確かにパニックは良くない

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64とある元医系技官のメール(芋)
○山大学 □ ◇朗と申します。

厚生労働省にかつて在籍した立場と、普通の臨床放射線科医という立場から、僭
越ながらコメントさせていただきます。
ちょうど2年前、新型インフルエンザのパンデミックの際に、起こっていた現象
が、よく似た形で再現されているように感じました。

あの時、専門団体や一部の専門家から、散々批判される厚労省のど真ん中、対策
本部に半年缶詰でした。
やることなすこと、批判されました。
若手医系技官は、みな心身ともボロボロでした。
私も連休中に空港検疫に防護服を着て出向いたり、終末ごとに対策本部で電話番
をしたりしたものです。

その後世界的な総括で、日本の対策がどう評価されたか、ご存じでしょうか。
今年の春の感染症学会のサマリをみながら、当時の上司が”今は耐えろ”と励まし
て下さったことを、ふと思い出しました。
時の審判は、当時の対策に合格点を下さったのです。
本気で関わらなかった方は、みんな忘れちゃったでしょうけどね。


行政の立場からすれば、国民の安全性を最大限の確保する上で、絶対に曲げられ
ない点があります。
社会的混乱・パニックを最小限に食い止めるために、なにができるのか?という
観点です。

ICRP, Pub.111*日本アイソトープ協会HPにドラフト訳が公開中です。

総括に重要な記述があることに気付きます。
(e)汚染地域内では、社会経済活動とともに住民のあらゆる側面が影響を受ける
ことが明らかになっている。このような状況は、放射線防護を考慮す ることの
みで対処する事が出来ない複雑な状況であり、健康、環境、経済、社会、心理
学、文化、倫理、政治などの関連するあらゆる側面について取り 組まなければ
ならないものである。

毒性に関し、科学的根拠がはっきりしない、低線量放射線の毒性よりも、
社会的毒性が明らか・極めて深刻な、社会混乱による被害をまず第一に食い止め
なければならない。
その対策の結果生じるちいさな不利益の批判は甘んじて受ける。
国会議論から浮かび上がる総理・文科大臣のスタンスはそういう所にあります。

文部科学省から出ている通知には、線量だけでなく、防護に関するポリシーが記
載されていることにお気づきでしょうか?
・”暫定的”と明示されていること。
・環境モニタリング、代表的個人(先生)のモニタリングを行う
・校庭など、野外活動における生活指導のための留意点。

子供を屋内に長時間引き留めることによる、精神的ストレスは大変なものです。
文字通り、”家が壊れます”
(いちおう、小学生2人の父ですので、実体験に基づいております;苦笑)
本来子供は風の子です。
20mSvを下回ることがほぼ確実であるのならば、早期に通常通りの生活に戻して
上げた方が、肉体的にも健康を取り戻すことが確実かと存じます。
65とある元医系技官のメール その2(芋):2012/01/03(火) 10:10:43.44 ID:f4dHAwiO0
既に報道にあるように、汚染度の高い学校の校庭は、土壤の入れ替え作業が行わ
れています。
また、内部被曝に関する今後の最大の因子は、食事であることは明かですので、
こちらは地域自治体と栄養士系の団体等が、教育啓蒙活動を行うことに なるで
しょう。
今後の代表的個人のモニタリングの公表結果には注目です。
今の対策がていねいかつ適切に行われれば、住民の被ばくは20mSvよりはかなり
低いところに封じ込められるのではないかと推察します。


今の段階で、放射線の数字のみに囚われ、議論を推し進めることは、到底容認さ
れません。
狭い観点のみからの批判は、将来かならず”時の審判”に査定される日が来る、と
感じるこの頃です。

放射線の線量は、数字が出るので一見全てを表すように思えますが、実際上は、
発癌に関しごく一部の寄与しかしていないことは周知のことと思いま す。
暗黒大陸だった、発癌因子の未知領域に、精神神経免疫学・精神腫瘍学という、
心と発癌を結びつける学問が登場していることはご存じでしょうか。
慢性的不安・慢性的ストレスは、発癌や転移の強力な増悪因子になるというエビ
デンスが、その領域では徐々に積み上げられつつあるのです。

放射線腫瘍医の方々なら、この感覚にはご賛同頂けるのではないでしょうか。
”説明を丁寧にし、患者がにこにこして帰られると、予後が良い”
”神経質で、いつも不安な顔立ちの人は、再発率が高く、予後も悪い”

”情報の隠蔽”という言葉は、穏やかではありません。
正しくは、”情報開示の遅延”かと存じます。
そこに悪意があるのか、やんごとなき理由によるのか。そこが問題です。

中央官庁、実際勤務してみると、外観は立派なのに、内部は恐ろしいほど人が少
ないのです。
自分達に理解出来ない情報は、そう易々と開示はできません。真実はそういう所
にあるものかと思います。

実は文部科学省にも、医系技官は厚労からの出向という形で少数ながら在籍して
います。
彼らを敵視しても、得られるものはありませんし、本来的・本質的な対策を遅延
させてしまうのがせいぜいです。

決して役人と迎合する必要はありません。
支援もしつつ、時には率直な批判もできる、良き伴侶でありたいとは思いませんか。
役人が本気になれば、結構な行動ができるのです。

”医療放射線管理専門官”というゲートキーパー的立場で、学会からの陳情は受け
ても支援は正直あまり頂けなく、心細い2年を過ごした記憶が蘇りま す。放射
線専門団体として、文部科学省にも交流人事を検討されるべきでは?と存じます。

なお、20mSvクラスの線量に関し、科学的根拠(実証データ)に基づかない、危
険性に関する懸念を広報することは、確実にブーメラン効果とな り、放射線医
学に留まらず、日本の医療全体に跳ね返ってくることをご留意下さい。
66とある元医系技官のメール その3(芋):2012/01/03(火) 10:10:56.55 ID:f4dHAwiO0
日常診療の中で、検査ごとの医療被ばくを正確に把握し、検査の必要性と検査の
不利益をきちんと誠実に説明し、診療を行っているという先生。
さて、どのくらいいらっしゃるでしょうか。皆さま、どうか手に胸を当てて、心
の声に耳を傾けて下さい。

厚生労働省時代、不安に感じた患者の電話と向き合い、30分以上も話し込んで、
利益が上回ることを懇切丁寧に行った記憶が何回かある私です が・・・。今は
どうかな?と思います。

皆さまの建設的な提案を期待しつつ、連休中は家族サービスに励み、明けた後は
日常診療に打ち込みたいと存じます。