一枚、おむつはぱんぱんで
濡れて冷たくなっている。同僚が「これ、おなかすいてるんだよ」と言って、近くのドラッグ
ストアに走ってくれた。哺乳瓶(小)と赤子用のミルク(アレルギーが怖いから高いけど、と
アレルギー用のミルク)を買ってきた。小さなドラッグストアだったので、事情話すと、オムツ
は試供品(2枚入り)をくれたらしい。あとお尻ふき。
交番の奥で、赤子の服をはいでみると、服も下半身がぐっしょり濡れ、おむつはうんちがつい
て、すでにかぴかぴ、しかも氷みたいに冷たい。私のところも4ヶ月の赤子がいるのだが、ど
う見てもそれより小さい。首がやっと座った感じ。お湯をもらってミルクを飲ませるとものすごい
勢いで飲む。200近くを一気に飲んだら、やっと落ち着いた。
さすがに服は買ってこなかったので、巡査さんのバスタオルやら持ってたマフラーでくるんで
やる。別に熱もないし、医者は行かなくてもだいじょうぶかな、と思い、服はストーブで乾かし
ておいた。
「誘拐かも?」と思いながら、巡査が老婦人と話しているのを聞くと、老婦人はすらすらと住所と
電話番号と名前を言った。巡査がかけてみると、赤子の両親らしき人が出て、血眼で探して
いたらしい(捜索願出す寸前だったらしい)場所は、交番から10キロほど離れている。そっから
ずっと歩いてきたらしい。
赤子は気になったが、こちらも赤子を風呂に入れるのは私の役目と、嫁といっしょに待っている
ので、あとは巡査にお願いして(署の方から婦警さんも来てくれた)立ち去った。
後日(というか昨日)、電話があり、例の赤子の両親が訪ねてきた。赤子をしっかり抱えてた。
老婦人は、夫の方のトメで、以前からまだらボケの症状が出て、嫁の方が訴えていたらしい
が、夫の方はとりあわなかったらしい。で、先日、嫁が風呂掃除をしてるあいだに、トメが赤子
を抱えて、出ていってしまい、気づいたらいない、という状態でパニックにおちいってたらしい。
私たちが見つけたのはいなくなってから8時間近く経過していて、その間だは飲まず食わず。
赤子はその後医者に診せたら、やはりかなり弱っていたらしい。
「命の恩人です」と言われたが、機転きかせてミルクだのを用意したのは同僚の方。同僚の
方にもすでに挨拶には行ってたらしい。
一つまちがうと新聞沙汰になってたから、よかったなあと我が子をあやしてます。