環境の撹乱による表現形の変化は環境の淘汰圧の高まりによって柔構造を持つ個体がその柔構造を維持でき
なくなった際に一気に起きると考えています。ですから、変化はダーウィニズムのように連続的、漸進的ではなく
て、カオス理論の自己組織化臨界のように「ある期間、ある地点に集中的に」つまり、ある種において不連続的に
発生すると考えられます(≒「種は変わるときなれば変わる」)。
これによって、撹乱/補償モデルにおいては、変異は連続的なランダムな変化ではなく、ある時期、ある地点で不
連続に、かつ、変化の範囲もその生物の情報処理システムの能力に応じた範囲内でのみランダムに発生すると
いう観点をとることができます。
例を上げると、ある生態系のある階層において、擬態能力のないカメレオンの個体数が飽和することで、エサとな
る昆虫の個体数のとの関係から種に対する淘汰圧が高まります。この淘汰圧がカメレオン個体の柔構造の耐性
を上回ることで、ある個体において色覚情報を脳で処理し、皮膚組織の色素構造を視覚情報と連動させて変化さ
せるという表現形を発現させた個体が現われます。この個体が自然淘汰によって優位となり、生態系内で卓越し
てゆきます。この補償モデルの変異が突然変異と異なる点は、眼を通じて色覚情報を得て、それを脳で情報処理、
その処理結果を神経組織が皮膚の細胞まで伝達し、脳の情報処理に基づいた色素を選択するという眼、脳、神経
組織、皮膚など各器官が高度に連携した解釈的な表現系が発現していることです。突然変異説では、各器官の個
別の変異をうまく説明できますが、各器官が連携してひとつの表現系をなすような進化をうまく説明できないのでは
ないかと考えます。