ドーキンス「利己的な遺伝子」スレッド

このエントリーをはてなブックマークに追加
109通りすがり
>>107

科学の方法論が分かっていますか?

「血縁度に基づく包括適応度」というのは,確かに自然淘汰に基づく進化観から演繹的に導かれるものですが,実際の研究においてはそれは作業仮説です.

生態学者は,「その仮説で注目している現象が説明できるか,説明できないとしたら対立仮説は何か」,ということをいつも意識しながら研究を進めています.

繰り返しますが,「血縁度に基づく包括適応度」の概念は自然淘汰に基づく進化観から演繹的に導かれるものですが,その重要性は相対的なものです.ある形質の進化において,他のさまざまな制約がより重要かもしれませんし,別な要因がより重要かもしれません.例えば,血縁集団を作る傾向があっても,それは単に集団を作ることの有利さによるもので血縁であるというのは二次的な結果かもしれません.

例えるなら,自然淘汰と遺伝的浮動は対立するものではなく,その相対的な重要性は注目している形質や状況によって違います.ある形質が主要には自然淘汰で決まっていても,そこには弱くても遺伝的浮動も働いているはずですし,前者が後者の重要性や正当性を排除するものではありません.

ただいずれにしても,進化において自然淘汰が重要な役割を果たしている以上,遺伝子に働く淘汰を「利己的遺伝子」のスローガンで意識しつづけることは,生物の特性の理解において多くのことをもたらしてくれるはずです.