「東電はまだまだ重要な事実を隠している」──あの未曽有の事故から3年8カ月。原発事故情報
公開弁護団が1枚のファクスから新たな疑惑を発掘した。福島第1原発の2号機が危機的状況に
陥っていた3月15日の朝、東電本店が姑息な隠蔽工作を行っていた疑いが浮き彫りとなった。
問題のファクスは、当日午前7時25分に福島第1原発の吉田昌郎所長が原子力安全・保安院に
送信したものだ。現在も原子力規制委のホームページに公開されている。ファクスにはこう記され
ている。
〈6時〜6時10分頃に大きな衝撃音がしました。準備ができ次第、念のため『対策本部』を福島
第2へ移すこととし、避難いたします〉
今まで重要視されることのなかったファクスだが、きのうの会見で弁護団が突きつけた「新事
実」は傾聴に値する。メンバーの海渡雄一氏はこう言った。
「『対策本部』自体を福島第2へ移すことは、第1に人員が残っていたとしても、彼らは対策の主
力ではなくなる。まぎれもなく『撤退』だと考えられます」
■まぎれもなく「撤退」
となると、朝日新聞が「誤報」と認めた「吉田調書報道」に新たな解釈が生じる。朝日の第三者
機関「報道と人権委員会(PRC)」は、当該記事が「撤退」と断定的に報じたことを問題視。今
月12日に「『撤退』という言葉が意味する行動はなかった。第1原発には吉田所長ら69人が
残っており、対策本部の機能は健在だった」とする見解をまとめ、「重大な誤りがあり、記事取り
消しは妥当」と断じたが、いささか早計すぎたのではないか。
まず結論ありきで、「PRCは『撤退はなかった』と言い切るだけの根拠を調べ抜いたのか。重
大な疑念が生じる」(海渡氏)と非難されても仕方ない。
問題にすべきは東電の隠蔽体質の方だ。当日午前8時30分に行われた本店の記者会見では、作
業員650人の移動先を「第1原発の安全な場所」と発表。第2原発に移動した事実には一切触れ
なかった。
「吉田所長のファクスは『異常事態連絡様式』という公式な報告書で、本店が内容を把握していな
いわけがありません。『撤退』した事実の隠蔽を疑わざるを得ません」(海渡氏)
同じくメンバーで弁護士の小川隆太郎氏はこう話した。
「政府はまだ当日、現場にいた作業員ら771人分の調書を開示していない。今後、明らかにして
いくべきです」
日刊ゲンダイ:
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/155060/1