アダムの呪い
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4789722791/ 前作『イヴの七人の娘たち』で、すべての女性の先祖は最終的に全人類に共通のたった
1人の母にまでさかのぼることができる、と示した著者。本書では男性の共通先祖を追い求める。
女性のときはミトコンドリアDNAを用いたが、男性で用いるのはY染色体だ。冒頭、今回の研究に
のめりこむきっかけが生き生きと描かれる。
オックスフォード大学分子医学研究所の遺伝学教授である著者は、製薬会社から講演を依頼
されたのだが、会社の会長の姓が偶然、自分と同じ「サイクス」だったために、関係者に何度
も親戚なのかと聞かれた。もしやと思いDNAを調べたところ、ぴったり一致したのだ。
このエピソードを入り口に、DNAの役割、染色体発見の歴史的経緯、ヒトの性別がどう決まるのか、
なぜ2つの性があるのか、などの疑問に次々と答えていく。チャールズ・ダーウィンが唱えた進化論、
「“種の存続のため”に進化は機能する」を、ウィリアム・ハミルトンが見事に覆して「自然選択
では“遺伝子のために”進化が機能する」と証明してみせるあたりの記述は、息をもつかせぬ
スピード感に満ちている。タイトルがなぜ「アダムの呪い」なのかの謎解きは、ぜひ読んで
楽しんでほしい。第一線の研究内容を平易な言葉で書いているので、最後まで飽きずに読めるだろう。
男の祖先・女の祖先 DNAで日本人のルーツを探る
http://www63.tok2.com/home2/ahonokouji/sub1-52.htm 男性には「縄文系」と「弥生系」があるという。Y染色体は、睾丸や精子の形成にかかわっている。
Y染色体に書き込まれた文字数は6000万個に上る。他の染色体に比べて、Y染色体の多型は極端に少なく、
およそ200カ所見つかっているが、Y染色体のDNAのある特定の場所に挿入された、およそ300の塩基から
なる『YAP』(ヤップ)という部分がある。中堀豊・徳島大医学部教授らの研究グループによれば、
Y染色体のYAP多型は東アジアでは日本人にしか見られず、昔から日本にいた人たち特有のものと考え
られている。日本人で数パーセント見いだされ、それもアイヌ人、沖縄人で頻度が高い。
宝来聡教授の研究では、アイヌ民族の88%にYAP+がみられるという。
ところが、韓国をふくめユーラシアでも、この突然変異の遺伝子はほとんど見つからず、日本以外
で唯一見つかるのはチベットだけであるという。世界的に見てもそのほかには黒人にしかみられない
変わった遺伝子型である。このことから、ヤップがあるのが縄文系男性、ないのが弥生系男性と判断できる。
つづく
つづき
東アジア人で4タイプに分かれ、日本人男性も「タイプ1」から「タイプ4」まで4つに分けられる。
中堀教授らの研究グループは、1999年にY染色体にあって胎児期に睾丸を作るよう命令する「SRY遺伝子」の
465番目の塩基が、人によってC(シトシン)かT(チミン)かの違いがある「多型」であることを発見した。
中堀教授は<1>ヤップの有無<2>SRY遺伝子の465番目の塩基がCかTか<3>DXYS5Yの塩基の違いという、
Y染色体中の3つのDNAの型をもとに、日本人の男性を縄文系と、タイプの異なる3つの弥生系の4つに分類した。
YAP+タイプ2の集団は、都市部では北から南まで均等に分布し、金沢、福岡、大阪、札幌のいずれで
調べても、人口の約25%程度を占める。しかし本州や四国の山間部では5割を占めていた。弥生人に
追われた縄文人という通説にほぼ合致する結果である。
日本の男性は1万年以上前から日本列島に住んでいた縄文人、縄文時代後期に大陸や朝鮮半島から
移住してきた弥生人にルーツを持っているのである。ついでながら、中堀教授らのグループの研究
によれば、縄文人の系統とされる「タイプ2」の男性の精子数は、弥生人系より2割以上も少なく、
2〜4倍も無精子症になりやすいという。