目 次
1. はじめに
2. 観測の目的
3. 観測の方法
4. 観測の成果とその利用
5. 問題点
6. その他
1. はじめに
震災から半年が経過したが、福島第一原発の原子力事故は
終息の見通しが立たない状況にある。
特に問題なのは、1,2,3号機の原子炉内部の状態、核燃料(メルト)が
どこにどのような状態で存在しているのかが、確認できないことである。
事故直後に核燃料はメルトダウンし、相当量が原子炉格納容器へ
メルトスルーし落下したものと推定されているが、確認はされていない。
いま循環冷却を行ってはいるが、果たして冷却水がメルトに届いているのか、
一部で指摘されるメルトアウト(チャイナシンドローム)が起きていないのか、
核燃料の状態を確実に把握することが必要である。
1,2,3号機の核燃料の状態を確認するには、原子炉のふたを開けて
内部を直接観察する方法があるが、きわめて強い放射線のため
ふたを開ける事は不可能である。
そこで本論では、原子炉のふたを開けずに原子炉内部と核燃料(メルト)の
状態を間接的に観測する方法について考察し、提案を行う。
2. 観測の目的
観測の目的は、次の通りである。
1) 原子炉内部の状態、特に核燃料(メルト)が現在どのような状態
(位置と形状)で存在しているのかを、原子炉のふたを開けず、
安全に十分配慮しながら観測する。
2) 観測の結果から、現在行っている循環冷却が果たして有効に
機能しているのか、メルトアウトは起きているのか、メルトの位置や
形状は時間変化しているのかを考察し、今後の事故対策検討の
資料とする。
4. 観測の成果とその利用
リモートセンシングの観測データにより、核燃料の存在する位置と形状
(原子炉格納容器内に留まっているのか、それともメルトアウトしているのか、
球形なのかパンケーキ状なのか等)が推定できる。
また核燃料(メルト)の位置と形状が推定できれば、現在行っている水を用いた
循環冷却がうまくいっているのか、核燃料に冷却水が届いているのかを
推定することが出来る。
さらにリモートセンシングを用いた観測を継続的に行うことで、核燃料の
位置と形状が時間的に変化しているかどうか(メルトアウトが進行して地中に
沈降し続けているのか)を推定することが出来る。
推敲して書き直し
表題 : 福島第一原子力発電所1〜3号機の核燃料
(メルト)の状態を観測する方法について
企画書
平成23年 9月
目 次
1. はじめに
2. 観測の目的
3. 観測の方法
4. 観測の成果
5. 問題点
6. その他
1. はじめに
震災から半年が経過したが、福島第一原発の原子力事故は、依然として終息の見通しが
立たない状況にある。
事故の終息に当たっては、1,2,3号機の原子炉内部の状態、 核燃料(メルト)がどこに
どのような状態で存在しているのかを把握する必要があるが、未だに把握できていない。
原子炉1〜3号機では事故直後に核燃料がメルトダウンし、相当量が原子炉格納容器へ
メルトスルーし落下したものと推定されている。
また、1〜3号機では浄化した汚染水を使って原子炉の循環冷却を行ってはいるが、
冷却水がメルトに届いているのか、効率よく冷却できているかどうかは確認できていない。
8月中旬には岩手県と東京都の下水処理場において、汚泥からヨウ素131が検出されて
おり、これが福島第一原発由来だとすると、核燃料のメルトアウト(チャイナシンドローム)が
発生している可能性も考えられる。
1,2,3号機の核燃料の状態を確認するには、原子炉のふたを開けて、内部を直接観察する
必要があるが、きわめて強い放射線のため、ふたを開ける事は不可能である。
そこで本企画書において、原子炉のふたを開けずに原子炉内部と核燃料(メルト)の状態を
間接的に観測する方法について、提案を行う。
2. 観測の目的
観測の目的は、次の通りである。
1) 1〜3号機の原子炉内部の状態と、核燃料(メルト)の状態(位置と形状)を観測して、
冷却水注入等、原発終息のための対策検討の資料とする。
2) 核燃料(メルト)の状態を経時的に観測し、位置や形状に変化があるかどうか、
メルトアウトの危険性がないか等を監視し、警戒体制検討の資料とする。
3) なお観測に当たっては現場の過酷な作業環境に対応し、作業員の安全を十分確保する。
4. 観測の成果
リモートセンシングの観測データにより、核燃料の存在する位置と形状(原子炉格納容器
内に留まっているのか、それともメルトアウトしているのか、球形なのかパンケーキ状なのか
等)が推定できる。
また原子炉内部には海水冷却の結果、塩の結晶が大量に溜まっているものと推定されて
いるが、この塩がどこに堆積しているかを把握できる可能性もある。
核燃料(メルト)の位置と形状が推定できれば、現在行っている水を用いた循環冷却がうまく
いっているのか、核燃料に冷却水が届いているのかを推定することが出来る。
さらにリモートセンシングを用いた観測を継続的に行うことで、核燃料の位置と形状が時間
的に変化しているかどうか(メルトアウトが進行して地中に沈降し続けているのか)を推定する
ことが出来る。
5. 問題点
現場の環境放射線はきわめて強く、作業に当たっては作業員の安全を確保することが
重要である。
また、リモートセンシングの観測機器は精密なセンサであるので、放射線により故障する
ことがない様に作業計画を立てなければならない。
たとえば、原発の周辺に次図の様な観測孔を掘削し、孔の中に観測機器を設置すること
で、作業員や観測機器を放射線から防護する方法も考えられる。
http://www.miyakokensetsu.jp/blog/wp-content/uploads/RIMG0632.JPG http://www.miyasaka-cc.co.jp/gijutsu2/img/daikoukei01.jpg 図5 観測孔のイメージ
6. その他
今回発生した原子力事故は、レベル7の大事故であるにもかかわらず民間企業の東電1社に
ほぼすべての対応が任されているが、速やかな事故の終息を図るためには、日本と世界の
すべての専門家の知見やアイデアを最大限活用して、オールジャパンの体制で取り組む必要
がある。
たとえば本提案のリモートセンシングについては、物理探査学会や応用資質学会、土木学会
などの研究機関の協力を仰げば、核燃料(メルト)の状態を把握するためのさまざまなアイデア
を得ることが出来るはずである。
現在の事故対応の仕組みは不十分であると言わざるを得ず、より効率的で効果的な体制を
組むことが望まれる。
以上