969 :
ミステリ板住人 ◆qzqKe0UO2g :
1 図書館の無料貸本屋問題に関して
この問題に関して論じる場合には、図書館によるサービスは行政サービスであること、
従ってその目的は公益の実現であることを理解しておかなけければならない。
大量か否かの判断は人により分かれるにしても、ベストセラーを中心にした相当数の
書籍の無料貸出しが、公益の実現に該当するか否かはおおいに疑問があるところである。
これは公共貸与権の実現により筆者等になんらかのペイがなされる場合にも解決される
問題ではない。図書館制度の存在意義そのものに関する問題点である。
過去ログで筆者が、「ベストセラー類を置かない図書館があってよい」
「資料としてベストセラー類は1〜2冊置けば十分」という趣旨の主張をしたのは、
この理由による。
図書館サービスの現状を見るに、ベストセラーの購入を続けることは、利用者サイドは、
売れ筋で話のネタになりそうな本がタダで読め、図書館サイドも利用者の要望に応じて
いれば施設利用評価度の評価基準となるべき貸出数を伸ばせる可能性があるので、
両者にとりメリットがあるのがわかる。
ここには両者共に、公益の実現のためのあるべき図書館の姿を考える姿勢を見ることが
出来ないのは、今後の図書館行政を考える場合に大きな問題であると言える。
970 :
ミステリ板住人 ◆qzqKe0UO2g :03/11/01 06:20
2 図書館を地域情報センター化へ
ではベストセラーを主とした無料貸本屋を脱した公益の実現に寄与する図書館はどのような
ものであろうか。過去ログにおいて前述したとおり、それは地域における情報センター的な
ものであろうかと思われる。
(1)地域の特色を生かした図書館作り
ビジネス街至近の場合における経済・経営関係書籍の充実化、
大学至近の場合における大学図書館との連繋における専門書の収集等の例は
過去ログで書いた。
同じ住宅街の場合も、老人が多い地域、若い夫婦が多い地域等その地域の特性に
応じて図書館の書籍の購入・在庫が変わって来て当然である。
前者の場合には、医療・年金等に関する解説書の充実、後者の場合には育児・住宅に
関する書籍の充実等が考えられる。
全ての図書館が金太郎飴的な品揃えをするのではなく、
「あの分野の本ならあの地域の図書館」という利用者による使い分けが可能になるような
事態が好ましい。
現在ではこのような状態を実現するための地域における基本的なマーケティングさえ
行われていない状況なのは問題である。
なお、基本的な生活関連書籍(辞書、医療、法律、経済等に関する基本的な解説書)
は最低限の基準を設けて常備しておくのは当然である。
この点は、各図書館に格差が無いのが理想である。
これらの施策は、とかく書籍の貸出業務のみに偏りがちである図書館における
資料調査の機能の強化に資するものであるといえよう。
971 :
ミステリ板住人 ◆qzqKe0UO2g :03/11/01 06:21
(2)書籍関係以外の調査機能の強化も肝要である。
外国の例と比較しても、特にCPの利用整備は急務である。
具体的には、
館内におけるネットによる資料調査(各種データベース検索、ネット検索等)や
ノートパソコン、モバイル等の利用可能な施設整備等である。
この場合に非合法的なエロサイトや2ちゃんねるのようなBBSは、公的機関である
図書館での利用は好ましくないので、禁止措置を取るのは当然である。
図書館設置のPCでは問題サイトへの接続が不可能な措置を講じ、個人の機器による
利用に対しては、監視・摘発による「過料」の制度を導入し対処するのが適切である。
現在の図書館は、子供対象のお話し会、所蔵資料の展示会程度のイベントしか催して
いないようだが、ネット研修、創業支援等の講座開設、カウンセリングを行う等
より積極的に情報発信に努めるべきである。
上記(1)、(2)のような地域情報センターとしての図書館実現のためには、図書館職員の
資質の向上が不可欠である。次項ではこの点について詳述する。
972 :
ミステリ板住人 ◆qzqKe0UO2g :03/11/01 06:22
3 図書館における人的資源の強化について
具体的には、図書館職員の専門性を高めることである。
現状の図書館サービスは、いわゆる無料貸本屋状態、本の貸出・返却、整理に偏り
「高卒程度でも可能な仕事」という印象が強い。
司書資格を持つ職員は少なく、他部署への職員の転勤が多いのも問題である。
諸外国では、図書館員は図書館に関する専門教育を受けた者、なんらかの専門知識を
持つ者が占める比率が大きいのは良く知られたところである。
そこで無料貸本屋状態を脱し、公益の実現に資する地域情報センターへの脱皮をはかる
ためには、人的資源たる図書館職員の資質の向上が喫緊の課題と言える。
そこで以下の提言を行っておく。
(1) 図書館学を専攻した司書資格を有する職員の各図書館への必置を義務付けること。
また保健所の所長が医師であることを要件とするのと同様に、図書館長は司書資格
を有する者に限定すること。
(2) 司書資格を有しない職員の配属に際しては、本人の希望を優先するとともに、
大学・大学院における専攻等の学習歴、取得国家資格等の有無等を審査して
決定すること。
なお、地方自治体における大卒程度公務員試験は、多様な内容・出題形式になって
おり配属にあたっての参考になる場合が多い。
専門性を持たせる方向で職員研修を強化することは言うまでもない。
(3) 学習歴・取得資格・研修等の結果を見て、人文科学(文学、哲学、論理学等)、
社会科学(法学、経済学、経営学等)、自然科学(物理学、化学、生物学、情報等)
おおまかなジャンルごとの専任を置く。例えば、
「人文科学関係の情報なら、あの人に聞けば大丈夫」といった状態の実現が好ましい。
専任のジャンルは細分化されるほど好ましい。
物理担当、化学担当等、ミステリ担当、SF担当、エロゲー担当とかあれば面白いかも