ある中学校の歴史担当教諭から、こんな話を聞いたことがある。「最近の子どもたちの中には、安重根
(アン・ジュングン)を医師だと思っている子もいる」。韓国で安重根を呼ぶときの敬称「義士」と「医師」の
発音が同じためだ。記者は半信半疑だったが、実際にそのようなことがあるようだ。数日前、あるテレビ
局のリポーターが、通り過ぎる子どもたちに「靖国神社について知っているか」と尋ねたが、子どもたち
は日本の戦犯を合祀(ごうし)している神社と「紳士」を勘違いしていた。「神社」と「紳士」も韓国語の発音
は同じだ。
昨年、KBSテレビの高校生対象のクイズ番組『ゴールデンベル』で「耳鼻咽喉科とは、体のどの部分
の具合が悪い人が行く所か」という問題が出た。易しい問題が10問ほど続いていたので、番組の制作
スタッフたちもそれほど難しくはないと考えたようだ。ところが、この問題では間違えた生徒が続出した。
「耳鼻咽喉科」の文字をばらし、それぞれ「耳」「鼻」「喉」を意味するということを知っていれば、簡単に
解ける問題だった。
もっとも、これは最近の子どもたちに限ったことではない。記者も小学校で仮分数や帯分数、中学校
では積集合や因数分解といった数学用語を習ったが、それらの名称に込められた意味を知ったのは、
大人になってからのことだ。最初に習った時、教師が用語の意味について、漢字の意味からきちんと
説明してくれていれば、数学で苦しめられることもなかったと思う。理科の時間には、爬虫(はちゅう)
類や両生類、甲殻類、火成岩、変成岩、堆積岩といった用語の意味、またそれらがどのような形を
しているかを思い浮かべるのが困難だった。しかし、これらの用語に使われる漢字を知っていれば、
もっと簡単に理解できたことだろう。
国語辞典に掲載されている韓国語の語彙(ごい)のうち、70%は漢字語だ。子どもたちに知識を与える
教科書では、漢字語の単語や用語が90%に及ぶ。漢字語を、誰でも簡単に理解できる簡単な純韓国語
(漢字で表記できない)に変えることができればよいが、現実はそうたやすくない。このため、漢字を
知らない子どもたちが、ハングルだけで書かれた漢字語の単語だらけの教科書で勉強するということは、
暗号の解読並みに難しいことだ。勉強に対する興味を持てないだけでなく、内容を全く理解できないと
いう事態にもつながる。これは何も、国語だけに限ったことではない。
ソウル市教育庁(教育委員会に相当)が今秋から、小・中学校で教科書の語彙を中心とした漢字教育
を行う方針を打ち出した。まずは希望する児童・生徒を対象に、放課後に国語や数学、理科、社会科の
教科書に登場する漢字語を教えるという。語彙力がないまま勉強するということは、れんがを使わずに
家を建てたり、銃弾を装填(そうてん)せずに戦場に行くのと同じことだ。漢字教育を学校の正規の科目
とする必要があるが、すぐにそれができないなら、このような方法で一歩を踏み出すのがベターだ。
ソース:朝鮮日報
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/06/30/2013063000156.html