【放射能】自然放射線と人工放射線のちがい / 市川定夫氏
ttp://www.youtube.com/watch?v=IV4N63urYjQ 市川定夫氏 微量放射線の遺伝的影響の研究で知られる
1958年京都大学卒、1963年京都大学大学院修了、農学博士。
ナレーション:
原発が放出する放射能を、ことさら自然放射能と比較して見せる。このような比較に意味はあるのだろうか?
講義:
原発を推進する側はいつもこのように書く。〜人工放射線/自然放射線〜
カリウム40といったものが、昔から天然にあったので、全生物は、そういった危険なものは蓄えない、という形で適応している。
生物の進化と適応の過程で遭遇してきたものに対しては、それをくぐり抜けてきたものしか生き残っていないという形で、結果として適応しており、自然の放射性物質を濃縮して蓄えるという生物は一つもいない。
ところがヨウ素。天然のヨウ素はすべて非放射性。放射能の無いヨウ素だから生物は安心して何百万倍も濃縮したし、人間は安心して甲状腺に集めて利用しているわけです。安全だったからそれは優れた性質になり得た。
その安全だった元素に放射性の核種をつくったらダメなんです。
濃縮するものを考えてみると、いままでその元素には放射性がなかった、そういう元素に放射性のものを作ったときに濃縮する。
セシウムも、天然のものは非放射性ですから、入ってきても何も怖いことはない、勝手に入れば良い。
ところが、放射性のセシウムを原子炉が作り出すものだから、ジワジワ蓄えられてしまう。
ストロンチウム90もそうです。天然のストロンチウムは非放射性でカルシウムに性質が似ていてカルシウムのあるところ(骨)にストロンチウムは全部いつでも入って来ます。天然のストロンチウムが入ってきてもいっこうに構わない、非放射性ですから。
ところが原子炉の中で、ストロンチウム90、放射性のストロンチウムを作ると、それが骨の中に入ってしまう。
ストロンチウム90の半減期は28年ですから、0歳のときに骨の中に入ってしまえば、その人は28歳になっても骨の中にまだ半分残っていることになる。中から被曝を与える。
ストロンチウムが入ると、白血病や骨髄腫になりやすいというのは、それなんです。骨に入って至近距離から骨髄に放射線を照射しているわけですから。
これまでその元素に放射性がなかったものに放射性のものを作ったときに、濃縮する。それが人工放射能の濃縮。
天然の放射能に濃縮するものはないというのは適応の結果。
我々が進化と適応の過程で一回も遭遇したことがない、原子力が始まってから初めて出来たものに対して、我々はそういった適応を持っていない。
昔は、人工放射能と自然放射能は同じようなものだと考えられていた時が一時期あった。私もそう習っていたしそう思っていた。
なぜなら、ウランの核分裂の結果できる人工放射性核種も出す放射線はα線かβ線かγ線なんです。天然にある放射線もα線かβ線かγ線なんです。出す放射線は同じなんです。
最終的に生物の細胞に傷をつけるのは放射線ですから、放射線が同じなら人工でも自然でも同じじゃないかと昔は考えていた。
ところがそれは間違っている。挙動の違いがあったわけです。濃縮するかしないかという。
それがわかった後なのに、推進派は今度「人工/自然放射性核種」がダメとなってわざと「人工/自然放射線」へ持っていく…放射線の問題にしていく。
人工の放射線でも例えば医療の放射線を出してきたり、天然に宇宙から飛んできている放射線も、放射線は放射線で皆さん傷つけているんですよ、人工にも自然にも差はありませんよ、と。
放射線を取り上げたら差はありません。ここには差はないんです。
だけど放射線が同じか違うかでは無かったんです。放射線を出す能力を持った放射性核種が、我々の中で蓄積するかしないかの違いなんです。
ナレーション:
・人工放射能は体内に濃縮・蓄積する
・自然放射能は体内に濃縮・蓄積しない
ヨウ素131やセシウム137、ストロンチウム90といった人工放射能(人工放射性核種)は、生体内に濃縮・蓄積し、生物がこれまで適応してきた自然放射能とは比較できない影響を人体に及ぼす。