◎寒気を覚えた無人の町の異様な空気 突入!この目で見てきた原発20キロ圏内(前篇)
「検問だ! カメラ隠して!」
運転席のジローくんが突然鋭い声を出した。
丘の中の切通しの道だった。
前方にパトカーが止まっている。20キロの立ち入り禁止ラインだ。
道路がブロックされ、制服警官が2人立っていた。
手を振って「止まれ」と合図している。
私は一眼デジカメをシートの下に蹴り込み、ビデオカメラを帽子で覆った。
「まずいかも」と焦った。もし警官が窓を開けて覗きこんだら、すぐに見つかりそうだ。
緊張で胃がキリキリ痛んだ。
止まった。警官が近づいてくる。ジローくんはダッシュボードに置いた通行許可証を指さした。
敬礼する警官。車のナンバーと許可証を、交互に指さしながら確認している。
もう1人は、助手席の私をじっと見ている。私はにっこりと会釈した。向こうも会釈した。
太陽がかんかんに照りつけている。警官の横顔に汗が一筋流れているのが見えた。外は35度の炎天なのだ。
窓を開けて私の身分を尋ねられたら、どう答えようか。そういえば何も考えていなかった。まあ、ジローくんの会社の手伝いで、とか言うしかない。私は腹をくくった。
運転席側の警官が敬礼をした。ゲートを開けた。ジローくんがアクセルを踏んだ。
あっけないくらい簡単に、白いワンボックスカーは原発20キロ圏に滑り込んでいた。警官が追ってくるような気がして、私は後ろを振り返った。
「いったん入っちゃうと、もう誰も怪しまないっすよ」
ジローくんは笑顔で私を見た。
続きはこちら→
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/23214