◇医療機関
一方で、課題も少なくない。まずは、最大で三十八万人とも試算される受診患者への対
応だ。
フェーズ4になると、住民が医療機関に殺到するのを防止するため、保健所などに「発熱
相談センター」を設置。感染が疑われると、病院や公共施設の「発熱外来」で受診させる仕
組みになっており、入院先には県内五つの医療圏に指定している指定感染症医療機関の
五病院で、計二十六床を確保している。
だが、感染者が増加すれば通常の病院や公共施設に収容することになり、県の見積もる
最大被害時の入院患者数は約三万人。県の担当者は「現在、診療所や入院先を確保する
ため、医師会や医療機関への依頼を検討している段階」とするにとどまっている。
◇意識啓発
もちろん、医療だけの問題ではない。
「同時流行が始まれば、国は頼れない。自治体は自治体で、個人は個人で自衛するしかない」
こう語気を強めるのは新型インフルエンザの猛威に警鐘を鳴らす小説「H5N1」の著者で、
国立感染症研究所の研究員・岡田晴恵氏だ。
感染拡大防止のための外出制限の仕組みや、感染者が出る前に学校を休校にすること
の周知、感染したごみの処理、独居老人の餓死などを防ぐ対応−。県内市町との連携も
含め、自治体に必要な事前準備は少なくない。
また、個人に対しても、食料・医薬品の備蓄や、発生時には外出を避けて会社や学校を
休むことへの心構えを力説する。
岡田氏は「最悪の状況を想定してシミュレーションを作り、県全体で取り組まなければ手
遅れになる。一人一人が危機意識を持つことが急務だ」と警告している。
<メモ> 新型インフルエンザ 鳥から人へ感染する高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)
ウイルスが突然変異し、人から人へ感染するウイルスになる危険性が指摘されている。
厚生労働省は、世界的に大流行した場合、国内で最大2500万人が医療機関を受診、
64万人が死亡して行政、医療などの社会機能がまひする可能性を指摘している。WHO
によると、H5N1型の感染者334人のうち、61%に当たる205人が死亡している(11月5日現在)。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20071109/CK2007110902063042.html