ところが韓国の科学には文学がない。今年1月30日に打ち上げに成功した宇宙船はただの「羅
老(ナロ)号」であり「羅老科学衛星」だった。何のときめきもない。科学的概念の米国の「ディス
カバリー」はこれよりは少しましだ。ミサイルを暴力団のように扱う北朝鮮も発射体(「銀河」)の
名付け方を知っている。名前だけではない。最初の宇宙飛行士に選ばれたコ・サン氏はセキュリティ
ー規定違反という不名誉で下車した。地球を軽く離陸する宇宙飛行士にも地球の現実的規定が重い重
力のように適用される悲しい光景を目撃した青少年は何を考えるだろうか。ロシア宇宙船ソユーズ1
2号に乗って10日間にわたり宇宙ステーションで過ごした韓国初の宇宙飛行士イ・ソヨン氏は今、
科学者の夢をあきらめてMBA課程を踏んでいる。科学からビジネスに亡命するまでの心境は複雑だ
ったはずだ。彼女が夢をたたむ中で夢を見る人は出てくるのだろうか。文学の貧困、空想的ファンタ
ジーに得失の経済学を適用する冷静なマインドでは科学韓国の未来はない。
朝鮮は世界で最も文を崇めた国であり、高尚な人なら誰もが文集を出した文学強国だった。文が
人格であり実存だった国の大統領が「想像力の大国」を訪問した。「項羽が山を抜き(力抜山)」「
一飛びに9万里ものぼる大鵬」の修辞学にそれでも陥没しないのは、大統領の卓越した中国語実力も
そうだが、真情性を大切に考えた韓国人の文学的遺伝子のおかげだ。訪問を心信之旅(信頼を築く旅
行)と呼び、事業パートナーになるにはまず友人になるべき(先做朋友,後做生意)という名句節も
残した。成果も少なくない。核問題と韓中自由貿易協定(FTA)、北東アジア安保協力網も包括的
な合意を得た。中国主席の習近平は韓中関係が一段階発展したことを祝う書道作品を贈った。唐の王
之渙が書いた詩に「欲窮千里目、更上一層楼(=千里を眺めようと楼閣をさらに一層上がる)」とあ
る。朴槿恵大統領は精華大での演説で「中国の未来は韓国の未来とつながっている」と述べたが、ど
うせなら北京空港での離別の時に1首残して来てはどうだっただろうか。文学的な想像力で歴史的・
戦略的な距離を一括溶解するのが“文の国”が生きてきた方法ではなかったのか。
宋虎根(ソン・ホグン)ソウル大教授・社会学
http://japanese.joins.com/article/392/173392.html?servcode=100§code=120